岸田メルがイラストを描くおすすめラノベ5選!繊細で丁寧な作画が特徴

更新:2021.11.9

謎の多いライトノベル絵師の中でも異色と言えるイラストレーター・岸田メル。その作風は繊細で愛らしいものです。一方、メディアへの露出も多く、濃いキャラクターで世代を超えて人気を博しています。今回は岸田メルを代表する5作品をご紹介しましょう。

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繊細なイラストと愉快な人物像とのギャップが魅力的な岸田メル

岸田メルは1983年生まれのイラストレーター。とても繊細で愛らしい画風から女性と間違えられることも多くありますがとても個性的な男性イラストレーターです。

2005年に「パラケルススの娘」シリーズでプロデビューをする以前は、地元の劇団に所属して俳優活動を行っていました。劇団の解散を機にイラストレーターを専門職としていましたが、2017年からはNHKEテレの教育番組「コノマチ☆リサーチ」に漫画家のハジメとして出演。演出力、面白さをいかんなく発揮しています。

一方、イラストレーターとしてライトノベルを含む小説の挿絵だけでなく、実用書のカバーや雑誌へのイラスト提供など多岐に渡る活動も精力的に行っており、ゲームソフトやテレビアニメのキャラクターデザイン、メイドカフェの衣装デザインなども手掛ける才能の持ち主です。

神職姿が愛らしい!内気な神力少女の成長を描いた作品

酒井駒子が装画を担当し2008年に角川文庫から刊行された作品に、アニメ版のキャラクター原案を担当した岸田メルが挿絵をつけて読みやすくしたライトノベル版。

主人公は大変引っ込み思案で内気なため人付き合いがとても苦手な神社の娘、中学3年生の泉水子。高校進学に関して自身の身の上の窮屈さを感じた泉水子は、何となく伸ばしていたという三つ編みで腰まで届く長い髪の一部、前髪を少しだけ切り、自ら変わろうと誓います。すると少しずつ泉水子に異変が起こり……。

著者
荻原 規子
出版日
2013-01-31

熊野古道にある神社が舞台となるため、主人公、そしてその相手役となる「深行」は表紙をはじめ、挿絵でも神職姿で描かれています。その2人の姿はとても愛らしくもあり初々しくもあり、今後の2人の関係にワクワクして想像力を働かせてしまうことでしょう。岸田メルが欲望を存分に込めて描いたことがひしひしと伝わってくるでしょう。

物語の冒頭、両親の仕事の関係で母方の実家となる玉倉神社で祖父と暮らす泉水子はその不便さゆえ、友人たちとの隔たりや疎外感を感じながら生きています。高校進学を控え、自分で思い描こうとしていた将来と親が勝手に決めてしまっていた将来のギャップを突き付けられて葛藤する様は他人事でない方も多いでしょう。

泉水子は何とか自身を変えたいと思い、何となく伸ばしていたという三つ編みで腰まで届く長い髪を前髪だけちょこっとだけカット。その行動は泉水子の内気さをよく表しており、結果として少しずつ物事が動いていきますが、積極性を持つ方はイライラしてしまうかもしれません。この髪の毛のように泉水子と深行の関係も微笑ましくもある一方で「ハッキリして!」と言いたくなるような展開が繰り広げられられます。

自分の殻を打ち破りたい方、内気だと感じる方はとても共感できる作品ですから、ぜひ手に取って泉水子を体感してみて下さいね。

繁華街や高校で起こる様々な事件をニート探偵が解決する「NEET TEEN」ストーリー

「神様のメモ帳」シリーズは2007年に電撃文庫から著・杉井光、イラスト・岸田メルで刊行されたミステリーライトノベル。ドラマCD、漫画、テレビアニメ、Webラジオなど多くの媒体で楽しまれている人気作品です。

主人公はごく平凡な容姿を持つ16歳の男子高校生・藤島鳴海。鳴海は父親の仕事の都合でM高校に転校してきます。そこで出会ったのが園芸部員の篠崎彩夏。園芸部に入部した鳴海が新入部員歓迎会と称して連れていかれた店で出会ったのはとても不思議な人々で……。

著者
杉井 光
出版日
2007-01-06

本作品のあらすじにて「ニートティーンストーリー」と称されている通り、「ニート」を称する若者がたくさん出てきます。ただしこの物語のニートは世間一般がイメージする自宅に引きこもっている人々ではありません。皆、何かに特化していて個性的でとてもユニークなメンバーばかりです。

主人公・鳴海とその友人の彩夏は想像に難しくない普通の高校生です。渋谷のような繁華街を舞台に軍人、探偵、ヤクザなど現実ではほとんど身近に感じることの出来ない人々が脇を固める本作品において、主人公の設定の普通さがストーリーを入りやすく読みやすくしていると言えるでしょう。

岸田メルが描く挿絵は登場人物のキャラを引き立てながらも濃すぎることのない愛らしいものです。ライトノベルの挿絵では女の子のグラマラスなボディラインが強調されがちですが、本作の挿絵は女性でも読みやすく心地よいでしょう。強烈すぎるシーンもなく、男の子はイケメンに描かれていますので、ライトノベルファンの男性はもちろん、ミステリー好きの女性も手に取ってみて下さいね。

町娘と騎士の切ない恋愛ファンタジー

Web小説サイト「Libera」で大人気の恋愛ファンタジーをライトノベル化した作品。Web版と書籍では少しだけ違うとことがあります。

平凡な町娘・ユーナはある日、馬車に惹かれて魂のみの存在となってしまいます。真っ白な世界を漂うユーナはそこで出会った天使の願いで聖女シェリアスティーナの体に入って1年間暮らすことに。そもそもの身分の違いから生活に戸惑うユーナ。そしてシェリアスティーナの周りの人々はシェリアスティーナに冷たくて……。

著者
秋月 アスカ
出版日
2008-02-18

主人公・ユーナがシェリアスティーナの体内に居るのは1年間限定。その1年間をライトノベルでは4冊に渡って描いています。本作品はWeb小説が原作となりますので、ネット上でも物語を堪能することが可能です。4冊もあるなら……とWeb小説で読みたくなりますが、ライトノベルではファンタジー小説らしい幻想的で美しい岸田メルの画がストーリーと共に堪能できるでしょう。

ラブストーリーの王道とも言える2人に迫る期限、障害のある恋愛。そして、読み手の期待通りに優しくて芯のあるヒロインと地位があり、男気溢れるイケメンのヒーロー。とても読みやすく入り込みやすい設定で安心して楽しく読むことの出来るストーリーです。ただし主人公・ユーナは本来、亡くなっていると考えるとあまりに切ない気持ちにもさせられますが……。

恋愛、そして人々の心情を丁寧に描いた感情移入しやすい1冊です。

岸田メルのゴスロリ系イラストが楽しめる!有名偉人系ファンタジー

作家・杉井光、イラスト・岸田メルのコンビが贈る19世紀のヨーロッパを舞台としたファンタジー小説。

主人公は音楽家の両親を持つ日本の高校2年生ユキ。夏休みのある日、ユキが図書館でゲーテの本を読んでいるとメフィストフェレスと名乗る女悪魔が現れます。「青春時代の若々しい心身に戻ってこの世のすべてを愉しみつくしたい」というゲーテの願いの元、ユキはメフィストフェレスによってゲーテの新しい身体として200年前のウィーンで暮らすことに。しかし連れていかれた世界には、19世紀のはずなのに電話も列車も写真もあって……。

著者
杉井 光
出版日
2012-05-10

この作品には誰しも名前を聞いたことのあるような世界的偉人がたくさん登場します。ゲーテ、ベートーヴェン、ナポレオン、ハイドン。しかしベートーヴェンが10代の女の子であったり、ハイドンが格闘家であったり、この作品に登場する偉人たちはそれぞれ現実の偉人たちとはかけ離れたキャラクターです。

実際は似ている別世界ですが、19世紀のヨーロッパが舞台となりますので各音楽家たちのゴスロリ風衣装が岸田メルのイラストで堪能できる作品となります。そして悪魔・メフィストフェレスの衣装はコウモリを連想させる黒くセクシーなものです。嫌味を感じない程度のエロティシズムですから、男性はもちろん女性でも安心して楽しめるでしょう。

「芸術にあまり興味がない」「音楽室に飾られている作曲家の名前がわからない」。そのような方にこそ読んで頂きたい1冊です。

19世紀ロンドンが舞台のマジェスティックファンタジー

文章力に定評のある作家・五代ゆうと絵師・岸田メルが描く19世紀のロンドンを舞台とした魔術師ファンタジー。

主人公の遼太郎は魔物退治を生業とする家系の跡継ぎとして生まれながらも能力は皆無。現当主である祖母によりロンドンに居る女魔術師・クリスティーナの元へと出されてしまいます。遼太郎はそこで修行という名目でクリスティーナの従者として働くこととなり……。

著者
五代 ゆう
出版日

作品のタイトルは『パラケルススの娘』。これは本作品のヒロインである女魔術師・クリスティーナが自称しているものです。「パラケルスス」とは16世紀の医学者兼錬金術師であり、病気やけがで苦しむ人々をあっという間に治癒させることが出来ると言われている伝説の物質「賢者の石」を精製したと言われています。

各登場人物の設定がしっかりしている為、錬金術や「パラケルスス」のように本作品のバックグラウンドにあるものを知らなくても楽しく読みやすい作品になっています。一方、ストーリーを引き立たせるかなり考え抜かれた魔術が使われている為、魔術などに興味がある方にはさらに楽しんでいただけるでしょう。

また、設定が19世紀のヨーロッパとなりますので、岸田メルの愛らしい画を衣装から楽しむことの出来る作品とも言えるでしょう。表紙から楽しめる過度にエロ過ぎないちょっと生意気そうなメイドさん(レギーネ)や宝塚のような見惚れる男装(クリスティーナ)の画が、物語冒頭からグンとストーリーへと引き込んでいきます。

魔術、古代ヨーロッパに目のない方にぜひ手に取っていただきたい1冊です。

岸田メルがイラストを手掛ける人気作品を5つご紹介しました。どの作品も繊細な描画で、儚げかつ愛らしい少女がたくさん登場します。セクシーながらも健康的でエロ過ぎないイラストは男女共に安心して楽しめるものばかりです。また、メディアで見る岸田メルと愛らしいイラストとのギャップは著書と共にぜひ堪能すべきものの1つでしょう。ぜひ、人物像も含めて気になる作品から手に取ってみて下さいね。

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