深崎暮人(みさきくれひと)がイラストを手掛けるライトノベルの魅力を、彼のイラストの作風とともにご紹介します。
深崎暮人は北海道出身のイラストレーターです。ゲーム系CGの専門学校に通ったのち、パチンコメーカーや建設会社に勤め、その後専門学校の同級生と同人誌の発行を経て、イラストレーターとして活動するようになりました。ライトノベルの挿絵のほか、キャラクター原案やPCゲームの原画の担当など、幅広く活躍しています。
画集も出版されており、エロかわいい画風が人気です。
オタクな主人公、安芸倫也(あきともや)は、ある日桜舞う坂道で出会った美少女からインスピレーションを受け、彼女をヒロインにした同人ゲームを制作しようと思い立ちます。
その美少女、加藤恵は倫也のクラスメイトだったのですが、なんと倫也は彼女の名前を知らず……?
実は恵は「ステルス性が高い」と言わしめるほど存在感がなく、特徴もない、1歩間違えればモブになってしまうような少女だったのです。彼女をメインヒロインにした倫也のゲームは完成するのでしょうか。
- 著者
- 丸戸史明
- 出版日
- 2012-07-20
ライトノベルでは、オタクで引きこもりの消極的な主人公というのが主流ですが、本作の主人公、倫也は違います。彼はコミュ力の高いオタク。誰とでも積極的に交流することで、自分のしたいことを実現させる熱意と行動力を持っています。
その行動力のまま、ゲーム制作のために仲間を集めてサークルを作るのですが、そのメンバーがまた豪華なのです。
学校1のハーフ美少女、澤村・スペンサー・英梨々(えりり)。英国外交官の父を持つ正真正銘のお嬢様ですが、彼女の父はオタクで母も腐女子という、ある意味純血のオタク一家でもあります。その影響か、英梨々の正体は超人気サークルで18禁同人誌を描いているイラストレーターという衝撃的なものでした。
もうひとりは、霞ヶ丘詩羽(かすみがおかうたは)。学年トップの座を守り続けるという秀才な彼女の裏の顔は、なんと大人気ライトノベル作家でした。
毒舌が特徴の黒髪美少女・詩羽と、金髪美少女・英梨々、そして存在感は薄いけど「よく見たらかわいい」恵、とタイプの違う美少女がたくさん出てくる本作のイラストは、どの子も違う魅力が溢れていて素敵です。
制服を着た美少女という表の顔と、周りには知られていない裏の顔とを見比べることができますよ。
とある町で拳銃を手にした6人。彼らのうち誰かが、本物の拳銃ではなくモデルガンを持っている、という冒頭から物語は始まります。
殺し屋の黒田雪路、大学6年生の岩谷カナ、高校生3年生の首藤祐貴、陶芸家の緑川円子、小学6年生の時本美鈴、「閃かない探偵」花咲太郎……この6人が拳銃をめぐって織りなすストーリーとは?
- 著者
- 入間 人間
- 出版日
- 2012-08-10
肉感的というよりは、むしろシリアスチックに描かれたイラストが特徴的。深崎暮人の繊細な筆致は健在で、空気感や光のさす方向が伝わってくるようなイラストです。
この作品は、登場する6人それぞれの視点に応じて章を変えながら、物語が進んでいきます。ひとりひとりの行動が絶妙に関係してくる群像劇が好きな人におすすめです。
探偵の花咲太郎は、入間人間の「探偵・花咲太郎は閃かない」シリーズでおなじみのキャラクターです。入間の作品はクロスオーバーが多いので、ファンならよりいっそう楽しめますよ。
「私はおまえを選んだ、船長だ! 契りを交わしたたったひとりのおまえの魂を見誤ったりするものか!」(『アリス×アカデミィ -彼女のついたウソ-』より引用)
ある日主人公の歩吹にそう言い放った少女は、歩吹が通う学園の理事長の娘、西園寺ありすでした。真っ白ないでたちで、しかも手には光を放つ剣を持っています。
とんだ電波少女かと思いますが、歩吹にはありすを疑えないある事情がありました。というのも歩吹は、人のついた嘘の数が見えてしまう能力を持っていたのです。彼女が嘘をついていないことを見抜いた歩吹と、自称海賊少女のありすのボーイミーツガール・ストーリーです。
- 著者
- 関 涼子
- 出版日
- 2012-04-16
実はこのありす、歩吹が知る「西園寺ありす」ではなく、本当に宇宙海賊船を操る少女アリスでした。
歩吹が通う学園がある世界と、ファンタジックな海賊船のある世界は平行世界で存在し、西園寺ありすと海賊少女のアリスが世界を入れ替わってしまったというのが物語の軸になっています。
アリスは元の世界で宇宙海賊のキャプテンをしていた、まっすぐな少女です。なんと今までついた嘘の数はゼロ。ファンタジーな世界観の彼女が、現実的な学園生活に突然投げ出されて四苦八苦するところがみどころです。彼女は無事に元の世界へ帰ることができるのでしょうか?
ちなみに、この「アリス×アカデミィ」の世界から消えて海賊の世界へ行ってしまった西園寺ありすのお話は、本書と同時発売された「ありす×ユニバース」で語られます。本書を読んだ方にはそちらもおすすめです。
イラストの見どころはなんといってもアリス。その肉感的な描写は、手を伸ばせば触れられそうな感じさえします。ファンタジックな服装と丈の短い制服という2つのコスチュームもかわいいですよ。
舞台は、様々な分野ですぐれた功績を遺した生徒や教員に「十哲」という称号が与えられ、その十哲の中でも特にすごい3人が「三奇人」と呼ばれる脚伽坂学園。「十哲」のひとり山崎章夫のモットーは、「町内の平和を守る!」ということで、その言葉のとおり日々学園の平和を守っています。
開始数ページで様々なタイプの変人が出てきますし、十哲の内ひとつの枠を、「いるのかどうかわからない伝説の誰か」の名前が占めているというカオスさです。
章夫の幼馴染のアキラは、章夫の運命を変えるために「三奇人」と奔走します。
- 著者
- 森田 季節
- 出版日
教員も生徒も変人ばかりで、特殊な常識がまかり通る脚伽坂学園ですが、その中で起きる事件も一風変わったものばかりです。突然美女と化した同級生や密室殺人など……いろいろな謎に首を突っ込み、そして「死ぬ」章夫。アキラは彼の運命を変えようと奔走することになります。
すべての点が線でつながれ、最終局面に集約されていくさまが気持ちのいいストーリーです。「かなりヘン」な人々と、脚伽坂学園の校内模様は先が読めない分、ラストの着地が心地いいです。
合間に入る女の子たちのイラストは、漫画のようなはっきりとした線で描かれ、お菓子を口に押し込んだり、笑顔を見せたりする彼女たちのしぐさはどれもかわいいものばかり。かわいいだけじゃないのは文章を読めば分かるのですが、本文でヘンなぶん、イラストできゅんとしてします一冊です。
いかがでしょうか。女の子のイラストがかわいい深崎暮人。彼が手掛ける挿画は風を感じるような描写が美しいものばかりです。見つけたらぜひ、手に取ってみてくださいね。