2013年に第1巻が刊行された後、その王道的なストーリーと魅力溢れるキャラクターで人気を博しているライトノベルシリーズ。ここでは、本編14巻までの内容と見どころをご紹介します。スマホアプリで漫画作品を無料で読むこともできるので、そちらもどうぞ!
2013年に第1巻が刊行された後、本編14巻と短編集1巻の合わせて15巻が刊行されている『落第騎士の英雄譚』。アニメ化や漫画化もされている人気シリーズです。作者の海空りくは、GA文庫大賞で優秀賞を受賞しデビュー、本作はデビュー後3作目の作品で、初めてテレビアニメ化された作品にもなりました。
本作に出てくるのは、かつては「魔女」や「魔法使い」などと呼ばれていた異能者で、伐刀者(ブレイザー)と呼ばれています。伐刀者はその強い力とともに「魔導騎士」という社会的な地位を得る存在になっていました。
そんな「魔導騎士」を目指す若者達が通う学校が、物語の最初の舞台になります。主人公の黒鉄一輝は伐刀者の力をランク分けした評価では最低ランクのF、留年もした「落第騎士(ワーストワン)」です。しかし、留年にはある事情があり、魔力は低いものの卓越した身体能力を持った実力者でした。
最低ランクの落第生が、その異国の皇女にして10年に1人の逸材と言われるランクAの学生、ステラ・ヴァーミリオンと出会い、並みいる強者達との戦いを制していく、タイトル通り英雄譚物語です。
- 著者
- 海空りく(GA文庫/SBクリエイティブ刊)
- 出版日
- 2014-12-12
かつては「魔女」や「魔法使い」と呼ばれていた特異な力を持つ者達は、今では「魔導騎士」と呼ばれ、社会的な地位を得た存在になっていました。そんな「魔導騎士」を目指す者達が通う専門学校・破軍学園。そこに通う黒鉄一輝(くろがねいっき)は、ランクは最低のうえ留年している「落第騎士(ワーストワン)」でした。
ある日、一輝がランニングから寮の部屋へと戻ろうとすると、そこにはなぜか下着姿の美少女が!美少女の正体は留学してきた異国の皇女であり「A級騎士(ナンバーワン)」のステラ・ヴァーミリオンでした。
痴漢扱いされ危うくステラに切腹をさせられそうになる一輝でしたが、間に入った学園の理事長によって、2人は2人1部屋の寮のルームメイトであることが発覚します。そんなのあり得ないと主張するステラは一輝に無理難題を要求し、とうとう2人は部屋のルールを賭けて決闘をおこなうことになります。
しかし、最低ランクの一輝がA級騎士である自分と決闘することさえ納得できないステラは、決闘に負けた者は勝った者に一生服従するという条件を突きつけてきて……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2013-07-12
物語の始まりは、一輝とステラの出会いから始まります。その出会いは、ランニングから自分の寮の部屋へ帰ってきた一輝が、下着姿のステラと鉢合わせてしまうというお約束のもの。ヒロインであるステラはプライドが高く、一輝に対してやや暴力的な面もあるものの、いわゆるツンデレキャラであり、好感度の高い女の子です。
一輝とステラのラブコメシーンはシリーズ通して描かれており、また、巻が進むにつれ一輝の周りには女の子が増えていきます。一輝を取り巻く恋愛に関しては、シリーズを通してぜひ楽しんでみてください。
もちろんラブコメだけではなく、異能を用いたバトルも本シリーズの見どころです。一輝は落第騎士ではありますがいわゆる最強系の主人公です。しかし、高い魔力を持ったステラが主に魔力に頼った戦い方をするのに対し、魔力の低い一輝は己の努力や修行によって得た力を頼りに戦うなど、その強さに裏付けされた努力という点が読者に説得力を与えてくれます。
スピード感のあるストーリーと読みやすい文章、努力家で穏やかな性格の最強系主人公とツンデレ系ヒロイン、他にも一輝のことを一途に想う一輝の妹・黒鉄珠雫など、好感度の高いキャラクター達の魅力で、最後まで一気に読むことができます。次巻へと続くストーリーではありますが、まずはぜひ1巻だけでも読んでみてください。
七星剣武祭代表を賭けた学内戦。「落第騎士(ワーストワン)」の呼び名をもらいながらも学内戦で8戦8勝と勝ち続けている一輝でしたが、次の相手は、「速度中毒(ランナーズハイ)」と呼ばれる兎丸恋々(とまるれんれん)。
彼女は校内のランキング3位の強者です。音速まで加速し続ける能力を持った彼女の動きを前に、一輝はその残像すら見ることができなくて……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2013-10-12
一輝とステラはすでに恋人という関係になっていますが、同室設定は前巻より続いています。そうなると2人の恋愛面の進展も期待したくなるのですが、本巻で2人の進展はほとんどありません。2人のイチャイチャを期待している方にとっては、少し物足りなさがあるかもしれませんね。
2人の恋愛パートは少なくなっていますが、伝説の侍の娘でボクっ娘の綾辻絢瀬(あやつじあやせ)というキャラクターが登場し、一輝に弟子入りするなど、一輝の周りにはヒロインが増えてくるので、その辺りにはぜひ注目してみてください。また、そのことでやきもちを焼くステラも必見です。
また、恋愛パートが身を潜めた代わりにバトルシーンは増えています。七星剣武祭という魔導騎士の専門学校対抗で行われる大会の代表を選ぶための学内戦をやっていることもあり、一輝の相手には評判も成績も優秀なランク上位の生徒達が立ちはだかることになります。一輝達のバトルを堪能すると同時に、次々に登場してくる強者キャラクター達にもぜひ注目してみてください。
黒鉄一輝の妹、黒鉄珠雫(くろがねしずく)。首席入学のステラに次いで次席入学をした珠雫は、幼い頃からその才覚を現し、周りから甘やかされて育ちました。
どんなに自分が悪くても、周りは力のある自分に頭を下げる……そんな人間のことを、珠雫は軽蔑していました。しかしある日、兄の一輝は、弱い者いじめをする珠雫を叱りつけます。初めて叱られたことに喜びを覚えた珠雫は、その時、兄に一生付いていこうと決めたのです。
そんな愛する兄とともに七星剣武祭の代表となるため、珠雫は学内最強の雷使いであり生徒会長でもある3年の東堂刀華(とうどうとうか)と相対します。格上を相手に、それでも最初は互角に渡り合っていた珠雫でしたが、突然、正体不明の技を前に追い詰められてしまい……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2014-01-11
一輝の妹であり、幼い頃からその才能を認められてきた珠雫(しずく)。「深海の魔女(ローレライ)」の二つ名の通り水を操る彼女は、今でこそ兄に対して強い信頼と愛情を持っていますが、幼い頃はその才能ゆえに何をしても許される自分、そして力の前に屈する人間を軽蔑する少女でした。しかし、悪いことをした自分を叱ってくれた唯一の人物である一輝に対しては心を開き、以来、一輝に一生付いていこうと決意していました。
黒鉄家は、才能の劣っている一輝の存在を良しとせず、彼を潰すために様々な嫌がらせをしてきます。発言力のある名家だけに、マスコミを動かすほどの力を持っており、その力をフル活用して一輝に嫌がらせをしてくるさまは、読んでいて嫌な気持ちになってしまうかもしれません。
しかし、その分、それに対抗していく一輝への好感度がさらにあがる巻だと言ってもいいでしょう。どん底の状態から上へと這い上がっていく少年漫画のような熱い展開には、思わず引き込まれてしまう方も多いはず。同時に珠雫の決意や潔い性格にはヒロインの可愛さだけでなく、1人のキャラクターとしてのカッコよさもあるので、ぜひ注目してみてください。
7月も下旬となった頃、校内戦で何かと慌ただしかった1学期も終え、学校は夏休みに入っています。長い休みを帰省して過ごす生徒も多い中、七星剣武祭の代表となった一輝やステラは、大会本番に向けて強化合宿に参加していました。最強の雷使いの刀華との激しい模擬戦に挑むのは、ステラ。凄まじい力を前に善戦するステラでしたが……。
一方の一輝は、同じ代表のメンバーである双子の姉妹、葉暮桔梗と牡丹の2人を相手に模擬戦をしていました。2対1にも関わらず、あっさりと2人を倒した一輝は、実は合宿のために用意されていたコーチを3日の内に全て模擬戦で倒してしまっていました。そこで、一輝のために特別コーチが用意されることになったのですが……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2014-04-12
前巻まで続いていた七星剣武祭の代表を選ぶ選抜戦も終わり、破軍学園代表団団長に任命された一輝は、ステラや葉暮姉妹など代表メンバーとともに、大会に向けた強化合宿を行います。苦戦することがありながらも順調に模擬戦をこなしていく一輝達でしたが、そこで紫乃宮天音(しのみやあまね)という少年と出会いました。
一輝のファンだと公言する天音ですが、一輝はなぜか彼によい印象を持つことができませんでした。このキャラクターは後にとても重要な意味を持つキャラクターでもあるので、ぜひその動向にも目を向けてみてください。
合宿が終わり学校へと帰った一輝達が見たものは、学校が何者かに襲われているという光景でした。破軍学園を襲ったのは「暁学園」と名乗る者達で、彼らの目的は破軍学園の代表を倒し自分達が七星剣武祭に出るというのです。
彼らと対峙することになった一輝達のくり広げるバトルは迫力満点。これでもかとばかりにくり広げられているので、思う存分堪能することができます。
合宿でのどこかほのぼのとしたバトルから、命がけの緊迫感溢れるバトルへと移って行く様子はとてもハラハラして、読みだしたら止まらなくなってしまうかもしれません。新キャラクターも多く、次巻以降への期待が膨らむ1冊です。
かつて都市開発に失敗し、今やゴーストタウンと化してしまっている大阪郊外の埋め立て地。そこで七星剣武祭が開催されるとあり、普段は誰もいないその場所も今は活気に溢れています。
破軍学園代表団団長になった一輝も、同じく代表の珠雫達とともに大阪入りしていました。一輝達は、代表選手達が参加するパーティーに出席することになるのですが、そこには同じ代表であるはずのステラの姿はありません。
ギリギリまで修行をしたいというステラは、他の代表より到着が遅れていたのです。一輝と珠雫は、ステラが無茶な修行をして体を壊さないだろうかと心配するのですが……。
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2014-08-08
前巻の暁学園による破軍学園襲撃の騒動で、代表メンバーが代わり、一輝とステラ、そして選抜戦では負けてしまっていた珠雫が代表メンバーとなり、七星剣武祭へと参加することになりました。
しかし、前巻の戦いで自分の未熟さを知ったステラは1人修行に出ており、冒頭ではまだ大会の開催地である大阪へと入っていません。ステラの大阪入りが遅くなっていることを心配している一輝と珠雫ですが、この遅刻が、後の展開に大きく関わっていくことになります。
そして、本巻でいよいよ七星剣武祭が開催されるわけですが、なかでももっとも見どころといえるのは、やはり「七星剣王」諸星雄大(もろぼしゆうだい)と一輝のバトルでしょう。「七星剣王」は七星剣武祭の優勝者に与えられる称号で、雄大は昨年の優勝者なのでした。
フレンドリーで大阪人らしい明るいノリの雄大は、事故に巻き込まれ両足を失ったという過去があります。壮絶な治療のおかげで四肢を回復させることはできましたが、そんな過去と明るい性格とのギャップが、彼のキャラクターをより際立たせています。
また、黒鉄家の嫌がらせも相変わらずで、一輝の兄である黒鉄王馬とは決闘にまで発展してしまいました。その決闘は諸星のおかげで決着のつかないまま中断することになりましたが、その戦いの中で、一輝は自分の体の異常に気が付くことになるなど、重要なシーンとして描かれています。
まさに戦いが戦いを呼ぶような展開は、最後までムダのない文章で描き切られており、一度読みだしたら最後まで一気に読んでしまうでしょう。七星剣武祭の戦いはまだ序盤ですが、この時点ですでに読みごたえはたっぷり。自然と次巻への期待が高まる1冊です。
七星剣武祭の一回戦もいよいよ佳境へと差し掛かっています。暁学園はここまで全勝、一方の一輝も前大会覇者である七星剣王の諸星雄大に勝利を収めていました。
そんな中、ステラは残りの暁学園の代表4人を前に、1対4で戦うことになります。それは、ステラが自らの遅刻を理由に持ちかけた変則ルール。暁学園を逃がすつもりのないステラは1人で4人を相手にしますが、チームプレイを最大限に活かせるリング上での戦いということもあり、ステラはしだいに追い詰められていきます。
とうとう相手の攻撃を受け場外に吹き飛んでしまいますが、立ち上がったステラの体には傷一つなく……。
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2014-12-13
七星剣武祭の一回戦、諸星雄大に勝利した一輝でしたが、一輝達破軍学園に因縁のある暁学園もまた、代表メンバー全員が勝利していました。そんな中、ステラは自分の遅刻を理由に、暁学園4人とステラ1人の変則マッチを提案します。それは、破軍学園を襲撃した暁学園に対する復讐でした。
4対1という状況下で、パワーアップしたステラの力とバトルを思う存分堪能できる1冊となっています。変則マッチを提案したのがステラなので、一瞬で4人を蹴散らしてしまうのではないかと思う方もいるかもしれませんが、そこは案外そうでもなく、ステラは苦戦を強いられます。その辺りは好みが分かれるかもしれませんが、そのおかげでバトルが終わるまでずっとハラハラしながら読むことができるでしょう。
また、この巻では天音の力の正体が明かされます。天音の持つ「過剰なる女神の寵愛(ネームレスグローリー)」は、天音の願ったことが現実になるように因果が捻じ曲げられる能力。たとえば天音が勝ちたいと願った相手は、天音と戦う前に何らかの偶然が重なり戦闘不能に陥るなど、天音の願望のために偶然が必然となるような能力なのでした。かなり反則的な能力ですが、この力が後のストーリーにも重要なものとなってくるので、ぜひチェックしておいてください。
その後も、変則マッチによる試合数の減少で一輝が1日に2試合をこなさなければならなくなるなど、一輝達は次々とトラブルに見舞われます。様々な事象がからみ合い展開されていくエピソードは説得力があるので、ぜひ物語の世界にどっぷりと浸ってみてください。
七星剣武祭も2日目。二回戦を迎えた一輝は、昨年の大会の準優勝者を相手に、一撃の大技で一瞬のもとに勝利を収めます。
その大技とは、「一瞬に全ての力を振り絞る」もので、その力は昨年の準優勝者を1秒とかからず倒せるものでしたが、その強さゆえに体には多大な負担をかけてしまう、自爆ともいえる技でした。
一輝がそんな技をいきなり使ったのは、同じ日に続けて三回戦をやらなければならなかったからです。三回戦の相手は、「血塗れのダ・ヴィンチ」サラ・ブラッドリリー。描いたものを具現化するという力を持つすごい使い手であることはもちろん、なぜか一輝にヌードモデルになれと迫ってくる、一輝にとってはいろいろな意味で恐ろしい相手でした。
試合を終えた一輝が次の試合に備えて体を休めている頃、妹の珠雫は昨年の大会で3位だった相手との試合に挑んでいましたが……!?
- 著者
- ["海空 りく", "空路 恵"]
- 出版日
- 2016-10-13
ステラの変則マッチによって試合数が減少したというスポンサーからのクレームのもと、一輝は試合のスケジュールを変更され、二回戦と三回戦を1日でこなさなければならなくなってしまいました。そんな不利な状況のもと、一輝は二回戦での戦いを僅か0.8秒で終わらせます。観客は大会史上最速で終わった試合に盛り上がるものの、それは一輝の体に負担をかける大技であり、一輝は次の試合に不安を覚えることになってしまいました。
そんな一輝が三回戦で戦う相手は、暁学園のサラ・ブラッドリリーという少女です。「血塗れのダ・ヴィンチ」という二つ名からも察せられますが、彼女には世界的に有名な画家「マリオ・ロッソ」というもう1つの顔があります。有名とはいえ、マリオ・ロッソの正体は誰も知らないので、サラがそうであることを知る人も多くはありません。
そんなサラは、なぜか一輝にヌードモデルをやれとしつこく迫ってくるのですが、それも彼女のある目的のためでした。描いた絵を具現化するという能力を持ち、虚弱体質ながらも一輝を追い詰めることになります。味方のキャラクターはもちろん敵のキャラクターが魅力的なのも本作の見どころ。ぜひ対戦相手のキャラクターもチェックしてみてくださいね。
暁学園の紫乃宮天音(しのみやあまね)は、「凶運」という二つ名を持つ少年です。彼の能力は、「過剰なる女神の寵愛(ネームレスグローリー)」。強い強制力を持つ因果干渉系能力……つまり、彼が願ったことはあらゆる偶然が重なり、必ず叶うというものでした。
その能力のため、試合の相手が試合の前にさまざまな偶然によって戦えなくなるなど、天音は勝利を収め続けてきました。そんな天音と試合をすることになった珠雫は、彼の能力を回避するため、試合前に天音を襲撃することを決意します。
それは、自ら反則負けを背負うことで、負けに繋がる偶然を回避するためでした。全ては一輝の傷つく姿を望む天音を、これ以上一輝に近付かせないため。悲壮な思いを抱え、珠雫は天音を襲撃するのですが……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2015-10-14
本巻の冒頭は、珠雫が試合相手である天音を襲撃するところから始まります。天音の能力は、彼の願ったことが叶うように因果を捻じ曲げるというもので、それは天音と一輝との戦いにおいて、天音が一輝の死を願うと一輝の心臓が止まってしまうというくらいすごい力を持つものです。ほとんど反則級の能力であり、珠雫に勝ち目はありません。
そこで珠雫が考えたのは、試合前に天音を襲撃し、自分が反則負けをすることを前提にし、天音の勝利のために動く因果を動かさないようにするというものだったのです。それは大会の反則負け、もしかすると学校を退学になるかもしれないほどの行為でしたが、全ては一輝を傷つけようとしている天音を排除するためで、珠雫の兄に対する想いの強さが胸をつくとても印象深いシーンになっています。
そんな悲壮な想いを持った珠雫は返討にされてしまいますが、その後の一輝と天音の対決も、読みごたえはたっぷり。他にもステラと黒鉄王馬の対決など、本巻は迫力のあるバトルが目白押しになっています。これでもかとバトルを堪能できるため、恋愛要素は割合が少なくなっていますが、バトル好きには何度でも読み返したい1冊です。
七星剣武祭準決勝終了後、襲撃から審判をかばったことにより被弾した一輝は、そのまま意識不明に陥ってしまいました。しかし、決勝戦の延期など周囲の尽力もあり、目を覚ました一輝は無事に決勝戦のリングへと戻ることになります。
決勝の相手は、ステラ。誰もがその実力を認めるAランク騎士の「紅蓮の皇女」ステラと、「落第騎士(ワーストワン)」ながら並みいる強豪を蹴散らし決勝まで上り詰めた一輝の対決に誰もが期待を寄せる中、一輝自身は、ステラとの対決に恐怖や不安を感じていました。
珠雫とともに決勝戦に向けて最終調整をしている一輝。そこに現れたのは、かつて対決した「七星剣王」の諸星雄大で……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2015-12-12
長かった七星剣武祭も、本巻で最後です。サラや天音など強者達を次々に撃破した一輝は、とうとう決勝戦へとコマを進めます。相手は、最強の伐刀者であると同時に大切な恋人であるステラ。ステラとの戦いを喜びながらも、彼女の強さを誰よりも知っている一輝は、恐怖と不安に駆られてしまいます。
そんな一輝の前に現れたのは、諸星雄大を始めとした、これまで一輝と戦ってきたライバル達です。悩む主人公の前にこれまで戦ってきたライバルが現れるシーンは、王道的な展開ではありますが、少年漫画のように熱く、やはり胸が躍ってしまう方も多いのではないでしょうか。
恋人同士の戦いとはいえ、そこに手加減や容赦というものはなく、全力の限りでぶつかっていきます。変にセンチメンタルにならない清々しい戦いは、これまで様々な因縁のもとでのバトルとは少し雰囲気が違い、真っ直ぐで気持ち良く読むことができるでしょう。
また、元々の魔力量が違うという点で、一輝が劣っているというところが久しぶりに思い出され、それを覆しながら戦ってきた一輝の強さをあらためて感じることができます。一輝は最初から印象のよいキャラクターですが、七星剣武祭の本巻でさらに好きになること間違いなしです。
ステラとの手加減なしの真っ向勝負を終え、一輝の優勝で幕を閉じた七星剣武祭。一輝達は、「七星剣王」諸星雄大の実家であるお好み焼き屋で祝勝会をしていました。代表メンバーを始め、破軍学園の仲間やこれまで戦ってきたライバル達とわいわい賑やかに過ごす一輝達。
それぞれが再戦の約束やトレーニングの話をしている中、勝利者インタビューを終えた一輝は、つい昨日の出来事を思い出していました。昨日、七星剣武祭のリングに呼び出された2人は、いきなり黒い甲冑をまとった女に突然襲撃されて……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2016-04-14
前巻で七星剣武祭が終わり、一輝達は諸星雄大の実家であるお好み焼き屋で祝勝会をおこなうなど、久しぶりにのんびりとした時間を過ごしていました。大会の後の後日譚なども面白いのですが、本巻の見どころはやはり、一輝がヴァーミリオン皇国へ行ってからでしょう。一輝は、ステラの家族へ挨拶をするという約束を果たすため、ステラとともにヴァーミリオンへと向かったのです。
そこで登場するのが、ステラの家族、すなわちヴァーミリオン国王を始めとした王家の人間達です。ステラの姉でクールな性格のルナアイズ・ヴァーミリオンや、ステラの父で国王であるシリウス・ヴァーミリオンは、本巻からのシリーズにおいて重要な位置を占めるキャラクターになっていきます。
特に、国王のシリウスはステラを過剰なまでに溺愛しており、その愛情が国全体を巻き込み、一輝と国民全員というとんでもない決闘を起こさせてしまいました。
最強系主人公のストーリーには、強さの上限が限りなくなってしまう時があります。本シリーズでも、前巻までで強いキャラクターが出尽くしてしまった印象も少なからずありましたが、本巻から新章へと入ったこともあり、新しい期待感を抱くことができるでしょう。次の巻が気になる新章編の第1巻です。
ステラの家族に挨拶をするためヴァーミリオン皇国を訪れた一輝は、ステラの結婚相手として認められため国民全員を相手にバトルをしたり、騎士同士の一騎打ちによる戦争へ参加することになったりと様々なことがあったものの、無事に国民に認められました。
しかし、ステラの父親、すなわちヴァーミリオン国王のシリウス・ヴァーミリオンは、父親としての威厳を守るため、一輝に1対1の模擬戦をやるように命じます。最初はためらう一輝でしたが、熱くなったシリウスには逆らえず……!?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2017-01-13
ヴァーミリオン皇国国王シリウスの、ステラに対する過剰な愛情ゆえに起きた一輝と国民の決闘は、結果として一輝が国民達に受け入れられるものになりました。そうして認められた一輝は、今度はヴァーミリオンの隣国であるクレーデルラントとの戦争へと巻き込まれていくことになります。
前巻からのヴァーミリオン編では、「傀儡王」という二つ名を持つオル=ゴールというキャラクターが登場します。残忍な性格の人物で、二つ名の通り人を操る能力を持っています。そんな新キャラクターや、ヴァーミリオンとクレーデルラントという国家間での戦争が勃発することもあり、雰囲気はシリアス気味。七星剣武祭とは印象がかなり変わってきているので、その辺りは好みが分かれる方もいるかもしれませんが、新たな章として新鮮さを感じることができるでしょう。
ステラの故郷に及ぶ悪意に一輝が立ち向かっていく話なので、必然的にステラと一輝の絆も深くなっていきます。すでに想いの通じ合っている2人ではありますが、2人の関係がどう変わっていくのかもぜひ注目してみてください。
クレーデルラント新政府による宣戦布告。それを正式に受けることになったヴァーミリオン皇国は、その勝敗を5人の魔導騎士の代表による勝負で決めると、ヴァーミリオン皇国第一皇女であるルナアイズ・ヴァーミリオンによって宣言されました。
その代表の1人に選ばれたステラでしたが、戦いの中で死んでいった国民を思い、自分の無力さを痛感します。もっと強くなりたいと願ったステラが取った行動とは……?
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2017-04-14
クレーデルラントとの戦争は、ルナアイズの宣言によって「代表戦」となり、ステラはその1人に選ばれます。そのための修行が、本作でのメインストーリーです。 前巻では戦争や「傀儡王」オル=ゴールの暗躍などもあり、シリアスな雰囲気でしたが、今回は修行編ということもあり、それほど暗くありません。前巻での暗さが少し苦手と思った方も、ぜひ安心して手に取ってみてください。
ステラ達の修行に際して、世界最強の剣士で最悪の犯罪者と名高いエーデルワイスという女性が登場します。七星剣武祭でもすでに登場済のキャラクターですが、ステラは彼女を乗り越え、さらなる力を身に付けようと決意するのです。
そんなエーデルワイスの思いがけない一面が読めるのも、本作の見どころの1つ。特に、彼女が剣を持つようになったきっかけを語るシーンでは、その理由に思わず笑ってしまう方も多いでしょう。ステラや一輝の成長はもちろん、エーデルワイスの思いがけない一面にも注目して読んでみてください。
いよいよクレーデルラント新政府との決戦の時。修行の末にレベルアップを果たしたステラは、星剣王の一輝や、夜叉姫・西京寧音、黒騎士・アイリスなど、心強い仲間とともにそれぞれの想いを抱きながら、いざ戦いへ赴くことに……!
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2017-10-12
物語は、いよいよクレーデルラント新政府との決戦が翌日と控えたところから始まります。決戦編ということで、全編を通してバトルに継ぐバトルで、ステラやオル=ゴール、そして一輝によるバトルを多いに楽しむことができます。
戦い方としてば国の代表戦、ヴァーミリオンとクレーデルラントのバトルロワイヤルなのですが、それぞれ1対1への戦いがくり広げられていくことになります。
一輝やステラは相手を徹底的にねじ伏せる活躍を見せ、他の仲間達もそれぞれ苦戦する場面がありつつも、結果としては勝ちを得ています。特に一輝は多少のハンデを抱えていたにも関わらず圧倒的な力で相手をねじ伏せました。もちろん修行を重ねたステラも完勝。そのぶんハラハラドキドキな戦闘というわけではないですが、きっとスカッとした気分になれるでしょう。
また、戦いの合間にそれぞれのキャラクターの想いや過去などが差し込まれる形で描かれています。バトルの合間ということでテンポも速く、最初から最後まで一気に読み進めることができるでしょう。
クレーデルラント編はまだ続いていますが、そろそろクライマックスへと近付いているようです。ぜひ次巻への期待を膨らませながら、本巻を手に取ってみてください。
ヴァーミリオンVSクレーデルラントの代表戦が描かれる14巻。その中の1つ、「夜叉姫」西京寧音(さいきょうねね)と「砂漠の死神」ナジームの戦いは熾烈をきわめていました。
そんな激しい戦いの中、寧音は史上最大のライバルであり、今は破軍学園の理事長・神宮寺黒乃とのかつての戦いを思い出していて……。
- 著者
- 海空 りく
- 出版日
- 2018-04-12
前巻に引き続き代表戦がくり広げられる中、本巻では西京寧音の戦いにスポットが当てられています。対戦相手は「砂漠の死神」ナジーム。その力量は、周りはもちろん寧音も認めるほどのものではありましたが、だからといって彼女も負けていません。しかしそれはナジームも同じ。寧々の実力を認めたうえで戦いを挑んでいたのです。
しかし、注目すべきはこの2人の戦い自体ではありません。もちろんその展開も面白いのですが、戦いを通して描かれる寧音の半生がとても面白いのです。その中には、かつて戦った神宮寺黒乃(旧姓・滝沢)の存在がとても重い割合を占めています。
寧音の黒乃に対する想いは読んでいてとても引きこまれるものがあるので、ナジームの戦いよりもそちらのほうが印象に残るという方も多いのではないでしょうか。
もちろん描かれているのは彼女達の戦いだけではなく、ステラ達の戦いも気になる局面に差し掛かっています。寧音にスポットが当たっている分、やや影の薄い一輝ですが、彼の活躍を次巻に期待しつつ、ぜひ15巻を待つ間にここまでの巻を読んでみてください。
- 著者
- 海空りく(GA文庫/SBクリエイティブ刊)
- 出版日
- 2014-12-12
いかがでしたか?ライトノベルのシリーズの中には、もともとシリーズで想定していなかったであろう作品もありますが、本作はあらかじめシリーズを想定していたらしい展開なので、文章にムダがなくとても読みやすいのも特徴です。長いシリーズだからこそ厳選して読み始めたい方は、ぜひ本作を一度手に取ってみてください。