スマホアプリ「マンガワン」で無料公開されている人気漫画『しのびがたき』は「侍」と「忍者」の対立と戦いを描いた作品です。シリアスなテーマで物語が展開していきますが、見ごたえのあるバトルシーンと随所に盛り込まれるギャグシーンが物語を引き立てます。
- 著者
- 飛田 ニキイチ
- 出版日
- 2016-09-16
『しのびがたき』は、侍と忍者の戦いを描いた作品。圧倒的な画力で描かれるバトルシーンが見どころです。
忍者は強大な力を有しており、侍より高い地位にありました。ほとんどの侍は忍者により滅ぼされ、わずかな数しか残っていません。このまま黙って支配されているわけにはいかないと、虎之助とその仲間たちは忍者に立ち向かっていきます。
本作は侍と忍者の和風バトル漫画ですが、見どころはそれだけではありません。キャラクターの個性や、物語の合間に挟まるギャグシーンも必見です。
見どころ盛りだくさんの『しのびがたき』の魅力をご紹介します。
- 著者
- 飛田 ニキイチ
- 出版日
- 2017-02-17
主人公の虎之助は、一族を忍者に滅ぼされた侍。忍者への復讐心に燃えていました。同じく家族を忍者に殺された少女、紅璃と出会い、行動を共にします。
ある時情報屋から、復讐を果たすのに打ってつけのネタを手に入れました。それは、忍者を率いている尾長信影の暗殺という計画。信影の部下には、虎之助がもっとも復讐したい忍者である風丸もいます。
敵は強大ですが、虎之助は風丸と戦うために、信影暗殺の任務に向かうことを決めました。
まず目に飛び込んでくるのが、作者飛田ニキイチの画力の高さでしょう。
繊細かつ力強いタッチで、キャラクターだけでなく背景まで丁寧に描かれています。しかも無駄になっているコマがひとつもなく、小さいコマにも細かい描写が施されているのです。
作中には、虎之助や風丸が体に宿す「守護獣」という獣が登場します。彼らは大きくて獰猛で、縦横無尽に暴れまわります。迫力あるタッチで描かれる守護獣とのバトルは必見です。
物語の展開が気になってどんどん読み進めてしまいますが、1ページずつじっくり見ることをおすすめします。
「変幻自在の術を使い
その身に魑魅魍魎の力を宿した……人ならざる者『忍者』
迎え撃つは
厳しい鍛錬の末に己が魂を込めたただ一つの武具を以て
人を越えた力と技を身につけた者……『侍』」(『しのびがたき』1巻より引用)
『しのびがたき』に登場する侍と忍者は、史実とは異なります。
侍は「剣気」というオーラを武具に纏わせると絶大な力を発揮し、一方の忍者は忍術により自分の姿を変えたり、身に宿した守護獣を召喚したりしてて戦います。侍と忍者の絶大な力のぶつかり合いは、本作の大きな見どころです。
両者とも特殊な能力を有していますが、侍は忍者の人ならざる力の前に苦戦しており、虎之助の一族のように、これまで多くの侍が滅ぼされてきました。忍者を率いる尾長信影の勢力が、物凄い勢いで拡大しているのです。
そのような状況下で、虎之助はひとり、戦っていました。
実は虎之助、侍でありながらも、忍者の能力を有しています。それは、自分の一族を滅ぼしたかつての友人、風丸が、自分の持つ守護獣の力の一部を虎之助に与えたから。虎之助は刀を武具としつつも、己の右腕に宿っている守護獣である虎の能力も用いて戦うのです。
忍者のなかでもとりわけ風丸に対する復讐心が強く、彼にたどり着くために忍者を追っています。
侍と忍者がくり広げるバトルはもちろん、個性豊かな登場人物たちも魅力的です。
シリアスな物語のため、彼らもどこか緊張感があり表情が硬い印象なのですが、コミカルな一面も持っています。
本作では、ハラハラするようなシーンで険しい顔をしていたと思うと、その直後のコマがギャグシーンとなっていることがよくあります。生死をかけたバトルの最中にギャグが挟まることによって、笑えるだけでなく、彼らなら絶対勝ってくれるという安心感も与えてくれるのです。
並外れた力を持つキャラクターたちが意外なギャップをもっていることは、彼らを人間臭く見せ、読者に親近感を沸かせることに一役買っています。
当初、虎之助はクールで愛想の無い孤高の侍でしたが、その姿は彼が自ら作り上げたキャラクターであり、本当の虎之助は仲間を信じて大切にする人です。
物語序盤は仲間を冷たくあしらう様子が多々見られたのですが、そのような態度を取っていたのは、「復讐を誓う侍は孤高の存在であるべきだ」という思い込みによるものでした。 虎之助いわく『武士龍剣伝』という読み物の登場人物を参考にしたそうですが、好きな読み物のキャラクター像を真に受けて、あるべき姿を真面目に語るところを見ると、少し抜けているところがあるのかもしれません。
素の自分がバレてからは復讐者キャラを演じることはやめたようです。仲間からもからかわれ、読者もキャラの変貌ぶりには少々戸惑いますが、素の方が好感が持てるでしょう。
本作のアイドル的ポジションである少女・紅璃は、元気で明るい女の子です。戦いに慣れていないため、忍者に直接対峙することはありませんが、弓の名手でその実力が買われ、信影暗殺の任務に同行します。
虎之助の守護獣の虎を勝手に「タマ」と名付けたり、仲間である兜をかぶちんと呼んだり、あだ名を付けることが得意な様子。持ち前の明るさでシリアスな雰囲気を跳ねのけてくれるムードメーカーです。
そのほかにも、チンピラのような風貌だけど人情にあつい鬼山金次、怪力の巨漢でありながら内気で穏やかな性格の熊山兜、凛々しい女剣士にも関わらずウブで純真な静部阿耶子、飄々としているけれど確かな実力を持つ赤樫点陣など、個性豊かな仲間たちが物語を盛りあげます。
- 著者
- 飛田 ニキイチ
- 出版日
- 2017-06-12
敵に捕らわれた紅璃を無事に奪還するも、忍者たちが立ちはだかり、虎之助たちは行く手を阻まれてしまいました。
そこで忍者と侍の戦いがはじまり、虎之助は因縁の風丸に刃を向けます。
ところがその様子を見ていた尾長信影は、部下のひとり亜琶が使う、木の根を操る忍術を奪って地割れを起こし、忍者も侍も散り散りにしてしまいました。
部下の忍者と虎之助たちが殺しあうように仕向け、「もし侍たちが勝って信影のもとにたどり着いたら、自身の首をくれてやる」と豪語します。仲間とはぐれてしまった虎之助は、ひとりで圧倒的な強さを持つ忍者と戦わなければなりません。
侍と忍者、勝つのは一体どちらでしょうか。また、虎之助は再び風丸と相見えることができるのでしょうか。今後の展開から目が離せません。
侍と忍者のくり広げる壮絶なバトル漫画ですが、登場キャラクターたちがコミカルな一面を持っているので、シリアスなだけでなくギャグとしても楽しめるバラエティに富んだ作品となっています。画力の高い飛田ニキイチによって描かれる迫力あるバトルシーンも見どころです。興味を持った方はぜひ読んでみてください。