学生時代、国語の授業や日本史の授業に必ずといっていいほど登場する「徒然草」。ここでは、現代人にもきっと役立つ、「徒然草」に関する本を紹介していきます。
序段を含め244段から構成されていて、上巻と下巻に分かれています。現在の日本語の表記体系の元となる「和漢混淆文」と、仮名文字の両方で書かれているのが特徴です。
清少納言の「枕草子」、鴨長明の「方丈記」とともに、「日本三大随筆」として評価されています。
吉田兼好が気の向くまま思いつくままに、生き方や友人、恋愛、仏道修行、自然などについて、ユーモアや皮肉を交えながら綴っています。ちなみにタイトルにもなっている「徒然」とは、特にやるべき事がなく、手持ち無沙汰な様子を表し、「草」は植物でなく、ノートを表します。
「つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」(『徒然草』から引用)
この有名な序段の文は、「特にやるべき事もなく退屈だったので、1日中硯(すずり)に向かって、心に浮かんでくるいろいろな事を、ただ書いていると、妙に夢中になって気が変になりそうだ」という意味です。
この前書きから始まり、吉田兼好独自の視点で世の中のさまざまな事柄について書き綴られています。
本名は卜部兼好(うらべかねよし)。鎌倉時代末期から南北朝時代に生きた官人、歌人、随筆家です。
吉田神社の神職である兼顕の息子として生まれました。神祇官を輩出する神職の家柄。自身は堀川家の家司となり、その後六位蔵人に任命されます。
しかし、30歳前後に出家し、兼好法師(けんこうほうし)とも呼ばれるように。後宇多法皇の死がきっかけの出家と言われていましたが、現在も正確な理由はよくわかっていません。
出家後は仏道修行に励んだり、和歌を詠んだりしていたそうで、「徒然草」もこの頃に書かれとされています。二条為世に和歌を学び、その才能は二条為世門四天王の一人となるほどのものでした。
きっとあなたにぴったりな一冊が見つかるはずです!
元・国学院大学教授で作家の中野孝次によって選び抜かれ、本としてまとめられたもの。いわば中野が「わが徒然草」を作り上げたといえます。
ルビ付きの原文、解説、そして口語訳が大きめの文字で表記されているので、タイトルのとおりすらすらと読むことができるでしょう。
「徒然草」の中から著者自身が日頃、心の拠り所としてきた部分を抜き出して集めたものです。
- 著者
- 中野 孝次
- 出版日
- 2013-11-15
「ここに取上げた五十九段はすべてわがものになりきったものばかりである。全部が今に生きる言葉であることは自信をもってうけ合える。」と、まえがきで述べているように、どれも私たちが生きていく上でとても参考になる内容ばかり。
著者が「自分にとって欠かせないものとなった」と言い切る、「徒然草」の世界をぜひ読んでみてください。
「観る」、「つき合う」、「捨てる」、「暮らす」、「高める」、「極める」、「生きる」の7つのテーマに分かれていて、どれも日常生活に活かせる内容ばかりです。
- 著者
- 荻野 文子
- 出版日
- 2006-10-05
人生の歩み方、人との付き合い方など、現代人が生きていく上で必要なヒントをくれる一冊。たとえば、よい生き方について吉田兼好はこんなふうに言っています。
「すべてのことは当てにしてはならない。愚かな人は、深くものを当てにするために、人を恨んだり怒ったりすることがあるのだ。」「自分をも人をも当てにしなければ、うまくいったときは喜び、だめなときは恨まずにすむ。」(『ヘタな人生論より徒然草』から引用)
ドライな考え方ですが、人付き合いをするうえでぜひ心に留めておきたい内容といえるでしょう。吉田兼好の哲学は生活に取り入れやすいものばかり。きっとあなたの人生の役に立つはずです。
少女時代に「徒然草」を読んだその日から、敬慕と親愛の気持ちを吉田兼好に持っていた清川妙。そんな彼女は人生で悩んだ時、何度も兼好の言葉に助けられ、勇気づけられてきたそうです。
- 著者
- 清川 妙
- 出版日
- 2011-03-28
「自分の頭で考える」、「ものの学びかた、習いかた」、「人生は予定どおりにはいかないもの」など、人生で悩んだ時に参考になることがたくさん。吉田兼好をこよなく愛する筆者おすすめの「徒然草」を、ぜひ読んでみてください。
雑誌「別冊太陽」の元編集長であった嵐山光三郎が読み解く「徒然草」。
嵐山は、「徒然草」をまるでビジネス書のように読み解きます。他の本とは一風違った切り口で、働く人々の役に立つヒントが詰め込まれているのです。
- 著者
- 嵐山 光三郎
- 出版日
- 2012-04-05
本書のまえがきに、「ジョブズは『徒然草』を読んでいた?」という内容が書かれています。どいういうことなのかと言いますと、彼の伝記に出てくるいくつかの名言が、「徒然草」で吉田兼好が述べているものとよく似ているそうなのです。
アップルのCEO・スティーブ・ジョブスと、鎌倉時代末期の随筆家・吉田兼好という、接点などどこにもなさそうな2人が似た哲学を持っていたという事実は、非常に興味深いと言えるでしょう。
ビジネス書としての「徒然草」に興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。
わかりやすい現代語に訳と、随所に描かれた可愛い挿絵のおかげで、さらっと読むことができます。特に、気持ちをポジティブにしてくれる内容がピックアップされていますので、1日の始まりに読めば、その日のよいスタートを切ることができるかもしれません。
身近で親しみやすい言葉に訳されているため、「徒然草」入門にぴったりな一冊といえるでしょう。心に響く数々の言葉もさることながら、笑ったり、転んだりと、内容にあったリアクションを取るけろけろけろっぴの姿も読者を癒してくれます。
- 著者
- 出版日
- 2015-08-07
古典は苦手!と言う方も、一度読めばきっと愛らしいけろけろけろっぴに夢中になってしまうはずです。
この本はシリーズ化されていて、「徒然草」の他にもマイメロディの「論語」や、ハローキティと読み解く「ニーチェ」などがあります。本書が気に入った人は、ぜひ他のシリーズも手にとってみてください。
何千年も前に書かれた「徒然草」ですが、その真理は現代人の私たちにも十分通じるものがあります。ここで紹介した本は、どれも「徒然草」を読みやすくしたものばかり。読めばきっとあなたも吉田兼好という人物に親近感が湧くはずです!