普通のサラリーマンから一転、ファンタジー世界へと転生してしまった主人公。伝説級の賢者と導師によって規格外の魔法使いへと成長した彼は、世界を救う英雄へと駆け上がっていきます。 2019年4月にはテレビアニメ化された本作。魔法学校で出会う美少女や仲間たちとのラブコメバトル、開幕です!
インターネット小説投稿サイト「小説家になろう」で人気を博し、書籍化・コミック化された作品。剣や魔法、魔人といったファンタジー要素満載の世界で、賢者に拾われた赤ん坊がめきめきと才能を発揮していきます。
森の奥深くで伝説級の賢者と導師(魔法使い)に育てられた主人公シン=ウォルフォードは、自分の能力の規格外さに気づかないまま、外の世界へと出てゆくことになるのです。
さらに人気を博している本作を、全巻分ご紹介しましょう!
「おお……何という事じゃ、魔物に襲われて生き残っておるとは……奇跡じゃ」
(『賢者の孫』1巻より引用)
ある日、仕事帰りの普通のサラリーマンは「危ない」の声とともに意識を失い、気づくと赤ん坊になっていました。事故によって飛ばされた異世界で生まれ変わった主人公の、規格外な生活が始まります。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2015-07-30
第1巻最大の見所は、現代の日本から異世界に転生し、そこで英雄たちに育てられたことで異常な成長を見せるシンの活躍です。彼が「じいちゃん」と呼ぶマーリン=ウォルフォードは、過去に国を滅ぼそうとした魔人を倒した魔法使いとして、「賢者」や「英雄」と呼ばれています。
そして「ばあちゃん」のメリダ=ヴォーウェンは賢者とともに魔人を討伐し、この世界の魔道具を大きく発展させた偉人で、「導師」と呼ばれている人物。さらに、シンに武道を教えるためにやってくるミッシェル=コーリングは元騎士団長で、かつては「剣聖」と呼ばれたほどの人物なのです。
シンは、そんな伝説級の人々に育てられただけでなく、日本で暮らしていた時の記憶を生かした魔道具の改良によって、若干10歳にして強大な魔物を倒せるまでに成長します。しかし彼には、1つ問題がありました。
それは森の奥深くで暮らしていたせいで、森の外の世界の常識をさっぱり知らないまま成長してしまったということ。かくして、彼は常識と友達を得るため「アールスハイド高等魔法学院」に入学することになるのでした。
伝説級の人々を養親とし、国王とも知り合いで、さらには規格外な能力を普通に扱ってしまうシンの、刺激的でドタバタな学校生活をお見逃しなく。
「大丈夫だ、資金は王家が出す」
(『賢者の孫』2巻より引用)
魔人による人類滅亡の危機が迫るなか、シンは自身が開発した魔道具と魔法を制御して、魔人を倒します。これにより国王から勲章を賜り「新英雄」と呼ばれるようになるのですが、彼には懸念がありました。
それは、倒した魔人の消滅の仕方が奇妙であったこと。そして動物的勘から、魔人が再び襲いに来ると予感したことでした。彼の悪友であり、国の第一王子でもあるアウグスト=フォン=アールスハイド(通称・オーグ)はその懸念に応え、シンが必要だと思う武器の予算を王家がバックアップすると提案します。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2015-10-30
第2巻の魅力は、再び世界に現れた大量の魔人に対抗するため、シンたち魔法学院の生徒と騎士学院の生徒が火花を散らすところにあります。
また、本巻では第1巻でシンが倒したはずの魔人・シュトロームが、実はまだ生きていたことが判明。さらにシュトロームは人工的に魔人を増殖させ、隣国である帝国を攻撃し始めたのです。
王国は魔人から自国を防衛するため、魔法学院と騎士学院の合同訓練を実施しますが、魔法学院が魔法使いを養成するのに対して、騎士学院は武術に特化した人材を養成するという方針の違いがありました。そのためお互いにわかりあえないことが多く、合同訓練は険悪なムードで始まります。
もっとも、「剣聖」ミッシェルにしごかれて育ったシンが、そんじょそこらの騎士学院の生徒に負けるはずがありません。そんな彼が魔法の力を借りずとも騎士学院の生徒と渡り合う姿は、まさに爽快の一言につきます。
それだけではありません。なんと、彼に人生初の恋人が出来るのです!今後の展開に関わる注目ポイントの詰まった一冊となっています。
「ご、ご報告が遅くなって申し訳ございません。
この度シシリーさんとお付き合いをさせて頂く事になり、
今日はその承認を頂きたく参上致しました」
(『賢者の孫』3巻より引用)
クラスメートのシシリーと付き合うことになり、彼女の両親にその報告に来たシン。彼女の父親に怒られるかもしれない、とドキドキしながら頭を下げたシンに掛けられた言葉は、意外なものでした。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2016-02-29
第3巻でまず読者が驚く場面は、「うちの娘を選んでくれてありがとう」とシシリーの父親がシンに抱きつくところでしょう。もっとも、王国の貴族であるシシリーの家では自由恋愛が禁止されているわけではないものの、男女交際は婚約ありきのものであると知らされます。
シンは結婚を視野に入れた付き合いにひるみますが、覚悟を決めるのです。かくして自他ともに認めるバカップルが誕生し、シンの生活はこれまで以上に彩り豊かなものになっていくのでした。
そんな本巻の魅力は、シンとその友達が学校で立ち上げた究極魔法研究会こと「アルティメット・マジシャンズ」が、隣国のスイード王国に攻め入った魔人集団を撃退するところにあります。
第一王子から王太子となったオーグに、シンとの魔法訓練で強化された仲間たち、そして魔人対策のために新たな魔法を創りあげたシンの活躍は、血湧き肉躍るものがあります。
しかし、彼の活躍はそれだけにとどまりません。彼は帝国に留まり続ける魔人がいつ周辺国へ攻め入ってくるかわからないなかで、各国が独自に防衛をおこなうのは妥当ではないと考えたのです。
かくして彼はスイード国王に対して、国単位での対応ではなく、各国が協力して防衛網を敷くことを提案します。魔人を倒すだけでなく、一国の王を相手にしても臆さず話すことができる彼の度胸がわかるシーンです。
「何だアイツら? バケモンじゃねえか!」
(『賢者の孫』4巻より引用)
シンたちが各国との防衛戦線のために動くなか、シンたちに撃退された魔人たちもまた作戦会議をしていました。圧倒的な力で魔法障壁を作りだし、魔人たちに攻撃を放ったアルティメット・マジシャンズは、魔人たちの間で噂になっていたのです。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2016-07-30
第4巻でスイード王国への魔人の出撃が、シュトロームの腹心の部下による戦略だったことが明らかになります。なんと部下は、シンたちの実力を分析するために、魔人たちを使い捨てにしようとしていたのでした。
そうとは知らない下っ端の魔人たちは、「捨て駒」という自分たちの立場に気づかぬまま、今度はクルト王国への侵攻を始めます。
しかし、そのクルト王国は、シンとオーグによる防衛連合に関する交渉が終わったばかりの国だったのです。シンたちは新たに生み出した魔道具を駆使して、魔人集団を迎撃します。
実はこの魔人たちは、みんな元人間。シュトロームは帝国に攻め入った際、帝国の平民たちを魔人へと変えてしまっていたのです。魔人となったことで倫理観を失い暴走する人々の姿は悲しく、そして、それをどこか能天気に無邪気に倒していくシンたちの姿は、読者を切ない気持ちにさせるでしょう。
そんななかシュトロームの部下は、アルティメット・マジシャンズの弱点に気づいてしまったのです。
魔人撃退という明るいニュースのなかで、知らず暗雲が広がってゆく……。伏線の回収に期待が高まる一冊です。
「きゃあ! 魔王シン様よ!」
(『賢者の孫』5巻より引用)
アルティメット・マジシャンズの功績が認められ、シンはアールスハイド王国国王から「魔王」の二つ名が送られます。魔王という存在がいないこの世界において、「魔王」は魔法使いの王という意味だと国民に受け入れられるのですが、納得できない人物がいました。
それが、二つ名を送られたシン本人です。彼は日本で暮らしていたころの記憶をもっているため、「魔王」に対してマイナスイメージしか持てないでいたのでした。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2016-11-30
第5巻の魅力は、シュトロームの部下によるイース神聖国のフラー大司教の洗脳、そして迫りくるシシリーへの魔の手をシンが華麗にぶっ飛ばすところにあります。オーグが魔人対策のために各国と協力関係を築こうとするなか、諸外国のそれぞれの思惑が錯綜し、連合が組めなくなってしまいます。
挙句の果てに、「協力をしてもよいが、見返りに聖女・シシリーをよこせ」と要求してくる国まで現れたのです。それが、イース神聖国でした。
シシリーは、アルティメット・マジシャンズのなかでは主に治癒魔法を担当しており、他国からも「聖女」と呼ばれるほどの絶大な人気を得ています。もちろん彼女もシンから魔法を学んでいる以上、かなり強い攻撃魔法の使い手ではあるのですが、噂しか耳にしない他国の人々がそれを知る由もありません。
大人しく、可愛く、慈愛にあふれた「聖女」というイメージが先行した結果、シシリーはありとあらゆる手段で狙われることになります。そんな彼女を魔道具の力や仲間との協力によって守り、愛を育むシンの勇敢な姿に注目してください。
「普通災害級担当って大外れだよな……それを当たりとか言っちゃう人達だからな……」
(『賢者の孫』6巻より引用)
無事に他国との会談が終わり、シンたちはアールスハイド王国へと帰ってくることになりました。そのさなか、災害級の魔物たちがシンたちに襲い掛かります。
もっともシンたちは、誰が魔物を倒すかをくじ引きで決めるなどの余裕っぷりです。当たりに喜ぶ若者たちに、同行していた他国の大人たちは頭を抱えるのでした。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2017-03-30
第6巻の魅力は、新登場のエカテリーナの存在感にあります。彼女はイース神聖国の代表であり、世界の主要宗教でもある「創神教」の教皇です。
どの国の王よりも上の立場で、一般人にとっては雲の上の存在とも言われる人物の登場に、周囲はどよめきます。そして、白金色の美しい長い髪をなびかせる彼女は、まるで何かを知っているかのように意味深な笑みをシンに向けるのでした。
そんな彼女がシンに与えた新たな二つ名が、「神の御使い」です。神を祀る立場でありながらも、神とのコンタクトをとったことのない彼女は、シンが神の御使いだと言われて動揺したことに興味を持ちます。彼を、神に深い関わりを持った人物だと睨んだのです。
一方シンは「自分が転生したことが、もしかしたら神による采配なのかもしれない」、「そのことをエカテリーナが知っているのかもしれない」と戸惑っただけなのですが、勘違いしたままのエカテリーナは止まりません。
彼を「神の御使い」とし、人類に希望を持たせる存在になってもらおうと動き始めるのでした。
「えっと……強くて、格好よくて、家族や友達思いで、その……優しいです……」
(『賢者の孫』7巻より引用)
帝国が「魔人領」と化したことで、周辺諸国は協力して「魔人領攻略作戦」を実行することになりました。もちろんシンたちも、魔人領の中枢である「旧帝国」での作戦に参加します。
そんななか、女性兵士たちにシンの魅力を聞かれたシシリーは、恥ずかしそうに彼への印象を述べたのでした。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2017-09-30
第7巻の注目ポイントは、シンたちアルティメット・マジシャンズのメンバーそれぞれにつけられた二つ名です。特にオーグは、王太子でありながらも魔物に向かって雷の魔法を炸裂させ、「雷神」と呼ばれるようになってしまいました。
他のメンバーもまた、「殲滅魔法少女」や「導師の後継者」、「戦乙女」など、勇ましい名で呼ばれるようになります。そんななか、なぜ自分だけ「魔王」や「神の御使い」といったカッコよくない名なのか……と悩むシンの姿は、読者の目に微笑ましく映るでしょう。
かくして、シンたちは周りの大人たちを立てつつ、好き勝手に魔物討伐をしつつ魔人領攻略へと備えます。しかし、そんな彼らに手柄が取られることを危惧する人物がいました。他国の指揮官です。
魔人討伐の功績を欲しがった指揮官は、シンたちが眠っているすきに魔人軍団に攻撃を仕掛け、戦闘を始めてしまいます。
シンたちが軽々と魔人や魔物を倒す姿を見て「自分たちだけでも倒せる」と勘違いした指揮官と兵たちは、瞬く間に虐殺されてしまうのです。人間の驕りに頭を抱えていたシンたちは、軍団を率いていた魔人がアールスハイド王国へ向かったと聞き、さらに焦りを募らせます。
果たしてシンたちは、母国を守ることが出来るのでしょうか?手に汗握る展開が続きます!
というわけで、シンの婚約披露パーティー以来久々のパーティーだ。
シンたちの誕生日は派手にやるぞ
(『賢者の孫』8巻より引用)
魔人相手に後手後手に回ってしまったシンでしたが、賢者マーリンと導士メリダの助力によって、なんとかアールスハイド王国最大の危機は去りました。自分たちのミスに意気消沈しながらも、王都へと帰還したのですが……。
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2018-03-30
自分たちの失敗に落ち込みながら戦場を離れ、王都へと帰還したシンたち。事なきを得たとはいえ、ミスを犯した自分たちは周りから叱責されるのでは……と思い内心ビクビクしている様子。しかし、そんな彼らを待っていたのは、叱責ではなく称賛でした。
最後の詰めを誤ったとはいえ、魔人をせん滅したことは事実であり、なおかつマーリンやメリダの活躍が民衆を喜ばせたことも大きかったようです。しかし、周りからは功績を認められたとしても、彼らは自分のミスを悔い、反省するのでした。
とはいえ、とにかく戦いはひと段落。次の戦いに備えつつも、束の間の休息を楽しむことにします。
仲間たちと憩いの時間を過ごしている時、ひょんなことからシンとシシリー、それにマリアが同じ誕生月であることがわかり、久しぶりにパーティーをしようということに。戦時中だということで華やかなことは自重していたこともあり、彼らの気持ちは浮足立ちます。
本巻はバトルシーンはなく、パーティー開催を中心とした日常を描いた一冊。魔人も登場しません。
しかし、そんな日常を描きながらも、これまでの伏線が回収されたり、穏やかなひと時の裏で何かが動き出していたりと、これまでのシリーズを思い返したり、これからの展開に期待できたりといろいろな楽しみを感じることができるでしょう。
箸休め的な巻ではありますが、読み終わった時には早く次を読みたくなること間違いなしです。
「「「魔法少女キューティースリー!!」」」
(『賢者の孫』9巻より引用)
謎の3人組、「魔法少女キューティースリー」の活躍が描かれる本巻。でも、この彼女たち、皆さんのよく知っている人たちで!?
- 著者
- 吉岡 剛
- 出版日
- 2018-12-29
オーグの妹であるメイ=フォン=アールスハイド。彼女はまだ10歳ながら、アルティメット・マジシャンズの合宿で驚くべき実力を見せ、シンからも魔法を教わっています。シンは彼女にお手製の魔法服をプレゼントするなど、かなり可愛がっている様子。
まだ幼いうえに皇族であるため危険に晒すわけにはいきませんが、この力を何かに役立てられないかと模索するアリス=コーナーとリン=ヒューズ。そんななかリンの父から、最近街で暴漢や暴行、スリが多発しているという話を聞かされるのです。そこで2人はあることを閃くのです。
そして、先にご紹介したセリフへと繋がります。そう、彼女たちはメイと一緒に、街に潜む犯罪者立ちを成敗することにしたのです。そんな彼女たちの活躍は、いかに……。
戦隊モノを思わせる登場は、読んでいてかなり不安に感じてしまうもの。しかし、そんなところが可愛らしくもあるので、要注目です。
さらに、シンがシシリーを思ってプレゼントした異物排除ができるネックレスが、思わぬ波乱を巻き起こします。ばあちゃんのまさかの発想は、思わず納得?かもしれませんね。
規格外の魔法使いがどんどん強くなっていく『賢者の孫』。ますます過熱する救国物語から目が離せません。