今回紹介するのは、漫画『まほらば』です!癒しあり・ギャグあり・シリアスありと、読み手の心を動かす作品といえます。スマホの漫画アプリで無料で読むことができますよ。この記事はネタバレを含むので、未読の方はご注意ください。
『まほらば』は、小島あきらにより「月刊ガンガンWING」で、2000年から2006年まで連載された作品です。2005年にはテレビアニメ化もしました。
単行本は全12巻。スマホの漫画アプリで無料で読むことができます。
この記事では、あらすじや見所をネタバレしつつ、最終回まで紹介していきます。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
絵本作家を目指していた白鳥隆士(しらとりりゅうし)は、実家から専門学校への通学を不便に感じて上京します。引越し先は、彼の母親の従姉妹が営むアパート「鳴滝荘」。入居当日、隆士は女子高生ながら大家を務める蒼葉梢(あおばこずえ)に出会いました。
梢の可憐な雰囲気と優しい人柄に好感を抱く隆士。ところが、梢には衝撃的な秘密が隠されていたのです。
彼女は「解離性同一性障害」、いわゆる「多重人格」でした。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
本作の魅力のひとつが、「癒し」です。穏やかな日常の風景をベースに物語が展開していきます。
登場人物の多くはクセが強いですが、根は優しく、ひどい目に合わされてもたいてい最後には水に流します。
たとえば隆士は、専門学校の課題を抱えつつ、梢の多重人格のひとりで精神年齢が幼い、金沢魚子(かなざわななこ)と遊んであげる親切な心の持ち主です。また、梢が極度な人見知りの人格、紺野棗(こんのなつめ)に変わったときには、ほかの住人と一緒に彼女と仲良くなろうと尽力しました。
こうしたキャラクターの優しさが、ほのぼのとした雰囲気を生み出しているといえます。
また、彼らが持つ意外な一面や弱点も、癒される理由のひとつです。
たとえば、梢の中の乱暴な人格、赤坂早紀(あかさかさき)は、酒豪を気取っているものの実際には梅酒しか飲めません。また、着せ替え好きな唯我独尊系の人格、緑川千百合(みどりかわちゆり)も、女の子相手には強引に着せ替えをしますが、男性のことは極端なまでに嫌がります。
梢の人格以外にも、「一見すると強烈なキャラ」は皆何かしらの弱点を持っており、そこに可愛げを感じて癒されることでしょう。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
鳴滝荘の日常は、笑いにもあふれています。
住人の茶ノ畑珠実(ちゃのはたたまみ)は腹黒キャラで、他人(主に隆士)の弱みを握ったり、毒を吐いたりします。桃乃恵(もものめぐみ)はハイテンションなムードメーカーで、いろいろなイベントを発案して盛りあげようとしますが、空回りすることも多いです。
3巻では、隆士と梢の仲を深めようと、恵が「2人を落とし穴に落として密着させる作戦」を実行しますが、隆士にあっさりバレて失敗。珠実に埋められそうになってしまうのでした。
ダメキャラの黒崎沙夜子(くろさきさよこ)は、しっかり者の娘、朝美(あさみ)の足を引っ張ります。住人のなかで最年長の灰原由起夫(はいばらゆきお)は、常に身につけているハンドパペットの流星ジョニーをとおして会話をするせいで、本人の存在感がなく、恵たちに忘れられることが多いです。
2巻では、勝者が王様となって命令できる権利を賭けたかくれんぼをした際、沙夜子が盆栽を頭に載せて隠れたつもりになったり、由起夫が水とんの術で隠れたりと、シュールなギャグを見せています。もちろん2人ともあっけなく見つかってしまいました。
このように、住人それぞれにキャラやポジションが明確に割り当てられていて、それがストーリーの中で活かされて、笑いが生じています。
鳴滝荘の住人以外にも、インパクトのあるキャラクターはたくさんいます。たとえば、珠実が所属するオカルト研究部の部長は見た目も言動もミステリアス。さらにマゾ体質で珠実の毒舌に快感を覚えたり、ダジャレが好きだったりと、クセだらけな少女です。
主要キャラに負けない人気で作中でも出番が多いので、彼女の活躍も見逃せないポイントでしょう。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
癒しと笑いがある一方で、住人たちに暗い過去があるため、シリアスな展開になることもあります。
恵は中学生までピアノを習っており、将来を渇望されるほどの腕前でしたが、重圧に負けてリストカットにはしりました。
その後はピアノをやめ、家庭でも学校でも孤立し、タバコを吸うばかりの退廃的な生活を送っていましたが、現在の彼氏・紫羽龍太朗(しばりゅうたろう)に出会って更生。高校進学を機に鳴滝荘に入居しました。
沙夜子はもともと良家の娘でしたが、駆け落ちした直後に夫を事故で亡くし、幼かった朝美を苦労しながら育てあげています。鳴滝荘の前で行き倒れていたところを梢たちに発見されました。
そして梢は、両親から虐待を受けたあげく、曽祖父の死後に鳴滝荘に置き去りにされています。そこに、曽祖父に世話になっていた由起夫が駆けつけ、彼に育ててもらっていたのです。作中では、辛く苦しい過去から自分を守るために、梢は多重人格となったのではないかといわれています。
こうした過去に向き合い、乗り越えていくシリアス展開が、本作のアクセントになっています。3巻では、オカルト研究部の部長が住人たちを占う場面があり、その結果が、沙夜子や梢が過去と向きあう時が来ることを予言したような内容になっているので、要チェックです。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
- 2006-07-27
最終12巻では、梢と恋人関係になった隆士が、あることをきっかけに「梢が多重人格になったのは自分のせいなのではないか」と思い悩むようになります。
その様子を見た由起夫は、隆士に梢の過去を話した後、「梢を幸せにしてあげてほしい」と懇願。それを受けた隆士は、責任でも義務でもなく「梢が好きだから幸せにする」という答えを出すのでした。
一方、梢が隆士と恋人になったことで、それまで互いに干渉することのなかった4人の他人格が梢の精神の中で出会っていました。そして、自分たちが生まれた理由や、自らが実体のない存在であることを知ります。考えたすえに彼女たちは、「人格を統合し、再びひとりの人間となって、いつも隆士のそばにいる」という決断をしました。
そして4人は隆士と別れの挨拶を交わし、梢の中に戻っていくのです。
最終回は、その数年後を描いた後日談です。鳴滝荘で出会ったすべてのキャラクターが集結しています。
龍太朗と結婚した恵が子供を生んでいるなど、鳴滝荘をきっかけとした人間関係が進展していたり、新たな人間関係が生じていたりして、これまでの伏線が回収された感慨深い内容です。
そして、消えてしまったかと思われた梢の4人の他人格の「なごり」を感じられる要素もあります。それを見たとき、きっと読者にも大きな感動が湧き起こることでしょう。
漫画『まほらば』をご紹介しました。冒頭でも述べましたが、この作品は読者の感情をいろいろな方向に動かしてきます。しかし、動かされた結果は、きっと感動と希望にたどり着くでしょう。ぜひ読んでみてください!