2018年1月よりアニメが放送予定の漫画『スロウスタート』。ゆるふわ系の女子たちが繰り広げる日常と、その裏に潜む小さな葛藤が描かれた作品です。本記事では、可愛いだけじゃない、漫画『スロウスタート』の魅力を紹介したいと思います。
本作は『まんがタイムきらら』にて連載されている、いわゆる「日常系」と称される4コマ漫画作品です。もちろんその魅力は絵からも分かるように、ゆるふわ・可愛いというところにあります。しかしそれ以上に、主人公・一之瀬花名(いちのせはな)が自身の負い目とどのように向かい合い、乗り越えて行くかというところが本作品の魅力です。
花名は病気が原因で高校入試を受験することができず、中学浪人をしてしまいました。それが花名にとって大変な負い目となり、高校入学後もそのことを引きずり、ことあるごとに思い出してしまいます。せっかく友人ができても、どこか居心地の悪い生活を送っていました。
しかし、たまてをはじめ、栄依子や冠といった優しい友人たちと過ごす中で、自分がみんなと本当の友達なのだということを実感し始めます。そして、中学浪人をしたという事実よりも、「本当の友達に本当の自分を知ってもらいたい」という気持ちが段々と湧いてきます。
そんな、ゆっくりだけど、一歩一歩着実に成長していく花名の姿は本作品一番の見どころです。
この記事ではそんな本作の魅力をキャラとストーリー全巻からご紹介!ネタバレも含みますので未読の方はご注意ください。
引っ込み思案で恥ずかしがり屋な主人公の花名が、高校の友人たちとの学校生活を通じて、少しずつ前向きになっていく物語です。
花名は高校入試の前日に病気にかかり、中学浪人をしてしまいます。塞ぎ込んでいた花名は環境を変えるために、従姉妹の管理するアパートへと引越し、もう一度受験生をやり直します。 そうして一年後、高校入試に合格するのですが、自分が中学浪人をしたことを引け目に感じ、周りに溶け込むことができません。
しかし、ふとしたきっかけで友達ができ、だんだんと人と関わることに慣れていきます。 個性的な友人に囲まれた日々を過ごしていくうちに、花名は次第に前向きになり、成長していくのでした。
- 著者
- 篤見 唯子
- 出版日
- 2014-08-27
一之瀬花名はちょっぴり泣き虫だけど、優しくて思いやりのある女の子です。ただ、あらすじでも述べたように、中学浪人したことを理由に、引っ込み思案な引きこもりとなってしまいます。
花名の魅力はなんと言っても、彼女自身が回を追うごとに着実に成長がしていく姿にあります。はじめの頃の彼女は、目立たないよう、周囲と遠慮がちに接していました。しかし、友人たちとの楽しい日々を過ごすうち、どんどん積極的になり、果てはお泊まり会を主催するほどにまで成長します。
そんな花名は、友人のたまてや栄依子、冠たちと過ごすことで「もっといろんな人たちと関わりを持ちたい」という気持ちを持ち始めました。そしていつかは、自分の秘密を仲の良い友人たちに明かしたいとまで思えるようになるのです。
引っ込み思案で、引きこもりだったはずの彼女の成長をよく表している発言があります。
「去年のわたしとはまるで違う毎日のような 甘すぎるくらいだけど それが今はこんなに嬉しい」
(『スロウスタート』4巻から引用)
作品の冒頭と比べて、格段に成長している花名。これからも、彼女の成長が見逃せません!
百地たまて(ももちたまて)は、大きなリボンで結んだツインテールが特徴的な女の子です。「たまて」という自分の名前の由来が気に入らないことから、みんなには「たまちゃん」と呼ばせるようにしています。また和食料理がとても得意なことから、花名たちに料理を振舞ってはみんなを喜ばせています。
たまてはギャルゲームが大好きな自称「隠れオタク」。彼女の思考は基本的にギャルゲームで埋め尽くされています。みんなから慕われている栄依子を「ハーレムヒロイン」と呼んだり、水着女子たちが集まるイベントを「イベントスチル」と銘打ったりするたまては、この物語に欠かせない盛り上げ役です。
そんなオタクで元気っ子なたまてには意外な一面があります。それは、とてもおばあちゃん想いなところです。祖母たちと共に暮らすたまは、家族の食費を管理していくなかで浮いたお金を自分のためではなく、祖母たちに美味しい料理を振舞うために使います。祖母好みの料理を作ってきたために、和食料理が得意なんですね。
それだけでなく、日常的におばあちゃんの話を出すところからも、いかにたまてがおばあちゃん想いであるかということが分かります。 そんな明るくもおばあちゃん想いなたまてに大注目です!
十倉栄依子(とくらえいこ)はヘアピンがチャームポイントの「女子力高い系女子」です。女子力だけでなく、クラスメイトとは入学4日目にして、全員と下の名前で呼び合うようになっているほど高いコミュニケーション能力の持ち主。それに加えて、勉強もきっちりできる真面目な一面も持ちあわせた、非の打ち所のない女子なのです。
しかし、そんな完璧女子である栄依子も、クールな女教師の榎並先生のこととなると、途端にしおらしくなってしまいます。栄依子の一番の魅力は、この榎並先生とのやりとりに見られる乙女な一面です。その一面が顕著に見られるのは、時折見せる榎並先生の大人の余裕に圧倒される場面にあります。
ある夜、街で酔った先生に出会った栄依子は、先生の家で介抱する事になりました。その夜、栄依子は一晩中先生につきっきりでいたためにお風呂に入ることができず、自分の匂いのことを気にします。しかし後日「別に、いいにおいだったぞ?」という先生のクールな反応に対して、栄依子は……
「なにこの 勝ち試合かと思ってたら 最終回で逆転くらったみたいな感じは」
(『スロウスタート』2巻から引用)
といって頰を赤らめるのでした。
大人の余裕に圧倒される栄依子は普段の飄々とした様子とは異なり、非常に可愛く、いじらしいです。 普段は完璧女子な栄依子が見せる乙女な一面を、ぜひチェックしてみて下さい!
千石冠(せんごくかむり)は、見た目はふわふわウェーブヘアーの「小動物系女子」ですが、自称は「大器晩成型」な女の子です。普段はおっとりした性格なのですが、意外なことに陸上部に勧誘されるほどの俊足の持ち主。また極度の人見知りで、幼馴染の栄依子がいないと何にも話すことができません。
冠に関して注目すべきポイントは、栄依子に対する信頼と愛情です。冠はもちろん花名やたまてたちともとても仲がいいのですが、栄依子にだけは自分の本当の姿を見せます。というのも、冠と栄依子は小学校が同じで、その頃から冠が栄依子に懐いていたからです。
そんな栄依子に対する冠の信頼や愛情が一番よく現れているのは、冠がこの作品の舞台である高校「星尾女子」を受験したところにあります。
ある日冠は、別の中学校に進学した栄依子の妹・光希を街で見かけ、栄依子と勘違いをしました。その時、光希が電話口で「星尾女子」と口にしたのを聞いて、自分も栄依子と同じ進路に進むことを心に決めたのです。
「あのね ずっとね …ずっと会いたかった また会えて嬉しかった ちゃんと会えて、」
(『スロウスタート』2巻から引用)
普段は自分の気持ちをあまり口にしない冠が、はじめて栄依子に対する気持ちを伝えたのがこのシーンです。ここから、いかに冠が栄依子を好きかが分かります。
とっても癒し系な冠。栄依子との絡みだけでなく、花名たちやその他クラスメイトからチヤホヤされる場面にも注目してみてください!
- 著者
- 篤見 唯子
- 出版日
- 2014-08-27
本作の始まりである1巻。読者としても本作を新鮮な気持ちで見ることができるので、本作最大の魅力である、優しいけれどどこかビターな雰囲気を最も楽しめる巻ではないでしょうか。
本作でところどころ出てくるのが花名の過去を思い出して暗くなったり、そのことを隠そうとする展開。
出身中学からわざわざ遠い高校に入学したことを聞かれたり、ふとした瞬間に1年空いたので体育の授業が体力的にきつい、と言ったり。
普通だったらこの絵柄や作風ですとこの流れがギャグっぽくなってもいいかもしれませんが、風邪をひいて浪人してしまって1年遅れ、という事情が事情なだけに、その展開も切ない気持ちにさせられます。
もちろんギャグもあり、キャラが優しいから中和されて構えずに読むことが出来るので、重い展開が苦手な方も安心して読めます。このバランス感覚がゆっくりと心に染みるように作品の世界観をつくり上げているのです。
1巻でぜひその世界観と出会ってみてください。
- 著者
- 篤見 唯子
- 出版日
- 2015-08-27
2巻ではいつも通りゆるい会話がありながらも、花名が少し成長したと思える内容でした。
本作の魅力である優しさをつくりあげている要因のひとつが、会話のゆるさにあります。2巻でも小学生たちの会話から恋愛シミュレーションゲームの話になってしまいます。
その話がどんどん転がっていく、しかも中身がないという様子がとてもリアルでゆるい。その後もこのような流れはよくあり、少し切ない展開を中和させてくれます。
しかし中和しながらも2巻ではまた大きな流れがありました。それは花名がついにある人物に自分が浪人したということを明かすのです。
それは同じアパートに住む大学浪人生の万年大会(はんねんひろえ)でした。彼女自身大学を2浪しており、花名と同じようにアクシンデントで遅いスタートをきることになってしまった人物なのです。
花名が涙ながらに今までの苦しさを吐き出す場面は泣けてきます。溜まっていた思いがどれほどのものだったかを読者に訴えかけてくるシーンです。
ゆる〜いギャグあり、涙の展開ありの2巻でした。
- 著者
- 篤見 唯子
- 出版日
- 2016-08-27
3巻で最も見所となったのは栄依子の言動ではないでしょうか。どんどん百合っぽいシーンが増えてきている『スロウスタート』ですが、3巻ではそのなかでも飛び抜けて百合っぽさが強い、あのふたりがますます盛り上がってきた感があります。
栄依子といえば、スロースターターの花名に比べてクイックスターターという印象の人物。その人柄ゆえにさまざまな女子を惚れさせてきた?人物でもあります。
しかしそんな彼女が唯一思い通りにならないのが花名の担任教師の榎並。どちらかというと彼女にちょっかいをかけられ、目をかけてもらって喜ぶ憧れの存在でした。
しかし3巻でのいくつかのエピソードを読むと、栄依子の思いが単純な憧れだけではないように思えてしまいます。
つい読んでいるこちらまでドキドキしてしまうようなふたりのやりとりはどこか色っぽくもあります。
そしてここで注目したいのが、栄依子が榎並との繋がりを感じたきっかけ、自分の秘密ともいえるものを花名に話したということ。栄依子は打ち明けたことでスッキリとした表情をし、花名だから話せてよかったと言います。
ここでいつも一緒に行動している冠ではなく、彼女に話したというのは、花名にとってもかなり大きな意味を持つでしょう。
花名は単純に頼る存在ではなく、頼られる存在にもなれたという象徴的なシーンでもあります。彼女が自分の弱さを打ち明け、本当の強さを手に入れる日も近いのではないでしょうか。
- 著者
- 篤見 唯子
- 出版日
- 2017-06-27
3巻でどんどん百合感が強まってきた栄依子と榎並先生ですが、4巻ではさらにそれが過激になっていきます。1ページ目から抱き合っているふたりの扉絵から始まり、下着姿でお腹を触り合いっこしてきゃっきゃしたり、熱を出した栄依子を一晩つきっきりで看病したりと、もうやばい。
しかも最大の見せ場はおまけ漫画でのあのやりとり……。かなりエッチです。
まぁそんなことがありましたが、本編も負けていない!なかなかの下ネタを飛ばします。
まず本作はアパートの管理人さんである志温さんのおっぱい芸がすごい。少しでも読んでいただいた方は分かると思いますが、志温さんはコマに乗せ、荷物に乗せ、さまざまな場面で自分のおっぱいをどこかに乗せて休憩しているのです。
それだけ大きかったら仕方ないよね、という立派なものなのでそれもうなずけてしまうのですが。
そのように可愛い絵柄で無差別におっぱいネタを突っ込んでくる本作ですが、4巻では下ネタも面白かった。
万年さんのまさかの下ポロリや、乳首の色の話など、可愛らしいキャラからつむがれる言動とは思えないものばかり。
しかも水着回が5話も続き、4巻すべてを夏休みに費やすという暴挙っぷり。色々な意味でアツいです。
いかがでしたか?周囲の助けを借りながらも、一歩一歩成長していく花名の姿からは、きっと勇気をもらえるはずです。今後も彼女たちの心温まる高校生活から目が離せない『スロウスタート』を、ぜひ手にとって見てください!5巻が待ちきれません!