彼らは、フリーザ編で登場する印象的な悪役部隊です。ただの敵とは思えない、コミカルな彼らの、一体どこか面白いかをご紹介しましょう。
彼らは本作のフリーザ編の途中から登場した、フリーザの切り札たる戦闘集団です。アニメ『ドラゴンボールZ』および『ドラゴンボール改』にも印象的な形で登場します。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1990-10-01
フリーザは彼らに、側近だったザーボン、ドドリア以上の信頼を置いています。そして、そんな彼らも、非常に高い忠誠心でフリーザに仕えているのです。隊員同士も結束力は高く、単なる仲良し集団ではありません。
その戦闘力は、フリーザ軍のなかでも随一。ただし後述する特戦隊だけの伝統芸能的(?)所作には、フリーザも辟易していたようです。
そこも含めて(?)、彼らはフリーザに認められた、まさにエリート集団なのです。映画『ドラゴンボールZ とびっきりの最強対最強』にはフリーザの兄・クウラが出てくるのですが、その直属部隊であるクウラ機甲戦隊とは何かと共通点があり、裏設定では因縁の関係にあるのだとか。
ギニュー特戦隊はV字マークが部隊章らしく、メンバーは全員が戦闘服にV字を付けており、個人用宇宙船にも刻印しています。
原作では出番が短かったのですがアニメ版ではどこか優遇され、特別扱いされているようです。なんと専用のテーマソング「参上!!ギニュー特戦隊!!」も作られました。
メンバーは全部で5人。それぞれについてご紹介していきましょう。
『ドラゴンボール』の登場人物の多くは、食べ物に名前の由来があります。ギニュー特戦隊の場合は全員、乳製品が元ネタです。
ギニューは最もわかりやすくて、牛乳から来ています。リクームは、クリームです。バータはバターで、グルドはヨーグルトから。ジースはジュースかと思いきや、実はチーズ、といった具合です。
このように乳製品由来のギニュー特戦隊は見方を変えると、スーパーマーケットの特売乳製品部隊といえるかも知れません。
ギニュー特戦隊は残虐性と幼児性の同居した奇妙な集団で、おちゃらけた言動が目立ちます。命を賭けた真剣勝負の場面で、ジャンケンで順番を決めるなど、やりたい放題です。
作者の鳥山明が東映スーパー戦隊に影響されて創作したため、それを極端にデフォルメした荒唐無稽な決めポーズ&決め台詞が特徴&魅力。登場時に見せたそれが面白くて好きになった人も多いでしょう。未だにネタとして語り継がれています。
ちなみに決めポーズは、ギニュー考案。彼だけのウルトラファイティングポーズ(名称はアニメ初出ですが原作でも扉絵で披露)もあります。
決めポーズの共通点から、後年に青年悟飯が変装したグレートサイヤマンに影響を与えたのかも、なんて思ってしまいます。
いずれ劣らぬ猛者揃いの彼ら。では戦闘力はどれぐらいなのでしょうか?
スカウターや他者の証言などによって、戦闘力の正確な数字が明かされているのはギニューだけです。彼の場合は最大で12万。
メンバーの紹介でも書きましたが、ジース、バータ、リクームの戦闘力は同列です。彼らを楽に下した悟空に対し、ギニューは悟空の戦闘力を6万と予想しました。またリクームが3万前後のベジータをあしらったことから考えると、ジース達の戦闘力は5万以下、4万以上といったところでしょう。
最後にグルドですが、キュイ以下ということは1万8千以下ということになります。戦闘力1万程度だったクリリンからも格下に見られていることから、1万以下なのは間違いないでしょう。
先ほどご紹介したように、彼らは選りすぐりのエリート集団。強者中の強者です。フリーザの側近・ドドリア、ザーボンが戦闘力2万、3万なのに対して、部隊員が軒並み4万以上という辺りに、彼らの特異さが窺えます。
そのなかで異質なのがグルドです。単体の戦闘力ならクリリンや悟飯にすら苦戦する彼が、なぜ戦闘力4万以上の部隊にいるのか。
それは、彼の超能力に依拠しています。
彼は時間停止や念動力、金縛りの使い手です。単純な戦闘力では劣っていても、その唯一無二の能力が評価されたのです。劇中では大した活躍こそしませんでしたが、多人数相手に攪乱して同士討ちを狙うなど、使いどころさえ考えればきわめて脅威となることでしょう。
彼らの戦闘のなかでも、いや『ドラゴンボール』の全戦闘のなかで見ても、ギニュー対クリリン、悟飯の戦いは異様でした。
戦いの直前、ギニューは悟空と1対1の対決をしました。そこで彼は戦闘力が可変する悟空を高く評価し、敵にしては珍しくフェアプレイで公平なバトルを演じました。しかし、悟空が界王拳を用いて自身を大幅に上回ることがわかると一転、卑怯な手に出ます。
彼の奥の手、それはボディチェンジです。自分と対象の場にいる者と肉体を入れ替える隠し技。フェアを装ったのはチェンジによる不敗の自信、そして次の肉体候補を無駄に傷付けたくなかったからだったのです。
そして彼は悟空の体を手に入れ、クリリンと悟飯、読者を絶望させました。
……が、蓋を開けてみると不慣れな肉体、界王拳という切り札が使えないことから、悟空本来の力を出し切れずに、格下のクリリンと悟飯相手に大苦戦。
評価も力も大幅に下げて、最後は呆気なくベジータに負けました。
彼らと悟空のとの戦いは圧巻の一言!休戦協定で仲間になったベジータがやられ、クリリンと悟飯のピンチに遅れて来たヒーロー・悟空が登場したのです。
悟空は手始めに、圧倒的強さを見せていたリクームを一撃で昏倒させました。苦戦に次ぐ苦戦の末に訪れたこの展開は、まさにカタルシスの解放。作者の鳥山明自身も好きな戦闘シーンの3位に選ぶほど。
次いで、スピード自慢のバータを速度で上回って完封。
ジースはバータと同時に攻撃したものの、まるで相手にされませんでした。怖じ気づいた彼は撤退し、ギニューへと顛末を伝えたのです。
彼らの出番は、フリーザ編のほんの一部だけです。しかし、その濃いキャラクター性で、短いながらも強烈な爪痕を残していきました。そんな彼らの、選りすぐりの名台詞ベスト5をどうぞ!
第5位:
「そのかわりあとでオレたちにチョコレートパフェおごれよ――――っ!!」
(『ドラゴンボール』23巻より引用)
1人で3人相手にすると発言したリクームに対して、観戦を決め込んだバータがこう言い放ちました。厳つい大男が甘い物好き、という意外さ。広い宇宙ではパフェの概念が地球とまったく同じとは限らないので、我々の想像するチョコレートパフェとは別物の可能性もありますが。
第4位:
「4匹まとめてあの世に送ってやるぜ!!!
リクーム……ウルトラ……ファイティング……」
(『ドラゴンボール』24巻より引用)
言葉も態度も強さもふざけすぎなリクーム。ベジータ、クリリン、悟飯をまるで寄せ付けませんでした。圧倒的パワーを誇る彼でしたが、必殺技らしき技を放つ前に悟空の一撃で撃沈。発動すればどんな効果が現れたのか少しだけ気になります。
第3位:
「だれが手を貸せといったか、ジース!!
こんどよけいなマネをしたら命をなくすのは自分だとおもえ!!!」
(『ドラゴンボール』24巻より引用)
悪役らしからぬまさかのフェアプレイ精神。ギニューは見た目が1番恐ろしいので、悟空にも通じる強さと紳士的態度に驚かされました。結局は切り札を隠し持っているがゆえの余裕で、後にメッキが剥がれることになりますが。
第2位:
「や……やはりふたりではスペシャルファイティングポーズがきまらない……
どこのどいつだか知らんがゆるせん……!!!
ゆるせんぞ~~~~!!!」
(『ドラゴンボール』24巻より引用)
ギニュー特戦隊5人中、3人までがやられたと報告を受けても、ギニューは涼しい態度でした。ところが決めポーズに言及すると一転、不備に気付いて憤慨し始めます。一見して仲のよい集団だった彼らですが、戦闘狂らしい理解不能の価値観で、読者にわけのわからない恐怖を与えました。
第1位:
「リクーム!!!」
「バータ!!!」
「ジース!!!」
「グルド!!!」
「ギニュー!!!」
「みんなそろってギニュー特戦隊!!!!」
(『ドラゴンボール』23巻より引用)
やはり彼らといえば、この登場名乗りは外せません。あまりの場違い感から、フリーザだけでなく読者にも冷や汗をかかせました。
あのフリーザが召集した恐るべき戦闘集団……という盛り上がりからの、脱力する口上&ポーズはギャップも相まって凄まじい印象を与えました。その後はおちゃらけた言動とは裏腹に、本物の実力でベジータすら倒し、二重三重に印象を深めたのです。
華々しく印象的な登場した彼ら。最後に、そんな彼らの最期をご紹介して終わりに代えたいと思います。
- 著者
- 鳥山 明
- 出版日
- 1991-03-01
グルドはクリリン、悟飯の2人と同時に対戦。メンバー中最も弱かった彼の力量を見抜き、2人は全力で戦いました。この時、変身せずに戦闘力を変化させることにバータは驚いています。グルドは超能力を駆使して2人を苦しめましたが、ベジータに隙を突かれて首を刎ねられました。
リクームは前述のように悟空に敗れて気絶。アンダーウェアが破れて、尻がまる見え状態のリクームはその後、ベジータにトドメを刺されました。見た目が見た目だけに、悲惨なやられ方でした。
バータもすでに書いたように悟空に敗北、瀕死のところをベジータに首を折られて死亡。
ジースは最後にベジータと戦いますが、大怪我から復活してパワーアップしたベジータの実力にためす術もなくやられ、消し去られます。
ギニューはボディチェンジを繰り返した挙げ句、ナメック星のカエルに似た原生生物に憑依。原作では直接表現された場面はないものの、ナメック星の消滅に巻き込まれる形で死亡しました。
あらためて振り返ってみると、ギニュー特戦隊の5人中なんと4人の死因にベジータが関わっていることがわかります。
いかがでしたか?このように、ギニュー特戦隊は奇妙に印象的で面白い敵キャラクター達でした。