戦闘シーンやメカニックな描写など、動きのある構図を得意とするイラストレーター、春日歩。整った肉体を華麗に表現するそのスタイルは、特に女子中高生のセクシーなシーンで本領を発揮します。春日歩が挿絵を手掛けるライトノベルを厳選してご紹介します。
2008年に電撃大賞の電撃イラスト大賞部門で選考委員奨励賞を受賞した春日歩。ライトノベルの挿絵のみならず、トレーディングカードのイラストや漫画家としも活動している、動きのあるイラストを得意とするイラストレーターです。
そのイラストは、風に舞う衣服や髪、剣を中心とする武器がカッコよく表現されているのが特徴です。
今回は春日歩が挿絵を手掛けるライトノベルのなかから、おすすめの4作品をご紹介します。
「いつまでわたしの上に乗っている気だこの痴れ者があぁぁああっ!」(『最弱無敗の神装機竜《バハムート》』1巻より引用)
圧政のすえ、クーデターによって滅ぼされたアーカディア旧帝国。皇子だったルクスは、旧帝国の罪を負い、新王国の国民の雑用を引き受けることで生かされていました。
しかしある日、ルクスは王立士官学園女子寮の屋根を踏み抜いてしまい、大浴場に落ちてしまいます。事故とはいえ、新王国の王女を押し倒してしまった彼の運命やいかに……。
- 著者
- 明月 千里
- 出版日
- 2013-08-09
『最弱無敗の神装機竜《バハムート》』は漫画化だけでなくテレビアニメ化もされた人気作です。今作の魅力は、古代兵器である「機竜」という機械装甲を使用するルクスが、王女との決闘のすえ、王立士官学園に入学し、陰謀とハーレムの世界に巻き込まれるところにあります。
ルクスは王都で行われる「機竜」を使用した公式模擬戦で無敗を誇りながらも、1度も勝ったことがないという経歴を持ちます。その理由は、守りに徹することで対戦相手をスタミナ切れにさせて引き分けに持ち込むという戦闘スタイルにありました。そんな彼は「無敗」の「最弱」と呼ばれています。
しかしそのルクス、実は旧帝国のクーデターで英雄と呼ばれた存在だったのです。
「機竜」には汎用機竜と神装機竜があり、神装機竜は世界で一首ずつしか存在せず、汎用機竜に比べてはるかに高い性能を持っています。
ルクスは神装機竜のひとつであるバハムートを持っていますが、それを使ったのはクーデターのときのみ。普段は神装機竜使いであることを隠し、防御特化型の汎用機竜を使用している姿が、ルクスの強さを秘めるヒーローらしさを高めているといってよいでしょう。
そんな彼の機竜使いとしての才能を見抜いたのが、新王国の王女でありメインヒロインのリーズシャルテでした。
リーズシャルテはルクスを気に入り近くに置こうとしますが、学園にはルクスの幼馴染の少女フィルフィもいます。フィルフィはルクスに愛称で呼ぶよう要求したり、寮にルームメイトがいないのをいいことに部屋に住まわせて同じベッドで寝たり、一緒にお風呂に入ったりと、大胆なアピールをくり返していました。
それだけではありません。他国からの留学生クルルシファーや、寂しがり屋の少女など、さまざまな美少女たちがルクスを奪い合うことになるのです。
春日歩のイラストは、たくさんの少女たちがそれぞれ絶妙に描き分けられているだけでなく、少女らしく控えめな胸でありつつも扇情的な肌や体形が描かれています。また機械装甲の鮮やかさとそのダイナミックな動きは、思わず目が離せなくなること間違いありません。
「さて、聞かせてもらおう。果たして君は、本当に有能で使える人材なのかね?君は何ができるんだ?」(『ご主人様は山猫姫 辺境見習い英雄編』1巻より引用)
主人公の晴凛は、中国の帝国で生まれた官僚の父をもつ三男坊です。長男や次男たちは武官になったり科挙に合格して官僚になったりしているものの、晴凛は武術が苦手で、おまけに科挙には連続で落ちるなど、穀潰しのように暮らしていました。
しかし彼は市場へ行って商人たちと話をするのが好きであり、それにより4ヶ国語にわたる外国語を話すことができるという特技を持っていました。そして他国から帝国へ恭順のあかしとして差し出された、ミーネ姫の教育係に任命されたのでした。
- 著者
- 鷹見 一幸
- 出版日
- 2009-04-10
今作の魅力は、取り柄がなく役に立たないと言われてきた晴凛が、その趣味を生かした能力で才覚を発揮し、英雄となっていくところにあります。まず彼が命じられたのは、北方の辺境に住む一族シムールの末姫ミーネに、帝国の一般常識や言語を教えるという仕事でした。
実はこのミーネ姫、族長の娘というだけでなく、5人姉妹の末っ子ということもあり、無条件に可愛がられてわがまま放題に育てられてきたという事情があります。なんと、気に入らないことがあると暴れまくる彼女は、人の形をした山猫とまで言われる存在だったのです。
そんな問題児の教育係となった晴凛は、持ち前の明るさと少し天然ボケなところ、そしてコミュニケーション能力により、ミーネ姫に気に入られることに成功します。彼女に振り回されつつも、晴凛はミーネ姫が帝国の後宮に入れるよう、教育係をまっとうするのです。
しかしある日、シムールが帝国に向けて宣戦布告をしてきたことで、事態は一変します。ミーネ姫を守るため立ち回ろうとする晴凛は、そこで弓の類まれなる才能をもっていることが判明するのです。
他の追随を許さぬ弓術により英雄となっていく晴凛が王としての生活を歩んでいく姿は、立身出世物語としても楽しめるものだといえるでしょう。
そんな今作の春日歩のイラストは、中華風の衣装をまとった登場人物たちがドタバタ劇をくり広げる姿が生き生きと表現されています。
山猫姫とも呼ばれるミーネの勢いのある笑顔や、晴凛が振り回されている姿、大人たちの計略や陰謀をする怪しげな様子など、小説の内容をよりいっそう引き立てるイラストとなっているのです。
「なに考えてんのよ!おとなしそうな顔しておっぱい目立つ服着てムカつくわね!谷間にストロー差し込むわよ!!」(『俺、ツインテールになります。』1巻より引用)
主人公の高校生、観束総二は、幼馴染で同級生の津辺愛香と喫茶店で遅めの昼食をとっていました。
そこで出会ったのが、白衣を着た外国人顔の美少女トゥアールです。彼女は総二に対し相席を要求するだけでなく、金属製らしき腕輪をつけてほしいと要求します。
- 著者
- 水沢 夢
- 出版日
- 2012-06-19
小学館ライトノベル大賞審査員特別賞を受賞し、漫画化だけでなくアニメ化もされた『俺、ツインテールになります。』。その内容はまさにツインテールづくしです。まず、主人公の総二が異常なほどツインテールを愛しています。
その愛は、世界が美しいのはツインテールがあるからだと言わしめるほどで、ツインテール姿の女性を見ると目で追ってしまうだけでなく、他の髪型の女性を見ても無意識にツインテール姿に置き換えてしまうほどの偏愛をみせます。
それだけではありません。総二は、部活の希望調査票に無意識に「ツインテール部」と書いてしまうほど、常にツインテールで頭がいっぱいなのです。そんな彼に目を付けたのが、異世界から来た美少女、トゥアールでした。
彼女は総二たちの住む町に怪物が出現することを察知し、世界を救うために戦士となってくれる人を探していたのです。この世界のすべてのツインテールを手中におさめると言い放つ異世界の怪物たちに対抗すべく、総二はトゥアールに押し付けられた腕輪の力を発動させます。
その腕輪は、強力なツインテールへの愛によって起動する空想装甲「テイルギア」でした。かくして、幼女のツインテール戦士「テイルレッド」に変身した総二は、ツインテールを愛する異世界の変態たちとの戦いに身を投じることになるのです。
春日歩のイラストの魅力は、なんといっても勢いのある戦闘シーンと、動きのあるツインテールの表現にあります。総二に思いを寄せるツインテール姿の幼馴染、愛香の跳び蹴りシーンも鮮やかです。
実はこの愛香、総二のことが好きであり、それもあってツインテール姿にしているという事情があります。そんな彼女が、ことあるごとに総二にちょっかいをかけ、異世界人特有なのか距離を詰めてくる巨乳美少女トゥアールを許すはずがありません。
口も出るが手や足も出てしまうやんちゃな愛香が元気に暴力的に立ち回る姿は、文章だけでなくイラストと一緒に楽しむことで、よりいっそう可愛らしく見えることでしょう。
「助けよう。わしと契約さえすれば、じゃが」(『彼と人喰いの日常』1巻より引用)
主人公の神咲十夜は、ささいなことがきっかけで集団暴行を受けることになってしまいます。そして、何度も殴られ、自身の死の気配を感じた時、不思議な幻聴を聞くのです。
それが「死にたくなければ契約しろという」悪魔のささやきだったことを、その時の十夜が気づくことはありませんでした。
- 著者
- 火海坂 猫
- 出版日
- 2011-09-14
GA文庫大賞奨励賞を受賞した『彼と人喰いの日常』は、ダークな雰囲気をもつファンタジー小説です。死が迫る十夜を助けた人喰いの化物は、彼のことを主と呼び、契約の代償を要求します。
その代償は、1ヶ月にひとり生贄を決めろという内容でした。喰うべき人間を指定しなければ勝手に選んだ人を喰う、と言うその化物「黒衣」は、要求をする一方で十夜に絶対の服従を誓います。
数百年の封印から解き放たれた人喰いの妖である黒衣は、化物の姿である時は漆黒の毛を持つ巨大な狼です。しかし人の姿でいるときは日本人形のように整った容姿の美少女の姿になるなど、単純に化け物として扱えない要素ももっています。
そんな彼女の特徴は、変身や人喰いであるということだけではありません。他者に対する催眠術のような洗脳をも得意とするのです。黒衣は、十夜の両親に自分は知り合いから預かっている娘だと思い込ませ、十夜の学校に婚約者と名乗って転校してきました。
彼は、幼馴染の立夏を人喰いの餌食にされないように遠ざけようとするなど、奮闘します。しかし、十夜に思いを寄せる立夏がそれを単純に受け入れることはなく、彼のなかに葛藤が生まれることになるのです。
今作の魅力は、ある日突然、証拠もなく不要な人間を消すことが出来る手段を手に入れてしまった十夜が、普通であろうとしながらもしだいに人生を狂わせていくところにあるといえるでしょう。巻が進むごとに人を殺すことに慣れていく彼の姿から目が離せません。
春日歩のイラストは、ダークな本文の雰囲気に沿うものもありながら、黒衣の入浴シーンやセクシーなギャグシーンなども散りばめられおり、ダークファンタジー一辺倒でないところが魅力だといえるでしょう。カラーイラストの鮮やかさには、思わず目を奪われること間違いありません。
戦闘シーンにセクシーな少女たちなど、見る者の心をつかんで離さないイラストは春日歩ならではといえるでしょう。ライトノベルの良さは、イラストと一緒に世界観を楽しめるところにあります。これをきっかけにさまざまな小説にトライしてみてください。