ウェブ漫画界で絶大な人気を誇る漫画家、HEROの『浅尾さんと倉田くん』を紹介します。スマホで無料で読むことができるので、ぜひチェックしてみてください。
『浅尾さんと倉田くん』は、『ホリミヤ』の原作でもある『堀さんと宮村くん』の作者として有名なHEROの作品です。その人気ぶりはすさまじく、同じくウェブ漫画である『鈴木さん』など、HEROの作品に影響を受けたであろう作品も多く存在しています。
本作は「ガンガンONLINE」で2008年から2014年まで連載。前作『堀さんと宮村くん』を踏襲していて、4コマ漫画のような形式かつフルカラーで描かれています。名言こそされていないものの制服が同じである点などから、舞台は片桐高校だと推測できるでしょう。
魅力は何といっても、描かれる青春のリアルなほろ苦さです。友達のいなかった主人公が勇気を出して仲間を作っていくさまや、クラスメイトたちのリアルな掛け合いは、実際にこのような高校生がいるのではないかと思わされるほど。前作から見られたほろ苦い青春具合が、今作でも爆発しています。
今回はそんな『浅尾さんと倉田くん』を、最終8巻までの内容をふまえつつ紹介していきます。
- 著者
- HERO
- 出版日
- 2009-07-22
小さい頃から男の子と遊んでばかりいた浅尾蘭(あさおらん)は、そのことが原因で女子から嫌われていました。
女友達がほしいと思い、あえて男子と話さないようにしていたら、今度は男友達すらいなくなってしまいます。
そんななか同じクラスで人気者の男子、倉田忠(くらたすなお)が、浅尾さんに声をかけてきたことから物語は始まります。
彼女は友達を作ることができるのでしょうか。
主人公である浅尾さんは、小さい時からサッカーや野球など、体を動かすことが大好きな少女。そのため女の子よりも男の子と遊んでいることの方が多かったのです。
しかしそれが原因で女の子から避けられはじめ、高校に入学してからは男子とすらうまく付き合うことができなくなってしまいました。
友達0人の主人公が、人気者である倉田くんに話しかけられたことから、少しずつ友達を増やし、また自分に自信を取り戻して成長していきます。徐々に本来の明るかった自分を取り戻し、交友関係を広げていくさまは、まさに王道の青春ものといえるでしょう。
特に、斉木エリカ(さいきえりか)という女の子と仲良くなりたい浅尾さん。しかし彼女は倉田くんと付き合っていた時期があり、その倉田くんと仲がいい浅尾さんのことは快く思っていない様子です。
斉木さんと浅尾さんの距離感が、本作での浅尾さんの成長を示す指標になっているので、ぜひ注目してみてください。
- 著者
- HERO
- 出版日
- 2010-02-22
HEROの前作『堀さんと宮村くん』から継承されているのが、まぶしい青春を描きながらも、そこに登場する人物たちは繊細で、どこか影があるという点です。
『浅尾さんと倉田くん』は、基本的に高校生の日常生活を切り取ったストーリー。そこに描かれるのは恋愛や浅尾さんの交友関係の広がりがメインで、大きな事件は起こりません。
しかしながら、淡々としたストーリー展開だからこそ、登場人物たちの心理描写が際立ってきます。この作品ではモノローグが多用されているのですが、そこでの発言や表情で、キャラクターの心の動きを正確に察することができるのです。
また、何もセリフがないコマをあえて挿入したり、そのコマの背景色で心情を示唆したりと、心理描写の描き方は多岐にわたります。
登場人物たちの大半が人に言えない悩みを抱えているのも、この作品の特徴です。その悩みがどのようなもので、どのようにして解決に至るのか、その過程の心理描写は必見。ぜひキャラクターの表情や背景色に注目して読むようにしてみてください。
倉田くんという友人と出会った浅尾さんは、そこから彼の友人である東(あずま)くんや犬寺くん、クラス委員長である橋本亜梨沙、斉木さんと仲良しである橋本由美など、たくさんのクラスメイトと仲良くなっていきます。
ここで描かれているのは、浅尾さんを中心とした彼らとの掛け合いです。ふとした会話や優しさがきっかけで交流の輪が広がっていくさまは、非常にリアリティーがあります。また、浅尾さんの「女子ってなんでグループでわかれちゃうんだろう」など、学生あるあるネタも豊富です。
その空気感はまさに現実の高校生活そのもの。男女入り混じった仲良しグループ内でふつふつと沸きあがる恋愛感情や、それを取り持とうと茶々を入れる友人の行動などは、「あるある」と共感できる方も多いのではないでしょうか。
身体測定の結果で一喜一憂するところや教育実習生に対する接し方など、細かな部分も現実感溢れるセリフが満載で、まさに高校生活をのぞき見しているかのような作品になっています。
友人も増え、倉田くんとも友人以上恋人未満のような関係になれた浅尾さん。初めは友達0人の暗い女の子だったわけですから、これだけでも非常に成長したのだと感慨深い気持ちにさせられます。
しかし、浅尾さんが1番仲良くなりたいのは斉木さんです。最終8巻では、そんな本作のラスボスキャラともいえる斉木さんとの話が掘り下げられていきます。
もともと倉田くんと付き合っていたこともある斉木さんは、浅尾さんが倉田くんと仲がいいことに嫉妬していました。しかし、犬寺くんとの会話を通じ、少しずつ浅尾さんに対する感情や態度に変化が表れてきます。
そんななかで迎える最終回。浅尾さんと斉木さんの関係の変化がこれでもかと描かれ、タイトルを『浅尾さんと斉木さん』に変えてもよいのではないかと思うほどです。
詳細こそ、ぜひみなさん自身の目で確かめていただきたいのですが、これまでは斉木さんに挨拶をすることですら精一杯だった浅尾さんが、数々の仲間を得て成長してきたのだと思わされる、感動的な最終回に仕上がっています。
- 著者
- HERO
- 出版日
- 2014-06-21
青春の酸いも甘いも描いた『浅尾さんと倉田くん』。この機会に1度読んでみてはいかがでしょうか。