5分でわかる宇治拾遺物語!特徴、内容とあらすじ、町田康の新訳も紹介!

更新:2021.11.13

鎌倉時代初期に成立したといわれる「宇治拾遺物語」。説話集のなかでもとくに有名な作品です。今回は、作品の概要や物語の内容、有名なストーリーのあらすじ、話題になっている町田康の新訳をご紹介していきます。ぜひチェックしてみてください。

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宇治拾遺物語とは?概要や特徴を簡単に説明

 

合計197の説話が収められた説話集です。成立した年代や編者は定かではありませんが、鎌倉時代の初期、1213年から1219年頃に成立したと考えられています。

もっとも古い時期の写本は上下2巻ですが、広く流通した1659年刊行の絵入り版本は全15巻で構成されています。

宇治拾遺物語の序文によると、本作は平安時代中期に源隆国(みなもとのたかくに)がまとめた『宇治大納言物語』に採録されなかった話や、その後つくられた話をまとめたものだそうです。

「説話」とは、古くから民間で伝承されてきた民話や伝承のことで、宇治拾遺物語には仏教に関する話を中心に多種多様な説話が収録されています。そのため登場人物も、庶民から貴族まで多彩な顔触れ。中世を生きたさまざまな人々をユーモラスに描いており、説話文学の傑作とも呼ばれているのです。

宇治拾遺物語の内容は?

 

本作に収録されている説話のストーリーは、硬軟入り混じり、なかには現代の私たちが読んでも思わず笑ってしまうようなものも収められています。

たとえば第三十四話「藤大納言忠家、物言ふ女放屁の事」は、権大納言の藤原忠家とある女房がよいムードになった時、女房がオナラをしてしまい、いろいろと台無しになるお話です。

同時代に記されたほかの説話集は、そのほとんどが仏教の信仰や処世についての教訓を示すことに主眼が置かれています。もちろん本作にも教訓話はありますが、このエピソードに象徴されるように、笑い話や猥談なども収録されている点に特徴があるのです。

また宇治拾遺物語は、後世の創作にも多大な影響を残していることで知られています。芥川龍之介は、本作の物語を再構築して『鼻』や『芋粥』、『地獄変』などを記しました。

宇治拾遺物語のなかで有名な話のあらすじを紹介!

 

本作には、現代でも親しまれている有名な昔話も多く収録されています。そのなかから代表的なものを紹介しましょう。

・わらしべ長者

貧乏な若者が物々交換をくり返して最終的におお金持ちになるというお話です。宇治拾遺物語にはわらしべ長者のもととなった「長谷寺参籠の男、利生に預かる事」という説話が収められています。

わらしべを手に入れる経緯や長者となった後のエピソードなどが、現代に伝わるものと多少異なっています。

・こぶとりじいさん

こちらも有名な昔話で、宇治拾遺物語には「鬼に瘤取らるる事」という名前で収録されています。

鬼の宴会に紛れ込んだ踊りの上手なお爺さんに対し、鬼たちがもう1度踊りに来るよう人質代わりに瘤を奪ってしまうのです。この話を聞いた別のお爺さんが鬼の宴会に参加しますが、踊りが下手なため瘤を付けられて追い返されるというストーリー。

本作で、最初のお爺さんは「目や鼻なら取っても良いが、瘤だけは取らないでほしい」と懇願し、鬼たちは「それだけ大事なものならばそれを取るのが一番だ」と瘤を取ります。本心では瘤を取ってほしいお爺さんの鬼との駆け引きを、ユーモラスに描いている点が特徴です。

・雀のくれたひょうたん

「ひょうたんすずめ」という名でアニメ化されたこともある昔話。宇治拾遺物語には「雀報恩の事」という名前で収められています。

あるおばあさんが骨の折れた雀を助け、雀はお礼として種を置いていきました。その種が成長してひょうたんが実ると、中から次々と米が湧き出てきて、おばあさんは裕福になります。

この話を聞いた別のおばあさんは、ケガをした雀を探しますが見つからず、自ら雀に石を投げつけて怪我をさせ、手当てをしました。するとその雀も種を置いて飛び立っていきましたが、実ったひょうたんからは毒虫が出ていて、そのおばあさんを殺してしまうというお話です。

町田康の新訳・宇治拾遺物語が面白すぎる!

著者
出版日
2015-09-11

 

小説家の池澤夏樹が個人編集をしている「日本文学全集」シリーズの8冊目に収録されている宇治拾遺物語が、面白おかしく現代語訳されていることで話題を集めています。

訳を担当したのは、小説家の町田康。物語がもっている魅力を現代に伝えるため、意訳も交えながら大胆な現代語訳をおこないました。

たとえば上述した「藤大納言忠家、物言ふ女放屁の事」は次のようになっています。

「ぶうっ。というその場の雰囲気にまったくそぐわない異様な音がして、異様な臭が漂った。そう、大納言の強い力に全力で抵抗したその時、女は放屁をしてしまったのである。女は、こういう時はなんと言って取り繕えばよいのだろうか。と考え、次の瞬間、どう言っても取り繕えない、と判断、その場にそのまま突っ伏して動かなくなった。(中略)
その時点で大納言はある決意をしていた。出家である。(中略)
『雰囲気出して、いざこれからやろうというときに屁ぇこかれるなんて。もう、何も信じられない。これから女とやろうとする度にあのサウンドが頭に響いてやれない。だったらもう出家しかないでしょう。はっきり言って』」(『日本文学全集 08』より引用)

もともと個性的で面白い宇治拾遺物語ですが、町田康の訳によって圧倒的な輝きを放っています。どの話も思わず吹き出してしまうものばかり、これまで古典に親しんでいなかった人にこそ、ぜひ読んでいただきたい作品です。

読みやすい現代語訳で楽しむ

著者
川端 善明
出版日
2004-10-15

 

本書は宇治拾遺物語のなかから、47の話を厳選し、まとめたもの。すべて現代語訳されているうえ、文字のサイズも大きいので、小学生でも充分に理解することができるでしょう。

ピックアップされている説話は、どれも長くても数ページ程度。スイスイと読み進めることができます。内容もホラーっぽいものから不思議な話、教訓までよりどりみどりで、まるでショートショートを読むような感覚で楽しめるでしょう。

宇治拾遺物語の決定版

著者
出版日

 

本書の特徴は、原文と現代語訳の読み比べができるようになっていることでしょう。原文には内容を簡潔にまとめた頭注もついていて、理解の手助けをしてくれます。

全文が収録されているので、原文でも現代語訳でも楽しみたい方全員におすすめできる、宇治拾遺物語の決定版です。

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