才能あふれる演奏家の卵たちが集まる寄宿音楽学校モンドンヴィル学園。合格者は毎年100人!しかしなぜか今年の入学者は101人だという。なぜ?よほどの実力者なのか?と注目が集まるが、その101人目はまともに楽器が弾けなくて……。
才能あふれる演奏家の卵たちが集う、寄宿音楽学校モンドンヴィル学園。100人の狭き門を超え、例外の例外、101人目として入学した小柄で可愛らしい少年アリス。彼は色々な事情を抱えていました。
入寮日の朝、アリスは空虚な演奏をする不思議な少年マックスと、その演奏を遠くから眺める青年ヴィックと印象深い出会いをします。しかしヴィックからは最低な扱いを受け、気分は最悪!
そして迎えた入学式。入学記念演奏中アリスは驚いて大声をあげて演奏会を中断させる失態を犯してしまいます。
なんと演奏者としてマックスとヴィックが舞台にいたのです。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2007-11-08
アリスは、色々な想いを抱えて入学してきたのですが、楽譜は読めないは、酷い演奏を披露しちゃうは、みんなが楽しみにしていたマックスの入学記念演奏をぶち壊しちゃうはで、入学早々周囲の反感を買ってしまいます。
最悪な状況の中、さらに最悪なことに、彼を学園に誘ってくれた権威ある教授が怪我で休養とのことで、先生たちも異端な101人目を扱いあぐねるのでした。
そんな中でもいつも気にかけてくれるイケメン上級生ヴィックや、心優しい同室のテオと友好を深め、アリスはくじけず少しずつ音楽を学びます。
だけどやはり周囲の目は冷たく、それに我慢できなくなったアリスがあるとき先生の言うことを無視して好き勝手に演奏してしまいます。その超絶に巧い演奏に、誰もが息を呑みます。いまにも音が聴こえてきそうな躍動感あふれるシーンには読者も魅せられることでしょう。
気になるアリスの秘密とは?アリスが学園にきた目的とは?
この記事では登場人物から作品の魅力を紹介していきます。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2008-08-01
100人の枠を超えて101人目として入学したアリスは楽譜も読めず音楽の基本がめちゃくちゃ。周囲も本人も困惑する実力で、前途多難な学園生活ですが、垣間見える才能に周囲も一目置き始めて……。
舞台は音楽学校。才能ある者は憧れ、嫉妬、羨望の眼差し向けられます。野生の天才児、アリスも例外ではありません。
思春期の少年達の複雑な心の成長を描いたストーリーとなっていること、キャラクターが美少年揃いであるためBL目線で楽しむこともできますが、作品随所に音楽用語や授業風景がしっかりと散りばめられているため音楽少年達の青春群像劇、音楽漫画としても楽しめる作品です。
物語の始まりは学園の入寮日。不安と期待を胸に、列車を降りた小柄な少年。彼がこの作品の主人公アリスです。アリス、なんて可愛いあだ名で呼ばれているけど本名はアリスティド・ラングといいます。
入学当初は地元で呼ばれていたアリスというあだ名を隠し、同室のテオに“アリスト(最上)”なんて名前負けなあだ名を呼ばせていましたが、本人の人柄を考慮したヴィックの策略(?)によって、うっかり学園でも“アリス”が浸透してしまいました。
アリスなんてあだ名が親しみやすかったのもあるでしょうが、彼の人柄、才能でしょうか。異端の101人目だったアリスは次第に学園に溶け込んでいきます。
彼の長所は明るくて素直なところ!
おバカな発言でみんなを笑わせるアリスを好意的に見るひともいれば、迷惑そうに敵意と嘲笑を向ける生徒もいます。わがままで無鉄砲で面倒くさがりで、見ていると敵意を向ける生徒同様にイラっとすることもあるかもしれません。けれどいつの間にか彼のひたむきさと演奏シーンに魅せられてしまうのです。
楽譜も読めず、入学当初は騒音を奏でたかと思えば、一度聴いただけの難しい曲をサラッと弾きこなすなど、破天荒な存在です
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2009-05-23
入寮日の朝、みんなが聴き惚れているマックスの演奏に、「空っぽな感じ…」と思わずこぼしたアリスの言葉を聞いて、それからやたらとアリスに絡んでくる上級生ヴィック。モンドンヴィル学園理事長の息子でリッチな雰囲気の美青年です。
面倒見がよく実力もある人気者な彼。元々ヴァイオリンを弾いていたのに自分の限界を感じてヴィオラに転向したという彼にはちょっぴり影が見え隠れするものの、基本はナンパな性格。
意地悪ばかりしてくるヴィックをアリスは邪険にしますが、アリスがある決意を胸に寮を抜け出した夜、アリスは彼とある取引をするのでした。
その取引というのがアリスの父親の楽器「Margo」を探す代わりにマックスのライバルになること。
主人公はアリスですが、物語のキーマンは間違いなく彼。アリスは彼に引っ張られ、どんどん上達していきます。
101人目の異端として生徒、先生達から無下に扱われるアリスですが、ヴィックだけははじめからアリスの才能を見抜き信じています。そんな彼にアリスも次第に心を許していくのです。
一見広く浅く当たり障りなく付き合いをするおおらかな人物のように見えますが、彼はアリスとマックスに関しては特別な感情を持っています。
その強い想いが物語を動かしていくのです。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2010-03-25
アリスと同室の少年テオは心優しいヴァイオリン弾きの少年。父親が有名な奏者ですが、本人は自分に自信がなく、いつも周囲の言葉や視線を気にしています。
同室のよしみから101人目だとからかわれるアリスにいつも寄り添い、世話を焼いてくれるようになります。アリスも優しい彼になつきっぱなし。
自分とは正反対のアリスにつられて大きな声を出したり、人見知りだったはずが他の生徒と気軽に話せるようになったり、テオにとってもアリスはいい刺激を与えてくれる存在のようです。
明るいアリスといるテオからはあまり悲壮感は感じられませんが、彼の姉や母親は、以前から引っ込み思案であまり親しい友人もいない様子のテオをずっと心配していました。
アリスと過ごすことでテオは少しずつ周囲と打ち解け心を開いていきます。アリスだけでなく彼も学園生活を通じて成長していくのです。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2011-04-23
ヴァイオリンの練習をしているだけでギャラリー集めてしまうほど、達者なヴァイオリニストのマクシミリアンは学園には実技主席の実力で入学。正確無比なヴァイオリン演奏で入賞歴多数。実技トップで主席入学のため、彼もアリスとは違う意味で入学前から周囲の注目を浴びています。
一人でいることが多く言葉数も少ないため入学当初はクールでミステリアスな雰囲気が漂っていましたが、 実は彼の本性は“不思議ちゃん“。アリスとのファーストコンタクト時はそのへんの道端で普通に寝転がって寝ていました。
転んだアリスを心配してくれたりと優しい面もあるのですが、あまり人の話はしっかり聞いているふうでもなく、マイペースにどんどん話を変えていく様に、破天荒なアリスでさえついていけず困惑することも。ヴァイオリンを弾いている時以外は本当にぼんやりとしていてなんだか不思議な雰囲気の男の子です。
そんな彼のふしぎな言動からは何も考えていないようなぼんやりとした子というイメージが湧いてきますが、生い立ちは実は少し複雑……。
アリスはヴィックとの取引もありマックスと関わっていくようになるのですが、何にも興味のなさそうなマックスもアリスには関心を寄せている様子が次第にみえてきます。
アリスはヴィックの言う通りマックスにとって無視できない存在になっていくのです。
いつも完璧に弾きこなすヴァイオリン。しかしアリスに言わせればなぜかそれは「空っぽな感じ……」とのこと。彼の心の空虚感がヴァイオリンを通じてアリスに伝わったのでしょうか。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2012-05-30
大きくて重たい、殺人的硬度のチェロケースをひょいと軽々持ち歩く鉄面皮女子のクレア。
彼女は登場してしばらくはあまり表情のないクールなキャラクターですが、アリスと親しくなるにつれて、アリスを母のように厳しく、そして姉のように優しく見守る存在となっていき、表情をみせるようになります。
主要な登場人物が男子生徒ばかりの中で紅一点の彼女は、黒髪ロングヘアの長身美人です。
登場シーンの多くはチェロを懸命に弾いており、彼女のチェロに対するひたむきさが作品随所から見受けられます。実力も素晴らしく音楽祭ではマックス、アリスと共に推薦されるほど。
ずばずばと正論を言う彼女とアリスはいつも喧嘩ばかりですが、彼女の言葉に嘘や嘲笑、皮肉はありません。ただ自身が思うことをはっきりと偽りなく伝える様には「痺れる」の一言。
101人目と皮肉られ卑屈になっているアリスに、合格できなかった者を押しのけて合格できた者として、それ相応の努力を見せるべきだと叱咤する彼女は、とても凛々しく美しいです。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2013-05-25
入学時、実技次席だったリシャール。代々音楽関係の仕事をしている家系で、音楽界では権力あるディアマン家の次男です。長男の兄はチェロで学園トップのベルナール。
幼いころから音楽の英才教育を受けており、実技のみならず学科もトップの成績の自信家。自分の実力を鼻にかけたようなツンツンした態度で、いつもテオやアリスに嫌味を言っています。テオはそんな彼に苦手意識をもっており、アリスも彼を嫌っています。
これだけ書くとなんだか本当ただの嫌な奴のように見えますが、彼が嫌味を言うのはテオやアリスに限ります。テオに関しては父親同士が仲が悪くライバルである為、アリスに関してはモンドンヴィル学園入学者101人目として実力が伴っていない為でしょうか。
幼いころよりヴァイオリンと真摯に向き合ってきたリシャールは、一度認めた演奏者は素直に称賛する様子が作中では描かれており、彼にとってそれはヴィックでした。
幼いころ、のびのびと鮮やかなヴァイオリン演奏をしていたヴィックに強い憧れを持っていたリシャールは、ヴィックが突然ヴィオラに転向したことが納得いかず、それを思わず本人に真正直に問うてしまい返り討ちに遭ってしまいます。
その後やはり憧れのままのヴィックが気に掛けるアリスが、気になりつつもふざけた存在にしか思えず、嫌味ばかり繰り返してしまうのです。
学園では取り巻きを連れ、大人びた表情の彼ですがディアマン家に戻れば彼はディアマン家次男坊としてまだまだ子供扱いをされており、兄や父に大切に守られている様子。それを受け入れつつも、はやく一人前にと歯がゆくもあるようです。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2014-06-25
真面目一辺倒な実技の先生ヤニク・ダルベルトは、厳しい目つきと言葉でアリスを圧迫する怖~い先生です。
入学当初、アリスは学園においでと声をかけてくれたレナート・ジルコフ教授から実技を教わると思っていました。
ところがどっこい、教授は怪我で休養。そして代理で教わることになったのがヤニクです。ヤニクははじめアリスを毛嫌いしていました。
他の生徒同様にアリスを“101人目”と軽んじており、楽譜も読めないアリスを、話にならないとレッスン室を追い出すなど冷たく接していました。
しかしヤニクの苛立ちった強い言葉に爆発したアリスが滅茶苦茶な演奏をした時から、彼のアリスへの見方は変わります。
アリスの超絶な演奏に彼もまた魅せられしまったのです。
なのにも関わらず……アリスは簡単な曲は弾けない。弾けるのは父親の作った超絶技巧の曲だけなのです。
“天才は嫌いだ”“こんなのにどうやって教えろと?”
ヤニクの苦悩が始まります。
なんだかんだと言いながらアリスのペースに巻き込まれ、アリスを見守る存在の一人となっていきます。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2015-05-25
最後に、1巻から最終回に向けてここで見どころを3つ紹介します。
見どころ①アリスの演奏シーン
いつもドタバタな主人公アリスが夢中になってヴァイオリンを弾いている様は作品の中であらゆる生徒達の心を掴みますが、読者も思わず息を呑むのではないでしょうか。
アリスの演奏シーンは本当に聴きたい!今にも聴こえてきそうなのに!と本当に胸が熱くなります。
作中で何度も弾かれるサヴァティエの曲の演奏シーンも素敵ですが、きらきら星やロマンスを弾いているアリスも本当に素敵です!
見どころ②アリスとヴィックとの関係性
喧嘩したり馴れ合ったり、腐女子的な目線で見ての関係性も気になるところですが、この二人色々と秘密があるんです。
その件で当初二人はある取引をし、アリスはそれを胸にヴァイオリンを極めていきます。
しかしヴィックの発言には裏があり、物語は途中予想しない方向に進んでいきます。
このあたりは本当に涙なしに読めません。
見どころ③アリス以外の心の成長
主人公アリスの成長は言わずもがな見どころの一つなんですが、それ以外にもこれまでに紹介してきた登場人物達の成長も見ておきたいところです。
本心を隠して燻るヴィック、空虚感を感じながらヴァイオリンを弾き続けるマックス、コンプレックスの塊で臆病なテオ、クールで表情の乏しいクレア、自信家で鼻持ちならないリシャール。
アリスの成長に魅せられながら、彼らも成長していきます。
- 著者
- かわい 千草
- 出版日
- 2007-11-08
それぞれのキャラの性格と、彼らが音楽に向き合う姿勢に引き込まれる学園ものの本作。BL的な妄想も捗る仲の良さなので、腐った方々にもおすすめです。
最大の魅力はやはりキャラクターたちの個性ではないでしょうか。主要人物が少し多めで、それでいてそれぞれの性格がポイントをおさえた魅力的なものなので、作品世界をより立体的に構築しているのです。
彼らがそれぞれの個性を発揮しながら日々を送り、成長していく様子は学園ものならではの元気なエネルギーや爽やかさ、思春期らしい様子が垣間見え、読者にも若々しく新鮮な気持ちを体感させてくれます。
ぜひそんな少年たちの生き生きとした様子を作品でご覧ください。彼らの学園生活を覗いてみるのもいいかもしれません。
『101人目のアリス』登場人物紹介はいかがでしたでしょうか。美麗なイラストなので画も楽しめる作品です。
弦楽器が好きな方、天才達の浪漫譚が好きな方、学園モノ、青春モノが好きな方、そして腐女子の皆さんにも楽しめそうです。気になる方は一度読んでみてくださいね。