紫式部の本当の素顔がわかる事実5つ!源氏物語の作者について知るおすすめ本

更新:2021.11.8

日本最古の長編小説と言われる『源氏物語』の作者であり女房歌仙の1人でもある天才、紫式部。自分の能力をひけらかすことなく生きた彼女には、共感できるところがたくさんあります。今回はそんな彼女を知るための本をご紹介いたします。

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寡黙な天才歌人、紫式部とは

紫式部は平安時代半ばに登場した女流作家であり、歌人です。『源氏物語』の作者であり藤原彰子の女房でもありました。

彼女は学者の藤原為時の娘で3人兄弟。当時の女性は漢文を読む必要はありませんでしたが、幼いころからすでに漢文を読むことができ、親の血筋を引いた利発な少女でした。その後父親の転勤で越前国に同行し、約2年間滞在します。

藤原宣孝と結婚をしますが一女をもうけた後、宣孝とは死別。『源氏物語』の執筆はこの頃からスタートし、その内容に感銘を受けた藤原道長により、中宮であった藤原彰子の女房として仕えるようになりました。『源氏物語』の完結はさらにその後と考えられています。

性格はいたって内向的で、宮中でうまくやるためには自分の才能をひた隠すような謙虚な人でした。中宮彰子の家庭教師をするときも、「自分が教えたことは内緒にしていてください」というほどの徹底ぶりだったのです。

紫式部の名前は当時としては特殊で、本来の女房名は藤式部でした。『源氏物語』の登場人物「紫の上」から取られた呼び名と言われています。1012年頃まで仕え、その後の消息はわかっていません。

紫式部の意外な事実5つ

1:清少納言が嫌いだった?

紫式部と清少納言は、それぞれ政治的ライバルの妃に仕えていた、ある意味表と裏のような存在でした。清少納言は自分の才能を駆使しゴージャスな宮中文化を展開しましたが、一方の紫式部はおとなしくしているタイプです。そんな彼女は『紫式部日記』の中で、「清少納言は漢字なんか書き散らしているけれど、大したことはない」と辛辣に記しています。

2:漢字が読めないふりをしていた

当時の女性は漢文を読まないという風潮でしたが、紫式部は幼少の頃からお兄さんの勉強をかたわらで聞いただけで漢文をマスターしたような才女で、漢文をマスターしていました。しかし「目立ってもいいことない」と突出することを極端に怖れる性格の彼女は、「一」すら読めないというふりをしたのです。屏風に書いてあることも読めない、とその才を隠すことに関しては徹底していました。

しかしそれはどう考えてもバレていたでしょう。というのも源氏物語のあるセクションは昔の中国の漢文で書かれた話をモチーフにしており、漢文が読めなくては書けないような内容だからです。愛読者だった一条天皇をはじめ、宮中の人もわかっていたと思われます。中宮彰子にも漢文を教えていてその才能は高く評価されていました。

3:年の差婚をしていた

紫式部は藤原宣孝と結婚しますが、その年の差は相当離れていたようです。2人ともいつ生まれたのかはっきりしていませんが、彼女の少女時代に宣孝はすでに蔵人として働いていましたので、20才近い歳の差があったと思われます。

4:ダンナを清少納言にけなされる

清少納言と紫式部はおそらく面識はありません。しかし清少納言は、彼女の夫の藤原宣孝とは会ったことがあるようで、『枕草子』において「御嶽詣に行くのに派手な格好で来ていた」とチクリと記していました。

5:娘も彰子の女房になる

藤原宣孝と紫式部の子、大弐三位は面白い経歴をたどる人で、母親が退職した後に彰子の女房となります。このころ非常にモテていたようで、様々な貴族と付き合っていたようです。恋に引っ込み思案な母親とは逆のタイプでした。母親同様、女房三十六歌仙のひとりであり、彼女とは違うタイプの歌を詠んでいます。

 

紫式部は何を考えていたのか

清少納言とは境遇が似ているものの、性格は全く違い陰気な紫式部は、なぜ『源氏物語』を書いたのでしょうか。彼女の暗い湿った部分に触れてみようというのが本作のコンセプトです。『源氏物語』を中心にして、彼女の欲望を紐解いていきます。

章立ては「連れ去られたい」「ブスを笑いたい」「嫉妬したい」「頭がいいと思う思われたい」など「◯◯◯たい」で統一されており、彼女が何を望んでいたのかが明らかにされます。

著者
酒井 順子
出版日
2014-04-18

口数が少なく大人しいタイプの紫式部が何を考えていたのか、これをつまびらかにした本書は平安時代も現代も人が考えることは大して変わらないことを示唆しています。

現代にも通ずる彼女の欲望が、ボロ家萌え・影で田舎者を笑う・迫ってくる素敵な男性など、源氏という当代きってのプレイボーイに仮託されて表現される様は、痛快でなるほどと納得してしまうこと請け合いです。

巻末には登場人物の相関図やあらすじなどの付録もあり『源氏物語』に興味がある人はもちろん、解説書として利用するのにも最適な一冊となっています。

政争に常にまとわりつかれた生涯

まさに藤原氏がやりたい放題だった時代に、漢学者を父に持ち類まれなる才能を授かった紫式部はなぜ『源氏物語』を書いたのか。彼女の生涯を描いた一大長編小説です。

文庫本で約1000ページあるため読む前に圧倒されてしまうかもれませんが、読み始めると会話の口調は軽妙で分かりやすく、すらすらと読み進めることができます。また複雑な人物相関図も要所にはさまれているので、誰が誰なのかがわからなくなることもないよう配慮されています。

物語のメインストーリーは、藤原一族が牛耳る世の中での、女性の不条理な役割に違和感を持つ彼女の成長ですので、宣孝との結婚があまり楽しいものとは描かれていません。あくまでも理知的な紫式部像が展開されています。

著者
杉本 苑子
出版日

非常に重厚な内容ですが、史実に基づいて正確に叙述されており、歴史ものとしてもひとりの女性の物語としても楽しめます。ところどころに史実とは違う描写も入れこまれ、古典ファンにはたまらない展開が用意されています。

花山天皇の出家を画策され受領階級である自分の家も没落するというやるせない展開や、気が進まない結婚など、つらい時期を経て文学に真の愛を見出そうとする彼女の心中がしみる作品です。

本作では、紫式部は目立つことを嫌い、社会に違和感を持っている人物として描かれています。彼女が、この時代の権力者の横暴さに翻弄される女性たちの気持ちを代弁しているのか、あるいは唯一その不条理に気づいたのか、社会に違和感を持つ人にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

地味で真面目な紫式部がマンガになったら

小迎裕美子による『紫式部日記』のマンガ化作品です。ここでの紫式部の性格は、史実どおり物事に敏感で常にネガティブ、人の目が気になってしかたがない、非社交的で恋愛には及び腰という非常に地味な人物として描かれています。

冒頭では、夫に先立たれ、寂しく『源氏物語』を書いていたらそれが評判になり藤原道長に宮廷へ連れて行かれる顛末が描かれているのですが、抵抗できないが絶対にやりたくないという心情を吐露できない彼女の姿からは悲しさがあふれています。

著者
["小迎 裕美子", "紫式部"]
出版日
2015-03-27

本書は小迎の『本日もいとをかし!!枕草子』の続編とも言えるもので、清少納言とは対象的にあまり派手ではない性格をしていた紫式部が主人公です。歴史的な事項が満載で、古典の予備知識がない人が読んでも楽しめる内容となっています。

地味な人物をここまで面白いマンガにできるのは筆者の画力と筆力のたまものですが、特に見どころなのは、やはり彼女のたどった人生の過酷さです。それが『源氏物語』に通底する「あはれ」に繋がっているのだということを認識させてくれます。

この作品を取っかかりにして『源氏物語』を読破することも可能といえるほど解説が丁寧なので、紫式部がどういう人なのかを知りたい人には、まずは本書をおすすめします。

本人が語る『源氏物語』執筆の理由

紫式部を中心とした出会いと別れを本人自らの言葉で語る回想録、という体裁の作品です。彼女はひとりの人間として何を考えていたのか、ということが一人称の独白で語られています。そのあくまで静かな語り口に、思わず冒頭から引き込まれてしまうのでしょう。

全14章からなっており、少女時代から恋、死別、『源氏物語』の創作、出仕、女房とは何か、政敵の死、そして崩御までが自身の口から語られる小説の体裁を取った、従来の研究の再構成とも言える実験的な著作です。

著者
山本 淳子
出版日
2011-10-21

歌には現代語訳が付いており、話は分かりやすく展開されています。一般的に彼女の歌は無常観があり、あっさりしているような印象を持たれていますが、その背景にある彼女の思いを汲み取ると、ここまで歌がいきいきとしてくるのかと驚かされる内容です。『源氏物語』の光源氏をはじめとする登場人物を自分と同じ目に合わせる、というくだりなどは彼女の口から言及されるとはっとする生々しさをおぼえます。

 

女房になりたかったわけではない彼女の中宮彰子に対する気持ちは、清少納言の熱狂的な定子に対する心理とはまた別の、静かだけれど熱いものだったのだと確認でき、単なる研究本の枠を超えた読み応えのある作品となっています。

紫式部とその周辺の楽しい仲間たち

紫式部が大企業のOLだったら……。大企業内裏商事、一条社長と彰子副社長のもと、OLや社員が奮闘する話です。朝廷の構造を企業に落とし込むとここまで分かりやすくなるのか、と目からうろこが落ちますよ。

紫式部は狂言回しで、小倉百人一首に登場するひと癖もふた癖もある連中が、様々なエピソードとともに登場する構成となっています。まずマンガがあり実際の史実が解説されるという親切な構成です。

清少納言や在原業平、和泉式部や赤染衛門を筆頭に次々と異様にキャラが立った人物が登場するなか、彼女をトリックスターにすえることで、他の登場人物がさらなる変人に見えるところがこの作品の肝と言えましょう。

著者
井上 ミノル
出版日
2013-04-23

平安時代を現代に置き換える筆者の手腕は見事で、「小倉百人一首」をヒット曲をあつめたオムニバスアルバムと解釈したのはさすがです。「牛車の車窓から」「長安ウルルン滞在記」「行列のできる律令法律相談所」などのテレビ番組のパロディは抱腹絶倒ものですが、圧巻は「特命係長 紀貫之」で、普段は窓際オネエ係長の紀貫之がギャル語を浸透させる……という内容になっています。

本書はこのようなパロディマンガの後に史実を詳しく解説し、人物紹介も行ない、さらにその登場人物が詠んだ歌を収録、現代語訳も添えるという徹底ぶりで、小倉百人一首を理解する力強い手助けになる構成です。全首収録されているわけではありませんが、巻末にはすべて掲載されているので解説されていないものも自分なりに楽しむことができます。

かなりのドタバタぶりを見せる内裏商事の社員たちですが、その歌に秘められた思いや人間模様を考えると、人間はいつの時代も同じだということがわかります。
 

 

いかがでしたでしょうか。紫式部という、才能に溢れてはいたものの生きることに不器用な愛すべき人物が分かる作品をご紹介しました。ぜひ彼女の作品を堪能してみてください。

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