江上剛のおすすめ本5選!ベストセラー『失格社員』だけじゃない!

更新:2017.8.30

会社の中にいる困った人たちを痛烈に描いた『失格社員』の作者、江上剛は、元銀行員という経験を活かした小説を数多く手がけています。今回は銀行を題材にした物語をはじめ、会社や組織そして社会の暗部をテーマにした作品など5点を紹介したいと思います。

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元銀行員ならではの視点で描く江上剛

早稲田大学を卒業後、現在のみずほ銀行に入行した江上剛。1997年には広報部長として、第一勧業銀行総会屋利益供与事件の収拾にもあたりました。

2002年に『非情銀行』を執筆してデビュー。銀行も退職して執筆活動を始めます。彼の作品は元銀行マンの視点を活かした小説が多く、経験者ならではのリアルな内容は読者を物語の中へグイグイ引きこんでいきます。

また銀行や金融関係をベースにした内容にとどまらず、幅広い分野にわたる執筆活動をしており、こちらもあわせて読んでいただくと、彼の広い視野を感じることができるのではないでしょうか。

今回は江上剛の得意とする銀行に関する小説をはじめ、経済や社会を取り入れた5作品を紹介したいと思います。

気づかないうちに重病に陥っているかも?

元銀行マンの江上剛らしい切り口で、会社という組織を客観的に見た『会社という病』。この本では、多くの人が会社で働いていると逃れられない「出世」「会議」などを29つの病として紹介し、その病に対する「処方箋」が江上流の解釈で書かれています。

会社に勤めていると、気が付かないうちに「会社」という病に罹っているそうです。気が付いた時には重症になっていて、仕事をしながら病とも戦わなければなりません。

しかし、いつまでも自覚症状がでないのが、社長なのだとか。

著者
江上 剛
出版日
2015-12-18

本書を読んでみると銀行マンとして活躍していた頃の江上が、組織の中で歯車のように働きながらも、その仕組みに疑問を感じていた姿が見て取れます。

生活するため働く、という選択肢を多くの人が選ぶと思いますが、気が付かないうちに病に侵されているかも。

ひとつの組織を改革することは難しいと思いますが、明日からの自分の役割や立ち位置、部下のいる人であれば部下への対応などについて考えるきっかけをくれる内容になっています。まずは自分の周りでできる小さな改革から始めてみませんか?

江上剛が教えてくれる、社会の中で生きるヒント

合併後のトラブルが絶えない銀行で支店長に任命された貞務定男は、定年間近の55歳です。就任早々、彼はことなかれ主義の副支店長や、若手女子社員に振り回されることになります。

支店長として仕事をはじめて間もなく、定男が勤務する支店にとっての最大の不良債権先から見つかった不正融資。これをなんとか解決しようと元総会屋、元マル暴の力を借りて挑みますが、事態はどんどん悪化し、定男にも身の危険が迫ります。

果たして、黒幕は誰なのでしょうか?

著者
江上 剛
出版日
2015-04-04

窓際族のような存在の定男でしたが、支店長に抜擢され、孫子の兵法を頼りに銀行の立て直しを図ります。物語にも孫子や孔子の論語が盛り込まれていて、彼が銀行のトラブルに立ち向かっていく姿に演出効果も与えています。

銀行を舞台にした本書ですが、同じような内情の会社も世の中にはたくさんあるかもしれません。フィクション小説ですが、元銀行マンの江上が手がけているだけあり、実際に社会で戦う人たちの参考になりそうな内容もたくさんあります。

テンポも良くて一気に読めるおすすめの小説です。

江上剛が暴く、社会の暗部

スーパーの再建を担うメインバンクでありながら、他の銀行よりも少ない引当金しかあてていない大東五輪銀行。ある日、金融庁検査官・松島哲夫が在籍するチームに、大東五輪銀行の派閥争いをめぐる怪文書が届きます。そして哲夫はその怪文書から、大東五輪銀行の実権を握る倉敷専務の側近として、実の弟が働いたことを知るのです。

銀行検査マニュアルに則って、どの銀行に対しても平等に検査を進める哲夫。その一方で、銀行側の膨大な不良債権による銀行の崩壊を避けるため、倉敷専務の元で画策する弟の姿を知り、葛藤する姿が描かれています。

著者
江上 剛
出版日
2008-11-14

銀行が嫌いで金融庁に入った松島ですが、銀行を潰すのではなく「健全化していこう」という気持ちで仕事をしています。また逆の立場にいる倉敷専務は、自分が権限を握る銀行を守ろうと経済産業省などとのパイプから金融庁に揺さぶりをかけます。しかし、強引な経営を進めてきたツケは大きく……。

本作では、実名こそ出ていないものの、読んでみると過去にあった銀行の不祥事をベースにしているのではないかという想像ができます。また銀行に勤めていた江上ならではの経験と知識により、より臨場感を感じられる仕上がりです。

金融庁の検査チームがどんな思いで銀行と対決をしているのかも見どころの本作。社会の仕組みや世の中の流れの一端も見えてくるような長編小説です。

孤立する子育てを社会に問いかける

本作は、障がいを持つ息子の将来を悲観した妻から心中を頼まれ、結果1人だけ生き残ってしまった男・押川を主人公とした物語です。裁判で極刑を望む男の弁護を頼まれた弁護士・長嶋は、接見を重ねるうちに男の中にある真実に迫りだします。

同情も多く寄せられる中、死刑を望む押川の身辺を調べ始める長嶋。そこで彼が気づいたのは、押川の息子と同じ障がいを持つ家族が、極刑を避ける嘆願書に賛同していないという事実でした。

これは一体、どういうことをあらわしているのでしょうか……?

著者
江上 剛
出版日
2015-03-13

幼少期に虐待をされて育った押川は、人を信じることができず職場でも孤立。子育てでも周りに頼ることができず、夫婦でなんとかしようとしていました。

物語は昭和時代がベースになっていますが、障がいのある、なしに関わらず、現代の子育てでも同じような状況が発生しているのではないでしょうか。

ノイローゼ気味だった妻に「殺して欲しい」と頼まれ、手を下した押川。しかし裁判では、彼の耳には亡くなった妻の声が聞こえ、目には踊る息子の姿が見えていました。

果たして押川が受けた裁判の結果とは?ぜひ手にとって確かめて見てください。

実直な社員が陥った社会のひずみ、ドラマ化もされた江上剛のヒット作

本作は、2009年にドラマ化もされた作品です。メガバンクを脅かす銀座の高級クラブに関わる大口の不良債権が、貸金業法改正の動きに伴い再浮上し、上司の指示により天野はその対応に当たります。
 

天野が高級クラブに足を運ぶと、彼は大学時代の親友であった地村と再会します。しかし地村は政界再編の中心である代議士、羽根田の秘書をしていました。天野と地村、それぞれの立場からお金に対する駆け引きが始まり、そして天野の身に悲劇が起こります。

著者
江上 剛
出版日
2009-10-15

不良債権のもみ消しをしようとする天野の周りでは、羽根田代議士だけでなく、貸付先のホステス、暴力団などとの関係も複雑に絡み合っています。

彼の上司は自分たちの身を守ることに精一杯で、不良債権の対応に当たった天野から出世のはしごを外し、見捨ててしまいます。仕事を失い、家庭も崩壊した天野。そんな彼が取った驚きの行動とは……!?

銀行に勤めていた江上の書いた作品だけあり、銀行システムの暗部にも迫った内容です。ぜひ、主人公が数々のトラブルとどう乗り越えていくのかを気にしながら読んでみてください。

江上剛が執筆した小説の中から特におすすめの5作品を紹介しましたが、気になる作品は見つかりましたか。元銀行員をいう経験をベースにした物語は、利アリティがあってとても面白く読めると思います。また社会の暗部をテーマにした作品もとても考えさせられる内容となっています。彼の執筆した作品は多岐に渡っていますので、まずは足掛かりにこちらの5作品を読んでみてください。

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