「BLって男同士で感情移入しにくいし、エロ重視でしょ?興味わかないなぁ」なんて方も多いのではないでしょうか。そんな方にも自信を持ってオススメする、それだけじゃない「深いい」BLをご紹介します!
BLに興味がない方でもこの作品は見たことがあるという方もいるかもしれません。本作は2008年発行ながら口コミなどで話題になり着実に発行部数を伸ばし、2016年2月にアニメ映画も果たし興行収入2億円を突破する大ヒットを収めた、まさにBLにおけるバイブルのような作品です。
物語は合唱祭前の音楽の時間、高校入学試験で満点を取って入学したメガネの秀才・佐条利人が練習中に歌ってないことに、ピアスを開けた金髪のバンド少年・草壁光が気づくところから始まります。草壁は、秀才にとっては歌なんてくだらないのだろうと思ったのですが、その日の放課後、教室でひとり合唱曲を練習する佐条を目撃します。バンドでボーカルを務める草壁は合唱祭までの放課後、毎日佐条の練習に付き合うことになり……。
- 著者
- 中村 明日美子
- 出版日
- 2008-02-15
「合唱祭」「放課後」「教室」などのキーワードで、序盤だけでもほとんどの人に身に覚えのある情景が浮かぶのではないのでしょうか?この作品の魅力は「感情移入しやすい」というところにあります。
最近恋愛関係で心が荒んでいる方や、高校生同士のときめき純愛ストーリーが読みたい!といった方にぜひ手に取って頂きたい一作です。
テーマは神・宗教・信仰・愛。難しい重いテーマを扱っていますが、ぼかすところもなく描き切った作品です。少し暴力的シーンや性描写もあります。しかしそれを抜きにしてもこの作品の宗教に対する考えやそれぞれの愛についての描き方は読むに値するものだと思います。
魂の救済を求めカルト教団に入信し教祖の教えに従い罪を犯す青年・リブと、町で罪を犯したリブと出会い彼を救おうとカルト教団に乗り込む神父・ロース。
ロースは最初、聖職者としてリブを救おうと行動を起こすのですが、カルト教団に軟禁されリブと生活を共にするうちに彼の弱さや過去を知り、「愛」にも似た情が湧いてきてしまうんです。一方ロースによってカルト教団から抜け出したリブは、ロースの教会にて住み込みで働くうちにロースに対して神に対する信仰のような慕い方をするようになります。
- 著者
- 朝田 ねむい
- 出版日
- 2015-12-25
このふたりの感情のすれ違いが特に描かれている場面は、リブがロースの肖像を自分の右胸に彫ろうと考えていることをロースに告白するシーンでしょう。
ロースの「君の神になるつもりはない」という台詞が、ロースに信仰心を抱くリブと、リブに恋心にも似たような感情を抱くロースの心のすれ違いを如実に表していて、この作品のテーマである神・宗教・信仰・愛について深く考えさせられます。宗教について、愛について考え直す機会にいかがでしょうか?
海外のサスペンスドラマを見ているような読み応えに圧倒される作品です。ドラマ『ハンニバル』が好きだという方には特に自信を持ってオススメできます。
アメコミ作家である作者の肉体描写は生々しいほどに緻密なタッチで描かれており、暴力的なシーンや強姦描写があるので読む人を選ぶ作品ですが、それを差し引いてもオススメしたい理由があります。何よりこの作品はサイコサスペンスとしてクオリティーが高いからです。
- 著者
- Guilt|Pleasure
- 出版日
- 2012-09-10
主人公の精神科医・浅野克哉が「顔の見えない男に監禁され犯され、愛していると囁かれる」悪夢に悩まされ始めるところから物語が始まります。悪夢を見るようになって数日、精神鑑定をすることになった連続殺人鬼の男と出会った時に浅野の悪夢が現実の境界線を越えようと日常を侵食するようになり……。
悪夢が現実に繋がった時に逃げ惑う浅野の困惑と恐怖の描き方がとてつもなく、こちらに迫って来るほどの圧倒的筆力で描かれています。
浅野の悪夢は一体なんなのか、浅野の前に現れた連続殺人鬼は一体何者なのか、是非推理しながら読んで欲しい作品です。
内容が暗い作品が多めなのでお口直しにラブコメテイストの作品を紹介します。この作品の著者はもともとイラストコミュニケーションサイトPixivで活躍されていた同人作家で、作風も当時から独特のギャグに恋や友情などのテーマを詰め込んだもので中毒者続出の人気作家です。
- 著者
- 毛魂一直線
- 出版日
- 2014-11-30
誰もが一目見たら虜になる超完璧カリスマ生徒会長・大和御門は、やたらと前髪の長い新入生・根崎春の笑顔を見て、根崎のことが気になって仕方がなくなります。そんな大和は翌日から根崎に熱烈アタック。しかし根崎は全くなびかず、しかも笑顔すら見せなくて困惑。そんな必死な完全無欠の主人公が恋をするあまりしてしまう、めちゃくちゃな行動を微笑ましく思いつつも、「いやそれはダメだろ」と爆笑すること間違いなしの一作です。
本作のすごいところは、ただの面白いギャグ漫画というだけでなく心理描写が細かいところです。根崎の大和への心が移り変わる描写は特に丁寧に描かれているので必見!
一周目はギャグ漫画として爆笑して二周目は心理描写に着目して読み味わって欲しい作品です。
人生に迷った時や、「幸せ」の意味を見失った時にぜひ読んで欲しい哲学的一作です。
他人に付け込まれ、騙され、殴られながらもお人好しを貫く主人公の青年クラベの元に、暗い目をした「職業天使」のソトハが訪れます。ソトハいわくクラベは「先天性運命疾患」で無自覚に不幸を吸い寄せてしまう体質らしく、そんなクラベに「シアワセニナール」という不幸を遠ざけ幸せを呼び込む代わりに、人を疑う心と少しの憎しみと利己的な欲望ももたらされる薬が処方されます。
生前から己の消失を望んでいたソトハによってもたらされた、幸運と引き換えの猜疑心に悲しみを覚えるクラベ。そんな今までとは全く逆の幸福な日々の中で、クラベはソトハに対して情を抱くようになり……。
- 著者
- ねむりコム
- 出版日
- 2015-05-15
ソトハの過去の話、そして「神様」の登場に混迷を極めていく物語。寓話的で抽象的な部分も多く一度読んだだけでは理解が追いつかないような内容ですが、その中に描かれる「幸せ」とはなんなのか、考えるために何度も読み返してしまうような作品です。
主人公の嶋は前の会社にいた時、ゲイであることが原因でいじめを受けていました。そのトラウマから人を好きになることに憶病になっていた彼。そんな時転職先で出会ったのが課長の外川でした。外川は暗く無愛想な嶋を何かと気にかけ可愛がってくれます。そんな外川に嶋も心を開いていき、恋心を抱くようになるのです。
勢いで関係を持ってしまった彼らですが、男同士で愛し合うことの難しさを知ります。実は外川にも過去のトラウマがあり、その影響で家族に強い憧れを抱いていました。そのことで嶋にはふたりでいる未来が見えなくなってしまうのです。
- 著者
- ヨネダ コウ
- 出版日
- 2008-09-01
この作品では、同性であるからこその苦悩や葛藤と戦う姿が包み隠さず描かれています。同性愛の美しい面ばかりを切り取った漫画とは違い、リアルに世の中の仕組みを考えさせられる作品です。キャラクターたちがこの社会で自分たちの価値をどう見出していくか模索する姿に強く胸を打たれます。
特に胸を打たれる場面は、外川が転勤になり、嶋が別れを意識し始めたシーンです。
「どうして俺は男なんだろう。不毛だと知りながら、どうして恋をするのだろう。
(『どうしても触れたくない』より引用)
元々は異性愛者であり、子供が好きで家庭に憧れる外川。嶋はそこに自分がいたら外川の夢は叶わないと、外川の転勤を機に身を引こうとするのです。しかし外川の方は別れるつもりはなく、ふたりの意見がぶつかり合って同性愛の問題点が浮き彫りになります。自分に子供は産めない、そんな自分と付き合っているなんて無駄な時間だと悲観的に考える嶋の姿は心が痛められる場面です。
『どうしても触れたくない』は同性カップルの在り方を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。結末も余韻を残す終わり方で、読み終わってしばらくはこの物語の世界から出てこられなくなります。それほど胸に刺さる作品なので普通のBLに飽きてしまったという方におすすめしたい作品です。
いかがでしたか?確かにBL漫画というとなかなか手を出しづらく未だ偏見も残っているジャンルだとは思います。しかし、他の漫画と同じくメッセージ性に優れた作品も多くあるのです。
今回は特にオススメする6作品を挙げさせていただきました。これを機に普段読んだことのない方でもBL漫画というジャンルに興味を持っていただけたら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございます!