初めての小野不由美!初心者向けおすすめランキングベスト6!

更新:2021.12.12

小野不由美、という作家を知っているでしょうか。背筋がぞっとするようなホラー、精緻に作られたファンタジーといったジャンルをまたにかけ、魅力ある作品を生み出す作家です。 今回は話には聞くけど、何を読んでいいか分からない、そんなあなたに向けておすすめ作品をご紹介します。

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『十二国記』でおなじみの小野不由美

小野不由美は1960年生まれ、大分県出身の小説家です。夫は同じく小説家の綾辻行人。

1988年に『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。以後、講談社X文庫ティーンズハートという少女小説のレーベルを中心に活動していきます。1992年に刊行された『月の影 影の海』から始まる『十二国記』シリーズは小野不由美の代表作となっています。2013年には『残穢』で山本周五郎賞を受賞しました。

6位:さっぱりとした小野不由美ホラー『営繕かるかや怪異譚』

小野不由美のホラー短編集です。でも単に恐ろしいというホラー集とは違って、なんで恐ろしいことが起きるのかということと、対応策が淡々と示されています。それがなんとなくスッキリ腹落ちして安心するというホラー集です。ストーリーとしてはもちろん怖いんですが、読後感はさっぱり開放的になります。

古い家には歴史が積み重なっています。その他の「なにか」も積み重なっているのです。その「なにか」とは、過去の不幸やお守りであり、それが怨霊や幽霊となって出てくることもあります。古い家に新たに住み始めた住人たちは、いろいろ困って方々相談した挙句、尾端さんにいきつくのです。尾端さんは営繕かるかやの主人で、普段は大工の棟梁の仕事を手伝っています。

尾端さんは淡々と対応してくれます。ここが尾端さんに依頼した人にとっても、読者にとってもうれしいところです。変におどろおどろしくなりません。だからといって「そんなことありえないですよ」、なんて冷たい態度をとるということではないのです。きちんと寄り添ってくれます。

著者
小野 不由美
出版日
2014-12-01

対応するときもお祓いみたいなまがまがしいことではなく、祟って出てくる幽霊たちがしたいようにさせることで、ことを落ち着かせます。きっと水が飲みたいんだ、ということであれば部屋の軒先に出入り口をこしらえ、水飲み場を準備ししてあげるのです。子どもの幽霊がガレージから出たがっているのであれば、シャッターを外し、格子戸にしてあげます。

いずれの対応でも、幽霊の気持ちにも寄り添ってあげることで、平穏を取り戻しているのです。そのころには依頼者達も過去の出来事に思いをはせ、理解してやっぱり心を寄せています。

5位:小野不由美による傑作ドキュメンタリーホラー『残穢』

「畳を擦るような音が聞こえる」。小説家を生業にしている「私」のもとに届いた読者からの一通の手紙は、怪異に出会ったことを知らせるものでした。物語はそんなところから始まります。好奇心から、マンションの一室で起きた小さな怪異を調べると、ほかにも次々にちょっとした、おかしなことが起こっていることがわかり……。

じわじわと、恐怖が迫ってくるホラー作品に仕上がっています。
 

著者
小野 不由美
出版日
2015-07-29


今作はドキュメンタリーの形式で、とある怪異を調べていく様子を書いたものです。きっと気のせい、そう思えるような小さな怪異が、調べていくうちに大きなうねりになっていく様子がリアルに、鮮明に描かれています。

もしかしたら、ひょっとしたら……。こんな出来事、近くで起こっているかもしれない……。読み進めていくにつれ、ぞっと背筋が凍るような気さえする、静かで、怖い、作品です。

4位:東京ではない、明治時代の帝都「東亰」を舞台にした怪奇小説『東亰異聞』

舞台になるのは明治29年の東京、のパラレルワールド的都市「東亰」(とうけい)。ホラーでもあり、ミステリーでもある本作は、文明開化と時代の名残が交錯する絶妙な世界観が楽しい作品です。
 

著者
小野 不由美
出版日
1999-04-26


夜の街を彷徨う、魑魅魍魎。火ダルマで現れ人を殺す火炎魔人。長い爪で人を切り殺す「闇御前」。新聞記者の平河は、友人で香具師の万蔵と共に事件を追っていくうちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たります。その先にある意外な真実とは……。

本作のストーリーは非常に単純で、明快です。それ故に、ラストの展開には驚かれるかもしれません。

怪しげで、妖艶な文章で描かれる少し不思議なホラーがとても魅力的。小野不由美らしい作品、ともいえるでしょう。何気ない夜が、ちょっと恐ろしくなる。そんな小説です。

3位:恋愛要素あり、少女を主役としたティーンズ向けホラー「悪霊」シリーズ

本作は講談社X文庫ティーンズハートから発行された全7作からなるシリーズです。ティーンズハートが少女小説と言われる分野を扱ったレーベルということもあり、普通の女の子が主人公で、恋愛小説としての側面を持ち、一人称で書かれている小説になっています。

主人公の麻衣は自身が通う都内の高校に「調査」として訪れた美少年、渋谷一也(麻衣いわく、ナルシストだからあだ名は「ナル」)と出会い、彼やほかの霊能力者たちと怪事件に挑むことになります。最初はいけ好かないと思っていたナルに少しずつ惹かれていく少女の愛らしさと、数々の恐ろしい事件、それらが合わさった作品といえるでしょう。
 

著者
小野 不由美
出版日
2010-11-19


本作の特徴はティーンズ向けとして作られた軽快な一人称の文章。読者に語り掛けてくるような文章はとても読みやすく、おすすめです。なおこの作品は、名前を「ゴーストハント」と改題して2010年にリライト新装版が発売されています。同タイトルで漫画化、アニメ化もされていますのでそちらも併せて見るのも良いかもしれません。

2位:1300人の小さな村。そこで起きた3人の死が、すべての始まりだった『屍鬼』

この作品は文庫版5冊にわたる壮大なスケールのホラー小説です。登場人物は事細かに描写され、その数150人を数えるほど。こちらも漫画、アニメ化された人気作です。原作版と漫画版では相違点がいくつかあるのでそれを確かめてみるのもよいかもしれません。
 

著者
小野 不由美
出版日
2002-01-30


キャッチコピーは「――村は死によって包囲されている」。舞台となるのは周囲から断絶された陸の孤島、「外場村」という人口1300人の小さな集落です。この村で、少しずつ生気がなくなり貧血を覚え、そして数日後には亡くなるという奇妙な病気がはやり始めます。そのうち、死んだはずの何人かが生きている姿を目撃されるようになり……。

登場人物の数が多く、覚えるのが少し大変かもしれません。ですが、小野不由美特有のなめらかな文体のおかげで、内容はしっかりと頭に入ってきます。すべてを把握しながら読むのは相当難しいかもしれませんが、把握しているからこそ面白い部分もたくさんありますので、根気よく読んでみるのがいいのではないでしょうか。

1位:小野不由美の傑作異世界ファンタジー「十二国記」シリーズ

ファンから通称として小野主上とも呼ばれる小野不由美。今も非常に多くの支持を集めるこの作品は、まさしく彼女の代表作と言えるでしょう。

神仙や妖魔が存在する十二の国。その国々は神獣である麒麟に選ばれた王によって統治されていました。

シリーズ第一作となる「月の影 影の海」では日本で普通の女子高生だった主人公、陽子がある日やってきた謎の男性――景麒にあなたが王であると告げられ無理やり十二国の世界に連れてこられるところから物語が始まります。景麒とはぐれたあと、陽子は妖魔に命を狙われ、人々からは騙され、悪意を向けられ、救いの手を跳ね除けてしまいます。それでも少しずつ自分の心と向き合い、優しく理解ある人物と出会うことで彼女は大きく成長していくのです。
 

著者
小野 不由美
出版日
2012-06-27


このシリーズはいくつかの作品に分かれ、その中で様々な国の王が主人公として描かれています。たとえば「東の海神 西の滄海」では陽子に力を貸した延の国の王、尚隆が、「図南の翼」では供の国に住む幼い少女珠晶が主人公を務めています。それぞれの視点から見た別の十二国の姿、それが世界観をより深くしているのがこのシリーズの魅力の一つでしょう。

初めて十二国記を読み際には、一巻にあたる「月の影 影の海」から読むのがいいでしょう。そのあとは出版順に読むのもいいですし、次に陽子が主役を務める「風の万里 黎明の空」を読んで彼女のその後を知るのもいいと思います。一つ一つ話は完結しているので、気になったところから読む、でも十分楽しめると思います。

いかがでしたでしょうか。精緻な世界観と、その中で繰り広げられる恐ろしい物語、個性的な登場人物たちなど多くの魅力を持つ小野不由美作品。特にホラー描写は格別です。読むときはぜひ、真夜中にじっくりと読んでみてください。素敵な夜を過ごすことができるはずです。

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