日本では『巌窟王』で有名なフランス人作家、アレクサンドル・デュマ・ペール。あのナポレオンと同年代を生きた人物です。彼の描く主人公はみな一本気で多くのファンを虜にし、数々のヒット作を生み出しました。今回は彼の作品と名言を紹介していきます。
1802年、フランスの軍人だった父親のもと生まれたアレクサンドル・デュマ。幼少期の暮らしは大変貧しいもので、学校にすらまともに通うことのできない状況だったといいます。
15歳の時から役場で働きはじめ、その傍ら激情で見た「ハムレット」に感銘を受けたそう。劇作家を志してパリに上京しました。後の国王になるオルレアン公爵の秘書室に勤めることになり、勉学に励みます。
1829年、戯曲「アンリ三世とその宮廷」が大ヒット。その後も次々と作品を発表し、劇作家としての道を拓きます。1845年からは新聞で『モンテ・クリスト伯』を連載。彼の代表作となりました。
同名の息子がおり、彼も作家として活躍したためめ、息子と区別して「大デュマ」、フランス語でいうとデュマ・ペールと呼ばれることも。ちなみに息子はデュマ・フィスと呼ばれています。
この記事では、アレクサンドル・デュマ・ペールの名言と作品を厳選してご紹介するとともに、息子デュマ・フィスの作品もとりあげていきます。
生涯で数々の名言を残したアレクサンドル・デュマ。そのなかでも、あふれる自信がうかがえるものをご紹介しましょう。
「一人は皆のために、皆は一人のために」
英語では「One for all、 All for one」。日本でも、チームスポーツなどでよく使われる言葉です。ひとりひとりはチームのために行動し、またチームはひとりひとりのために行動するべきだという意味。
彼の著作である『三銃士』に登場する言葉で、助け合う仲間たちの友情を感じとることができます。
「盗作したことは認める。しかし、おれの方が面白い」
こちらはクリエイティブな仕事をしている方にとっては、思いがけない言葉ではないでしょうか。デュマが弟子から盗作疑惑で裁判を起こされた際に言った言葉です。
作家として圧倒的な実力を持っていた彼は、同じ内容の作品を同じ時期に書いたとしても、自分が書いた方が面白くなるという自信をもっていました。
今となっては許されることではないかもしれませんが、当時の彼にだからこそ言うことができた名言でしょう。
世界各地で映画化やアニメ化がされている不朽の名作。
本作は第1部で、続く第2部の『二十年後』、第3部の『ブラジュロンヌ子爵』とあわせて「ダルタニャン物語」と呼ばれています。
- 著者
- アレクサンドル・デュマ
- 出版日
- 2009-10-23
物語の舞台になっているのは、ルイ13世が政権を握っていた1600年代前半。主人公は銃士を夢見る青年・ダルタニャンです。
銃士なるべく田舎からパリに出る道中で紹介状を盗まれてしまい、大ピンチに。その後なんとか銃士隊長との謁見に成功しますが、なんと成り行きで「三銃士」と名を馳せているうちのひとり、アトスと決闘をすることになってしまいました。
意を決して戦いに向かうと、そこで別の争いが勃発。ダルタニャンは三銃士の味方につき、敵を倒しました。この一件から、彼らの友情が始まります。
注目すべきは、なんといってもルタニャンの人間性でしょう。まるで少年漫画の主人公のような明るさと、正義を貫く勇気を持ち合わせているのです。何度も壁を乗り越え、そのたびに仲間を増やしていく姿に応援したくなってしまうでしょう。
物語はフィクションですが、実在する人物が多数登場。歴史好きの方も楽しめる一冊になっています。
日本では『巌窟王』の名で広く名を知られている『モンテ・クリスト伯』。デュマが記した歴史小説です。2018年にはテレビドラマ化されることで話題にもなりました。
無実の罪で逮捕された主人公が、長い時を経て自らを陥れた者に復讐していく物語。男らしさが光ります。
- 著者
- アレクサンドル デュマ
- 出版日
- 1956-02-05
物語は、主人公のエドモン・ダンテスが知人に裏切られ、収監されるとことから始まります。仕事でも出世を約束され、恋人との結婚も決まっていた彼を妬んだ者たちから、身に覚えのない汚名を着せられ、無期懲役になってしまいました。
しかしそこで諦めないのがダンテスです。同じく投獄されていた神父の力を借り、14年の時を経て脱獄。モンテクリスト島へ向かい、そこに隠された財宝を発見するのです。
莫大な富を手に入れた彼は、モンテ・クリスト伯爵と名を変え、かつて自分を陥れた者たちへの復讐を開始しました……。
「待て、しかして希望せよ!」(『モンテ・クリスト伯』より引用)
彼にはこのほかにも様々な困難が降り注ぎますが、どんなに長い時間がかかったとしても逆境を乗り越えていきます。この言葉は、そんなダンテスだからこそ言えるものかもしれません。勇気と希望をもらえる一冊です。
日本でも有名なマリー=アントワネット。
彼女が生きた18世紀フランス政権の、光と闇を描いた作品です。
- 著者
- アレクサンドル・デュマ
- 出版日
- 1972-04-07
マリー=アントワネットといえば、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」というなんとも貴族らしい発言が有名。金遣いが荒かったことでも知られていて、それが原因でフランス革命が誘発されたという研究もあるのです。
ある時代では悪の権化のようあ存在だった彼女ですが、本書を読むとその印象が変わるのではないでしょうか。
「よろしゅうございますか、陛下、いつぞやサルチーヌ卿が私に仰いましたが、百五十万フランで軍艦一つが造れるとのことでございます。そして実際、フランス王妃が首飾り一つを必要とする以上にフランス国王は軍艦一つを必要としていらっしゃいます」(『王妃の首飾り』より引用)
歴史小説とは、実在する人物を作者の想像と創作で補完して物語にしたもの。史実では無いことも数多くありますが、歴史の見方が変わるのではないでしょうか。
本書は、アレクサンドル・デュマ・ペールの息子、デュマ・フィスの長編小説。彼自身によって戯曲化もされ、当時大ヒットとなりました。オペラ化やバレエ化もされています。
実体験にもとづいたもので、高級娼婦との恋愛がテーマになっています。
- 著者
- デュマ・フィス
- 出版日
- 1950-12-06
舞台になっているのは、19世紀のパリ。主人公のマルグリット・ゴーティエは、椿を身につけて夜の世界に現れることから、「椿姫」と呼ばれていました。
裕福な暮らしはできるものの身体を張った仕事に、心身ともに疲れていたところ、アルマン・デュヴァルという青年と出会います。やがて交際するようになり、彼女は娼婦を引退。質素ながらも幸せな日々を過ごしていました。
しかしその噂を聞きつけたアルマンの父親が、2人の仲を引き裂こうとするのです……。
見どころは、マルグリットの変貌っぷり。アルマンと出会い、真実の愛を知った彼女は、健気で誠実な女性になるのです。贅沢な暮らしよりも揺るぎない愛を信じる姿が魅力的でしょう。
アレクサンドル・デュマ・ペールと、彼の息子が残した数々の物語は、後世にも伝わる名作ばかりです。古典文学は敷居の高い印象もありますが、いざ読んでみるとそのドラマチックぶりに驚くはずです。ぜひ気になったものから読んでみてください。