勢いがあってテンポのよい展開と、ツッコミどころのある作風が魅力の『大食い甲子園』。食って食って食いまくるアツい勝負と、おいしそうな料理が楽しめます。ただし深夜に見るのは危険ですよ……!
ギャンブル好きの料理人を描いた『ばくめし!』でも有名な土山しげる。続いて手掛けたのが『大食い甲子園』です。
食事の描写は迫力が増し、食欲中枢が刺激されること間違いなし……!
この記事では、思わず生唾を飲み込んでしまうような本作の魅力を、エピソードを交えてご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 土山 しげる
- 出版日
- 2010-10-08
大食いが「スポーツ」として流行し、高校には部活として「大食い部」が存在。毎年甲子園も開催されています。
岡山県立桃太郎高校は、10年ほど前は強豪校として名を馳せていましたが、いまは部員も減り、廃部寸前にまで追い込まれていました。
そんな大食い部を立て直し、かつての栄光を取り戻すために現れた新監督こそ、本作の主人公・盛山空太郎(もりやまくうたろう)です。部の惨状に四苦八苦しつつ、新たな部員たちとともに、戦いの舞台である「大食い甲子園」に再び挑むのでした。
タイトルにもなっているとおり、作中では甲子園まで開かれるほどに大食いがスポーツとして認知されています。各高校には大食い部が設立され、甲子園出場を目指して日々トレーニングがおこなわれていました。
本作の魅力は、なんといってもやはり食事のシーン。部員の勧誘から練習風景まで、とにかくどんな時にも大食いが絡んできます。現役選手はもちろん、すでに引退したOBたちも、食って食って、食いまくるのです。
特筆すべきは、誰もが真剣なこと。甲子園という大舞台はもちろんですが、入部試験や、潰れかけの店を救うための大食い勝負まで、アツいシーンが満載です。
よくよく考えるとなぜ大食いなのか、と思ってしまいますが、そこは冷静になってはいけません。細かいことは気にせずに、土山しげる作品を存分に楽しんでください。
- 著者
- 土山 しげる
- 出版日
- 2010-12-08
本作は、桃太郎高校が甲子園に挑む物語。監督を務める盛山空太郎は、かつて名門高校で将来を有望視されていました。しかしとある理由で大食い部を退部させられてしまったという過去があります。
ただ、大食いに対する情熱は無くしていません。かつての実績とアツい想いを従えて桃太郎高校の大食い部を立て直し、最終的には甲子園に出場できる部員数を集めることに成功するのです。
新メンバーがそろうまでの物語は実に波乱万丈で、落ち着く暇がありません。
たとえば、本作の準主人公と言っても過言ではない早味翔(はやみしょう)。金髪がトレードマークの2年生です。少ない水分でたくさん料理を食べることができ、天性の大食いの才能があるといわれている人物ですが、彼自身は大食いというものを毛嫌いしていました。
そのため盛山の勧誘を何度もあしらい、時には殴り掛かるほどに敵対視していたのです。
そんな早味は、ある事件で盛山が抱えている過去を知り、それをきっかけにして盛山という人物の男気に惚れ込み、入部を決めることになります。
また女性部員の梅小路香(うめこうじかおり)や、落語研究会と二足の草鞋を履いている林屋彦助(はやしやひこすけ)などの活躍も見逃せません。
彼らが力を合わせて何度も大食いのトレーニングをし、甲子園出場を目指して食べまくるのです。
大食いに特化している本作ですが、登場する料理自体も魅力的。非常に食欲が刺激されます。またそれらを大食い部の部員たちがおいしそうに食べるため、夜中に読むのは危険であるといえるでしょう。
描かれているのは、嗜好を凝らした美食ではありません。おにぎりやうどん、定食屋の親子丼、はてはカップラーメンなどもあります。一見何でもないような料理なのですが、読んでいると不思議と彼らと同じものを食べたくなってしまうのです。
よくある料理ばかりなので、食べ物そのものにフォーカスした解説などはありませんが、とにかくページのそこかしこで誰かしらが何かしらを食べているので、ふとした瞬間に空腹感を覚えるのではないでしょうか。
強烈な個性をもったストーリーが印象的ですが、何気ない料理をただ食べているだけで読者の心を掴んでしまう魅力的な作品になっています。
- 著者
- 土山 しげる
- 出版日
- 2011-09-08
甲子園出場までの展開を中心にご紹介してきましたが、もちろん本戦自体も見どころが満載。必死に勧誘した新入部員たちの活躍もしっかり描かれているので、結果とあわせてぜひご確認ください。
土山しげるファンはもちろん、初めての方も入門編としておすすめのボリュームなので、ぜひチェックしてみてくださいね。