学ラン姿のおっさんが、中学生として青春を謳歌する!中身は14歳の中年男性が主役のちょっと切ないギャグ漫画『第三次性徴期、大塚くん』が、スマホアプリの「マンガUP!」で無料購読可能です。この記事では本作の魅力を最終回までのネタバレを交えてご紹介します。
体は40歳、だけど心は14歳の中年中学生、大塚剛(おおつかつよし)。彼の苦悩にまみれた学生生活を描いたギャグ漫画『第三次性徴期、大塚くん』は、中年の悲哀と思春期の青春の甘酸っぱさが組み合わさることによって、ちょっと切なく笑える作品です。
1987年に不慮の事故で意識不明となった少年、大塚剛が26年という年月を超えて、奇跡的に目を覚ましました。体だけはしっかりと中年になってしまった彼は中学校に復学することになり、苦労しながらも青春を取り戻そうとしていきます。
本作は、スマホの漫画アプリ「マンガUP!」で無料で読むことができるので、気になった方はチェックしてみてください。この記事では魅力を最終回までにネタバレを含めてご紹介していきます。
- 著者
- 君塚 力
- 出版日
- 2014-03-22
心が14歳の少年のままなのに、体は40歳のおっさんになってしまった主人公、大塚剛の中学校生活を描いたギャグ作品です。設定の時点ですでに普通ではないことがわかりますが、その展開はやはり波乱万丈。
全編をとおしてギャグにあふれた構成なものの、ハイテンションなノリと勢いで笑わせるというよりは、中学生男子が中年の男性ならではのちょっと切ない悩みに直面することで起こるギャップに、思わず笑ってしまいます。
14歳であればほぼ気にすることがないような薄毛や加齢臭といった中年男性特有のトピックスも、大塚にとっては放っておけない問題です。また、そもそも同級生たちとは26年間ものギャップがあるため、心は同い年であるはずなのに特上のジェネレーションギャップに悩まされることもしばしばです。
現実に照らし合わせて考えると結構シビアな問題である気がしますが、本作はそこを面白おかしく表現していて、気持ちが沈み込むことなく読み進めることができます。
- 著者
- 君塚 力
- 出版日
- 2014-09-22
体だけが先に中年になってしまった大塚ですが、それでも中学生。彼を取り巻く環境は思春期特有の出来事であふれています。
見た目40歳を超えた成人男性があたふたと対応する光景は、本作における最大の魅力だと言ってもよいでしょう。
思春期の少年少女といえば、親と一緒にいることの気恥ずかしさなどから反抗期を迎えることがありますよね。大塚も例に漏れず、両親の選ぶ服のセンスや、部屋に勝手に入られることに対して拒絶反応を示すなど、立派な反抗期を迎えています。
普通の少年であれば当たり前の光景ですが、40歳の大塚が親に反抗している姿は、はたから見ると非常にシュールで違和感に満ちています。
このように、彼本人にとっては当たり前の出来事が、第三者視点で見た時にはとんでもない非日常的な光景へと変貌してしまう巧みな構成です。
- 著者
- 君塚 力
- 出版日
- 2015-04-22
中身は14歳とはいえ、その見た目のため人間関係に悩まされそうな大塚ですが、実際の彼は意外と友人に恵まれています。大塚と頻繁に行動をともにする同級生に、三好(みよし)と桜井(さくらい)という2人の男子がいて、彼らとの愉快で騒がしい日常は、読者に笑いを提供し続けてくれることでしょう。
そんな友人たちとの日常ですが、笑いだけではなく、ちょっと心温まるエピソードも随所に散りばめられています。
当初は「接し方がわからない」「変態」「ロリコン」と言われていた大塚ですが、しだいに何事にも純情で真っ直ぐな彼の人間性が伝わり、三好や桜井ら友人たちの心を動かして友人として接してくれるようになるのです。
それまではずっと敬語を使われていたのに、初めてタメ口で話しかけてもらった大塚が目に涙を溜めている様子は、読者もウルッとしてしまいます。
26年間という空白の時間があるからこそ今を全力で生きようとする彼は、時に自分の身を顧みずに友人を助けようとすることもあり、読んでいて前向きになれるでしょう。
本作の目玉ともいえる要素が、大塚の恋愛にまつわるエピソードの数々でしょう。
中学校に復学した彼が好意を抱くことになるのが、おしとやかで優しい心根が魅力の村瀬結衣(むらせゆい)という女子です。村瀬はイマドキという言葉が似合わないほど純粋な女の子で、作中では顔も性格もイケメンな男子中学生に好かれており、大塚がライバル視される描写もあります。
そんな大塚と村瀬の恋愛事情ですが、当然ここにも普通の中学生同士では起こり得ない問題が生じてきます。
まず年齢ですが、大塚が40歳、村瀬は14歳であるため、その年齢差なんと26。村瀬の父親と大塚は1歳しか違わないため、彼女にとっては親とほぼ変わらない年齢の男性と付き合うということになってしまいます。
そもそも、成人男性が14歳の女の子と付き合うという時点で、法律的にはほぼアウトです。本人たちがいかに純愛を主張したところで、事情を知らない人から見れば大問題……。
そんな2人の恋愛は、当然障害だらけでハプニングの連続となってしまうのですが、大塚はそんな悩みに直面しながらも彼女との恋を諦めずに奮闘し続けます。
ギャグ中心なので軽めのノリで面白おかしく読めるのですが、着実に進展していく2人の関係がどう決着するのか、皆さんでぜひ確認していただきたいです。
- 著者
- 君塚 力
- 出版日
- 2015-04-22
さまざまなハプニングに満ちあふれた大塚の学生生活ですが、最終回が近づくと、いよいよ卒業を見据えて物語が展開していきます。
中学生として青春を謳歌してきた大塚ですが、社会的に見れば40歳の男性です。クラスメイトたちは受験を含めて進学を意識しているなかで、彼は就職を見据えた自身の進路決めに思い悩みます。
ここにきてかなりシビアな問題に直面しますが、職業体験などを通じて進路についてしっかりと考えた結果、自らの人生を左右する問題に答えを出しました。14歳の少年が周囲とは異なる進路について真剣に考え抜く姿には、なんとも心揺さぶられるものがあります。
そして最終回は、大塚が全力で駆け抜けた青春の幕引きということで、これまでの慌ただしくも愉快な日常が思い起こされるような、ほんのり切ない、けど爽やかなエンディングとなっています。
ちょっと切ないのに思わず笑えてしまう魅力にあふれた作品『第三次性徴期、大塚くん』。ちょっとノスタルジックな気持ちに浸りたい社会人の方にもおすすめです。ぜひご一読ください。