漫画『めぞん一刻』に低スペックでもヒロインを射止める恋愛術を学ぶ!

更新:2023.3.10

1980年から1987年まで「ビッグコミックスピリッツ」で連載されていた『めぞん一刻』。冴えない主人公の青年とかわいいヒロインが登場し、まさにラブコメ漫画の王道ともいえるでしょう。 今回は、低スペックながらも最後には見事ヒロインを射止めることができた主人公の行動を分析し、恋愛術を学んでいきたいと思います。

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漫画『めぞん一刻』で五代が響子さんを射止められた訳とは!? 名作ラブコメが無料で読める!

 

テレビアニメ化、実写映画化、さらにラジオドラマやゲームなどさまざまなメディアミックスをされました本作。連載が終了したのは30年以上も前ですが、いまなお高い人気を誇っています。

作者の高橋留美子は、『うる星やつら』や『らんま1/2』などを生み出した少年漫画界の巨匠。本作は、これらよりちょっぴり大人の恋愛を意識しており、また違った魅力を見つけられることでしょう。

 

著者
高橋 留美子
出版日
2007-04-27

 

『めぞん一刻』の主人公・五代裕作(ごだいゆうさく)は、優柔不断で流されやすい性格をしており、トラブルに巻き込まれることも少なくありません。浪人中であろうとも、「一刻館」の住人から雑な扱いを受けていました。

1年間余分に勉強したすえに合格したのは、三流の私立大学。しかも卒業後は内定をもらっていた会社が倒産し、就職浪人となってしまうのです。何をやっても踏んだり蹴ったりで、冴えない主人公感満載です。

そんな彼が、「一刻館」の新しい管理人として現れた美しい未亡人の音無響子(おとなしきょうこ)に思いを寄せ、めげることなくアタックを続けます。

読者は「分不相応」と感じるかもしれませんが、彼の純粋かつ熱烈な想いは、やがて響子の心を動かしていくのです。しかし2人の間には、ハイスペック男子やクセが強い女子など、さまざまな障害が。作中でどんなふうに恋の駆け引きがおこなわれるのか、注目してください。

 

『めぞん一刻』あらすじ

『めぞん一刻』あらすじ
出典:『めぞん一刻』1巻

 

大学受験で志望校に落ちてしまった五代は、浪人生として上京することを決意。古いアパートの「一刻館」を新しい住処に決めました。
 

そこへ、住み込みの管理人として響子がやってきます。容姿端麗で気立てのいい彼女に、五代は一目で恋に落ちてしまうのでした。

ただ響子は、夫を亡くした「未亡人」。彼女の心にはずっと夫がいます。また元来の鈍感な性格と相まって、なかなか五代からのアプローチに気が付きません。

そんな2人の恋愛模様を軸に、「一刻館」の住人たちのドタバタの日々が描かれています。

 

勝利の秘訣1:時間をかけて攻める!

 

物語の冒頭から響子に一目惚れした五代ですが、当初はまったくといっていいほど相手にされていませんでした。響子が鈍感な性格をしていることも理由のひとつですが、なによりも彼女が亡き夫のことを忘れられない「未亡人」であるということが大きく関係しています。

しかし五代は、そんな彼女の境遇や性格を理解したうえでもなお、根気強くアプローチを続けるのです。

序盤で響子が五代に対してもっているイメージは、「ダメな弟」というもの。年齢差もありますし、ヘタレでなさけない五代は、彼女にとって恋愛対象外でした。そもそも異性として意識されていなかったのです。

さらに、響子にアタックをかける男性も登場。彼女が通うテニスクラブのコーチである三鷹瞬(みたかしゅん)は、イケメンでハイスペックな男性です。年上の余裕があり、響子にとっても新鮮な恩材でした。五代とはまるで正反対ですね。

ただ三鷹というライバルが現れたことにより、五代の恋心はよりいっそう加速していきます。響子に「好きだ」という気持ちを素直に訴え続け、少しずつ振り向かせようとするのでした。

 

著者
高橋 留美子
出版日
2007-04-27

 

しかし一方の五代にも、物語中盤でガールフレンドができます。アルバイト先が一緒だった七尾こずえという女の子で、彼よりもひとつ年下。五代自身はこずえに気があるわけではないのですが、冷たく接することができず、ダラダラと交際を続けていました。

そんな2人を見ているうちに、響子の中になにやらモヤモヤとした気持ちが生じるのです。このモヤモヤが「嫉妬」だとわかるエピソードが描かれ、ストーリーは大きく動いていくことになります。

響子は、自分に「好きだ」と言った五代の気持ちを、そこで初めてきちんと考えるのです。これまで彼女の心の中の大半は亡き夫が占めていましたが、いつしか五代のことを考える時間が増えていきました。

最終回の直前、五代は響子の夫の墓の前で、自身の気持ちを静かに語りかけます。「亡き夫のことを思う響子を丸ごと愛する」という確かな決意を表しました。その姿を陰ながら見ていた響子は、自分の中にある「五代を愛している」という気持ちを自覚するのです。

眼中になくても振り向いてもらえなくても、焦ることなく響子の気持ちが変化することを待ち続けた五代。時には惰性でこずえと付き合うこともありましたが、それも結果的には響子の気持ちを動かすきっかけになりました。

完全に一途というわけではありませんでしたが、それでも最初から最後まで響子の気持ちにそっと寄り添い続けた五代だからこそ、響子に再び誰かを愛する可能性を引き出してあげられたのかもしれません。

たとえ最初はうまくいかなくても、長い時間をかければ人の心を動かすことができると本作を読めばわかるはずです。またこれは、恋愛において重要なことはけっして容姿だけではなく、相手のことを心か想い、考え、慕う深い愛情が大切なのだということも示しています。

 

 

勝利の秘訣2:素人童貞でもいい!年下でもリードする存在であれ!

 

なにをやっても冴えない五代は、もちろん性に関してもまったくの「素人」です。高校時代は色恋沙汰に恵まれず、異性とのやり取りもゼロに近いものでした。また上京してからはすぐに響子に一目惚れをしたため、性的な経験もありませんでした。

一方の響子は既婚者なため、もちろん性行為の経験があります。もしこのまま彼が未経験のままだったら、いつか2人が付き合ってそのような展開になった時、経験者の響子がリードする形になるでしょう。作者の高橋は、それを望んではおらず、彼がずっと童貞のままでいるのは「正しくない」としていました。

 

著者
高橋 留美子
出版日
2007-05-30

 

ちなみに響子の夫は、元々彼女が通っていた高校の講師。10歳ほど年上で、包容力のある男性です。故人といえども、もしくは故人だからこそ、この夫の存在は五代にとってかなり高い壁だといえるでしょう。乗り越えることができるかはわかりませんが、愛する夫を亡くして傷ついた心を抱えている響子を、五代はリードして幸せにしてあげなければならないのです。

このような理由から、作中では五代がソープに行ったことを匂わせる描写がありました。

ただ連載当時は、この展開に対して読者から批判ともいえる反応が相次いだそうです。なかでも「五代の初めての相手は響子でなければならない」という意見が多く寄せられ、ファンの熱意を感じられるものとなりました。

賛否両論はありましたが、冴えない五代は彼女をリードできる男になるために経験を積み、変わっていきます。響子にとって、これまではただ気持ちを素直に伝えてくる年下男性の存在でしたが、自分なりに先を見据えて行動をし成長していく様子は、彼女の目にいつしかひとりの男性として映るようになるのです。

難攻不落の相手を振り向かせるためには、ただ相手の気持ちが動くのを待つだけでなく、自分自身の成長が必要。どんなことでも行動力が大切ですね。

たとえ素人童貞でも、年下の五代が小さな自信を身に着けることは、本作にとって大きな出来事だったことがわかります。

 

勝利の秘訣3:そのままの君が好きだというスタンス!

勝利の秘訣3:そのままの君が好きだというスタンス!
出典:『めぞん一刻』1巻

 

20歳で未亡人となった響子は、見た目もかわいく優しくて母性本能にあふれていますが、その一方で嫉妬深く根に持つ性分も持ちあわせています。しかも当の本人がその事実に気づいていないというところが、少し厄介ですね。

またかなりの鈍感で、異性からのアプローチになかなか気づかないため、振り向かせるのは困難な女性だということがうかがえます。

猛烈なアプローチをする五代に対しても、はじめは弟に対するような気持ちで接していました。しかし彼にこずえというガールフレンドができたことにより、響子のなかに眠る嫉妬深い一面が顔をのぞかせてくるのです。

ある日、五代がこずえから手編みのセーターをプレゼントされると、その想いが爆発してしまいました。

「一刻館」の屋根にのぼり、修理をしながら2人は口喧嘩をはじめます。思わず身を乗り出して文句を言う彼女の姿は、普段のおしとやかな雰囲気からは想像もつかないもの。ただまだ若いため、これが年相応の本来の姿なのかもしれませんが。

自分に対して好きだという気持ちをぶつけておきながら、ほかの女の子からのアタックを受け入れている五代のことを許せないという本音を露にします。

怒りがヒートアップし、身を乗り出しすぎてあわや落下しそうになるのですが、喧嘩をしながらも五代が庇ってあげるのです。嫉妬心からきた事故ということもあり、このエピソードからも彼女が面倒くさい一面を持つ女性だということが分かります。

響子は夫への気持ちも忘れられないため、五代に対して嫉妬を抱きながらも、彼の好意を素直に受け止めることができません。そんな彼女にそれでも好きだと言い続ける五代は、ある意味とても懐が深いのかもしれませんね。

五代は惚れた弱みもあいまって、響子に関する大抵のことは受け入れてあげます。また気持ちの変化を無理に求めることもしませんし、急がせることもしません。ありのままを受け止めるそのスタンスが、夫を亡くした彼女にとってはありがたかったことでしょう。

屋根から落ちそうになった響子を助けたために、五代が怪我をしてしまい、これをきっかけに2人の距離はぐっと近づくことになります。響子は五代を甲斐甲斐しく看病し、リハビリをする際に彼が転びそうになれば抱き留めてあげるなど、身体的な接触も増えました。

これまでは「一刻館」の管理人と住人という関係だった彼らが、ひとりの男と女として関わるようになり、より一層意識していくことになるのです。

見返りを求めずに、純粋に好意だけを持ち続けるのは大変なこと。五代はけっしてイケメンではないですし高スペックでもないですが、響子を想い続けた根気と情熱を持ち合わせていることが1番の取り柄で1番の魅力なのでしょう。

彼の恋愛に対する姿勢が間違っていなかったことが、本作のエンディングを見てもわかるはずです。

 

著者
高橋 留美子
出版日
2007-10-30

 

いかがだったでしょうか?長い年月を経てなお、変わらない支持を受け続ける『めぞん一刻』は、恋愛におけるセオリーがぎゅっと詰まっています。何より大事なことは、好きになった相手に対して一途であり続けるということなのではないでしょうか。何の取り柄もない冴えない主人公の五代が、美しくて魅力溢れるヒロインの響子と結ばれるという結末は、ラブコメの王道でありながらもそれまでの彼の行動を見ると納得の展開です。恋愛の指南書と言っても過言ではない本作、ぜひ読んでみてくださいね。

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