友部正人の詩集を含むおすすめ5選!名曲を生むシンガーかつ詩人の感性とは

更新:2021.11.13

友部正人をご存知でしょうか?昭和のフォークソング界を牽引し、還暦を迎えたいまでも活発に音楽活動をしているシンガーであり、詩人です。彼の紡ぐ言葉には人々に寄り添う等身大の優しさがあり、多くの人に親しまれています。今回はそんな彼のおすすめ作品を5つご紹介しましょう。

ブックカルテ リンク

友部正人とは

 

フォークシンガーであり詩人でもある友部正人。1950年に東京で生まれ、幼少のころは各地を転々として育ったそうです。高校の時に友人とバンドを組み、音楽にのめり込むようになりました。

路上ライブを経験した後、1972年にシンガーとしてデビューします。代表作の「にんじん」や「また見つけたよ」のほか、坂本龍一がピアノで参加した「誰もぼくの絵を描けないだろう」や、バンドたまとセッションした「けらいのひとりもいない王様」などをリリースしました。

そのかたわらで言葉を操る詩人としても活動しており、1977年に初の詩集『おっとせいは中央線に乗って』を発表。そのほかエッセイや絵本なども手掛けています。

マルチに活動を続ける友部の作品は、シンガーらしいリズム感のよい言葉選びが特徴です。フォークソングにも共通する等身大の世界観は、読む人に寄り添い、優しく語りかけてくれるのでしょう。

還暦を迎えた友部正人の感性は

 

日常から自在に詩を生み出す友部正人。60歳を迎えて本作を記しました。

彼自身が描いた挿絵とともに楽しめる、ファン必読の一冊です。

著者
友部 正人
出版日

 

節目の年を迎えたからこそわかる、人生で失ったもの、手に入らなかったものなどもの寂しいテーマを根底に置きながら、まるで音楽にのせたようにリズミカルな文章が記されています。

それは驚くほどみずみずしく、のびのびとした感性が光るものでした。

「歌は街に追い抜かれ
街に住む人になるだろう
詩は景色に追い抜かれ山に住む鳥になるだろう
ぼくは歌や詩に追い抜かれ
十二時の鐘になるだろう」(『退屈は素敵』より引用)

過ぎていった時間を振り返りつつ、それでも前に進んでいく強い力を感じます。

美しすぎる装丁と伸びやかな文体で造られた詩集

 

2015年に発表された、初めての書下ろし詩集です。

彼は1990年代から頻繁にニューヨークに足を運び、やがてアパートを借りて暮らすようになりました。現地にいた際は毎日のように詩を書いていたそうで、そのなかから選りすぐりの35編が収められています。

著者
友部 正人
出版日
2015-03-25

 

本作は装丁にもご注目。詩の本文が書いてあるところには異なる7種類の紙が使用され、本の側面三方には金加工が施されています。

見ているだけで幸せな気分になり、出かけるときには持ち歩きたくなる一冊です。

「もうだいぶ前のことになるが
ぼくはバス停に立って宇宙船を待っていた
どうしてそんなことをしたかというと
歌が行き詰っていたからだ
ぼくの歌に乗り物がなかった
どこにも行けないような気がした」(『バス停に立ち宇宙船を待つ』より引用)

友部の歌に対する思いを言葉にした一節。これにはまだ続きがあるので、ぜひ実際に読んでみてください。

友部正人の心を震わせた名曲たち

 

雑誌「現代詩手帖」で連載をしていたものに、書下ろしの3編を加えたエッセイ集。

友部の心を震わせた音楽について語っています。

著者
友部 正人
出版日
1993-04-01

 

言葉を重視して楽曲を制作していた友部。彼と同時代に活躍し、彼の感性に響いた音楽はどのようなものだったのでしょうか。

とりあげるミュージシャンには特に括りはなく、邦楽・洋楽問わず、彼の目や耳に留まった曲が選ばれています。ハイロウズやブルーハーツの詞を引用しながらエピソードを語っているのも、面白いところ。

シンガーとして、そして詩人としての彼のこだわりがつまった一冊になっています。

日本全国紀行エッセイ

 

ミュージシャンとして活動する友部が、ライブで訪れた日本全国の土地について綴った紀行エッセイ集です。

そこにしかない風土、香り、雰囲気などを彼独自の目線で楽しめる一冊になっています。

著者
友部 正人
出版日

 

全部で34の都道府県について語っています。そこが田舎でも都会でも、彼にしか感じることのできない現地特有の温かさが文字に込められており、思わず本書を片手に旅をしたくなってしまうのではないでしょうか。

「ぼくは東京で乗客気分で暮らしてる。家賃は高いけど、新幹線は指定席のようなものだと思っている」(『耳をすます旅人』より引用)

音楽活動だけでなく、私生活でも各地を訪れ、暮らしている友部。彼の感性と日本のあたたかさが胸にしみるエッセイです。

友部正人の絵本

 

主人公のしいちゃんは、周囲とうまく馴染むことができず、もうひとり自分がいたらいいのにと考えていました。唯一心を許せるのは、少し風変りなおばさん。彼女になら、家族や学校の先生には言えないことも、話せてしまいます。

しいちゃんはおばさんと関わることで、徐々に自分と向き合うことができうようになり、大人へと成長していくのです。

著者
友部 正人
出版日

 

画文家の沢野ひとしと友部正人が共同で手掛けた絵本です。

たとえコミュニケーションが苦手でも、ひとりでいるのが好きでも、それでも人は誰かと関わることで成長していくものです。おばさんと一緒の時間を過ごすことでしいちゃんの世界も広がります。

もの静かで心安らかなしいちゃんとおばさんが、河原でふたりきりでいるシーンは印象的。やがておばさんはタンポポの綿毛になって飛んでいってしまいますが、しいちゃんはもう大丈夫なのです。

沢野ひとしのイラストが友部の言葉とぴったり合い、不思議な世界観をつくりあげています。大人が読んでも楽しめる絵本です。

シンガーであり詩人でもある友部正人の世界観は、等身大の伸びやかさとリズミカルな言葉で満ちています。読めばきっと心があたたかいもので満たされるはず。ぜひ実際にお手に取ってみてださい。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る