漫画『ハルの肴』の魅力を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.11.26

主人公のハルと、それを取り巻く登場人物たちが織り成す人情物語、そして登場する美味しそうな料理の数々がたまらない漫画『ハルの肴』。スマホアプリのマンガZEROでも読める本作の魅力を、今回は全巻の見所をふまえてご紹介します。

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漫画『ハルの肴』の魅力を全巻ネタバレ紹介!

著者
末田雄一郎
出版日
2013-08-19

北海道出身のガッツリ方言で喋る田舎娘が、夢破れた東京の地で新たに料理の道を志すことから周囲の人々との繋がりを深めていく模様を描く人情ストーリーが素晴らしい作品『ハルの肴』。

心が温まり、そして時にちょっと切なく感じさせてくれる人間ドラマはもちろんの事、本作中で登場する料理の数々は実に美味しそうに描かれているため、グルメ漫画としても実に優秀な作品といえるでしょう。

今回は、そんな本作の魅力を全巻の見所をネタバレしながらご紹介していきたいと思います。

夢破れた少女が料理に出会い、新たな道へ【1巻ネタバレ注意】

主人公である春野ハル(はるのはる)という少女が、両国の歴史ある居酒屋「大門」で住み込みのお手伝いとして働き始める事から物語は始まります。

北海道の寿都町出身であるハルは、上京して絵の専門学校に通っていたのですが、ある日突然通っていた学校が閉鎖するという災難に遭いました。そしてあてもなく彷徨っていたところを大門の主人である大門康造(だいもんこうぞう)に拾われ、それ以降店の手伝いを続けている、という経緯があります。

そんなハルは、拾われてからしばらくの間は絵の道とはまったく違う料理の世界に戸惑いながらも、日々を過ごしていたのですが、故郷の寿都にまつわる料理を食べて笑顔になってくれるお客さん達との関わり合いの中で徐々に料理というものに対して真剣に正面から向き合っていく様子が描かれています。

著者
末田雄一郎
出版日
2013-08-19

基本的には1話完結型の物語となっているため、一つ一つの話を通してハルの成長と考案した料理を楽しむのが、本作の醍醐味といえるでしょう。ちなみに、大門はこれまた実在する「上総屋」という居酒屋がモデルとなっており、実際のお店も歴史と風情を感じる佇まいとなっているため、ご興味のある方はぜひ来店してみてはいかがでしょうか。

そんな第1巻の見所となるのが、ハルが料理に対し真摯な気持ちで向き合うことを決めるエピソードです。ハルがかつて専門学校で知り合った友人が大門に来店するのですが、この友人が少し問題のある人物で、大門に訪れた目的もちょっと後ろ暗いものでした。

しかし、そんな友人に対して人情味のある対応をしてくれたハルと大門の面々によって、友人はハルの料理の道を真剣に応援するようになります。そんな友人の想いを受けて、それまで戸惑い混じりの気持ちで働いていたハルは、改めて料理という道に対し真剣に取り組むことを決意し、気持ちも新たに働き始めるのです。

このエピソードは特に、元々人の心を動かしたいという想いから絵の道を志したハルが、料理でも同じことが出来る事を知ることが出来たという感慨深い話となっています。

また、大門の主人である康造という人物の懐の深さと人柄の良さがしっかりと描かれており、そんな登場人物達の織り成す一幕はとても和やかな気持ちにさせてくれるのです。 

料理の道は一朝一夕にはいかず【2巻ネタバレ注意】

料理に対し真剣に向き合おうと決めたハルが様々な障害に立ち向かうこととなる第2巻です。1巻でいよいよ料理人としての道を歩み始めたハルでしたが、2巻では冒頭から大門のお通し作りに四苦八苦するところから始まります。

気持ちは前向きになったとはいえ、まだまだ料理の道では見習いの段階であるハルが、苦労しながらそうした障害をどう乗り越えるのか、といった様子を各話で描いています。

著者
末田 雄一郎
出版日
2014-01-29

2巻の見所は、大門のアルバイトとして働いている愛弥と喧嘩をしてしまい、仲直りするまでの奮闘を描くエピソードです。ハルと愛弥は、どちらも家庭環境に複雑な問題を抱えている者同士なのですが、それでも両親に対する想いは異なっていた事から、両者は激突、愛弥が大門に来なくなってしまう事態に発展してしまいます。

浅はかな自分の行動を顧みたハルは、なんとかして愛弥との関係を戻そうと奮闘するのですが、その過程で描かれるハルや愛弥の家庭環境の描写が実に人情味溢れる話となっており、感動的です。

特にハルは訳あって幼い頃から両親共におらず、寿都の漁師達が親代わりとなって育てられたという経緯があります。そんなハルの生い立ちは本作におけるストーリーの主軸となる設定となるので、非常に重要な一幕といえるでしょう。 

因縁ある店、もう一つの大門【3巻ネタバレ注意】

少しずつ料理人らしくなってきたハルが、大門の抱える問題の一つに直面する第3巻です。ある日、大門に雑誌の編集記者が訪れ、取材を申し入れてくるのですが、その過程で同じ企画で取り上げられる事になったもう一つの大門「真大門」という料亭との対立関係が浮き彫りになります。

真大門の店主である真田(さなだ)は、かつて大門で働いていた板前だったのですが、現在の主人である康造が大門を継ぐ事となったことをきっかけに、大門を去る事になったため、それ以来両者には確執が残っていたのです。

著者
末田 雄一郎
出版日
2014-04-28

3巻の見所は、そんな真大門と紙面であわや対決かという事になる際のエピソードでしょう。大門の過去を知ったハルは、大門に対する当てつけのようなやり口で攻めてくる真大門に対し、機転を利かせて思わぬ方法で受け流します。ハルの料理人としての成長が感じられる描写であると共に、ハルが大門という場所を守りたいという、大事な場所として考え始めた事が読み取れる一幕といえるでしょう。

ちなみにこの真大門ですが、今後再登場の機会があり、その際にもハルの障害として立ちふさがるため、本作における敵役といえる立ち位置となっています。 

貴重な先達との交流と、祖父の身に起こった事件とは【4巻ネタバレ注意】

これまでにない波乱の展開となる第4巻です。4巻の冒頭では、まだまだ板場で「焼き」もおぼつかないハルに対し、板長である一郎が成長に繋がればと、同年代の料理人である一二三との交流をさせようとするところから始まります。

顔は仏頂面な一郎ですが、同じ板場に立つものとしてハルの成長を考えている、という思いやりのある人物であることが分かる一幕です。

著者
末田 雄一郎
出版日
2014-07-09

4巻の見所は、ハルの祖父が倒れてしまった事がきっかけで、ハルが一時的に故郷の寿都へと帰る事になるエピソードでしょう。知らせを聞いてとにかく祖父の様子が心配だったハルは、大門の面々にも促されて寿都へと引き返すのですが、祖父は重体というわけではなかったらしく、一安心。

しかし、チケットの日取りもありすぐには大門に引き返せなかったハルはしばらく寿都に滞在するのです。その過程でハルは寿都という町の素晴らしさを再認識し、さらに料理人としての道を歩み始めた自分に対し、口では何も言わない祖父が陰ではとても喜んでくれていた事を知ります。

そんな祖父と寿都への想いを胸に、新たに料理人として生きていく事を決めるまでの一幕は、思わず涙してしまうような感動を与えてくれることでしょう。

また、この回からハルは心機一転ということで、黒髪の短髪に髪型を変えています。料理人ハル、再出発という意気込みが感じられる演出といえるでしょう。

新たな夢へと歩みだし、さらなる試練の日々へ【5巻ネタバレ注意】

髪型も一新し、気合を入れ直したハルが夢を語るところから始まる第5巻です。5巻の冒頭では、ハルが故郷の北海道の美味しいものを食べてもらう店をやりたいという夢を語ります。

これまで以上の事をやって、一人前の料理人になりたいという想いを聞いて喜ぶ大門の面々ですが、内心ではハルの成長を願う一郎はこれまで以上にハルに対し厳しい姿勢で指導するようになり、週イチで新しい料理を提案してこいと課題を出すのです。

この一郎の不器用な思いやりが本作でも随所で描かれており、読者としてはとても素晴らしい人格者に感じられます。

著者
末田 雄一郎
出版日
2014-09-29

5巻の見所は、一郎にまつわるエピソードです。一郎がある日、高校時代の同窓だった女性から息子の保護者として志望校の行事に参加して欲しいと頼まれるのです。これまで鉄面皮のようだった一郎というキャラクターの人間性が、このエピソードによって少しだけ穏やかに感じられるものとなり、より親しみやすさを感じることが出来る話といえるでしょう。

また、このエピソードではハルが女性の息子のために料理を考える描写があるのですが、そんなハルの作った料理に対し一郎がハルの料理に対する考え方を感じ取るシーンは、師匠である一郎に足りないものをハルから学び取る場面にもなっているため、スタンスの異なる料理人として一郎がハルを認めた瞬間でもあると考えると、とても感慨深いものとなっています。

真大門再登場。料理人としての挑戦【6巻ネタバレ注意】

因縁の相手再登場の第6巻です。6巻では時代劇とグルメの大御所である鈴懸健志郎の作家50周年記念パーティーの料理コンテストにハルが参加する事になります。

しかし、そこに参加する店の中には、因縁の相手である真大門の姿がありました。果たしてコンテストはどうなるのか、という内容が長編として描かれています。そして6巻の最後には、なんとハルが幼い頃に失踪した父親が登場します。今後の波乱が予想される展開で7巻へと続くこととなるのでした。

著者
末田 雄一郎
出版日
2014-11-29

6巻の見所は、やはりコンテストにまつわる一連のエピソードです。コンテストではハルが北海道ならではの料理の数々で審査員である鈴懸先生を魅了していくのですが、自分たちが危うしと判断した真田は審査の段階になり、ハルをピンポイントで狙い撃ちするような難癖をつけて、審査の対象から外そうとしてくるのです。

そんな真大門に対し、心中穏やかではなかったハルでしたが、そこでコンテストに参加していた他の参加者が助け舟を出してくれ、ハルはまんまと挑発に乗ってしまった自分の未熟さを恥じます。

彼女の料理人としてのプライドというものが芽生えてきた事を感じ取れるとともに、人間的な成長を感じ取る事も出来る一幕といえるでしょう。

明らかになるハルの過去、そして新たな成長へ……【7巻ネタバレ注意】

6巻のラストから引き続き、大波乱の展開となる第7巻です。6巻のラストで登場した父親であり、画家の「MIHARU」という人物が寿都の風景を描いていたという事をハルから聞いた祖父が、突然大門を訪れます。そして、これまでハルに語る事のなかった両親失踪の理由をついにハルに打ち明けます。

まさに本作におけるストーリーの目玉ともいえるエピソードといえるでしょう。

それ以外にも、ハルが短期の体験として大門で働く事になったブラジル人に対し、頭を捻りながら指導を行うエピソードなども収録されています。本題から逸れた話ではありますが、ハルの成長ぶりを感じられる話でもあるといえるでしょう。

著者
末田 雄一郎
出版日
2015-01-29

7巻の見所は、先述した祖父からハルへの過去を語る場面でしょう。本作における一番の名シーンといってもよい場面であるため詳細は省きますが、とにかく孫に対する申し訳なさを胸に懺悔のように語る祖父と、そんな祖父を責めることなくしっかりと対峙して聞くハルのいじらしさに、涙せずにはいられません。

ぜひご自身の目で見て、その感動を実感して頂きたいエピソードだといえるでしょう。 

ついに父との対峙、そしてハルの料理人人生は続いていく【8巻ネタバレ注意】

最終巻となる第8巻です。8巻ではついにハルを置いて失踪していた画家の父親が、ハルの前に現れることとなります。そして舞台は故郷の寿都へと移り、長く続いたハルと父親の因縁にもひとまずの決着が訪れる事となるのでした。

著者
末田 雄一郎
出版日
2015-03-28

クライマックス8巻の見所は、やはり父親との対峙に向けたハルの奮闘劇でしょう。こちらも7巻同様本作のメインとなる話ですが、ハルや故郷の寿都と真正面から対峙する事を避け続けた父親が、なかば強引とはいえようやくハルや祖父に対し、ようやく誠意をもって対峙する事が出来たという、非常に大事なシーンです。

ハルが料理人として真剣に生きていくためには乗り越えなくてはならない壁であったため、決着がついた際には読者としてもすっきりした気持ちにさせられます。


笑えて泣けて、食欲まで満たせる作品『ハルの肴』。グルメ漫画好きも、人情ドラマ好きもオススメな作品となっていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

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