小説『博多豚骨ラーメンズ』の魅力を全巻ネタバレ紹介!2018年アニメ化!

更新:2021.11.10

タイトルのキャッチーさとはうらはらに、ダークな内容をコミカルに描いた話題作です。殺し屋に復讐屋、拷問師に情報屋と言った裏稼業の人々が集まる街、福岡。この街で起こるのは麻薬抗争に闇組織の戦いや、サイバーテロなどどれも大きな事件ばかりです。コメディ×野球×ダークな殺し屋たちの群像劇の本作の魅力をご紹介します。ネタバレも含まれますので、苦手な方はご注意ください。 また、コミカライズ版はスマホの無料アプリで読むことができますので、気になった方はそちらも使ってみてください。

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裏稼業の街で大奮闘!『博多豚骨ラーメンズ』とは

電撃小説大賞の大賞を受賞した『博多豚骨ラーメンズ』。主人公はブラックでダークな企業に就職した入社1年目の新入社員です。そんな彼は研修明け早々にミスをしてしまい、東京本社から異動を命じられてしまいました。

転勤先でも結果を残せなかったら文字どおり首を切る、と言われて彼が向かった先は福岡。しかしこの街は、一見平和に見えても実は人口の3%が殺し屋という、犯罪がはびこる街でした。

かくして彼は、殺し屋業の激戦区と呼ばれる福岡において、拷問師や復讐屋といったダークで個性的なキャラクターたちと群像劇をくり広げることになります。

2018年1月からはテレビアニメ化されることも決まった本作の魅力を、ネタバレとともにご紹介します。

就職先は殺人請負会社だった!『博多豚骨ラーメンズ』1巻

「あなたには、どうしても殺したい人がいます。動機は何でも構いません。たとえば、その人に恋人を殺されたとか、その人の財産目当てだとか。ただし、どうしても殺さなければなりません。さて、あなたはどうしますか?」(『博多豚骨ラーメンズ』1巻より引用)

就活まっさかりの大学生斉藤は、ある企業の面接で面接官から「あなたならどうやって人を殺すか」と問われます。そこで斉藤が言ったのは、他の就活生とは異なる答えでした。

著者
木崎 ちあき
出版日
2014-02-25

斉藤は、高校時代に人を殺しかけたことがある、と答えます。関東でも有名な野球の強豪校に所属していた彼はエースピッチャーでしたが、甲子園でバッターの頭部にデッドボールを当ててしまい、相手を意識不明にしてしまったと言うのです。

斉藤は、自分が人殺しになるのは怖い、自分は度胸も技術もないからもし人殺しをしなくてはいけなくなったら他人にお金を払って殺してもらう、という答えを出しました。そして、くしくもそれは、その会社の経営理念そのものだったのです。

今作の魅力は、人材派遣会社を隠れ蓑とする殺人請負会社「マーダー・インク」に就職してしまった斉藤が、文字どおり「首を切られる」ことをおそれてダークな世界へと踏み込んでいくところにあります。

ミスによって博多へ異動となった彼は、そこでさまざまな裏稼業の人々と出会うことになるのです。

なかでも今回特に重要となるのは、福岡市長専属の殺し屋たちだといえるでしょう。大学生や中年男性、ロシア人ハーフに美女など一見共通点のない彼らは、市長の立場を守るために邪魔者を消すプロフェッショナルです。

そんな彼らは福岡市長の「立場」のためなら、市長の息子に手をかけることも厭いません。そして斉藤は彼らの手によって無実の罪を着せられてしまうのです。最後まで目が離せない一冊となっています。

噂はいつか伝説となる『博多豚骨ラーメンズ』2巻

「殺し屋同士の、生きるか死ぬかの戦い。それこそが、自分の求めているものではないだろうか。『殺し屋殺し』屋と戦えば、俺は満たされるかもしれない。そう思った。」(『博多豚骨ラーメンズ』2巻より引用)

猿渡は殺人請負会社「マーダー・インク」入社7年目のエリート殺し屋です。しかし彼はこれまで仕事にやりがいを感じたことは1度もありませんでした。

著者
木崎 ちあき
出版日
2014-09-25

今作の魅力は、新登場の猿渡の過激さにあります。これまで殺人請負会社で着々と成果をあげながらも、無抵抗な人間を殺す依頼にやりがいを感じられなかった猿渡は、刺激を求めて会社を辞めてしまうのです。

そんな彼がやってきたのが「殺し屋殺し」屋がいるという福岡でした。「殺し屋殺し」屋によってマーダー・インクの社員も何人か殺されたという噂から、福岡なら自分の求める刺激が得られると考えたのです。

しかし猿渡はいわば無名の殺し屋であり、福岡に人脈がありません。斡旋業者に門前払いをされ続ける猿渡でしたが、そんな彼の前にひとりの男が現れるのです。それが、殺し屋コンサルタントの新田でした。

高校時代に同じ野球部でバッテリーを組んでいた相手でもあった新田は、猿渡を福岡一の殺し屋で最強の「殺し屋殺し」屋にしてみせると言い放ちます。かくして、殺し屋にとって最強のタッグができあがったのでした。

猿渡の手により、マーダー・インクでなんとか仕事をこなしている斉藤は命を狙われ、友人である女装の殺し屋、林も、調査対象を殺されてしまいます。斉藤の野球仲間だった探偵の馬場も斉藤たちを助けるために事件に巻き込まれ、事態は混迷をきわめていくのです。

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ともに地獄を生き抜く意味『博多豚骨ラーメンズ』3巻

「調子いいこと言ってんじゃねえぞ。彼女が『やめて』って頼んだとき、お前らはやめたのか?」(『博多豚骨ラーメンズ』3巻より引用)

短いスカートにさらさらの長い髪をした女装の殺し屋、林。彼は性犯罪被害者の父親から依頼され、加害者ひとりにつき500円で仕事をしに来ていました。

拷問師直伝の手法を使ってデータを出させ、確実に始末する――そんな林が、今作で窮地に陥ることになるのです。

著者
木崎ちあき
出版日
2015-03-25

今作の見どころは、林が殺し屋となった経緯が明らかになるところです。彼が殺し屋となったのは、わずか9歳のときでした。

父親のつくった借金による苦しい生活が続くなかで、林は母親を守るため、金で売られることを選びます。売られた先は、少年たちに対し殺人兵器としての教育をおこなう施設でした。

林は教官から、他人を一切信用するな、信じられるのは自分だけだ、と教えられます。その施設では2人1組で連帯責任を負う方式をとっており、彼はそこで緋狼という相棒を得るのです。

互いに協力し訓練をこなす林は、緋狼に心を許し、ともに施設を出ることを望みます。しかし施設の最終試験において、相棒同士で殺し合うことを求められたのです。

施設から出るために林に襲い掛かってくる緋狼に、死にたくない一心で反撃した林は、相棒殺しの悪夢を胸に社会へ出ていくことになります。人間不信になってしまった林は、斉藤たちと野球をするなかで、仲間を信じてヒットエンドランのために走り抜けるよう求められました。

人を信じることを躊躇をする林でしたが、そんななか、彼の前に死んだはずの緋狼が現れます。緋狼は実は生きており、林とタッグを組んで一緒に仕事をしようと考えて林を探していたというのです。

林をおびき寄せるためだけに、林と同じ名前の人間を殺し続けてきた緋狼。彼らが過去とどう決着をつけることになるのか、ご注目ください。

天才ハッカーと世界一のクラッカーの戦い『博多豚骨ラーメンズ』4巻

「『──は?』聞こえてきた言葉に、思わずぴたりと足が止まる。どういうことだ、と目を丸めながら、榎田は訊き返した。『斉藤くんが逮捕されたぁ?』」(『博多豚骨ラーメンズ』4巻より引用)

マーダー・インクを退職し転職活動中の斉藤でしたが、ある日突然サイバー犯罪対策課の捜査官に任意同行を求められてしまいます。なんと斉藤のパソコンから、政治家の殺人予告や爆破予告がインターネット掲示板に書き込まれていたというのです。

著者
木崎ちあき
出版日
2015-08-25

警察に連れて行かれた斉藤は、情報屋である天才ハッカー榎田の助けもあって、斉藤のパソコンとスマホがハッキングされ遠隔操作されていたことを知ります。これは、榎田が情報屋としてサイバー犯罪対策課に日頃から協力していることもプラスに働いたものでした。

今作の魅力は、日本を襲うサイバーテロと、それに立ち向かう情報屋の榎田の活躍にあります。なんと彼は、警察からの依頼でサイバーテロ組織「.mmm」の情報を盗んだため、「.mmm」から狙われることになってしまいました。

榎田を狙ってくる筆頭は、チェガルという男。元サイバー部隊所属で、現在は海外駐在工作員として、「.mmm」活動の邪魔になる人を始末する仕事をしているのです。

チェガルはフリーランスの殺し屋を2人雇っています。ひとりは元ボクサーで快楽殺人犯でもある殺し屋、もうひとりはクラッカーと呼ばれる天才ハッカー、シヴァです。

シヴァは人を社会的に抹殺することを得意とし、壊し屋とも呼ばれています。お遊びで善良な一般市民の人生を狂わせるためにハッキング技術を悪用しており、斉藤の事件もその一環だったことが明らかになりました。

福岡のネットカフェを拠点に活動をしていた榎田でしたが、徐々にシヴァに追い詰められていき、やがて身動きが取れないほどの窮地に陥ります。表向きはサイバーテロ組織、しかし裏では対ハッカー暗殺集団でもある「.mmm」から榎田は逃げ切ることができるのか、最後まで目が離せません。

復讐の連鎖を止める『博多豚骨ラーメンズ』5巻

「返り血を浴びた道化師が長身を屈め、彼をじっと見つめている。逃げなければ、と思った。彼は踵を返した。背後から、赤い腕が伸びてきた。」(『博多豚骨ラーメンズ』5巻より引用)

博多に突如現れた、赤い帽子に派手な衣装、白塗りの顔に丸い鼻をつけた道化師。暗闇に吸い込まれるようにして空き地へ入り込んだ道化師は、大道芸の道具を回しながら高笑いをし、男たちに襲い掛かったのでした……。

著者
木崎ちあき
出版日
2015-12-25

今作の魅力は、オカマキャラの復讐屋ジローと、小学生女子にしてその助手を務めるミサキの奮闘だといえるでしょう。復讐屋とは、人に恨みをもつ者から依頼を受け、その人の代わりに復讐を果たす人たちです。

ミサキはある出来事をきっかけにジローに引き取られた過去を持ちます。仕事に向かうジローの身を案じ、自ら率先して復讐屋の仕事を手伝うようになりました。

あまりに淡々と仕事をこなすミサキを見て、普通の子どもとして育ってほしいと願うジローは、彼女のために何ができるか悩むことになります。ミサキの母親はすでに新しい家庭をつくっており、彼女が実母のもとへ戻ることは不可能です。

かといって、過去に恋人を殺されたことをきっかけに復讐屋となったジローが、普通の仕事につくことも難しい選択だといえます。復讐屋をやめることは自分の信念に反することになるだけでなく、ミサキもまたそれを望んでいないからです。

復讐屋は常に復讐される危険がある、と周りから忠告を受け、ジローはミサキのために里親を探そうか検討しはじめました。

そんななか、福岡で奇妙な死体が発見される事件が起きました。他殺死体で、まるで犯人の署名のように顔にハートマークが描かれているのです。

その犯人こそが、ピエロの恰好をした殺人鬼、道化師メケでした。

メケは小学生を狙う連続誘拐事件を起こして、やがてその魔の手はミサキにも伸びることになります。復讐のために動き続けるメケから、ジローはミサキを守ることができるのでしょうか。

処刑人と拷問師の壮絶なバトル『博多豚骨ラーメンズ』6巻

「ひとりひとり、それぞれに役目があるとよ」(『博多豚骨ラーメンズ』6巻より引用)

林や榎田たちの野球チーム「博多豚骨ラーメンズ」の4番バッターは、ドミニカ共和国出身のマルティネスです。2メートル近い身長と筋骨隆々の肉体をもつ彼は、整体師でありながら腕利きの拷問師でもありました。

みんなのピンチに力を発揮し、チームを勝利へと導くのが4番バッターの仕事です。マルティネス林たちの窮地を救うことができるのでしょうか。

著者
木崎 ちあき
出版日
2017-03-25

今作の魅力は、麻薬抗争の舞台となった博多と、それに巻き込まれた林たちの行くすえと、マルティネスの活躍にあります。この麻薬抗争は、単に博多で麻薬を扱う組織だけの問題にとどまりません。

なんと、メキシコ湾に面したベラクルス市を拠点とする新興麻薬カルテル「ロス・エセス」が日本に上陸してきていたのです。「ロス・エセス」は9年ほど前に壊滅した「ベラクルス・カルテル」の残党数人が諸外国からメンバーを募って結成した、多国籍犯罪部隊でした。

そのメンバーは元軍人、元警察官、殺し屋といった荒くれ者ばかり。そこにマルティネスの昔の知り合いが関与していたこともあり、マルティネスが襲われてしまうのです。

そんななか、探偵かつ殺し屋の馬場と、馬場の家に住まわせてもらっている林が、些細なことで喧嘩をしてしまいます。原因は林が馬場の野球ボールを掃除の時に処分してしまったことなのですが、馬場は怒りはするものの、なぜそれが大切なものなのかは一切話そうとしません。

自分に何も話さず、理解されることを諦めたように振る舞う馬場に対して林は苛立ちを募らせ、彼の仕事をすべて奪ってしまおうと画策します。その結果、馬場と林は別々の角度から、スパイの入り乱れる麻薬抗争に巻き込まれることになるのです……。

そして、立ち塞がる「ベラクルスの処刑人」と呼ばれる男を前に、拷問師マルティネスは打ち克つことができるのでしょうか。仲間たちとの協力も含めて、目が離せません。

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婚活パーティーに潜む魔の手『博多豚骨ラーメンズ』7巻

「次の殺しが終わったら、俺はこの仕事を辞める」(『博多豚骨ラーメンズ』7巻より引用)

13年前、高校生だった馬場が裏稼業の世界に入ったのは、ある事件がきっかけでした。彼は刑務所に入った男の出所をずっと待っていたのです。そして、仕事を辞めることを宣言します。

著者
木崎 ちあき
出版日
2017-07-25

今作の魅力は、秘密主義の探偵、馬場の過去と未来にスポットライトが当たるところにあります。馬場はまだ28歳で、殺し屋を始めてから9年という若手ですが、殺し屋から引退することを決めるのです。

その理由は、そもそも馬場が裏稼業に入ったのが、ある男を葬ることを目的としていたためでした。

そんななかで、女性ばかりを狙った「連続昏睡強盗事件」が発生します。婚活パーティーに参加した女性が、ハンサムで洗練された雰囲気の男と出会い、店を移動して飲み泥酔、気づいたら鞄やバッグなどが一切ない状態でホテルのベッドにひとり寝ていた、というものです。

しかも、どんなに探しても男の痕跡がひとつも残っていないというのです。

警察が事件を追うなか、復讐屋のジローたちにも依頼が舞い込みます。複数の女性がそれぞれ別個に依頼してきたその内容は、どれも婚活パーティーで出会った男に昏酔強盗をされたらしいから復讐してほしい、というものでした。

林や榎田も加わってその事件を追っていると、強力な助っ人が現れました。女殺し屋である小百合は、その美貌を武器に闇組織の会長をはじめ数々の大物を葬ってきた、凄腕の殺し屋です。ジローや林たちは事件の犯人を見つけるため、小百合に婚活パーティーへの潜入捜査を依頼しました。

実は小百合は馬場の昔の恋人で、彼女によって馬場の過去と、13年前に起きた惨殺事件の情報が明らかになっていきます。

突如行方不明となってしまった馬場と、林たちに襲いくる危機。さまざまな事件が馬場の過去へと結びつき、次巻へと続く内容となっています。

著者
["木崎 ちあき", "秋野 キサラ"]
出版日
2017-03-25
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漫画化もされた人気作『博多豚骨ラーメンズ』。読みやすい文体と目まぐるしい展開で読者を惹き込むその魅力を堪能してみてください。

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