緊縛美少女×盗撮少年のコアな関係性を描いた漫画『罪と快』。「縛る」「お仕置き」という刺激的なワードが飛び交い、ともすればエロスばかりが強調されてしまいがちですが、特殊性癖を持つ者同士の濃密なやりとりが癖になる作品です。本作の魅力と見どころを3巻までご紹介していきます!
「ヤングガンガン」で2017年から連載されている染谷ユウの作品です。YGマンガ賞一般部門において、佳作を受賞しました。コミックスは3巻まで発売中となっています。
緊縛師の少女と、盗撮癖を持つ少年がくり広げる禁断の世界を描いた本作。「緊縛」というワード自体がそもそもマニアックであり、刺激的な内容を予感させていますが、ただのエロスではなく、その特殊な世界観を下敷きとしたメインキャラクター2人の関係性を楽しめる作品です。
この記事では、そんな『罪と快』の魅力と各巻の見どころをご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 染谷ユウ
- 出版日
- 2017-10-25
主人公は、高校1年生の峰寺善(みねでらぜん)。どことなく気弱そうですが、真面目に見える少年です。両親のしつけが厳しく、日々の生活で蓄積されるストレスを紛らわせるために、「盗撮」という犯罪に逃げ道を作ってしまっています。スマートフォンのカメラを使い、街中でスカートの中を撮影しているのです。
一方、ヒロインの北条アヤメは、善の盗撮のターゲットとなった少女。見た目はかなりの美少女ですが、その正体は相手の体を縛って拘束し、調教をする「緊縛師」でした。
変態少年×変態美少女というコアな関係性が本作の1番の魅力。ただのエロでは終わらないマニアックなエロスを追求しています。
善のことをさまざまなシチュエーションで緊縛するアヤメですが、実は彼と同じ高校に通う先輩でもあります。アヤメは優等生として有名で、生徒会の副会長も務めているほど。そんな彼女が本性を露にし、言葉にするのも憚られる変態プレイを強要するというギャップに興奮を覚える読者も多いのではないでしょうか。
2人の特殊な関係性を中心に、物語は展開していきます。
本作の魅力は、その濃厚な世界観にもあります。緊縛師を生業とはするものの、アヤメはまだ高校生。そのため善を縛る舞台は学校内が中心です。誰かに見られるのではないかというスリルを感じながら縛り、縛られる展開は、非現実的ながら強く読者を引き込む力を持っています。
心の奥に変態的な欲望を隠している善に対し、「お仕置き」と称して緊縛をするアヤメ。言葉責めはもちろん、貞操帯を使って射精管理をしたり、直接描かれてはいませんが彼の性器に触れたりと、その行為はどんどんエスカレートしていきます。
教室で、屋上で、所構わずくり広げられる羞恥プレイに、善は当初苦痛と嫌悪を抱いていたはずですが、しだいにありのままの自分を受け入れてくれる唯一の存在として、アヤメに緊縛されることに悦びを感じはじめます。やがて、心のどこかで彼女のことを欲するようになっていくのです。
羞恥心を抱きながらもだんだんと興奮を隠さなくなっていく彼の姿が、アヤメには堪りません。「横吊り」「あぐら縛り」「前手縛り」などの緊縛の技を披露しながら弄んでいきます。
そしてついに、何かと善のことを心配している学級委員長の蒼井美羽にも、その手がおよんでいき……。
普通ではない性癖を持った少年少女の恋愛なのか、それともただ欲望を満たすだけの行為にすぎないのか。善とアヤメ、美羽も絡めた人間関係がどこに向かうのか、注目です。
高校1年生の峰寺善は、成績に厳しい両親のもとで、鬱屈した毎日を過ごしていました。「これ以上成績を下げたら許さん」と叱責され、徹夜で頑張るものの、テストの点数は一向に伸びません。やがて自分のことを「ダメ人間」だと思い込むようになります。
しかも勉強ばかりしていたため、クラスのなかでも孤立。友達もおらず、負のスパイラルに陥っていました。
そんななか彼は、日常のストレスから逃げるために、「盗撮」を習慣としています。通学途中で見かけた女子生徒のスカートの中をスマートフォンのカメラでこっそり撮影し、下着の写った画像を何枚も保存していたのです。
ある日、美しい少女を見つけて後をつけ、いつものようにスカートの中を撮影しようとしたところ、彼女が振り返りました。それが、善とアヤメの最初の出会いでした。
- 著者
- 染谷ユウ
- 出版日
- 2017-10-25
盗撮行為を咎められ、一緒に駅長室に来いと言うアヤメに対し、土下座をして必死に謝る善。彼の頭の中には、両親のことや内申書のことが次々と浮かんでいます。「何でも言う事を聞く」という善に、アヤメも一旦は許したかに見えましたが……その後、彼を学校の屋上に連れ出すと、唐突に縄を取り出し、善を縛って拘束。彼女が「緊縛師」だとわかります。
「”緊縛師”に縛られるのって なかなか経験できないものよ」(『罪と快』1巻より引用)
それからというもの、彼女はさまざまな場所で善を苛みながら緊縛をくり返します。縛ったままお茶を与えて尿意を我慢させたり、人がいる教室の掃除用具入れの中で緊縛に及んだりと、あえてスリルを与えるかのように攻めていくのですが……。
学校では優等生として周囲から厚い信頼を得ているアヤメと、クラス内でも黙殺された存在で盗撮をやめることができない闇を抱えた善。一見対照的な2人が、緊縛を通してお互いを解放させていくまでの過程が描かれています。
1巻ではドSぶりを存分に発揮するアヤメに振り回されっぱなしの善ですが、彼とアヤメの関係性が今後どのように変化していくかも見どころのひとつ。またいつも楽しそうに彼を虐めるアヤメが、一体今度はどんなシチュエーションでプレイしてくれるのかも楽しみになってくるでしょう。
盗撮をしていたことが両親にバレてしまった善。父親に散々殴られ「もう盗撮はしない」と心に誓ったものの、大きな虚無感を抱えていました。
「僕に生きる価値なんて これっぽっちもないんじゃないかな…」(『罪と快』2巻より引用)
そうしてできた心の隙間さえも盗撮で埋めようとする彼の前に現れたのが、アヤメでした。善の手を引き、自分の部屋へと連れ帰ります。そこでまた緊縛をされ、善は自分が変態だと認めてしまうのですが、そんな彼に対してアヤメは自分も同じだと告げました。
「私も同じだから…」
「私も縛ってるときが一番自分らしくいられる」(『罪と快』2巻より引用)
善は、アヤメこそがどんな自分でも受け入れてくれる唯一の存在だと思うのです。
- 著者
- 染谷ユウ
- 出版日
- 2018-03-24
自分たちの理想ばかり押し付ける両親に対し、本心を打ち明けることができた善。ようやく和解をすることができました。その事実をアヤメに報告しに行くと、彼女は話を聞いただけであっさり別れようとします。すると善は、自分から緊縛を乞うのでした。
そんな彼に、アヤメは貞操帯を手渡します。善もさっそく身につけるのですが、早くもその窮屈さに耐えられなくなってしまいました。
「そんなに早く外したら 射精管理にならないじゃない」(『罪と快』2巻より引用)
意識しないようにすればするほど、下半身が気になってしまう善。しかしアヤメはなかなか貞操帯を外してくれません。やがて善は、貞操帯を通してアヤメと繋がっていられることを嬉しいと思うようになっていきます。
そんな彼の異変に気付いたのが、学級委員長の蒼井美羽です。ひょんなことからアヤメに攻められている場面を見られてしまいました。
善とアヤメという2人の物語に、蒼井美羽が参入してきます。当初は様子のおかしい善のことを心配していただけでしたが、上級生として慕っていたアヤメの正体を知り、彼女のことももっと知ろうと動きはじめるのです。
さらに、アヤメに縛られることを「嫌じゃない」と言う善の気持ちを理解しようと、美羽もアヤメに緊縛してもらおうとするのですが……。
どんどんアヤメに心を開いていく善と、意外なMの素質を発揮する美羽。今後も緊縛によって新しい扉が開いていく予感がします。3人は恋愛関係に発展するのか、それとももっとマニアックなプレイに溺れていくのか……これからの展開に注目です。
善とアヤメの秘密を知ってしまった美羽。しかし彼女自身、緊縛の快感が忘れられず、わざわざ彼の家に行って理解できたことを告げに行きます。
そこで善は安心するのですが、美羽はそれよりも彼の部屋、彼の匂い、そして彼自体に惹かれていることに気づき……。
- 著者
- 染谷ユウ
- 出版日
- 2018-09-25
美羽が善に惹かれてしまったことから、新しいプレイが始まります。何と彼女はアヤメと善のプレイを見て衝撃を受け、嫉妬心から自分も彼を縛れるようになりたいと言い始めるのです。
美羽をけしかけたのは、以前から怪しいオーラ満載の津崎。彼もどうやら人には言えないある性癖を持っている人物のようで……?
そんな3巻の見所はやはり、アヤメ、美羽、善の3人でのプレイ。恥ずかしがる美羽を的確に手ほどきするアヤメ、最初は慣れない縛師にぎこちなかったものの、徐々に快感を隠せなくなってくる善のごった煮のように混じり合う感情や考えに引き込まれていきます。
新しい人物を加えたことで、この秘密の遊びはどう変化していくのか?また、津崎が今後どうストーリーに関わってくるのか?まだまだ見逃せない展開が続きます。
単にエロいだけではなく、緊縛で心身ともに解放されていく可能性を示した作品でもある『罪と快』。奥底の自分を解放した時、もしかしたら人間は本物の幸せにたどり着くことができるのかもしれません。あなたも新しい世界を覗いてみませんか?