投稿コミュニティサイト「エブリスタ」で連載が始まって以降その人気が高まり、書籍化、漫画化と幅広いメディアに展開されている人気シリーズです。2016年には「京都本大賞」を受賞。2018年の夏にはアニメ化が決まるなど、ますます人気の高まるライトミステリー。今回の記事では『京都寺町三条のホームズ』を既刊分全巻ご紹介します。
舞台は京都の寺町三条商店街にある骨董品店「蔵」。オーナーの孫で鋭い鑑定眼を持ち、「ホームズ」というあだ名で呼ばれる家頭清貴と、アルバイトの女子高生・真城葵が主人公です。
そんな『京都寺町三条のホームズ』はこの2人がくり広げるキャラクター小説です。また、ジャンルとしてはライトミステリーということで、扱われる謎は殺人事件のようなハードなものではなく、日常的なもの。
ホームズこと清貴と葵の恋愛模様を含め、ほのぼのとした雰囲気がありつつも、しっかりとした作りのミステリーを楽しむことができます。舞台となる京都の風情を感じられる描写や、骨董品に関する薀蓄(うんちく)もよいバランスで描かれており、趣深い雰囲気に仕上がっている作品です。
ひょんなことから京都の寺町三条商店街にある骨董品店「蔵」にやってきた女子高生の真城葵(ましろあおい)。彼女はそこで、鑑定士見習いの家頭清貴(やがしらきよたか)という京大生に出会います。
イケメンで優しい清貴でしたが、彼は「ホームズ」と呼ばれるほど頭の良さと観察眼、そして骨董品の鑑定眼に優れた人物で……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2015-04-16
京都を舞台に、女子高生の葵とイケメンな京男の清貴こと「ホームズ」が出会うところから物語は始まります。
ホームズはその名前の通り、2人の周りで起こる謎を解き明かす探偵役。22歳の京大院生で、見た目はイケメンで人当りも良く、京男らしい気品溢れる雰囲気があります。
その一方で、腹黒い一面も持つ裏表のある性格です。ホームズとあだ名されるくらいに頭がキレ、また武道の経験もあるというまさに京都のシャーロック・ホームズといったキャラクターですね。
そんなホームズと出会った葵は、京都に引っ越してきたばかりの高校2年生。普通の女の子で骨董品などとは縁のない生活をしていました。
彼女は直観力に優れており、骨董品の価値や真贋を見抜く才能を秘めています。そんなところをホームズに見抜かれ、骨董品店「蔵」でアルバイトをすることになりました。
第1作となる本巻は連作短編形式でサクサクと読み進めることができますが、ミステリー部分はしっかりとしていて謎解きを充分に楽しむことができます。
また、ホームズと葵のコンビもとてもよい雰囲気です。ホームズは、葵が「いけずな京男子」と評するように一見すると物腰柔らかなイケメンですが、実は腹黒い性格なのです。
平凡だけど好奇心旺盛でいろいろなことを学ぼうとする葵をからかったり、かと思えば何かと世話を焼いたりする様子は見ていて微笑ましいものがあります。この2人がどうなっていくのかも楽しみになるので、ぜひ続きも読んでみてください。
天才でいけずな京男子・清貴ことホームズのいる骨董品店でアルバイトを始めた女子高生の葵。ある日、お店に持ち込まれた一つの茶碗。名のある骨董品かと思いきや、それは贋作。ホームズはあっさりと偽物だと見抜きます。
そんなホームズの前に、誰も見抜くことのできない贋作を作る天才贋作師が現れて……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2015-08-06
ライトミステリーなキャラクター小説第2弾では、ホームズにとって最大の敵が現れます。それが、円生(えんしょう)という名前の天才贋作師です。名前からもわかるように出家したお坊さんなのですが、誰も見抜くことのできなかった贋作をホームズが見抜いたことに興味を持ち、彼の前に姿を現すことになりました。
かの有名な「シャーロック・ホームズ」には、シャーロック・ホームズの最大の敵としてモリアーティ教授というキャラクターが登場しますが、この円生は、まさにそのポジション。ホームズにとって最大の敵でありライバルとなる存在です。
また、ホームズにくっついて回るキャラクターの1人に、梶原秋人というキャラがいます。俳優をやるくらいのイケメンで何かとホームズを振り回す男ですが、素直な性格の憎めないタイプ。ホームズと葵のコンビは淡い恋愛の雰囲気も漂わせる可愛らしさがありますが、ホームズと秋人のコンビもワチャワチャとする感じが思わず笑ってしまいます。
京都の風情漂う舞台や謎解きストーリーの魅力はもちろん1巻に続き健在ですが、本巻ではぜひ、新たに登場する円生や秋人とホームズのコンビにも注目してみてください。
そろそろ年の瀬も近付いてきた11月のある日。京都の寺町三条商店街の骨董品店「蔵」で働く見習い鑑定士の清貴ことホームズとアルバイトの葵のもとへ、市片喜助という人気歌舞伎役者が訪ねてきます。
襲名を間近に控えた人気役者であり、一筋縄ではいかなそうな喜助がホームズに告げたのは、自分のもとに届いたという脅迫状のことで……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2015-12-10
シリーズ第3弾の舞台は、年の瀬から年明けにかけての京都です。恋人たちにとっては一大イベントであるクリスマスもありますが、葵とホームズの間にある淡い恋愛模様はいまいち先に進みません。
一方、ホームズに付きまとう秋人はエスカレート。もともと「シャーロック・ホームズ」ファンである秋人のホームズ愛はどんどん加速していっているようです。そんな既存キャラクターの活躍はもちろんのこと、本巻ではホームズの元カノというキャラクターも登場します。
女子高生の葵の恋心は初々しくて可愛い感じですが、ホームズは大学院生ですし、歌舞伎役者の喜助の女癖の悪さとその因果も含め、大人の恋愛も楽しむことができるでしょう。
ところで、ホームズは骨董品店「蔵」で見習い鑑定士として働いていますが、本業は学生なので鑑定の仕事が学業の傍らで行っています。なので、もちろん店長やオーナーではありません。
店長はホームズの父の家頭武史、オーナーは祖父の家頭誠司です。本巻では、そんな父の武史の亡き妻――つまりホームズの母への想いを描いたエピソードもあるので、ぜひチェックしてみてください。
新年を迎えた京都。賑やかな正月も終わり、次なるイベントはバレンタインデー。葵とホームズは人気ミステリー作家の相笠くりすの朗読会に招待され、吉田山荘へとやってきていました。
しかし、そこで待ち受けていたのは、3ヵ月前に起きたというくりす殺害未遂事件で……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2016-04-14
大人気キャラクターミステリー小説の第4弾である本巻は、全部で3編の物語が収録されています。そのうちの1つ、人気ミステリー作家の相笠くりすを殺そうとした犯人を探す物語。こちらは特にミステリー色が強く、より謎解きを楽しみたい方にとってはとても楽しく、読みごたえもたっぷりでしょう。
また、本巻で初登場するのは滝山利休(たきやまりきゅう)という高校生の男の子です。利休は、かつて「蔵」でアルバイトをしていたこともあり古美術の知識に長け、さらに柔道留学をしていたという美少年です。
しかし性格はホームズ以上の腹黒い部分があり、ホームズのことをものすごく尊敬しています。ホームズの方も利休のことを可愛がっていて、彼にとっては弟分のような存在。ちなみに、彼の母は滝山好江といって、清貴の祖父である誠司の恋人でもあります。
利休はホームズのことをとにかく尊敬しています。彼は、平凡な女子高生である葵はホームズに釣り合わないとあまり良く思っていないようです。そんな利休の存在が、一進一退を繰り返しているような葵とホームズの関係にどう影響してくるのか、その辺りにもぜひ注目して読んでみてください。
葵が骨董品店「蔵」でアルバイトを始めて1年が経とうという頃。学校も春休みに入り、葵はホームズや秋人とともに様々なところに出かけ、楽しい時間を過ごしていた葵でしたが、一方で、ホームズに対して抱いている自分の恋心をどうするべきか迷ってもいました。
ある日、「蔵」にやってきた女性編集者。彼女は雑誌の取材をしに来たと言うのですが……?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2016-08-04
シリーズもいよいよ第5弾となる本巻。これまで一進一退を繰り返していた葵とホームズの恋愛模様も、葵が自分の気持ちを自覚したことでほんの少し前へ進んだような雰囲気になりました。
本巻では、葵たちが城崎温泉へと旅をしたり、シャーロキアンの会に参加したりと、魅力的な舞台設定も印象深い1冊になっています。
シャーロキアンというのは、「シャーロック・ホームズ」の大ファンのことで、会に集まるのは当然、「シャーロック・ホームズ」ファンばかりです。「シャーロック・ホームズ」を読んだことのない人ももちろん面白く読めるようにはなっていますが、作品が好きな方であれば、自分も会の1人になったような感じで楽しむこともできるかもしれません。
そして何より注目したいのは、天才贋作師である円生とホームズの直接対決です。ミステリー部分の謎解きはシリーズを通しての魅力の1つです。
そのなかでも今回の対決は、手に汗を握るハラハラ感も加わって思わず一気に読んでしまうはず。そして、そんなハラハラドキドキする対決を通して、葵とホームズの仲も遂に進展を遂げます。
2人の気持ちが一体どういう形になっているのか……それはぜひ手に取って確認してみてください。
とうとう気持ちの通じ合った葵とホームズ。大人なホームズと初々しい葵の恋愛は、不器用でありながらも幸せオーラ満開。
そんなある日、2人の前に現れたのは、以前、吉田山荘事件で知り合った探偵・小松でした。娘が行方不明になってしまったという小松。さらに京都の各地では次々に美術品が盗まれるという事件が発生していて……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2016-12-15
シリーズ第6弾である本巻は、初めての長編ストーリー。前巻で無事に葵とホームズが付き合い始めたこともあり、新たな章の始まりといった感じもするかもしれませんね。
さらに長編ということもあって事件の規模も謎解き要素も多く、アクションやら潜入捜査やら盛りだくさんな内容になっています。
ミステリー部分では、4巻で登場した探偵の小松が再登場し、キーパーソンとなります。地味で冴えないタイプの小松ですが、家族愛溢れるエピソードに心温まる方も多いのではないでしょうか。
また、ハラハラ感たっぷりのミステリーがある一方で、注目したいのはやはり葵とホームズの初々しいカップル姿。ホームズは大学院生で葵は女子高生。ということで、ホームズは祖父であり店のオーナーでもある誠司にロリコンとからかわれたり、ホームズがそれに対してムキになったりします。
「いけずな京男子」であるホームズの雰囲気も、初期の頃から比べるといろいろな変化があります。思わず胸キュンしてしまう女性も多いはず。また、葵のほうもかつての失恋を乗り越え、今はホームズとの幸せな恋愛をしている様子がとても微笑ましく描かれています。
第6弾にして最も胸キュンするミステリーと言ってもよい1冊です。
不器用ながらも順調にホームズとの交際を重ねていく葵も高校3年生に進級しました。そろそろ自分の進路についても考え始めた葵でしたが、そんな彼女の前に現れた1人の男。それは、ホームズの最大の敵であり天才贋作師の円生で……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2017-04-13
シリーズもとうとう第7弾となった本巻では、葵は高校3年生の受験シーズン真っ最中。前巻に引き続きホームズとは不器用ながらも順調に交際を重ねています。後半部分の物語ではその幸せな空気に少しずつ暗雲が立ち込めてきます。そこには天才贋作師である円生が関わっているのです。
それまでがあんまりにも幸せそうな葵とホームズだったために、2人の関係がギクシャクしてしまうのは、読者にとっては辛いところ。しかし、同時にこの先どうなっていくのかハラハラして最後まで読む手を止めることができません。
他にも、ホームズの最大の敵である円生の過去についても触れられているなど、後半のエピソードは特に見逃せない内容が盛りだくさんです。
前半のそこに差しかかるまでの部分では、葵が慣れない着物姿に苦戦したり、そんな見慣れない葵の着物姿にちょっと照れてしまうホームズだったりと、相変わらず初々しい2人を楽しむことができます。
だからこそ、前半と後半でのギャップがあって読者にとっては不安をかきたてられる1冊ですが、次巻へ続く……ということはなく、きちんと本巻で結末が明示されているので、ぜひ安心して最後まで読んでみてくださいね。
無事に京都府立大学に合格をして大学生となった葵は、骨董品店「蔵」のアルバイトにも復帰していました。
一方、京大大学院を修了したホームズは、祖父でありオーナーの誠司から、社会勉強と称して八幡市にある美術館へと修行に行くように命じられてしまい……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2017-09-13
シリーズ第8弾である本巻では、大学生になった葵と社会人となったホームズが登場します。葵のイラストも女子高生から女子大生になったことでやや大人っぽくなっていますね。
ちなみに、前巻で暗雲の立ち込めた葵とホームズですが、本巻では前以上にラブラブな感じになっているので、ぜひ前巻でハラハラしたぶんも楽しんでみてください。
しかし、そんな2人には序盤から試練が与えられます。試練を与えたのは「蔵」のオーナーでホームズの祖父である誠司。誠司はホームズに、社会勉強のために市外へ行って修行をしてくるように命じるのです。結果、大学通いの葵とホームズは遠距離恋愛をすることになってしまうのですね。
離れ離れになることに葵以上に不安そうになっているホームズは、かわいそうですが微笑ましく、ついニヤけてしまうなんてこともあるかもしれません。
もちろん不安なのは葵も一緒で、友人である香織と一緒にこっそりホームズの所まで来てしまうなど、可愛らしさはこちらも満点。やはり試練があるくらいのほうが恋愛は燃え上がるのかもしれません。
ちなみに、葵の友人である宮下香織は、老舗呉服店の娘。美少女で常に冷静なタイプですが、葵の良き理解者です。本巻では彼女の話も収録されているので、ぜひチェックしてみてください。
他にも、葵やホームズ以外のキャラクターにスポットが当てられていたり修行のためホームズがニューヨークに行ったりと、本巻から一気に世界が広がっている印象もあります。大学生&社会人編とまさに新しいシリーズの始まりである1冊です。
新年を迎え、大学生活にも慣れてきた葵でしたが、相変わらず様々なところで修行中のホームズとはなかなか会えない日々を送っていました。ホームズの新たな修行先は、伏見にある「幸谷酒造」。
しかし、そこで家宝である徳利の紛失事件が起きて……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2018-03-14
シリーズ第9弾、大学生&社会人編になってからは2冊目の本巻。ホームズは相変わらず修行として各地を転々とする日々を送っていて、葵は大学生活。生活スタイルの違う2人はなかなか会うことができず、遠距離恋愛を続けていました。そんな生活のなかでも2人の周りには相変わらず事件が起きていました。
ホームズは、修行先である「幸谷酒造」での家宝の徳利紛失事件に巻き込まれます。一方、香織の所属するサークルの手伝いをしていた葵は、サークルのリーダーである女学生・郁美が突如としてサークルを辞めると言い出したことに端を発する騒動に巻き込まれます。
謎解き部分は相変わらずしっかりとした作りで楽しく読むことができますが、葵とホームズの恋愛模様に関しては、2人が遠距離恋愛中でなかなか会えないこともあってやや平坦な印象です。
2人の幸せオーラ全開の仲良しカップルぶりを楽しみにしていた方にとってはやや物足りなさも残るかもしれませんが、新しい形で進むストーリーには新鮮さを感じながら楽しむことができるでしょう。
また、本巻ではホームズの悩みの一端が明かされます。離れているが故に明かされる部分もあるので、甘さは控えめでも新しい側面を垣間見ることのできる1冊になっています。
大学2年になった葵と、鑑定士の修行で各地を回っている清貴。なかなか会う時間も少なくなってしまっていた2人ですが、清貴の誕生日祝いに旅行へ行くことにしました。豪華寝台列車の旅に期待の膨らむ葵でしたが、清貴はある不安を抱えており……!?
- 著者
- 望月 麻衣
- 出版日
- 2018-07-11
本巻は、作者自ら「恋愛色が強くなっている」というくらい、恋愛多めの甘い展開が期待できる一冊。葵と清貴の恋愛はもちろんですが、彼女の親友である香織が片想いに決着をつけようとするエピソードも描かれています。香織の片思い相手は、清貴の父・武史。「蔵」のオーナーであり時代小説家の彼に告白を決意する彼女の恋の行方にも、ぜひ注目してみてください。
そんな注目したい恋愛エピソードがたくさんある一方、豪華寝台列車で起こる事件からも目が離せません。2人が列車で遭遇したのは、盗まれた掛け軸を持った男。清貴の知り合いの持ち物である掛け軸を盾に、男は彼に自分のビジネスに協力するように言ってきます。
しかし、そこから話は意外な展開へと転がっていき、彼は否応なく事件の解決に手を貸すことになっていくのです。その鮮やかな推理は本巻でも、もちろん健在。恋愛も推理も両方満足できる最新刊です。
いかがでしたか? ホームズや葵はもちろん、2人を囲むサブキャラクターもとても魅力的な本シリーズ。そんなキャラクターの魅力はもちろんですが、ミステリーとしてもしっかり楽しめるのが本作です。また、京都を舞台にしていることもあり、和風な雰囲気が漂うのも魅力的ですね。和風、ミステリー、キャラクター、これらのキーワードが気になる方は一度読んでみて絶対に損はないシリーズです。