女子校生がUMA(未確認動物)と恋愛!?ラブコメ史上、こんなにもマニアックな作品が今まであったでしょうか。モデルをしている美少女の香夜とイケメンだけど実はUMAのジャンがくり広げるとっても不思議な物語です。
本作はUMA大好きの徳山るーしーによる作品。近年のラブコメでは、主人公の相手役が人間でないことは珍しくありませんが、さすがにUMA(ユーマ/未確認動物)というのはなかなか無い発想です。
タイトルは、登場する「チュパカブラ」というUMAの名前と「LOVE」を掛け合わせたものになっています。
そんな『ちゅぱからぶ』の魅力のひとつは、なんといってもテンポの良さ。特にヒロインの香夜(かや)とUMAのジャンのやりとりは、種族の違いを超えて素晴らしいボケとツッコミが展開されていきます。
UMAといえばオカルト系ですが怖い要素はまったく無く、さらにラブコメでありながらアクションも楽しめるという不思議な作品です。またジャンは恋愛というよりも繁殖を目的としていて、爽やかな顔立ちで下ネタを言うのも笑えるところ。
表紙からは想像できないコテコテのギャグ漫画の一面もあり、性別、年齢問わず楽しむことができるでしょう。
登場人物も、女子高生の香夜とチュパカブラのジャンをはじめ、香夜の親友でツチノコ命の紗々、フラット・ウッズ・モンスターで香夜に惚れているフレッド、ジャンを追いかけてきた肉食系女子のガーゴイルなど個性的な面々が揃っています。
この記事では、そんな本作の魅力を全4巻分たっぷりとご紹介していきます!
- 著者
- 徳山 るーしー
- 出版日
- 2016-03-09
主人公の香夜はモデルとして活躍する女子校生ですが、失踪中の父の知り合いだという謎の少年が彼女の家にホームステイに来たことで、生活は一変します。
実は少年はアマゾン地帯に住むUMAのチュパカブラで、香夜はここから数多くのUMAと遭遇し、恋と冒険と微エロな世界に巻き込まれていくのです。
高校1年生の秋津香夜は、雑誌のモデルもしていてちょっとした有名人。父親は俳優で探検家の秋津大和ですが、彼は「アマゾン河童」を捕まえに出かけて以来、5年間も失踪中です。
ある日、そんな父から、ひとりの少年を日本に向かわせたからホームステイとして家で預かってほしいと手紙が届きました。
待ち合わせ場所の港に現れたのはシーサーペントという巨大なウミヘビのUMA!ゆうに30メートルはあります。家に入れることができないし、そもそも人間ではないので却下……しようとしたところ、シーサーペントの口から少年が出てきたのです。
ターザンのような腰巻を着け、南米のジャングルからやってきた、ということで香夜から「ジャン」と名付けられた彼が日本に来た目的は、ズバリ嫁探し。「たくさん子どもが欲しい!」と叫ぶ少年に、香夜は焦ってしまいます。
しかし周囲の人たちはまったく気にせず、むしろ彼の子どもなら産みたいなどと言い出す始末。そうなのです、ジャンは稀に見るイケメンで、街を歩くだけで女性たちはメロメロになってしまいます。
ただ彼にはしっかりと理想の女性像があって、普通の女性には一切なびかないのでした。
- 著者
- 徳山 るーしー
- 出版日
- 2016-03-09
長旅に疲れたジャンが、香夜の家の廊下で居眠りをしてしまった時に、彼の秘密がバレてしまいます。実は彼の本当の姿は、チュパカブラというUMA。気を抜くと変身している人間の姿がとけ、赤い目、鋭いキバ、長い舌、背中にトゲ……というとんでもない怪獣に戻ってしまうのです。
「人も襲うの…?」
「襲わねーよ ヤギや人間襲うとかめんどくせー‼ ってかオレベジタリアンだし」(『ちゅぱからぶ』1巻より引用)
スタートから飛ばしているノリノリのUMAに圧倒されてしまう1巻です。イケメン補正の絶大なる効果も実感できるはず。
テンポのよい展開でギャグも絶好調ですが、登場人物の感情も随所に描かれています。
たとえばジャンがUMAだとわかった時、香夜は驚きよりも父の帰りがこれでまた遅くなる、と寂しげな表情を見せるのです。未確認生物がいることが確認できてしまっているということは、父の「アマゾン河童」の捜索も本格化して、本当に見つけるまで帰ってこないと案じたのでしょう。
他人に父のことを問われても「いません」と答えるなど、一見反発しているように見えた香夜でしたが、実は会いたくて仕方がないという気持ちが伝わってくるシーンです。
Gカップ以上の巨乳の女性が、たて続けに3人も誘拐される事件が発生。犯人は赤い目で飛び回る巨乳好きということで、もちろんジャンが疑われます。
ところが彼は潔白。そのため、巨乳の高田先輩と、隠れ巨乳で香夜の友人の紗々、そして貧乳だけどパットを山盛りにした香夜が囮になって、犯人をおびき寄せることにしました。
しかし反対に、高田と紗々が捕まってしまいます。
「世界の巨乳はオレがもむ!!」(『ちゅぱからぶ』2巻より引用)
そこへ、ジャンが助けに来て一件落着。ただ当然のように香夜からは「最低のキメゼリフだな」とツッコまれてしまいました。
- 著者
- 徳山 るーしー
- 出版日
- 2016-06-09
犯人は、謎のUMA組織に仕えるモスマン兄弟。人間の女性に実験のため子供を産ませるための誘拐でした。選んでいる女性は組織のボスの趣味みたいですが、ジャンも巨乳好きですし、どうやらUMAは豊満な乳が好きな様子。
謎の組織の目的は、自分たちの邪魔になるUMAと人間の殲滅という恐ろしいものでしたが、水着ギャルのお尻大好きなデスワームが新しく仲間に加わるなど、相変わらずのゆるい展開は健在です。
また本巻で、香夜のジャンへの気持ちが急加速。ラブコメ度がいっきに上がります。ジャンが子作りの謎に挑む14話では2人の距離が急接近し、ドキドキなシーンが増えますよ。
謎の組織との戦いに備えて、香夜たちは手分けして仲間を集めることにしました。香夜とジャンはヒバゴンの3姉妹を訪ねて比婆一族の里に向かい、15歳を迎えて美しく変身したウェンディと再会します。
じつは2巻で登場した際は小さなゴリラみたいだったウェンディ。しかし本巻では胸も育ち、体毛もなくなり、さらにはジャンのタイプである「くノ一」っぽさも兼ね備えています。香夜は気が気でない模様。
また、アメリカからやってきたクリスというシスターも登場します。その正体はカエル男というUMAでしたが、カエルは両性類。ジャンとの子作りを狙うのでした。
ちゅぱからぶ (3)
2016年09月25日
3巻では、ジャンの心と体に異変が起きます。
UMAに襲われた際に、腕を出血してしまった香夜。それを見たジャンは彼女の血を思わず吸ってしまい、我を忘れて凶暴なチュパカブラに変身してしまうのです。
さらに、ついに香夜の父親、大和が日本に帰ってきて、物語は一気にクライマックスへ。感動の再会を果たした後、彼は香夜に、人間とUMAの共存を夢見ていると語るのでした。
そして彼氏がいないという香夜にジャンを薦めてきます。
「オレはママが人間じゃなくても結婚するぞ」(『ちゅぱからぶ』3巻より引用)
人間じゃない、と断る彼女に、大和はこう言うのでした。
とにかく見どころだらけの3巻。大和が本格的に登場し、香夜との親子愛はもちろん、UMAへの想いがしっかりと描かれています。
謎の組織の本拠地は江ノ島にあるとみた大和。ひとりで決戦に挑もうとしますが、香夜やジャンたちはそんなことはさせません。仲間を引き連れて、全員で江ノ島に乗り込みました。
しかし洞窟の分かれ道で、香夜とジャンは、他の仲間と離れ離れになってしまいます。血を吸って襲ってしまったことを思い出し、不安を隠せないジャン。香夜はそんな彼を抱きしめるのですが、ジャンはムラムラを抑えきれず……!?
ちゅぱからぶ (4)
2016年09月25日
最終巻である4巻では、謎の組織の全貌やUMA誕生の秘密も一部明かされ、ボスの驚きの正体やジャンの隠された過去などの謎も解決していきます。
世界のUMAが大集合し、それに加えて江ノ島伝説や富士山大噴火などオカルトファンを興奮させる要素も盛りだくさんです。
そして何より、香夜とジャンの恋の行方はどうなるのでしょうか。
ラストは、緊張感のあるシーンから一変、ほのぼのとした場面で終わるのですが、この展開は実はかなり練られている展開。ただのギャグ漫画ではない、作者の秀逸なセンスが垣間見えます。ぜひ実際に読んでみてくださいね。
UMA愛、恋愛、親子愛、作品愛など、作者の「好きだから書き上げた」ということが伝わってくる作品です。ギャグのセンスはもちろん、洗練されたストーリーが読み手の心をしっかりと掴むでしょう。