凶暴な恋人をパートナーに持つ、多数のカップルの姿を描いた本作。それぞれが「凶暴な恋人」を抱え、恋をすること、愛することで、その爪を丸くしていく姿が見所になります。さまざまなカップルに焦点が当てられますが、みんな癖が強く可愛らしさがあるのが特徴的です。
一般的に不良と呼ばれるような人が多く通う楫高の3年、峰由子と三好哲。胸が半分ほど見えるように、ワイシャツを広く開けている峰には、ウリをやっているという噂が。
その噂は梶高生も他校生も知っているほど広まっているらしく、周りには彼女を狙う男たちが多くいました。
しかし、そんなものはただの噂で、彼女はウリなんてものはやっていませんし、格好は大胆ですが、一途に好きな人を想う純情さがあるのです。
周りからみれば、彼女が三好に恋をしていることは丸わかりですが、彼はその想いに気づいていない様子。しかも彼女は、彼が進学校の嘉慶に通っている生徒に片想いをしていると思っていました。
凶暴な恋人たち
そんな2人のストーリーの見所は、とある理由から学校を休み続けている峰と、そんな彼女と偶然公園で出会った三好の話ではないでしょうか。たくさんの兄弟を連れて面倒をみる三好を見て、峰はあらためて彼のことが好きだと考えます。
三好の普段見ない一面を見て嬉しそうにしたり、休んでいるうちにあらぬ噂が立っていることを想像してめんどくさそうにしたり、喜ぶ・落ち込む、というのを頻繁にくり返す彼女は非常にかわいいので、ぜひチェックしたいところですね。
また、三好が弟たちを連れて帰って行く直前の2人のやりとりも見逃せないところ。勢い余って頭をぶつけてしまった峰。そのあと彼女が取った行動と、それに対する三好の反応がかわいらしく、キュンとすること間違いなしです。
果たして三好は彼女のことをどう想っているのでしょうか。
峰たちの先輩でもある、一二三と鷹文。高校は卒業して、すでに子どももいる2人ですが、この2人のストーリーの見所はやはり、その出会いではないでしょうか。
2人の出会いは楫高に通っていたころ。その出会い方というのが、ある意味劇的といえば劇的ですし、最悪といえば最悪なものでした。
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当時、鷹文は手がつけられないほど喧嘩が強かったらしく、わりと好き放題していた様子。そんな彼とある形で関わりを持とうとした一二三の男前さには、女性でもキュンとしてしまいます。
しかし、そのことがきっかけで、2人は距離を縮めていくことに。鷹文が置かれていた状況を考えると、一二三に惚れたのは必然だともいえる展開です。
一般的に考えれば鷹文が一二三に惹かれた理由というのは、いまいちわからないものですが、彼に欠けているものを1番最初に埋めてくれたのが、きっと彼女なのでしょう。
そのあとに鷹文が、一二三に願いとも取れるプロポーズをする場面は、非常にかわいらしく見所となっていますよ。
また、その後の現在の2人の姿にも注目してもらいたいところが。一二三も鷹文もタトゥーがたくさん入っているのですが、よくよく見てみるとお揃いのものや、2人で1つになるようなものも。どこにどんなタトゥーがあるのか、ぜひ注目したいですね。
峰のウリの噂を少しでも緩和させるため、付き合うふりをすることとなった峰と三好。三好のことが好きな彼女にとっては、嬉しいようで、でも本当に付き合えなくなりそうな不安もあり、複雑な心境。
ただ、ウソで付き合うことになったときの三好を見るに、脈なしということはないような気もします。彼が純情ということもあるかもしれませんが、仮に他に好きな子がいたら、簡単にOKはしないでしょう。
2人がウソで付き合っていると知らない相手には、仲のよい友人たちであっても付き合っているというていで接する2人。三好の本心がわからない峰にとっては、いくら恋人のふりをしてくれるからといって安心できる材料はありません。
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そんななか、峰は一二三に呼び出されます。話の内容は、彼女がウリをやっていると噂をながした人物を懲らしめたというもの。持つべきものは喧嘩に強い先輩たちですね。
原因が分かったものの、峰はどこか浮かない様子。三好との関係のことを考えると、素直に喜べないところがあるのかもしれません。噂をなくそうとして付き合い始めたため、その原因がなくなれば、付き合う理由もなくなるのです。
いろいろと悩んだ彼女は、噂の原因がわかったことを伝えます。そして、ずっと抱えていた気持ちを、ついに三好に伝えました。一生懸命恋をする女の子はかわいいですね。素直に気持ちを伝えた彼女に、三好が返した答えとは……。
峰の後輩で一二三の弟・零次郎と、嘉慶高校に通う港。港は何かと峰を気にする零次郎に、本当は彼女のことが好きなのでは、と想う気持ちが止まりません。
はたから見れば、確かに零次郎は何かと峰を気にしていて、ただの先輩・後輩ではないようにも思えます。ただ、そう見えてしまうほど、彼は器用な立ち回りができないため、好きでもない港と付き合えるのかと言われると疑問です。
峰と零次郎の関係を疑うあまり、峰と三好に付き合うよう提案した港。彼女は、これで零次郎の反応を確かめようとしたのです。しかし、この彼の反応で、港は彼の本心がさらに読めなくなります。
零次郎の港に対する態度や不器用さを考えれば納得の展開ですが、そうなると、なぜここまで零次郎が峰の味方をするのかも不思議なところ。
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そんな零次郎が、港を本当はどう想っているのかがよくわかる場面が、2巻ラストにあります。港と零次郎の普段の様子から考えると、彼女ばかりが零次郎が好きなように思えますが、実際のところはどうなのでしょうか。
最後の話は港の過去の話にもなっていて、今とはまったく違う姿の彼女を見ることもできますよ。恋をして綺麗になろうと頑張る姿は、見ていて応援したくなるものがあります。
晴れて恋人となった峰と三好。しかし、峰には再び危機が迫ろうとしていました。彼女のウリの噂を流した人物と、その噂を聞いて彼女を襲おうとした少年・原が手を組んだのです。
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噂を流した人物は鷹文に成敗されて病院送りになっていましたが、退院したころ原に利用され、再び峰に近づいていました。痛い思いをして懲りたと思ったら、そうでもなかったようですね。この噂を流した人物は、この作品のなかでは唯一のかませ犬かもしれません。
再び目の前に現れた原。峰は、彼を覚えていました。そして、彼女がずっと誰にも言えずに抱えていた秘密が明らかになったのです。彼女の実家のことを考えれば納得もできますが、やはりいつもの彼女を思い浮かべると意外でしかないですね。
零次郎が彼女を気にかけていたのは、この秘密に薄々感づいていたから。そのうえで、彼女を信じようとしていたのです。
ただ、このことが原因で、三好は1ヶ月も彼女を避けることに。彼女にとっては、三好に知られたくない事実でしたし、彼も気持ちの整理がつけられなかったのでしょう。三好は零次郎や鷹文などとは違った種類の男性であるため、やはりいろいろと理解を超えてしまったのではないでしょうか。
峰の秘密を知った三好が最後に選んだ応えは、彼の真面目さや素直さがよく現れているものとなっています。きっと微笑ましく思えますよ。
1巻からちょこちょこ登場し、峰の友人であるにも関わらず、今まであまり出てこなかった、文と正隆。3巻でついに、2人の出会いが明かされました。1〜2巻の2人を知っていると、この関係に驚くかもしれませんね。
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文の家はヤのつく自由業で、正隆の親は文の家のお店から借金をしている、債務者と債権者の子どもという立場だったのです。借金が返せない正隆は文の言うことを聞くしかありませんでした。
文が正隆に求めたのは、体の関係。彼にとってみれば、いくらいい思いができるとはいえ、自分が借金のある身だと思い出させる象徴で、相手の都合でオモチャのように扱われるのが嫌で嫌で仕方なかった様子。
彼はけっこうエロいことが好きな男子のようですが、やはり有無をいわせず関係を迫られるのには辟易していたのでしょう。
その気持ちを考えると、文のおこなっていることは最低なようにも感じます。しかし彼女の気持ちを知っていると、そうとも思えないのが、この2人の話の見所。あんなにふてぶてしかった文が、どんどんかわいくなっていく様子は必見ですね。
とあることをきっかけに、一気に接点がなくなるのですが、ただこれがきっかけで2人は互いの本心を知ることに。文と正隆が、それぞれの意思で互いと向き合う場面は、胸キュン必至ですよ。
峰と三好のカップルをメインに、さまざまなカップルについて描いた『凶暴な恋人たち』。凶暴だけれど、ただ凶暴なだけではない、愛を見つけて変わっていく姿はカッコ良く、また綺麗なだけではないけれど、純粋に愛を育てていく姿に胸くすぐらせるものがありますよ。