8月9日が「ムーミンの日」というのをご存知でしょうか。この日は作者であるトーベ・ヤンソンの誕生日ということで、12年前から「ムーミンの日」として様々なイベントなどが企画されるようになったそうです。彼女はムーミンの他にも挿絵の仕事や小説も残しています。彼女の様々な仕事に親しめる4冊をご紹介します。
言わずと知れた代表作、ムーミン童話から『たのしいムーミン一家』をご紹介します。童話全集の第2巻にあたるこの作品は、日本では昭和40年に単行本として発行され、90年代に放送されたアニメのタイトルにもなりました。
冬眠から目覚めたある日、ムーミンは山の上で不思議な帽子を見つけます。拾って帰ったことで、色々な騒動がおこるんですが、どんなハプニングも面白がって受け入れちゃうのが一家のすごいところ。ニョロニョロだらけの島で宝探しをしたり、家の中がジャングルになったと思ったら夢中でターザンごっこに勤しみ、行方不明になったママのバッグが見つかったら盛大にパーティーをして楽しみます。
ムーミン童話全集はハードカバーと文庫で発行されていますが、『たのしいムーミン一家』だけは最初の単行本の復刻版が昨年夏に発行されましたので、そちらもおすすめです。
- 著者
- トーベ・ヤンソン
- 出版日
- 2015-07-30
トーベ・ヤンソン生誕100周年にあたる2014年に発行された『ムーミンやしきはひみつのにおい』。この作品はトーベ・ヤンソンが最後に手掛けた絵本とされています。この絵本がユニークなのは、立体模型とキャラクター人形を撮影して製作した写真による絵本だということです。
ある日トーベ・ヤンソンのもとに、この模型が届けられました。製作者はムーミンをこよなく愛する、ペンッティ医師。のちにトーベやトゥーティッキとともに手を加えながら、ほか何人かの「ムーミン友だち」の助けも得、長い時間をかけて模型のムーミン屋敷は完成したのだそうです。
ストーリーは、どちらかというとムーミン屋敷の模型や人形たちの為に作られた印象ですが、それだけに、模型はどれもこれも実に細かいところまで愛らしく作り込まれています。キャラクターたちもメインどころが総出演と、豪華な顔ぶれ。イラストとは一味違ったムーミンの世界を楽しめる1冊です。
- 著者
- トーベ・ヤンソン
- 出版日
- 2014-10-22
ルイス・キャロルによる『不思議の国のアリス』の挿絵を、トーベ・ヤンソンが手掛けていたのを知った時は、驚きとともに日本でそれが販売されていることを嬉しくも思いました。大半の挿絵はモノクロですが、カラーのものも楽しめます。印象的なのは、トーベ・ヤンソンの持ち味によって一般的なイメージをすっかり塗り替えられてしまった帽子屋です。まるで年老いたスナフキンみたいな風貌をしているのです。村山由佳さんの愉快な翻訳によってさらに上塗りされて、コテコテの関西弁を操る帽子屋になってしまいました(笑)
軽快な語りをベースとした翻訳はとても読みやすく、関西弁以外にも色々な方言が入り混じるというカオスな演出が、ヘンテコリンスパイスとしてバッチリ効いてます。ムーミン作品で方言に訳されたセリフがちょこちょこ出てくる影響?かもしれませんが、ユニークなアリスの世界が楽しめる1冊です。
- 著者
- ルイス キャロル
- 出版日
- 2006-02-28
小説でも独特の個性を発揮した、トーベ・ヤンソン。その中から今回は『誠実な詐欺師』をご紹介します。根拠は……目下海外ドラマの『ホワイトカラー』にはまっていて、タイトルが気になったからです(すみません)。ここにはドラマのニールのような、スマートな詐欺師は出てきません。その代わり、両親がおらず、10才年下のおっとりとした弟を抱えた、明日をも知れない生活を余儀なくされている25才の女性が登場します。彼女はある目的のために、裕福でお金に無頓着でお人好しの、一人暮らしをする画家の老女に近づき、“誠実な”詐欺をはたらくのです。
誠実さの本質とは? 二人の正反対の考え方が激しくぶつかって互いに影響を及ぼします。その様子は決してムーミン谷のようにはいかず、エゴとエゴのぶつかり合いなのですが、どちらにせよ不器用な生きざまに変わりはない。結局は二人とも、何かに誠実であろうと懸命に生きているように思えるのです。
- 著者
- ["トーベ・ヤンソン", "冨原眞弓"]
- 出版日
様々なフィールドで活躍したトーベ・ヤンソン。暑い夏のひと時、北欧を旅するような気持ちで彼女の作品に親しんでみてはいかがでしょうか。