緻密な線で儚げな美しい少女たちを描くイラストレーター、るろお。ライトノベルの挿絵を中心に活躍し、胸に秘めるもののある複雑な心情を絶妙に表現することができる実力派絵師です。今回はるろおがイラストを手がける作品のなかでも、特に人気の高いものを5作紹介していきます。
るろおはライトノベルの挿絵を中心に活動する高知県出身の男性イラストレーターです。イラストレーターとして活躍する以前からゲーム制作もおこなっています。また「GOTHICAL BLADE」という名のサークルも主催しています。
ゴスロリ風のイラストをインターネット上で掲載していたところ編集者からのスカウトにあったことが、るろおがイラストレーターとなったきっかけです。彼のイラストは儚げで透明感のある少女たちが多く、全体的に細い線で華奢に描かれていることが特徴です。繊細な描写を得意としていることもあり、ライトノベルのなかでもアクション系のイラストを多く手がけています。
棚架ユウが執筆したWeb小説にるろおがイラストを描き、書籍化した作品です。ネット小説大賞を受賞しています。
30歳の会社員である主人公は、目が覚めると、自分が今まで見たこともないような美しい世界にいることに気がつきます。最後の記憶は真っ赤なオープンカーに猛スピードで突っ込まれる光景でした。
自分は死んだのではないかと疑う主人公のもとに、突如「これから大変だろうが、がんばれよ」という声が聞こえます。この声は何なのか……周囲を見渡して主人公は自分が動けない、体の感覚がおかしいと気づきました。
多少動かせる視線で自分の体を見下ろすと、なんと剣!主人公は、転生して剣になっていたのです。
- 著者
- 棚架ユウ
- 出版日
- 2016-07-30
読者に語りかけるような文章でサクサク読めるファンタジーラノベです。剣となった主人公はRPGゲームのように敵を次々と倒して強くなっていきます。ゲーム好きの方にはたまらない設定でしょう。
主人公が剣として戦っていくため、少々過激なシーンも多く、臨場感たっぷりに描かれる展開は本作の魅力のひとつとなっています。
るろおの描くイラストが際立って美しく、異世界の世界観を存分に堪能できるでしょう。主人公である剣はとても煌びやかでかっこよく、その剣の使い手となる猫耳のフランは純粋な可愛さを持ち合わせています。
イラストには残酷な戦闘シーンを描いたものがありませんので、グロテスクな描写が苦手な方でも純粋に楽しむことができます。また、可愛いヒロインだけでなく、ちょっとお茶目なイケメンも登場するので女性読者にもおすすめです。
RPGゲームが好きな方はぜひ手に取ってみてくださいね。
岩井恭平の小説にるろおがイラストを描いた作品で、2007年には漫画化やアニメ化もされています。
地味で人畜無害な見た目をした高校生・薬屋大助は、ある朝の駅で反対方面へと向かう電車に乗った可愛らしい女の子とまるで何かに引き合わされているかのように目が合います。
大助がとっさに電車から降りて反対ホームへ向かうと、その女の子も無意識のうちに電車から降りていて……。
- 著者
- 岩井 恭平
- 出版日
この作品は、虫に寄生された人々である「虫憑き」が物語の中心となります。もちろん本文にもイラストにも何点か虫が登場しますので、あらすじのみを読むと苦手な方は手に取るのをためらってしまうかもしれません。しかし、虫に憑りつかれているいる「虫憑き」はごく普通の姿をして、普段は他の人間と同じように日常生活を送っています。
虫憑きがはびこる世界の中で、主人公である薬屋大助と運命的な出会いを果たしたヒロインの杏本詩歌は強く惹かれ合います。
シリアスな展開もある物語ですが、本作では登場人物たちの日常生活も描かれており、主人公とヒロインの初デートはとても初々しくて読んでいてほのぼのするでしょう。そのデートの様子が微笑ましく描かれているだけあって、4年前にとある事件を起こし家族と疎遠になっていた詩歌の心情、そしてその後の彼女の行動が胸に刺さります。
本作では、深みのある世界観が堪能できるのです。登場人物たちがそれぞれ事情を抱え、歯車がうまく噛み合わない運命のなかでも希望を持ち、立ち向かおうとする姿がとても切なく感じるでしょう。
るろおが描く挿絵にももちろん虫は何度も登場します。特にカラーで描かれているリアルな昆虫には得体のしれない怖さすら感じるかもしれません。小説内の挿絵にも虫との戦闘シーンがちりばめられています。
一方、大助と詩歌を描いたカラーのイラストはとても愛らしく、こちらまで心が温かくなるようなほのぼのとした絵になっています。
るろおの初期の頃のイラストが存分に堪能できる一冊です。
杉井光の描いた小説にるろおがイラストを描いた、桜をモチーフにした戦争の物語です。
国が2つに分断され、互いにいがみ合っていた世の中でのこと。6年生になったばかりの仁川佑樹は、切ない思いを抱きながら桜を見上げます。すると自分が触れている部分だけ桜が枯れないという不思議な現象が起きて……。まさにその時、佑樹の住む町に空襲がやってきて、すべてが焼け野原となってしまいます。
- 著者
- 杉井 光
- 出版日
- 2011-02-18
戦争を取り扱う作品となりますので、シリアスな場面がたびたび描かれます。ただしこの戦争はフィクションとなりますので、ごく一般的な戦争ものよりもかなりテンポが良く、よい意味で軽快な作風ともいえるでしょう。主題こそ重く考えさせられるものですが、ライトノベルらしいかけ合いも十分楽しめますので、戦争ものが苦手な方にもおすすめです。
桜がモチーフとなっている本作に描かれているるろおのイラストは、幻想的で美しいです。イラストだけを見ると、戦争ものだとピンとこないほど現代的な登場人物たちが描かれています。
淡い色合いのなかにも桜のピンク色の華やかさがあり、そのギャップが切なさを誇張させる見事なバランスをとっています。作中では、戦争もののムードを壊すことなくチラリズムが楽しめるところもポイントですよ。
普段戦争ものを手に取らない方に読んでもらいたい一冊です。
杉井光の小説にるろおがイラストを描いたミステリーサバイバルラノベです。
新学期早々風邪で欠席したことをきっかけにクラスに馴染めず、登校しても授業をさぼってばかりいた1年B組の藍沢緋色。ある日彼女は、北校舎の屋上で長い黒髪に大きなヘッドフォンを付けた少女と出会います。
その翌日、今度は南校舎の方の屋上で、さらにそのまた翌日には図書室で、2人は信じがたい再会を果たすのです。各学年は2クラスずつ、つまりB組までしかないなのに、彼女が付けていた腕章には「1C学級委員」と書かれていて……。
翌朝、緋色がB組の隣の教室に入ってみると机と椅子が一脚、そしてクラス名簿には「七連坂未咲」という女の子の名前が書いてありました。屋上で出会った少女・未咲が背後に現れ、「ここ空き教室だよね?」と尋ねると、彼女は司令室だと言い出したのです。
- 著者
- 杉井 光
- 出版日
- 2014-11-21
主人公の緋色は4月の新年度早々学校を休んだことが原因で、クラスからのけ者にされていました。しかし、毎週水曜日に起こる、全滅させなければ日常に戻れないという死のゲームにおいては緋色が司令官(コマンダー)であり、クラスを率いて戦わなければなりませんでした。
サバイバルゲーム自体は完全なるファンタジーの世界ですが、緋色の置かれている環境や、常に人を上下関係で見るカースト制がはびこっているクラスの状況は、とても現実的に描かれているのです。
戦闘シーンを取り扱っていながらも、緋色をはじめとする生徒たちの不安定な心情が透けて見えるような透明感、そして表情のあるキャラクターのイラストは見ごたえがあります。特に物語のキーとなる黒髪にヘッドフォンをした未咲のイラストは、一見どこにでもいそうな少女なのに、何を考えているのか分からないような絶妙な表情をしています。
海冬レイジの小説にるろおが挿絵を描いたファンタジーアクションラノベです。小説は全17巻で、漫画化やテレビアニメ化もされた大人気作品となります。
機巧魔術(マキナート)で栄えているイギリスの都市リヴァプールが舞台です。そこに、東洋人とおぼしき風変わりな容貌を持つ人形使いの少年の赤羽雷真と、雷真の自動人形である少女の夜々(やや)が訪れていました。
2人は、人形と人形使いの最高学府である英国ヴァルプルギス王立機巧学院のトップをとるためにやってきた日本からの留学生だったのです。
- 著者
- 海冬 レイジ
- 出版日
- 2009-11-19
本作は魔術回路を内蔵する自動人形とその人形使いがペアとなり繰り広げるファンタジーアクションとなります。バトルシーンも魅力ですが、何といっても雷真と夜々のコメディタッチなやり取りが可愛くて面白く、時に色っぽいところが見どころです。夜々は事あるごとに雷真に色っぽい言葉をかけるため、こちらまでドキドキさせられてしまいます。
本作でるろおが描く雷真と夜々は、ほれぼれしてしまうほど美しいものからコメディタッチの可愛いかけ合いまで、実にさまざまな表情を見せているのです。
特に冒頭のカラーイラストは大変色っぽくて見ごたえがありますよ。日本出身らしく和装に近い雷真と夜々とは真逆となる西欧風のキャラクターも登場しますので、とにかくいろいろなデザインが楽しめる作品です。
ぜひ夜々の愛らしさを文章とイラストの双方から楽しんでみてくださいね。
ファンタジーから戦争ものまでさまざまなジャンルの挿絵を手掛けるイラストレーター、るろおの人気作品をご紹介しました。ぜひ好きなジャンルの作品から手に取って、物語とイラストを堪能してみてくださいね。