本当の自分を好きになってくれる相手がいることの大切さと幸せさに気づかせてくれる恋愛漫画『溺愛クローバー』。一味違う三角関係を描いている部分と、最後に待ち構える衝撃的な結末が特徴の作品です。この記事では全3巻の見どころと魅力をご紹介いたします。
- 著者
- 月島 綾
- 出版日
- 2013-02-14
悩める高校生たちによる予想外な三角関係と、その行く末を描いた作品『溺愛クローバー』は、「本当の自分に向き合ってくれる人」がいる幸福と苦悩について描いた恋愛漫画。
淡い恋愛模様が紡がれているのかと思いきや、マイノリティが切なくて苦しい恋心を抱える姿があり、ラストには想像もできないような衝撃の展開が待ち受けています。この記事ではそんな『溺愛クローバー』全3巻の見どころと魅力についてご紹介します。
高校1年生の羽田えみり(はねだえみり)は自分に恋する相手が、外見ばかりに注目して内面を見てくれないことに悩んでいました。交際中の年上の彼氏もいますが、いまいち本気で好きになれず別れのタイミングを伺っています。
そんなえみりの前に現れたのは女子の視線を集めるイケメンの同級生高泉海(たかいずみかい)と保坂紫苑(ほさかしおん)。えみりは等身大で接せられる海に徐々に惹かれていきますが、紫苑の方はなぜか敵意をむき出しにしてえみりに突っかかります。
一方、えみりが自分以外の男と親しくしていることを知った彼氏の順也(じゅんや)は、帰宅途中の彼女に背後から近寄ると、力づくで車の中に押し込んだのでした。
外面だけに惹かれてアプローチされることにうんざりしていたえみりは、海と出会ってはじめて飾らない姿を他人に見せることができました。今までにない感覚にときめくえみりと同じように、海もまたえみりを好きになると予感します。
しかし、紫苑はそんなえみりが気に入らなくて仕方ありません。女を武器にして海をたぶらかしたと一方的に決めつけると、えみりを突き飛ばし「次やったら犯す」と脅迫までします。
追い討ちをかけるようにえみりを襲うのは、彼氏の順也。やや傍若無人でえみりの言葉にも耳を貸さないような彼は怒りにまかせて彼女を強姦しようとしたのです。
- 著者
- 月島 綾
- 出版日
- 2013-02-14
間一髪でえみりを助けにきたのは海でした。手を取って連れ出され、怖い目にあったのに気丈に振舞おうとしたえみりは「強がらなくていい」と海に慰められると、涙が止まらなくなってしまいます。こうして2人は両思いとなり、付き合うことになったのでした。
美人ゆえの苦労に悩まされていたえみり。外見がよいというのは一見羨ましいことですが、そのせいで勝手なイメージを作り上げられ、本当の自分を出せなくなってしまうのは窮屈かもしれません。そんなえみりがこれからは海を心の拠り所として、幸せな高校生活を送っていくのかと思いきや、紫苑が立ちはだかります。
異常なまでの執着を見せる紫苑のことを、海は「幼馴染」だと紹介しましたが、紫苑にとって、海はただの幼馴染ではないようです。そして紫苑が隠し持っていた気持ちは、風邪をひいた海が眠る保健室で明らかになるのでした。
彼氏からのレイプ未遂といった穏やかでない状況や、恋のライバルが男子だということが発覚するなど、驚きの出来事が続く1巻。この先も波乱の展開が予想されるえみりの高校生活ですが、せっかく出会えた大切な海を手放すわけにはいきません。
次巻からのえみりの選択、紫苑の行動に注目です。
「頭がおかしくなるくらい海のことが好き」という紫苑に対し、えみりは「そんなことを聞いたくらいじゃ譲れない」と言い張り、互いをライバルとして意識するようになります。しかし紫苑が強気なのは表向きだけで、本当は勝ち目などないと諦めていたのでした。
「痛む古傷を 無理矢理武器にして 海の罪悪感をあおることしかできない……」(『溺愛クローバー』2巻から引用)
紫苑がいう「古傷」とは、2人の間に隠された過去とはいったい、どんなものなのでしょうか?
- 著者
- 月島 綾
- 出版日
- 2013-04-12
2巻では紫苑の複雑な幼少期が描かれています。母親から「顔がキレイ」という部分を最も愛されて育ってきた紫苑は、顔を合わせれば喧嘩ばかりする両親に疑問を抱いていました。ある日も喧嘩を始めた両親から逃げるようにして家から出ます。その時に出会ったのが海です。
全身泥だらけで、顔に傷まで作りながら自由に遊ぶ海と、「キレイ」が好きな母親の言葉に縛り付けられる紫苑が対照的です。汚れた手を差し出しながら「一緒に遊ぼう」と笑った海は紫苑の目に、ヒーローのように映ったかもしれません。
しかし紫苑はこの時、今後の海を縛り続けるきっかけを作ってしまうのでした。その事実は紫苑自身のことも傷つけます。紫苑が海に臨んだのは、こんな風に互いの首を絞め合うような苦しい関係だったのでしょうか?親友同士を思い合う心が切ない2巻です。
「紫苑に償うこと」を選んだ海は、大好きなえみりと別れることを選びました。えみりは他の誰かと幸せになれるかもしれないけれど、紫苑には自分しかいない、そう思ったのでしょう。
しかし、選ばれた紫苑は海が笑顔を見せなくなったことに気づき、自分が海に選択を強いたことを後悔していました。そんななか海はえみりが、以前に彼女を襲おうとした元彼の順也といるところを見つけます。
危険を感じた海は紫苑に「ごめん」と一言いうと、えみりの手を取って順也の元から逃げ出したのでした。
- 著者
- 月島 綾
- 出版日
- 2013-06-14
紫苑は海の選択を認め、えみりとも和解します。これでやっと仲良くなれた3人は、これから良好な関係を築いていくように思えましたが、最終巻である3巻にはショッキングな展開が待ち受けているのです……。
なんとえみり、海、紫苑のうちの1人が帰らぬ人となります。物語が始まった当初の甘いラブストーリーからは想像できない事態に衝撃を受けることでしょう。さらに、残された2人が下した決断がまた驚きのもので、なんとも言えない読後感が残ります。
この物語はハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。どう感じるかは読者しだいです。機会があればぜひ実際に手にとって、この物語の結末について考えてみてください。
- 著者
- 月島 綾
- 出版日
- 2013-02-14
表紙のTHE少女漫画な見た目からは考えられないほどドラマチックな内容になっている本作。携帯小説のような言葉運びなどもあり、そちらが好きな方には特におすすめです。
そんな本作最大の魅力はやはり、BLもちゃんと描いたこと、衝撃の結末、でしょう。
なかなか少女漫画でBL展開が丁寧に描かれることはありませんが、この漫画は相手を思う切なさがしっかりとシーンにも言葉にも表されます。しかしガッツリとした絡みがあるわけではないので、それが苦手な方にもおすすめできる内容です。
そして物議をかもすのが、やはりその結末。ドラマチックな死にまつわる展開は王道とも言えますが、そのあとのふたりの決断がまさかのものなのです。
表紙だけでは分からない驚きとドラマに溢れた展開をご自身で読んでみてはいかがでしょうか?
いかがでしたか?最終3巻で訪れる怒涛の展開は必見です。