- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2016-06-13
料理を武器に、不良のテッペンを目指す⁉『アキラNo.2』や『ランチキ』などのヤンキー漫画を世に送り出してきた奥嶋ひろまさが描く、異色のヤンキーグルメ漫画が『頂き!成り上がり飯』です。
設定からして無茶苦茶なようですが、読んでいて思わず笑ってしまう、そんな本作の魅力を全巻エピソードのネタバレをまじえてご紹介します。
不良界の名門校である王森高校では、腕自慢の不良たちが日々頂点を目指してケンカに明け暮れていました。
主人公のケニーは1年生。彼もそんな「テッペン」を目指すうちのひとりでしたが、第三十五代頭のメリケンにあっさりとボコボコにされてしまいます。
悔しさに涙するケニーでしたが、たまたま持っていた弁当をメリケンに食べられ、その美味しさによって彼をノックアウトします。こうしてケニーは、ケンカではなく料理で王森高校の「頂き」に成り上がることを誓ったのでした。
主人公ケニーが料理の腕前で不良たちをまとめあげていくことを心に決める、1巻です。王森高校最強の男であるメリケンや、ケニーの友人のチャボやぐっさん、そして同じクラスの一匹狼、サリーといった主要な登場人物たちとのエピソードが描かれています。
ケニーは屋上でいきなり有象無象の不良たちと一緒にボコボコにされたかと思えば、メリケンをはじめとする数多の不良たちを次々と弁当で撃墜(懐柔?)したりと、作品そのものが良い意味でのツッコミどころ満載の一冊になっています。
- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2016-12-13
ケニー自身は不良界のテッペンを目指そうとする野心家なのですが、料理に対する情熱や食べる人への思いやりなど、随所に女子力の高さが見えてしまうところが魅力でしょう。それが作品全体のテンポと相まって、思わず笑ってしまう軽快なノリを形成しています。
また、ケニーを取り巻く仲間たちも、不良校で成り上がろうとしているケンカ自慢の荒くれ者ぞろいなはずなのに、彼の弁当を食べた途端に、テレビの食レポのように豊富なボキャブラリーで料理を絶賛しだしてしまい、どこか間抜けで愛らしく、ひと言でいうと「バカわいい」です。
そんな1巻の見どころは、ケニーと、一匹狼サリーのケンカでしょう。
クラスに弁当を振る舞ったことであっという間に1年の不良たちをまとめてしまったケニーでしたが、サリーだけは彼の弁当を要らないと一蹴し、好意から差し出した手作りのピクルスも蹴飛ばしてしまいます。
サリーが心を閉ざしている理由は彼の家庭の事情にあるのですが、実はケニーの家庭もサリーと同様に複雑な事情を抱えていました。ケニーは彼におふくろの味を喰らわせて性根を叩き直そうと考え、ケンカに勝ったら自分の作った弁当を食えと言い放ちます。
そんな2人のケンカのシーンは、真剣に戦っているはずなのですが、サリーが自分の寂しさをアピールしたり、ケニーが栄養バランスの重要性や母親に対する感謝を語ったりと、どうにもシリアスになりきれません。
かと思えば、ケンカに負けたサリーがケニーの弁当に母親を感じて涙するなど、ほっこりと心が和らぐ一幕もあり、読み終わった後には明るい気持ちになることができます。
本作は基本的に全編とおしてこのようなノリで展開されるため、少し落ち込んだ時などに読むといいかもしれませんね。
2巻は、前巻の最後に登場した2年生組との抗争から幕を開けます。2年の頭であるあっくんとのケンカや、学校の四天王リッチとのやり取り、そして四天王に因縁がある赤石の登場など、さらにボリュームが増量した内容です。
新しい勢力の登場など不良漫画としての要素ももちろん含まれていますが、チャボやぐっさんの家を訪問した際のエピソードなど、ちょっとメインからそれた話もしっかり面白いので、安心感がある構成となっています。
そんな2巻の見どころは、2年の頭、あっくんとケニーとのやり取りです。初登場時からケニーに負けず劣らずの食べ物へのこだわりを見せるあっくんですが、彼もまた人の食べる時の反応を観察するのが好きという、かなり変わった趣向の持ち主。
ケニーが食べた料理の感想を語っている時の表現などを聞いて、もっとコメントを欲しがるあたりなどは、彼は本当に不良なんだろうかと思わずツッコミたくなってしまいます。
そんな2人、本当に些細なことから始まった1年と2年の抗争にケリをつけるためにケンカをするのですが、最終的にはお互いの相性の良さもあってすんなり和解し、ケニーの仲間がまた増えたのでした。「頂き」を目指す戦いも順調だと感じられる一幕です。
- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2017-04-13
3巻は、3年の赤石への、ケニーの鉄拳制裁から始まります。ちなみに殴った理由は、野菜を粗末に扱ったから……彼の行動原理が不良とは思えないのは、もはや今さらですね。
また、これまでの四天王とは異なる「もうひとつの四天王」という新たな勢力が登場します。一方でメリケンやサリーの日常など、既存のキャラクターもしっかり描かれているので安心してくださいね。
そしてもちろん、コロッケ弁当やおでんなど、不良たちを陥落させるケニーの料理の数々にも余念がありません。しっかりと料理が美味しそうなのも、この漫画の魅力でしょう。
しかし3巻の見どころは、不良たちが置かれている厳しい現実を描いた場面です。これまでは料理にケンカと、彼らの持ち味を活かしたエピソードが盛りだくさんでしたが、不良の高校生たちは就職に関する厳しい現実に目を向けなければならなくなります。
これまでとは少しテイストの変わった面白さを感じることができるでしょう。
- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2017-09-13
「もうひとつの四天王」オーガたちが王森高校に襲来してきます。これまで対戦相手に対して、朝飯を食べないから強くない、と語っていたケニーですが、ご飯を食べなくても強いオーガ相手に苦戦してしまうというピンチな一冊です。
しかし、作品全体としては、不良たちが皆でパンケーキを食べるなど相も変わらずのユルいノリで読み進められるのでご安心を。
そんな4巻ですが、不良たちが夏祭りを満喫するエピソードがあり、浴衣で楽しむ彼らに心癒される内容となっています。ケニーを含め不良たちにはイケメンが揃っているので、女性読者にとっても楽しい展開になるでしょう。
- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2018-02-13
まだまだ不良らしからぬユルイ夏休みを満喫する5巻です。
プールではしゃいだりケニーの思わぬ弱点が発覚したりと、微笑ましいシーンが続きます。ただ3年生にとっては、高校生活最後の夏休み。本作では珍しく、少しノスタルジックな雰囲気も感じられるでしょう。
また5巻では新しくミノルという人物が登場。ずっと不登校だった2年生なのですが、登場するやいなや、あっくんを倒してしまいました……。見た目も恐ろしく、これから波乱の展開になることが予想されます。
夏祭りのシーンでは、作者である奥嶋ひろまさの別作品『アキラNo.2』のキャラクターが、焼きそばを作りながら登場。ファンにとっては嬉しいコラボですね。ケニーに並ぶ料理上手の不良ということで、今後も絡みがあるのでしょうか。もちろんケニー自身の料理も本巻で満喫できるので、お楽しみください。
- 著者
- 奥嶋ひろまさ
- 出版日
- 2018-07-13
少し落ち着いていた王森高校に、波乱が訪れる第6巻です。
本巻では、ミノルによってあっくんが倒されたという事実を知ったケニーが、いよいよミノルとの戦いに向けて動き出します。群れる事が嫌いで、あっくんへの恨みから襲撃してきたミノル。そんな彼に対し、好きな先輩がやられて黙っている程大人ではないと、怒りを露わにするケニー。
両者いよいよ激突となりますが、これまでになかった強さを誇るミノルに対し、何とケニーまでも倒されてしまうのです。
そんななか、1度は倒されたはずのあっくんが再びミノルの前に現れ、立ちはだかります。果たして、ミノル対いつもの面々の決着はどうなるのでしょうか。
そんな本巻の見所は、ケニーとミノルのシーンです。最終的にしこたま殴り合う事になる両者ですが、初対面時はなんとミノルの自家栽培のキュウリを2人で食べるというほのぼのしたシーンから始まります。ケニーお手製の味噌をつけて食べる姿がなんとも和ませてくれ、相変わらず食べ物にも抜かりがない事を実感させてくれるシーンといえるでしょう。
バカバカしいけど、クセになる!元気になれるヤンキー飯漫画『頂き!成り上がり飯』。ぜひとも和んでみてください。