「イッツマイライフ」は、元騎士団隊長のアストラと魔族の少女ノアの日常を描いたほのぼのファンタジー漫画です。今回は、元騎士のおじさんと魔法使いの幼女という異色コンビの日常の魅力をご紹介します。
『IT’S MY LIFE(イッツマイライフ)』は、騎士団を引退し隠居生活を謳歌するアストラと魔法をうまく扱えないドジな女の子ノアの日常を描いた作品です。
おじさんと幼女の絆や、2人を取り巻く癖の強いキャラクターたちが本作の魅力のひとつです。
- 著者
- 成田 芋虫
- 出版日
- 2015-03-12
アストラとノアの日常が物語の中心ですが、ほのぼのとしたギャグに絶妙に織り交ぜられるシリアスシーンは物語の重要な鍵となっており、アストラやノアの秘密が少しずつ明かされていきます。
ここでは、日常ファンタジーでありながらシリアス要素も備えた『IT’S MY LIFE(イッツマイライフ)』の魅力をご紹介していきます。
騎士団隊長を務めていたアストラは、昔からの憧れだったマイホームを手に入れ、隊長を引退します。新たな生活に心躍らせる彼でしたが、引っ越し早々に窓から女の子が突っ込んできて、新居が傷つけられてしまいます。
その子は魔女で、今より強くなりたいと願い、500年前に存在したとされる伝説の邪神を探していたのです。彼女はアストラを邪神と勘違いして、下僕にしてほしいと頼みます。
自分は邪神ではないと断ろうとしたアストラですが無垢な瞳を前に断り切れず、とりあえず彼らは一緒に暮らすことになりました。
『IT’S MY LIFE(イッツマイライフ)』はまずその絵の美しさが目を引きます。特にカラーページはファンタジーの世界観にふさわしく、淡く光っているような色使いで思わず見入ってしまうでしょう。本編も細かく丁寧に描き込まれています。
そして、何といってもノアが可愛いのです。彼女はアンティキティラ族という珍しい種族の魔女で、銀色の美しい瞳が特徴です。作中でその瞳は特に繊細に描かれ、そのキラキラとした輝きはとても魅力があります。
また、ノアは笑ったり泣いたりと表情豊かな女の子。その愛らしい表情もひとコマずつ丁寧に描かれています。
- 著者
- 成田 芋虫
- 出版日
- 2015-06-12
さらに、キャラクターたちはファンタジーな世界観に合った服装をしており、どれも緻密な設計となっています。特にアストラは騎士団の衣装と仮面を常に身にまとっており、その衣装は構造がやや複雑ですが、細部まで丁寧に描かれているので迫力があります。
『IT’S MY LIFE(イッツマイライフ)』は、ストーリーだけでなく高い画力で楽しませてくれる作品なのです。
この物語の主人公であるアストラ・ルドガー・ドゥームズデイは身長202㎝、体重109㎏という巨体の持ち主で、剣の達人です。帝都ユースティティア聖騎士団に入団し、25歳の時には1番隊の隊長に就任し、そこから10年間隊長を務めていました。
その実力の高さから聖騎士団の副団長にならないかと声をかけられていたものの、あっさり騎士団を引退してしまいます。まだまだ働き盛りの35歳で、彼が引退してしまったのはなぜなのでしょうか?
彼は若いころからマイホームで暮らすという夢を持っていました。しかし、マイホームを購入するにはお金が必要です。実のところ彼は、自分の能力を活かせる騎士として働いて資金集めをしようと騎士団に入団したのでした。なかなかの変わり者です。
資金が集まり、無事にマイホームを購入することができたアストラ。騎士団に対する未練はまったくなさそうで、意気揚々と新居へ向かうのです。
彼は常に騎士団の衣装をまとい、顔を仮面で覆っています。そのいかつい風貌に似合わず、マイホームでの隠居生活に胸を弾ませる姿は可愛らしく、見た目とのギャップがたまりません。
見た目は怖そうな彼ですが、性格は至って温和で、優しい心の持ち主。部下たちやノアに慕われています。部屋に置くインテリアにこだわったり、家庭菜園を始めたりと家庭的な一面もあります。
しかし、家を大切にするあまり、家を傷つける者には厳しく、時には殺意すら覚えることもあるほどです。家だけでなく、大切な友人であるノアを傷つける者にも容赦はしません。
とはいえ、心優しい彼は力で解決しようとするのではなく、相手に優しく教え諭すこともあります。彼のその優しさは多くの人を惹きつけるのです。
魔法少女のノアとの出会いは引っ越し早々窓を割られ、そのうえ邪神と勘違いされ、ノアを狙う竜人たちが襲ってくるなど立て続けにトラブルが起こるという最悪なものでしたが、身寄りがなく友達もいない孤独なノアを「対等な友人でいてくれる同居人」として引き取ります。
それ以降ノアを大切に思い、彼女がピンチになると必ず助けに行きます。ノアにとってかけがえのない存在であるアストラですが、彼自身にとってもノアの存在が癒しになっているのです。元騎士のおじさんと魔法使いの幼女という不思議な組み合わせですが、2人のほほえましい関係は読者にも癒しを与えます。
アストラとノアの日常や、2人を取り巻くキャラクターたちとのギャグシーンが見どころの物語ですが、時折シリアスな展開が訪れます。物語において重要なシーンであり、アストラやノアの過去が垣間見えます。2人の過去は物語の核ともいえるでしょう。
特にノア自身の魔力には大きな謎が潜んでいるようです。また、「アンティキティラ族」に関するエピソードは、ノアだけでなくアストラにも何らかの関わりがありました。
ノアは魔女でありながら魔法が苦手。しかしそれはただ単に魔法をうまく扱えないからではなく、内に秘めた魔量が強大で制御ができないからだったのです。普段空を飛んだり、火や水を扱うような魔法はまったく使えませんが、身に危険が迫ったときは無意識に防御することができるようです。
さらに、アストラの身に危険が迫ったときも魔法を発動させることがありました。人間であるアストラは魔法が扱えないため、魔法を扱う者と戦う時は敵に魔法を使われる前に倒していましたが、魔法で作られた神殿の守護者相手には苦戦を強いられます。それを見たノアはアストラを守るべく魔法を発動し、守護者を倒しました。
- 著者
- 成田 芋虫
- 出版日
- 2015-10-09
小さな女の子であるノアがこのような魔力を持っているのは一体なぜなのでしょうか?
この魔力と関係があるのか、ノアは時々アンティキティラ族と思しき女性の夢を見ます。はるか昔に存在したその女性はアークティカといい、かつて邪神を倒した聖女として知られているようですが、ノアとどんな関係があるのでしょう。
ノアがアストラを守るため魔法を発動したとき、アストラもこの女性の幻を見かけていました。彼は女性の姿になぜか懐かしさを感じます。彼もこの女性と何らかの関係があるのでしょうか……。
ほのぼのとした日常のなかにもいくつかの謎が隠れていて、今後物語がどう展開していくのか目が離せません。
ノアの秘密が明かされていくごとに、シリアスなシーンが増えていきます。
前巻ではアストラたちの目の前に現れたノアと同じ姿をした「邪心」という少女がノアと邂逅したことにより封印が説かれ、ノアの夢に現れるアークティカと瓜二つの姿に変化し、アストラを捕えてしまいました。
さらに、アストラの家が「方舟」に姿を変えてしまいます。アストラとノアがこの家に引き寄せられたことには訳があったのです。
- 著者
- 成田 芋虫
- 出版日
- 2017-07-19
『IT’S MY LIFE(イッツマイライフ)』第8巻は、捕らわれてしまったアストラを救出すべく奮闘するノアたちと、アークティカや邪神についての謎を中心に展開されていきます。
アークティカは邪神を倒した聖女として祀られていますが、果たして本当にそうだったのか、という過去の出来事にスポットが当てられます。アークティカと邪神の伝説の裏には悲しい過去が隠されていたのです。その過去の謎が、ノアとアストラに関係していたことも判明します。
また、ノアと同じ姿をした「邪心」という少女、そしてカナンと名乗る少女の正体も明らかになりました。
一方アストラは捕らわれた先で、夢に現れるようになった謎の男に出会います。彼は方舟となったアストラの家やアークティカについて何か知っているようです。彼は一体何者なのでしょう?また、ノアたちは無事アストラを救出することができるのでしょうか……。
この巻ではさまざまな謎が解け、急展開を迎えることになります。
9巻では8巻の怒涛の展開を経て、これでもかというほどにオールスターが登場し、迫力のバトルを繰り広げます。
邪心はアストラを動力室のような場所に閉じ込めていましたが、彼はぱちりと目を覚まし、そのあと自らの物理的な力だけで制御を解きます。すごすぎ。
そして考えるのではなく、まずは行動だ、とつぶやき、「平穏な生活を取り戻すために」と前を向いて歩き始めます。
ただし、裸。
かっこいいことを言っても、裸。
本作を読んでいる方ならば誰しも期待するところであろう、このサービスシーン。アストラの筋肉隆々の体に、体毛がたまりません。不思議な中毒性があり、どんどん心待ちにしてしまう作品の魅力のひとつです。
そして無事服を見つけた後は、家具ごと方舟(家)を取り戻すことを決意し、「家に帰るまでが遠足だ」とピクニック気分で邪心の舟内を歩き回るのでした。
残念ながら服は着てしまったものの、それ以外にもツッコミどころが多いです……。
- 著者
- 成田 芋虫
- 出版日
- 2017-12-12
一方ノアたちは邪心を止めるため、そしてアストラを取り戻すために方舟へと向かいます。しかしその途中で邪心が登場。竜騎兵団を一掃して彼らの前に現れた彼女は、ノアを見て「貴女(あなた)がいないと…わたしが完成しないもの」と意味ありげなことを言います。
そしてノア以外邪魔だと言って、大量の死んだ魔物に魔力を吹き込んで操り、一行を襲ってくるのでした。
一瞬姿を表したものの、そのあとすぐに方舟に戻ってしまった邪心。こっそり舟に向かっていたもののバレてしまったので、一行は転送魔導で真正面から一気に舟内にたどり着きました。
そこからはオールスター勢揃いで、舟外と舟内での迫力満点の戦いが行われます。特にドラゴンのごあごあと彼のパートナーとも言えるヤボヨーの戦い、リジイアの現役感溢れる立ち回りなどはかなり見ごたえあるもの。涙と胸熱が止まらない内容、終盤にかけてどんどんスピード感をます展開をぜひ作品でご覧ください。
元騎士のおじさんと魔法使いの幼女という異色のコンビですが、ほのぼのとした日常に癒されたい方や、ファンタジーが好きな方におすすめの作品です。彼らの絆や秘密に興味が湧いた方はぜひ読んでみてください。