『¥十億少女』が面白い!愛憎混じりの王道漫画の魅力を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.11.11

『¥十億少女』は、女子高生の主人公が父の借金から家族を守るため、名前も知らない男と突然結婚することになってしまうところから始まります。今回は、本作の魅力をたっぷり紹介していきます。

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漫画『¥十億少女』の魅力を全5巻ネタバレ紹介!借金のカタに嫁いだ家はかなりの訳あり!?

酒井美羽が描く『¥十億少女』(ビリオンガール)は漫画雑誌「メロディ」にて連載され、その後「月刊Asuka」に移籍。あすかコミックスで単行本が発売されますが、長い間未完の状態でした。しかし、2014年に続編の書き下ろしを加えて発売された講談社漫画文庫版で完結しました。

著者
酒井 美羽
出版日
2014-09-12

 

借金のカタに結婚させられる設定は王道そのもの。しかし、それ以上に登場人物の抱えた闇や、ドロドロの人間関係に読者はハラハラドキドキさせられます。登場人物もイケメン揃いで逆ハーレム状態なのに、さほど関心を示さない純粋な主人公が可愛らしいです。

今回は、そんな『¥十億少女』の見どころを文庫版として区切られた全5巻から紹介していきます。

 

『¥十億少女』は逆ハーレム、シンデレラストーリーなど乙女の夢が詰まってる!【あらすじ】

『¥十億少女』は逆ハーレム、シンデレラストーリーなど乙女の夢が詰まってる!【あらすじ】
出典:『¥十億少女』1巻

 

主人公の大葉鹿の子(おおばかのこ)は父の借金のカタに、北条家17代当主にして官能小説家という顔をもつ男、北条大我と結婚させられてしまいます。少しずつ距離を縮める2人ですが、簡単に幸せが訪れるわけもなく、昔から続く大我と兄の泥沼の争いに巻き込まれたり、たびたび誘拐されてしまったり、次々と現れる男性陣が鹿の子に無理矢理キスしたり……と波乱万丈です。

そして、北条家の複雑な家庭環境だけでなく、鹿の子の親友、雨宮にも隠された事情があるため、鹿の子は振り回され続けます。果たして彼女は幸せを迎えることができるのでしょうか……?

 

シンデレラストーリーは10億円のカタから始まる!【1巻ネタバレ注意】

 

『¥十億少女』の主人子は、明治時代から続く和菓子屋の娘、大葉鹿の子。親友の雨宮鳩彦(あまみややすひこ)やちょっと気になる男子の忍成数馬(おしなりかずま)、自分を慕う後輩の壬生竜也(みぶたつや)に囲まれ、彼女は貧しくも穏やかで幸せな生活を送っていました。

しかし、父の借金のせいでホームレスのような風体の男と結婚させられることに。一週間後の嫁入り当日、忍成の告白から逃げ出した鹿の子を迎えに来たのは1週間前とはまるっきり別人の北条大我という男でした。いったい彼の正体とは……?

 

著者
酒井 美羽
出版日
2014-09-12

小汚い男が実はイケメン官能小説家だった!という、まさに王道の展開は、少女漫画好きの読者にはたまらないでしょう。次々と明かされる大我の人間性は読者の関心を引き、彼の多少強引で自信家な面も、正体を知れば、なるほどと納得させられてしまいます。

結婚したからといってラブラブになるわけもなく、鹿の子はほとんど山羊の世話係状態。そんな2人の結婚生活を支える執事の帯刀は、なかなかよいキャラクターをしていて、怖い顔とは裏腹にお茶目で可愛い面もあります。 

1巻のラストで明かされる、大我が鹿の子を嫁にもらった本当の理由や、鹿の子が忘れていた過去の話は胸キュン必至です。

鹿の子と伊集院家の秘密【2巻ネタバレ注意】

少し距離が縮まったかと思いきや、鹿の子のある台詞で大我の態度が急変。結婚の解消を言い渡されてしまいます。

そんな矢先に、鹿の子はチャンスとばかりに現れた大我の腹違いの兄、伊集院礼王に拉致されてしまい……。ジャイアニズム丸出しの彼が企んでいることや、大我と兄の複雑な関係はどうして!?の連続で、思わず引き込まれてしまうでしょう。

なんとか逃げ出した鹿の子は、偶然出会った男性に服を借り、親友の雨宮宅へ避難。 翌日服を返しに出会った男性を訪ねると、そこにはなぜか大我がいました。実は、彼は大我の小説家仲間である丹後夜理人だったのです。再会した大我と鹿の子は仲直りをしますが、鹿の子のある荷物を見て、大我が突然気絶してしまい……。

著者
酒井 美羽
出版日
2014-09-12

2巻では礼王の思惑や、彼と大我のほの暗い過去の一端が明かされます。過去にとらわれたせいか、少々狂気じみた礼王と彼の母の言動に鳥肌が立ちます。ホラー漫画さながらの親子の異常さは衝撃的です。彼らにとって、誘拐するのは鹿の子でなければならない理由があるようで……。礼王が自分の思惑を鹿の子に押し付ける場面は迫力満点です。

ほの暗い過去が、気絶した大我の夢として彼の視点で明かされるのですが、それがまたドロッドロ。幼少期にこんな目に合えば、彼がトラウマのフラッシュバックでおかしくなるのも理解できます。その悲劇的な過去には、なぜ幼い子がこんなに傷つかなくてはならないのかと、胸が苦しくなるほどです。 

そして、過去の経験のせいでトラウマを抱える大我に、鹿の子が言った言葉は非常に可愛らしく、純粋さを感じさせてくれます。悲しい話からほっこりする展開を迎え、心を温かくしてくれることでしょう。

礼王の過去【3巻ネタバレ注意】

実家に荷物を取りに行った鹿の子は、礼王の部下により忍成とともに誘拐されてしまいます。雨宮から誘拐を聞いた大我は、鹿の子を奪還するため伊集院の家へ。しかし、玄関で待ち受けていた礼王に足を刺され、牢屋へ監禁されてしまいます。

その後、礼王は自分の生い立ちを鹿の子に打ち明けます。自分を慰めた鹿の子を気に入った彼は、彼女を手籠めにしようとして……?

著者
酒井 美羽
出版日
2014-11-12

『¥十億少女』3巻最大の見どころは、礼王の視点から明かされる過去です。大我とは違う意味での孤独を抱えた彼の生い立ちは、あまりに酷な話で、悪役なのについ同情してしまいます。そのうえ追い打ちをかけるように、彼の身に起きた悲劇。当時の彼の気持ちは想像を絶するほどの絶望だったでしょう。

自分を責め続け、愛する母には強く当たることもできず、やり場を失った彼の怒りは理解できます。だからといって大我や鹿の子を傷つけていい理由にはなりませんが……。散々2人の邪魔をして苛立たせてくれた礼王なので、読者は何とも複雑な心境にさせられるでしょう。

一方、誘拐された2人のために奔走する雨宮と壬生は、メインのシリアスな展開とは打って変わって、かなりコミカルで笑えます。暗い気持ちになる展開だっただけに、ラストは2人が明るい気持ちにしてくれます。

逆ハーレム展開が止まらない!【4巻ネタバレ注意】

『¥十億少女』2巻で登場した白神玖貴が雨宮を占ったことで、謎多き彼の正体が明かされます。そんな雨宮とともに参加したパーティーで、まさかのある人物が鹿の子に告白……!

そんな鹿の子に不吉な予言を授ける玖貴の姉、瑠伽が登場します。予言どおり現れた礼王の部下たちから、病気で死にかけている礼王のもとに来てほしいと言われてしまいます。

一度は拒絶するものの、礼王が死ぬ夢を見た鹿の子は病室へ向かってしまい……?

 

著者
酒井 美羽
出版日
2014-11-12

この巻では、ついに雨宮の正体が明かされます。謎に包まれていた彼の正体は、それまでの予想を超えて驚かされるでしょう。

また、鹿の子争奪戦に名乗りを上げる人物にもびっくり!彼からの好意に動揺する鹿の子は、とてもピュアで可愛らしく、甘酸っぱい恋模様に癒されます。

しかし、友人たちだけならまだしも、自分を襲った礼王の病状を憂い、気持ちが揺れる鹿の子の姿は、お人好しもここまで来たら逆に腹立たしく思えます。礼王に生きてほしい彼女の思いも理解はできますが、大我に何も告げずに礼王とあり得ない約束までしてしまい……読者は、そんな彼女にやきもきさせられることでしょう。
 

いつになったら2人は安定してラブラブになるの!?とつい展開を焦ってしまいますが、そう感じてしまうのは、本作が読者の感情を強く動かすことができるからこそ。読み進めるごとに、続きが気になって仕方がなくなるのが『¥十億少女』の魅力のひとつだといえます。

真実を知った鹿の子の決断とは?【5巻(最終回)ネタバレ注意】

礼王の部下から鹿の子の居場所を聞き、病室へ駆けつける大我。鹿の子は、反対する彼を説得して礼王が回復するまで見守ることになります。手術が終わり、一旦学校へ登校した鹿の子は、雨宮にモデルの仕事へ連れていかれ……。しかし、撮影の途中で雨宮が血を吐いて倒れてしまい、重い病気であることが発覚します。

雨宮を心配する鹿の子ですが、大我に説得され家に帰るため礼王の病室へ。鹿の子を手放したくない礼王は、大我の隠された秘密をバラしてしまい……。その秘密にショックを受けた鹿の子は、大我のもとから逃げ出してしまうのです。

著者
酒井 美羽
出版日
2014-11-12

そんな状況からの怒濤の最終回は、最後まで鹿の子が忍成や礼王に心が揺れる波乱の展開が続き、ハラハラドキドキさせられます。何度も危機を乗り越えてきた2人は、最後の試練を乗り越えられるのでしょうか。

ドロドロな展開に終始巻き込まれてきた鹿の子が、最終回ではついに振り回す側になったことが面白く感じられます。それまで男性陣は鹿の子の意志を無視し、自分のものにするために勝手に動いてきましたが、今回ばかりはそうはいかないという、予想外の展開を迎えます。

鹿の子が誰を選ぶのか、ということのみならず、礼王の母がとんでもないことをしでかしたり、自分の余命が残りわずかだと知った雨宮が病院を抜け出したりと、息もつかせない展開にどんどん物語へ引き込まれてしまうはずです。

これまでのお話は、常に誰かが傷つけられながら進んでいたので、ラストもそうだろうと身構えてしまいますが、その予想を覆す結末は必見です!

暗い過去を持つ兄弟とその母、複雑な生い立ちの雨宮など、心に闇を抱えた人たちは鹿の子に救われて行きます。また、鹿の子も苦難を乗り越えたことで、純粋さを残しつつも強く成長していくのです。彼女の成長っぷりには感慨深いものがあります。

『¥十億少女』の昼ドラ的少女漫画の魅力を体感してみよう!

著者
酒井 美羽
出版日
2014-09-12

冴えない男が実はイケメンでお金持ちだった!という王道少女漫画の設定から始まる本作。しかし彼が官能小説家だということからも分かるように、この作品は一筋縄ではいきません。

登場人物のイケメンたちがみんな自分勝手で、あくどい手段も平気で行う。それに主人公が立ち向かうというのがよくある筋ですが、中盤まで彼女は振り回されっぱなし。

登城人物たちはなかなか言えない秘密や過去を抱えているのですが、それも少女漫画らしからぬドロドロさ。さまざまな要素が、本作を単なる可愛い少女漫画、では終わらせないのです。

その展開のすごさはまさに昼ドラ。最初は軽く読み始め、どんどん深みが描かれていく展開に読む手が止まらなくなることでしょう。

そんなどんどんと深くなっていく本作の面白さを作品でご覧いただければと思います。できれば最大の魅力であるドロドロ展開まで読んでいただけると、その面白さがさらに実感できると思います。

ラブコメというよりは昼ドラのようなドロドロした展開のお話ですが、胸キュン要素やコメディの要素も十分楽しめる作品です。今回紹介できた登場人物の他にも、まだまだ個性的すぎる魅力的なキャラクターが登場しますので、ぜひ本編で確認してみてください!

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