2016年現在「ジャンプSQ」で連載中の『終わりのセラフ』で原作を務めている鏡貴也。鏡の作品のキャラクターたちは、口が悪い。でも本当はとても優しい。どこか達観したように斜に構えている。だけど自分が欲するものは諦めきれない、そんな相反する性質を持ち合わせた非常に人間らしい人たちが多いです。自分の仲間はみんな救いたい、今手の内にあるものは何も手放したくない、そんな優しくも傲慢で、強欲なキャラクターたちが向かう終焉はどこなのでしょうか。今回は鏡貴也のおすすめ作品を4つご紹介します。
鏡貴也3作目の長編「いつか天魔の黒ウサギ」は、15分間に7回死なないと死亡しない能力をもつ鉄大兎が大切なものを守るため、そして、定められた運命に抗うために闘う物語。全13巻で、初の長編完結作品です。
- 著者
- 鏡 貴也
- 出版日
- 2008-11-20
本作は平凡な高校生がひょんなことから非日常に足を踏み入れてしまうという王道展開から始まります。
いつも見ていた夢の中に出てくる少女は一体何者なのか。交通事故に遭い、それでも死ななくなってしまっているのはどうしてなのか。そんなことを考えていると、突然夢の中の少女の声が聞こえてきます。
「ああ、やっと死んでくれたね・・・この日をずっと待っていたのよ。大兎・・・」
すると突如失われていた記憶が呼び覚まされ、大兎は少女のことを思い出します。少女は大兎が小学生のころ一緒に遊んでいた子だったのです。少女を思い出した大兎は交わしていた約束のことも同時に思い出し……。
ヴァンパイアと呼ばれる種族や魔法、特殊能力のひしめくファンタジー世界を舞台に、主人公が「死ににくい」だけの絶対弱者であるという状況で、仲間と助け合いながら必死で生きていく様をぜひとも読んでいただきたいです。
「黙示録アリス」は2016年10月現在既刊3巻で、いままさに熱い展開を迎えようとしています。
「迷宮病」という病に侵された少女たちは、自分の過去に起因した形の迷宮を作り出します。その迷宮に変化した区画をもとに戻すには、「永久迷宮化」する前に中心にいる少女を殺すしかないのです。
- 著者
- 鏡 貴也
- 出版日
- 2013-11-20
主人公の有栖真之介は「迷宮病」に侵されてしまった妹をどうにか救うため、手段を模索し続けています。
迷宮の中で戦うための道具は《脳内魔導起機》(ヘッドフォンファズ)呼ばれるもので、ヘッドフォンから流す音楽によって引き出される能力が変わってきます。「迷宮病」の少女を殺し、その少女の使う能力を《脳内魔導起機》により使えるようにするという手法で力を得ていきます。
真之介は「迷宮病」の少女を救うための研究を進めつつ、たくさんの少女を救えず殺してしまっています。ようやく研究に成功の兆しが見えてきていました。そして、「迷宮病」の少女を殺すための授業を行い、学校という場で世界を救っている「都立吉祥寺高校」に入学し、そこでできた仲間とともに妹を助けるための戦いを始めるのです。
韻を踏んだ特徴的な歌を引き金にして能力を発動するという独特な発想のもと繰り広げられる疾走感抜群のバトルをどうぞお楽しみください。
2016現在ジャンプSQで連載中のマンガ「終わりのセラフ」のスピンオフ作品「終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅(カタストロフィ)」は、本編で主人公の親代わりのような役目をしている一瀬グレンの16歳のころのお話で、マンガの前日譚となっています。スピンオフでありながらも独立した作品となっており、「終わりのセラフ」を知らない人も楽しめるライトノベルになっていると思います。
- 著者
- 鏡 貴也
- 出版日
- 2013-01-04
春、第一渋谷高校に入学した一瀬グレンは日本で大きな力を持っている《帝ノ鬼》の分家である《帝ノ月》の次期当主で、《帝ノ鬼》の人間からは忌み嫌われていました。
子供のころ一緒に遊んでいた初恋の相手・柊真昼は《帝ノ鬼》の次期当主候補で、幼く力のなかったグレンは引き離されるままに抗うことができませんでした。そんな力のない自分を憎み、そして家族や仲間をないがしろにし虐げてきた《帝ノ鬼》を潰すことを目的とし、いろいろな野望を画策していきます。
周りには敵しかいない、そんな状況でグレンは無事に卒業をすることができるのでしょうか。
やるせない思いを抱えながら生きているのは現実でも同じで、力もなく、大きな存在にたった一人で歯向かうことはできないという世界の縮図が描かれています。まさに四面楚歌な一瀬グレンの活躍をぜひ、あなたの目でお確かめください。
鏡貴也2作目の長編「伝説の勇者の伝説」は鏡の代表作であり、アニメ化もされ、名前がよく知られるようになったきっかけの作品です。
- 著者
- 鏡 貴也
- 出版日
いつもやる気のない主人公ライナ・リュートは戦争のための軍人を育てる学校に通っていましたが、その中でも一番の落ちこぼれで周囲からはみ出し者のような扱いを受ける日々を過ごしていました。
軍人を育てているとはいってもここ数十年戦争の起こっていない世界。軍事演習をこなし、実戦組手をし、魔法の練習をするだけの毎日に、自分たちは何のためにそこにいるのかということすら忘れ始めていたころ、出動要請が軍部から下ったのです。優秀な人材を集め、特別部隊が編成される中、なぜか一番の落ちこぼれ、ライナまでもが部隊に入れられてしまいます。名実ともにトップの実力を誇るシオン・アスタールにひょんなことから気に入られてしまったことで戦地に赴くこととなってしまったのです。平和を矜持していた世界から一変戦禍に巻き込まれることとなったライナたちはこの先、どうやって生き延びていくのでしょうか。
本編が23巻で未だ完結を見ていないとても長い作品ですが、まず1巻を手に取ってみて下さい。とても読みやすい語り口にどんどんと引き込まれていきますよ。
私は鏡貴也の小説に出会って、少し、世界を見る目が変わった気がします。何もなくてつまらなかった世界にほんの少し、色づいたような、そんな感覚です。崩壊した世界で必死にあがくキャラクター達を見ていると、自分ももう少し、頑張ってみようかな、と思ったり逆に頑張りすぎているときは周りにいる仲間に頼ってもいいのだと気づかされたりもしました。
口の悪いキャラクター達ばかりだけれど、やっぱり根は優しい人間たちばかりで、今自分が生きている世界も捨てたものではないなと思わせてくれます。
まだまだ勢い衰えぬままに新刊が続々と出版されています。今から一歩踏み出して、色づく世界を体験してみませんか?あなたが手に取ってくださることを願い、そして鏡作品のさらなる発展を願い締めにさせていただきます。ここまでお読みくださりまことにありがとうございました。