鳥人間たちの住む国が舞台の日常コメディ『トリマニア』。今回はその面白さを紹介していきます。スマホの漫画アプリで無料で読むことができるので、シュールで切ない世界を体感してみてください。
2015年から「ガンガンONLINE」で連載されている『トリマニア』。個性的なキャラクターたちによってくり広げられるシュールなギャグと、人生について考えさせられるような深みのあるやりとりが人気です。
この記事ではメインキャラクターの5人と、単行本各巻の内容を紹介しながら本作の魅力を紹介していきます。ネタバレを含むので未読の方はご注意ください。
- 著者
- 久世 岳
- 出版日
- 2016-07-12
「探し物も夢も野望もないけれど とりあえずどっか遠くへ行きたくて」(『トリマニア』1巻より引用)
そんな思いから、女子大生の紅屋あかりは留学を決意します。ダーツに任せて決めた行き先は、「トリマニア共和国」。なんと、世界で唯一「鳥人間」と呼ばれる人々が暮らしている不思議な国とのことです。
しかしいざ入国してみると、そこは日本とほとんど同じ景色。公用語も日本語です。住人たちも、翼があって空を飛ぶことができ、卵生であること以外は普通の人間と変わりません。
夢があるようでまるでないこの国で、あかりの留学生活が始まるのでした。
失恋をきっかけにトリマニアに留学した女子大生。当初は傷心旅行のつもりでしたが、自分と同じように悩みを抱えて生きているトリマニアの人々を見て、「幸せの定義を探す」ことを目標としました。
貯金をすべて投げ打って日本を出ただけあり、思い切りのいい性格。また人助けなどを率先しておこなうところも魅力です。料理ができないにもかかわらずお粥を作ろうとして失敗するなど、少々危なっかしい部分もありますが……。
積極的なその性格でトリマニアの人々と関わっていき、複雑な人間関係に触れながら、幸せについて考えていきます。彼女がどんな答えを出すのか、注目です!
アルバイトでトリマニアの観光ガイドをしている大学生。仕事で出会ったあかりに一目ぼれし、プライベートでも彼女の世話をするようになります。話が進むにつれ、パシリですら喜んでいる姿が見られました。
妹のわがままを聞いてあげたり大学の後輩のレポートを手伝ったりと、非常に面倒見のよい性格の持ち主。その性格が影響してか、事あるごとに自宅が友人たちのたまり場になっています。
「鳩サブレ」や「鳩胸」などとイジられてどんよりしたり、ナンパ師からあかりを守ろうとしたのに他の人に先を越されてヘコんだりと、繊細さが見られることもしばしば。ただ表情は常にクールなので、そのギャップがたまりません。
郵便局で働くグリージョの幼馴染。イケメンなので、とにかく女性からモテまくっています。
しかし彼は容姿がよいだけで、口は悪く、女性からお金を借りようとするなど、性格はまさにクズ。フラれた回数も100を超えています。
幼馴染の鶉橋マローネから好意を寄せられていて、彼自身も気付いてはいますが、その気持ちに応えようとはしません。もうひとりの幼馴染、烏谷コルヴォとの関係など、彼なりに想うところがあるようです。
あまり自分の本心をさらけ出そうとはせず、取り繕った振る舞いを見せることが多いため、「難儀な男」と評されることもありました。複雑な三角関係の行方は、彼が鍵を握っているといえるでしょう。
保育士をしているグリージョの幼馴染。とにかく子供が大好きで、母性本能を刺激されてよくメロメロになっています。園児たちのお世話は完璧で、人相の悪さとのギャップも魅力でしょう。
マローネに想いを寄せており、彼女の気持ちがセルリアンに向いていることを知りつつも気持ちを伝え続けています。彼女が風邪をひけば薬を持参して駆けつけ、グリージョから彼女の困った顔の写メを送られれるだけでも駆けつけます。
そんなどこまでも一途なコルヴォの行動がマローネの心を支えることもあるので、ぜひ注目してみてください。
あかりが下宿している宿屋「とまりぎ」のオーナー。お酒が大好きで、よく一升瓶を抱えている姿が見られます。
「毎日びっくりしてる。幸せの…手に入れづらさに」
「私は今日外出してないけど、常に歩き疲れてる。人生に」(『トリマニア』1巻より引用)
いわゆる「こじらせ女子」で、ネガティブな発言を連発してはあかりをもやもやさせています。風邪をひいても飲もうとするほど酒びたりの日々ですが、料理や洗濯などの家事もそつなくこなすしっかり者の一面も。
長年にわたってセルリアンに恋心を抱いていますが、本心を見せない彼に踏み込むことができず、適度な距離感を保っている状態。この関係性が好転すれば、彼女のお酒の量も減るかもしれません。
失恋し、傷心の勢いのままトリマニア共和国に留学したあかり。しかしそこで暮らしている「鳥人間」の人々も自分と同じように悩みながら生きているのを見て、「幸せとは何か」を見つける旅にしようと考えをあらためました。
鳥間大学へ編入手続きに訪れた際は、留年の危機に瀕する4回生の鶴本ビアンコと、ハイテンションな1回生の川蝉アランに出会いました。
- 著者
- 久世 岳
- 出版日
- 2016-07-12
1巻の最大の見どころは、やはりセルリアン、コルヴォ、マローネという幼馴染の三角関係でしょう。本来ならばギスギスしてもおかしくありませんが、彼らは普通に顔を合わせて酒を酌み交わします。ただ絶妙なバランスで保っている緊張感があり、目が離せません。
メインキャラクター以外にも、個性のある人たちが続々と登場。ビアンコとアランのコンビは対照的な性格が魅力で、何かと夢見がちなアランに対しリアリストのビアンコが現実を突きつける、という掛け合いが多く見られます。
またグリージョの妹のピノはけだるげな雰囲気をした女子高生で、兄の小言に対して舌打ちをしたり悪態をついたりと反抗期まっただなか。「妹育成ゲーム」にはまっていたアランは幻想を打ち砕かれていました。
ただグリージョとピノの兄妹仲は決して悪いわけではなく、なんだかんだでお互いを思いあっていることがわかるシーンもあるので注目です。
日本から留学してきたあかりに一目ぼれをしていたグリージョ。初めての土地でも迷いなく行動していく彼女を見ているうちに、その想いはどんどん大きくなっていきました。
ある日、彼女が人と待ち合わせをするというのでこっそり後をつけていると、そこにいたのは意外な男性と会っているあかりの姿。果たして2人の関係は……?
さらに、大学で偶然出会ったあかりの様子がいつもと違うため気にかけていると、彼女のスマホには日本にいる失恋相手から意味深なメッセージが届いていました。さてグリージョはどんな行動をとるのでしょうか。
- 著者
- 久世 岳
- 出版日
- 2016-08-22
2巻では、それぞれの関係が動きだします。マローネにから、グリージョのことをどう思っているのか尋ねられたあかりは、自分の気持ちを語りました。一方のグリージョも、彼女に想いを寄せてはいるものの、何か葛藤を抱えている様子です。
そんなある日、「とまりぎ」に泥棒が入る事件が。マローネが真っ先に助けを求めたのは、コルヴォでした。昔から困った時にはいつも彼に救われていて、もしかしたら自分は彼の気持ちを都合よく利用しているではと自己嫌悪に陥ってしまいます。
そんな彼女に、コルヴォはある言葉をかけました。胸を締め付けられるような切ないエピソードは必見です。
さらに、1巻で妹の幻想を打ち砕かれていたアランは、偶然ピノと出会い、一緒にカラオケに行くことに。だんだんと打ち解けていく2人にも注目してください。
ピノの高校の友達、ネーヴェは、オープンキャンパスで知り合ったグリージョのことを狙っていました。街で偶然出会うと、猛然とアプローチをかけます。
ところがそこに、彼と待ち合わせをしていたあかりがやってきて……。
- 著者
- 久世 岳
- 出版日
- 2017-01-21
グリージョがネーヴェに言い寄られているところに遭遇したあかりは、へそを曲げてしまいました。2人の関係がこじれてしまいます。
しかし裏を返せば、彼らはケンカするほど親しい間柄になっていたということ。今後の発展が期待できますね。
3巻では、セルリアンとマローネの関係もこじれてしまいます。セルリアンの職場で異動の話が浮かんだことをきっかけに、彼がマローネにある質問をしてしまうのです。それが彼女を怒らせてしまい……。
これまで危なげながらも安定していた幼馴染たちの三角関係に、揺らぎが生じてしまいました。
また、本作の魅力のひとつでもあるガールズトークとボーイズトークにも注目してください。女性陣はあかり、マローネ、ビアンコの友人の3人で焼き肉に。男性陣は、セルリアン、コルヴォ、グリージョ、アランが集まります。
悩める彼らのトークに、共感してしまうはずです。
セルリアンとのケンカを引きずり、マローネは落ち込んでいました。あかりの励ましの言葉も耳に入りません。そんな彼女が電話をかけたのは……やっぱりコルヴォです。
一方のセルリアンも、マローネを泣かせてしまったことを後悔していました。謝るべきか悩んでいる時に偶然グリージョに遭遇し、彼からある言葉をかけられてマローネに会いに行くことを決意します。
- 著者
- 久世岳
- 出版日
長年、幼馴染3人の関係を傍観してきたグリージョ。ある変化に気づいて、それをセルリアンに告げました。三角関係に影響を及ぼしかねない重要なシーンなので、お見逃しなく!
また、アランとピノのやりとりにも注目です。将来やりたい仕事について話す2人。ピノは密かに抱いていた夢を、初めてアランに語りました。普段はけだるそうな態度をしている彼女ですが、その姿からは想像できないほどしっかりした考えを持っていることがわかります。
さらに、グリージョとあかりのエピソードにも注目。大学のレポート課題を一緒にするために待ち合わせをした2人でしたが、ひょんなことから、親とはぐれてしまった子どもを探すことに。トラブルに巻き込まれつつも無事に見つけることができ、2人の距離がまた少し縮まります。
今後どのように発展していくのか、ますます目が離せません。
普通の人間であろうが鳥人間であろうが、仕事や恋愛などに悩んでいるのは同じです。幼馴染のあいだの三角関係はハラハラと緊張感がありながらも、絶妙なバランスを保っています。核心に迫りそうで、避ける、彼らのちょっと切ない日常をお楽しみください。本作はスマホの漫画アプリ「マンガUP!」で無料で読むことができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。