私立百花王学園を舞台に、学生たちによる狂ったギャンブルが描かれる『賭ケグルイ』。そのスピンオフとして、作品に登場する生志摩妄(いきしまみだり)を主人公に描かれるのが『賭ケグルイ妄』です。彼女の狂った生きざまを、無料のスマホ漫画アプリでとくとご覧あれ。
政財界の有力者の子女が多く通う名門校、「私立百花王学園」。ここはギャンブルの強さがモノを言い、ギャンブルによる階級制度で支配されています。
本作は、学生のひとりで生徒会美化委員長・生志摩妄(いきしまみだり)に焦点をあてて、彼女の狂った性格やギャンブルのさまを描いたもの。タイトルにもあるように、「狂う」ことこそギャンブルの神髄で、真のギャンブラーほど狂っているのかもしれません。そして、狂っているほど輝きを放つのです。
登場人物全員が狂っている本作の紹介と、妄の狂ったさまの説明をしていきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- ["河本ほむら", "柊裕一"]
- 出版日
- 2017-07-22
濡羽綾女(ぬればあやめ)は窮地に立たされていました。学内でおこなわれているギャンブルの借金が1000万というとてつもない数字となり、それが払えなければ体を売るしかないという状況になっていたのです。
見知らぬ人に抱かれることに耐えられない綾女は、学校の屋上から飛び降りることを決意しました。柵を乗り越えて下を見つめていると、そこに見知らぬ女生徒が現れたのです。
飛び降りようとする綾女に対し、その女生徒はこういったのでした。
「ギャンブルで決めよーぜ?」(『賭ケグルイ妄』1巻より引用)
すべてがギャンブルによって決められる私立百花王学園。お金のみならず、人権や生き死にまでもがギャンブルによって左右されるのです。
- 著者
- 河本ほむら
- 出版日
- 2014-10-22
本作『賭ケグルイ妄』は同作者・河本ほむらの作品『賭ケグルイ』のスピンオフとなっています。舞台や設定は同じで、主人公とその目的が変わってきます。
『賭ケグルイ』の主人公は蛇喰夢子(じゃばみゆめこ)という少女。タイトルを如実に体現したキャラクターで、おっとりとした見た目とは大きくかけ離れた生粋のギャンブラーです。ギャンブルにのみ生を感じ、相手との駆け引きや勝負の緊迫感から至上の快感を得ています。
夢子は百花王学園の頂点に君臨する生徒会長・桃喰綺羅莉(ももばみきらり)と最高のギャンブルをすることを最終的な目的とし、学内で数々の猛者とギャンブルをおこなうのです。
スピンオフ作品は『賭ケグルイ妄』以外にも、早乙女芽亜里(さおとめめあり)を主人公においた『賭ケグルイ双(ツイン)』と、『賭ケグルイ』に登場するキャラクターのゆるい日常を描いた『賭ケグルイ(仮)』もあります。
『賭ケグルイ(仮)』のみ4コマ漫画風で毛色は変わっていますが、『賭ケグルイ妄』『賭ケグルイ双』は本編と同等の駆け引きや興奮が味わえる作品です。
本編を知らなくても楽しめるので、無料で読めるこちらのスピンオフから読んでみるのもおすすめです。
本作の主人公・生志摩妄は、奇人変人の巣窟である百花王学園内でも群を抜いて狂った人物。彼女を言葉で表すならば、「変態」という二文字がぴったりでしょう。
頭の回転が速く、洞察力も優れているというギャンブラーとして高いレベルを持ち合わせているのですが、彼女自身はギャンブルによってお金を手にすることに執着していません。ギャンブルをする時に生じる「興奮」に魅了されており、「死」のリスクが高いギャンブルほど心を昂らせるのです。
彼女が提案するギャンブルは、自身の身体が痛めつけられるものや、はては自身が死に至る可能性があるものまで実行するところから、彼女の癖の異常性がうかがえます。
トレードマークである眼帯も、ギャンブルで左目を失ったために着けていて、このことからも彼女がどれだけ狂った人物であるかが想像できるでしょう。
そんな彼女の異常性がわかるエピソードとして、「ハンド・ナイフ・トリック」というゲームでギャンブルをするシーンがあります。
このゲーム中、妄は幾度となくコンパスで指を刺されるのですが、常人なら耐えられない痛みも、彼女にしてみれば「快感」。それゆえグサグサという音とともに、恍惚の表情を浮かべているのです。
狂ったキャラクターばかりが登場する「賭ケグルイ」シリーズでも、彼女の奇行はまったく理解されておらず、あらゆる人物から気味悪がられたり邪険に扱われたりしています。しかしそれすらも、彼女にとっては快感なのかもしれません……。
私立百花王学園は、創立122年という伝統と格式ある学園です。しかしここでは勉強やスポーツの成績は誰も眼中にありません。そんなものは、金や権力にまかせて誰かにやらせればいいからです。
この学園で評価されるものは、駆け引き、読心術、勝負強さ……つまり「ギャンブルの強さ」が評価されます。ブラックジャックなどの一般的なトランプゲームから、生徒が考案するオリジナルのゲームまで、さまざまなギャンブルがおこなわれます。
もちろん、勝つための「イカサマ」は当たり前。仕掛けられたイカサマを逆手にとって相手を揺さぶる高度な頭脳戦が展開され、それを見抜けなければ敗者となるだけなのです。
先述した「ハンド・ナイフ・トリック」というゲームは、実在するパフォーマンスのひとつ。大きく指を開いた手をテーブルの上に置き、指と指の間を刃物で順に刺して、制限時間内にどれだけ多く往復できるか競うものです。
普通は自分の指に、自分の持った刃物でおこなうのですが、本作の妄は自分の指を使って他人に競わせるのです。提案する妄が狂っているのはもちろん、他者の指でゲームをして傷つけることに快感を得てしまうプレイヤーも十分狂っています。
また本作で描かれるギャンブルは、このような残虐なものだけでなく単純な仕掛けのものもおこなわれます。たとえば「カード当て」というゲームは、その名のとおり伏せられた3枚のカードから当たりの1枚を見つけるというもの。
3分の1の運任せのはずなのですが、実はそれほど簡単に勝てるものではありません。カードを伏せるテクニックや細かな動きにプレイヤーは翻弄されるのです。
百花王学園ではすべてがギャンブルになり得ます。ひとつのゲーム、ひとつのギャンブルに高度な駆け引きが詰まっているのが魅力だといえるでしょう。
綾女の視点から妄を描いた本作ですが、2巻は妄の狂気、エロさがさらに際立った内容となっています。
妄のせいで3億円という自分には大きすぎるお金を手に入れ、ひと時も油断ならない時間を過ごしている綾女。やはりこのお金は返そうと、美化委員室を訪れます。
しかし彼女はなぜかお祝いのクラッカーで出迎えられます。何と今まさに綾女の美回委員会への歓迎会をしていると妄は言うのです。
入った覚えはないという綾女に対し、妄はもう登録してしまったと告げます。驚きながらも、1巻での出来事で妄ともうひとりしか委員会に所属する者はいなくなってしまったと聞かされ、責任を感じた綾女はそのまま美化委員に所属することになりました。
そして綾女の入会に気を良くした妄はやっと仕事をする気になったようで、こう言うのです。
「濡羽のはじめてを逃すわけにいくかよ うへ…」
- 著者
- 河本ほむら
- 出版日
- 2018-01-27
妄に言われるがままについてきた綾女は、これから取り立てをすると明かされます。美化委員の仕事は「校内のゴミを矯正し あるべき姿に美化する」取り立てが主な仕事のようなのです。
そしてふたりが向かった先で待っていたのは、校内のあちこちで問題を起こしている不良グループの元締めをしている寺須美栗霧(てらすみくりむ)。
一見普通に見える彼女ですが、1700万の借金を払えと妄が言うと、そんなもったいないことしない、と悪びれもせず言います。そして後ろに男たちを控えさせ、この人数相手に力づくでは取り返せないでしょう、とおちょくるように言ってくるのです。
そんな栗霧に妄はギャンブルで返すかどうかを決めようといいますが、メリットが無いと相手にされません。しかしそんな時、突き飛ばされたはずみで綾女の持っていた3億円がスーツケースの中から見え、栗霧は顔色を変えます。
綾女はいいお金を手放すチャンスだと、このお金は妄の好きにしてくれと言い、妄は栗霧に1700万と3億円を賭けて賭けをしようと提案しました。それを聞いた栗霧はあっさりとOK。
そして「受動ロシアンルーレット」が始まるのです……。
ルールは、まず先攻が銃に弾を一発込め、後攻が1〜9の数を指定するところから始まります。先攻はその数だけシリンダーを回し、自分に向かって引き金を引きます。
セーフなら再度同じ回数シリンダーを回し、打つ。これを4回繰り返します。そして4回終わったら攻守交代し、先にアウトになった方が負け。アウトというのはもちろん、弾が発砲されたらということで、単純ながら恐ろしいゲームです。
そして初仕事だから自分でやるのが当然だという妄の言いつけから、プレイヤーはなぜか綾女になってしまいます。不安げに銃は偽物だろうと聞く彼女に、栗霧は冷静な表情で「さあ?」と返し……。
本編でも死にたがりすぎるということで夢子から幻滅された妄ですが、その狂気がさらに色濃く描かれています。このあと綾女が妄に引き金を引くという、誰得ならぬ、妄得な展開になるのです。もちろん妄のゴリ押しで。
綾女が引き金を引くたびに嬉しそうに息を切らす様子は、気味の悪さとエロさが混在する不思議な雰囲気に包まれています。
そしてこのエピソードから、綾女の狂った部分も徐々に明かされていくのです。
百合かと思うくらいにいちゃついたり、奇妙なエロさがあったりと、独特な魅力がある本作。妄の不思議な中毒性ある魅力が増してきている2巻の詳しい内容は、ぜひ作品でご覧ください。
- 著者
- ["河本ほむら", "柊裕一"]
- 出版日
- 2017-07-22
さて、ここまで『賭ケグルイ妄』の内容と魅力をご紹介しましたが、狂気の一端を感じとっていただけたでしょうか。
本作はスマホの漫画アプリ「マンガUP!」で無料で読むことができます。この機会にぜひ読んでみてください。
ただし基本的にギャンブルは違法行為です。その点だけは心に刻んでおいてくださいね。