「魔喰」という魔力や魔法を喰らう不思議な能力を持った少年が、大切な人を取り戻すため蘇生魔法を探す『魔喰のリース』。魔法ものと推理ものが合わさったファンタジー漫画です。今回はそんな本作の魅力を全巻紹介します。*ネタバレも含みますのでご注意ください。
蘇生魔法を追い求め、魔力や魔法の身を喰べて生きるワケありの少年リースが、ひょんな出会いから王宮で働く捜査官となり、仲間たちとともに国で起こる事件に立向かっていく様子を描いた『魔喰のリース』。
喰らった魔力をグルメレポートしたり、事件を捜査し謎を解き明かしたり、魔法を使ったド派手なアクションもあったりと、グルメ、ミステリー、ファンタジー、バトル、様々な要素が組み合わされた夢のような作品です。
本作の持つ魅力について紹介していきます。なお、ネタバレも含みますのでご注意ください。
人らしい食事は摂らず、他人の魔力や魔法を喰べて生活しているリース。一度魔力を食べれば、同じ魔力の人間を探し出すことができる彼は、窃盗の罪を不問にする代わりに街で起こっている魔法絡みの連続殺人事件の捜査を手伝うよう言われます。
1巻の見所は、彼が捜査を手伝うきっかけとなった連続殺人事件の犯人がわかる場面です。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2017-03-03
魔法がらみの事件は証拠がほとんど残りにくく犯人の特定が非常に難しいそう。連続殺人事件の捜査をしていた王宮捜査官のアンネは、盗みを働いたリース達が追いかけられている場面に遭遇します。
彼が「魔喰」の能力によって、魔法を喰べ、その魔法を放った人物を特定する様を見たアンナは、現在捜査中の犯人特定に役立つのではないかと考えます。そして、窃盗の罪を不問にする代わりに、ほぼ強制的に彼を手元に置くことに。
王宮への不法侵入と身分詐称、窃盗の罪がすべてチャラになるなんて非常にラッキーですね。ただ、魔喰という存在は魔道士が多くいる王宮内でも未確認だったようで、窃盗の罪は不問になったものの、その危険性から地下牢での生活と手錠を余儀無くされることに。
仲間2人はすでに釈放され、彼も罪はなくなったというのに、最終的に地下牢入りというのは、一周回ってすごい因果ですね。どのみち彼は地下牢に入る運命だったのでしょう。
しかし、この捜査に協力したことによって、彼は大事な友を失うこととなったのです……。
とある目的のため「蘇生魔法」を追い求めるリース。彼の動向を知ってか知らずか、蘇生魔法を研究する魔法結社「皆既団」が「魔喰」に目をつけていました。黒魔術および蘇生魔法の研究をしていた魔道研究院生アルゴが、大学教授殺害の罪で彼の手によって捕まったことを機に、皆既団は彼への接触を試みたのです。
2巻の見所は、皆既団幹部の魔道士スカイアがリースと対峙し、彼を試す場面。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2017-06-02
リースはアルゴの事件を最後にアンネの手伝いをやめるつもりでしたが、牢に捕らえられていた「皆既断」のスカイアが脱獄し、彼宛に挑戦状を残したことで、引き続きアンネの手伝いをすることになります。
感情に流されやすい彼ですが、捜査をしているときはいたって冷静ですし、自分の使い方をよくわかっている様子。それがわかるのが、国立劇場でスカイアとの対峙したときの出来事です。
魔法によって人を操る能力を持つスカイアは、観客を人質に取り、アンネを殺すよう彼に指示します。
スカイアは、リースがイカれたやつと表現しているとおり、リースへの挑戦のメッセージを死体に書き込んだり、見知らぬ大勢の観客とアンネの命を天秤にかけるなど、かなりクレージーです。
誰の命も失いないたくないリースがどのような行動に出るのか……。冷静な彼の判断力はお見事です。
正式に王宮捜査官となったリース。
2人1組での捜査をするという通例にならい、これまで同様アンネとともに国で起こる事件を解決することになりました。信頼関係ができているように見えた2人ですが、あるきっかけで仲違いをしてしまいます。その背景には、アンネが他人を信じることの出来ないきっかけとなった辛い過去が関係していました。
3巻はアンネの過去と、事件の裏に暗躍する皆既団の動向が見所になります。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2017-08-04
アンネはリースとともに事件を解決しても、彼が面白い話をしても決して笑いません。それは他人に心を許さないからで、彼女は「100%の信頼」というものは有り得ないと考えていました。
彼女は、かつて彼らが暮らすグランダム王国からは離れたデルソアという国の名家のお嬢様でした。しかし、恋人だったヘクターに父の命令によって命を狙われたことにショックを受け、他人を信じることが出来なくなってしまったのでした。
リースに対しても、心を開きたくないわけではなく、信じた末に裏切られることを恐れていたのです。
そんなアンネのもとに、父親の異変を知らせるため、彼女の実家の執事がやってきます。最初は実家に帰ることを拒むアンネでしたが、幼いころからよくしてくれた執事とリースの言葉を受け、実家の父に会いに行くことに。
幼いころ、父に認められようと必死に剣技を学んできたアンネ。きっと心のどこかで、父を見捨てられない気持ちもあったのかもしれませんね。どんな仕打ちをされても、見限るほど無関心でいられないのが、アンネの良いところ。
アンネの父は一体どんな状態なのか、彼女の命を狙ったヘクターの真意は何なのか、そしてアンネが再び笑顔を取り戻すことができるのか、という点に注目したい内容です。
また、3巻ではリースが解決した事件の裏で暗躍する皆既団の様子も描かれているので、物語の細部から目が離せません。
本格的に動き出した皆既団。捜査官たちは彼らに踊らされ、ついに蘇生魔法の書を奪われてしまいます。皆既団のメンバーの言葉からローレルが内通者なのではないかと疑うリースとアンネ。疑惑が高まるなか、ついにリースが皆既団に捕らえられてしまいます。
内通者の影に躍らされる捜査官たち。4巻では高まる不信感から目が離せません。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2017-10-04
捜査を進めるうちに、アンネは敵の内通者がいることを感じます。
皆既団のメンバーは、ローレルが蘇生魔法の書を奪う場面に現れたことに対し疑問を口にします。捜査官なのだから来ない方がおかしいのに不思議なことですね。
また、アンネの父の事件でヘクターが所持していた瓶が、皆既団が作り出したものだと知ったローレルは、アンネに尋問を頼むのですが、このときヘクターは彼女にとある忠告をするのです。
「危険は君のすぐ近くに潜んでいるから」
(『魔喰のリース』4巻より引用)
この発言は捜査官のなかに内通者がいることを決定付けるセリフでした。内通者とは一体誰なのか……。
皆既団は「魔喰」を欲しがっていて、リースが蘇生魔法を求めていることを知っていました。彼は知らず知らずのうちに皆既団に利用されているのではないでしょうか。考えてみると、アンネがローレルを疑うきっかけになったのも、彼のローレルが怪しいという言葉からでした。
一方ローレルは、皆既団の捜査を担当しており、リースが表れたときに真っ先に隊に引き入れようとしました。また、蘇生魔法の書のありかを知っている唯一の人物です。
ローレル、リース、双方への不信感が高まるなか、リースが皆既団に攫われ、ついに彼と皆既団の繋がり、ローレルの真実が明らかになるのです。
奪われた蘇生魔法の書とリースを取り戻すため、皆既団のアジトを襲撃したローレルたち捜査官。ボスであるオムをローレルが追い詰めます。しかしオムは、隙を突いてアンネに攻撃を仕掛けます。アンネを救うためオムの魔法を喰べたリースは、おおよそ人とは思えない姿へと変貌を遂げてしまうのです。
ついにリースの正体、皆既団にとっての魔喰の価値、そしてリースの過去と彼が蘇生魔法を求める理由が明らかになります。5巻では彼が姿を変えてから、その正体が判明するまでの過程から目が離せません。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2018-01-04
アンネを助けるためいつも通り魔法を喰べたリース。しかし、オムの魔法を喰べた直後、彼の身に異変が起きます。切り落とされた足は再生し、体は屈強な大男、顔は犬なのどの獣のように変わり、頭には大きな角が2本生え、魔人へと大きく姿を変えたのです。
今までも「魔人」や「魔物」という言葉が出てきていたので、そういった生物がいることは予想していましたが、形として登場したのはこのときが初めてですね。
魔人になった彼は今までとは比べものにならないほど強大な力をみせつけます。しかし、非常に頼もしく思えるものの、魔人となった彼に理性はなく、アンネにも怪我を負わせてしまいます。
今まで何度もアンネと助け合い、今回も彼女を守ろうと動いたはずが、逆に自分の手で傷つけてしまうことに。
オムは、この魔人姿を見て何かを納得した様子です。あっさりと蘇生魔法の書を置いて立ち去ってしまいます。蘇生魔法のキーとなる魔喰。ローレルとアンネは正気に戻ったリースにあらためて、彼自身のことを問うのでした。
物語がついに核心へと迫ってきました。彼は人間なのか、魔人なのか、なぜ蘇生魔法に魔喰が必要なのか、5巻は本作を読むうえで欠かせない情報がたくさん出てくるので注意して読みたいですね。
魔力が最も高まる皆既月食の日、最も魔力の集まる場所で蘇生魔法を使うという皆既団の思惑を阻止すべく、目的地へと向かったローレルたち。しかし、裏切り者の手によってローレルは敗れ、リースは王宮外へと連れ出されてしまいます。月が完全に隠れたとき、皆既団の思惑通り蘇生魔法の条件が揃ってしまいました。
最終巻となる6巻では、仲間の死傷やオムの正体など手に汗握る展開が続きますが、見所となるのは、アンネとリースの成長ではないでしょうか。
- 著者
- 小田原 愛
- 出版日
- 2018-01-04
アンネは魔道士相手に剣で戦いを挑みます。相手は火を操る魔道士なので、剣ではまったく歯が立ちません。魔法を使えない彼女にとってはあまり相性のいい相手ではありませんね。
しかし、彼女は戦いのなかで、ローレルの教えを思い出し、敵の弱点を見抜き、相性の悪さに苦戦しながらもなんとか打ち勝ちます。一方、リースも、かつての仲間とスカイアの魔力すべてを喰い尽くし、相手の命を奪うほどの強力な一撃を放ちます。
2人はそれぞれ、初めて人の命を奪うのでした。
ただ、皆既団のメンバーを倒したからと言って、すべてが終わるわけではありません。まだボスであるオムが残っています。しかも、オムを倒そうとするあまり、リースはまんまと蘇生魔法を成功させてしまうのです。ラスボスなだけあり、やはり一筋縄ではいきません。
仲間をたくさん失った彼らは、オムを倒すことができるのか、そしてリースの目的は果たされるのか、ぜひ読んで確かめてみてください。
魔法のあるファンタジー世界でありながら、警察のように物的証拠を頼りに犯人を探すという、刑事ものや推理もののような側面もある本作。リースたちと一緒に犯人を推理するのも楽しそうですよ。