小野小町の意外な事実7つ!麗しき女流歌人を知るおすすめの本も。

更新:2021.11.8

平安時代初期に活躍した天才歌人であり、絶世の美女でもあった小野小町。彼女には、数々の伝説があります。出自や人物像など、不明とされている部分も多い彼女の逸話に触れながら、おすすめの本3冊を紹介します。

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小野小町とは

小野小町は、絶世の美女といわれながらも、生没年などはすべて不詳という謎に包まれた平安時代の女流歌人です。在原業平、僧正遍照、文屋康秀、喜撰法師、大伴黒主とともに、唯一女性で「六歌仙」にも選ばれるほど、歌才にあふれた人でした。

恋多き女性とも言われていて、多くの男性との恋愛を経験した彼女が詠む歌は、華やかさのなかにも揺れ動く心情や、情熱的な恋心を歌ったものが多く含まれています。

しかし彼女の人生は謎が多く、没後に彼女を描いたとされる絵のほとんどは、その美貌を描いたものではなく後ろ姿ばかりなのです。

小野小町についての意外な事実7つ

1:誰の娘なのかがわからない

彼女の出自に関しては様々な言い伝えがあります。平安時代の宮廷社会を知る上で貴重な資料となっている系図集『尊卑分脈』によると、小野篁の息子である小野良真の娘とされてます。

しかし小野良真という名前は『尊卑分脈』以外の資料に記載がないのです。そのため良真の娘という説以外にも、小野篁の娘だったという説や、出羽の国の長官であった小野滝雄の娘だったという説などがあります。

2:どこで生まれたのかもわからない

彼女が生まれた場所に関しては、現在の秋田県湯沢市小野であるという説が強いのですが、これも定かではありません。彼女の誕生の地と言われている場所は、実は全国各地に点在しています。

東北地方だけでも、山形県酒田市や福井県越前市という説があり、さらに神奈川県、京都府、熊本県などという説もあります。

3:華麗なる生活をしていた

彼女の日々の暮らしは、「衣には錦繍のたぐひを重ね、食には海陸の珍をととのへ、身には蘭麝を薫じ、口には和歌を詠じて、よろずの男をばいやしくのみ思ひくたし」(『古今著門集』第182話より引用)

だったといいます。毎日美しい衣装をまとい、普通ではなかなか手に入らないような食材をふんだんに使った食事をし、身体をいい香でつつみ、イケメン男子に囲まれ、毎日好きな歌を詠んで過ごしていたというわけですから、まさに美人ならではの華麗な生活を送っていたということなのでしょう。

4:魔性の女だった
 

多くの男性から言い寄られたといわれている絶世の美女、小野小町。ところが、彼女は生涯どんな男性にも体を許すことがなかったといわれています。男性に対して様々な難題を突き付けては、相手が諦めるまでほったらかしにするというのが、彼女のお得意のパターンです。

なかでも有名なのが、深草の少将の「百夜通い」です。深草少将が彼女に求愛をしたところ、「百夜通い続けたら契りを結ぶ」と返答し、深草少将は約5キロの道のりを毎晩通いました。そしてついに100日目、彼は亡くなってしまいます。

秋田県の湯沢には、小野小町と深草少将の墳墓があるそうです。

5:「穴なし」と呼ばれた

彼女には「穴なし小町」という異名もあり、これは彼女が男性になびかなかったことから、「穴(膣)なし」という意味が含まれています。

裁縫道具で穴が無い「まち針」の名前の由来も、この異名に基づいているといわれています。

6:安楽寺には、小野小町の死亡画が残されている

京都にある安楽寺には、小野小町の死亡後の様子を書き残したといわれる掛け軸「小野小町九相図」があります。

この掛け軸では、生前相、新死相、膨張相、血塗相、肪乱相、青瘀相、噉色相、骨連相、古墳相の9コマによって、彼女が絶世の美女といわれていたころの姿から白骨となるまでの様子が描かれています。

7:死んだ小野小町と歌を詠んだ在原業平
 

在原業平が、奥州八丈島を訪れたときのこと。宿で休んでいると、夜中に野原のほうから、「秋風の/吹くたびごとに/穴目穴目」という、和歌の上の句を詠む声が聞こえてきました。

不思議に思った彼は、声のする方へ行ってみます。ところがそこにひとの姿はありません。翌朝、改めて訪れてみると、そこには頭蓋骨が1つありました。それが誰のものなのかを村人に尋ねると、なんと小野小町のものだと聞かされます。

哀れに思った業平は、彼女の頭蓋骨が詠んだ上の句に、「小野とはいはじ/薄生いたり」の下の句をつけて詠んだといいます。

天才といわれた女流歌人、小野小町を知る

出自も没年も定かではない小野小町ですが、女性らしい華やかさと情熱的な歌が魅力の女流歌人でもあります。そんな彼女が詠んだ歌の解釈を中心に、小野小町像を紐解いていきます。

著者
大塚 英子
出版日
2011-03-01

東京大学の文学部国文学科を卒業した作者による、小野小町の実像と虚像に迫った解説です。「スキャンダラスの女王・小野小町」ではなく、「正統派天才女流歌人・小野小町」を知りたい人におすすめの一冊です。

ゆかりの地を訪ねながら読んでみたい

美貌と歌才で平安時代を生き抜いたといわれている小野小町には、全国各地にさまざまな伝説が残されています。美人は謎めいているほど魅力があるといいますが、その言葉にピッタリなのが彼女なのではないでしょうか。

数々の男性から見そめられつつも生涯独身を貫いたので、彼女にまつわる伝説の中には、怨みや妬みも加わり、ひどい言われようをしているものも少なくありません。

著者
福井 栄一
出版日

とはいえ美貌だけでなく、歌の才能も持ち合わせていたので、彼女のミステリアスな人生そのものが小話や能のテーマとして数多く残されています。
 

そんな彼女を、世界初の上方文化評論家でもある作者が、独特の語り口で軽妙に紹介していきます。思わず人に教えてしまいたくなるような仰天エピソードや、彼女のものと呼ばれる能の紹介など、肩ひじ張らずに小野小町について知りたい人におすすめの作品です。

これぞ王道の小町伝説!知られざる小野小町のその後を知る

みすぼらしい姿で町を徘徊するひとりの老女が、そこにいたるまでの人生について綿々と語る物語です。

本作の主人公は小野小町ではないですが、彼女の伝説として読み継がれてきました。

著者
杤尾 武
出版日
1994-07-18

見るも無残な姿で徘徊する主人公の老女ですが、若かりしころは毎日贅沢の限りを尽くしていました。ところが、月日は流れ、親や兄弟が亡くなって頼る人を失います。朽ち果てていく家とともに、美しかった容姿も衰えていきます。

そんな老女の姿は、「花の色は/うつりにけりな/いたづらに/わが身世にふる/ながめせしまに」と詠った小野小町を連想させるのです。

宮廷で華やかな生活を送っていたはずの彼女に晩年の記録が残されていないということも、この作品が小町の伝説として読み継がれてきた背景にあるのかもしれません。

平安時代初期に活躍した天才女流歌人、小野小町は、歌だけでなく様々な伝説を残している女性でもありました。出自や晩年など、彼女に関する話は全国各地に残っているものの、どれが本物なのか、未だに謎なままです。こうした謎を歌の中から紐解いていけるというのも、彼女の作品の魅力のひとつなのかもしれません。

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