女性向け漫画雑誌「FEEL YOUNG」で連載されている本作は、男子中学生と女教師のもどかしい恋愛を描いた作品です。繊細な心理描写とキレイな絵に対して、どこか不安定で「生っぽい」雰囲気が特徴で、2018年秋にはテレビドラマ化も決定しています。これからますます注目していきたい本作を、既刊4巻分全てご紹介します。
14歳の中学生・黒岩晶は、新しい担任の末永聖を見る度に胸がモヤモヤするのを感じていました。年頃の少年にしては恋愛に疎い彼は、自分の抱く気持ちが恋心だとは知らないまま彼女への想いを募らせていきます。
その想いは、しだいにエスカレート。美人だけど気弱な聖は彼の行動に戸惑うばかりなのですが、その気持ちにも変化が表れていき……。
- 著者
- かわかみ じゅんこ
- 出版日
- 2016-07-08
中学生の男子生徒と女教師の恋物語というと定番のラブストーリーのようにも思えますが、本作はストレートな恋物語ではなく、どこか苛立ちの募るような不思議な作品になっています。
というのも、まだ恋心すら知らない中学生と優柔不断な女教師。そのキャラクター自身が相手や自分自身に戸惑い、苛立ちを募らせているからです。
静かですが感情を揺さぶられる、読んでスッキリするわけではないのに目が離せない、そんな独特な雰囲気を持つ作品となっています。
物語の始まりは、まだ恋も知らない14歳が、25歳の担任に恋心を抱いたところから始まります。恋といっても、本人はまだその気持ちが恋愛感情だとすら気が付いていないので、ただモヤモヤとする自分の気持ちを持て余していました。
教師と生徒というと、禁断の恋物語としてたくさんの作品で描かれるテーマですが、本作はそういった側面を持ちつつも、1人1人のキャラクターの内面を丁寧に表現し、禁断という言葉だけでは片づけられない繊細なラブストーリーが描かれていくのです。
自分自身の気持ちを持て余してしまう晶のじれったさも、はっきりと気持ちを示せない優柔不断な聖のもどかしさも、見方によっては苛立ちや驚きを隠せないエピソードも多いのですが、読み終わるとどうしようもなく切ない気分にさせられます。
禁断というだけではない切ない恋物語に、心動かされること間違いなしです。
キャラクターの細やかな感情を、繊細に描いた作風が特徴の本作。その表現方法として、モノローグが多く使われています。だからこそ、キャラクターの内面の細かいところまで知ることができ、作品の独特な雰囲気を作っているのですが、それも透明感のある綺麗な絵柄とマッチしているからこそ。
繊細な心情と、どこか儚げともいえる絵柄が、キャラクター達の微妙な感情の機微、一瞬理解しがたい複雑な感情を読者に伝えてくれるのです。
14歳の中学生・黒岩晶は、新しい担任の女教師・末永聖を見る度に感じるモヤモヤした気持ちに戸惑っていました。その戸惑いを感じたまま、彼はしだいに、彼女に対して過激な行動を取るようになり……。
- 著者
- かわかみ じゅんこ
- 出版日
- 2016-07-08
14歳の中学生と、25歳の女教師の恋愛を描く本作。そういうとよくある教師と生徒のラブストーリーかと思えますが、本作はそんな枠だけには収まらない独特な雰囲気のあります。
主人公の晶は、14歳という年齢の割には落ち着きのある少年ですが、恋愛感情というものをまだ自覚したことがありません。それでも思春期の少年らしく、美人で儚げな雰囲気を持つ新しい担任・聖に心惹かれていきます。
一方、聖は、その名の通り清純な雰囲気の美人ですが、優柔不断な性格でどこか頼りない先生。晶の行動に振り回されっぱなしです。この2人の関係にトキメキを感じるか苛立ちを感じるかは、割と読者の好みに委ねられる部分も多いかもしれません。
同時に、思春期ならではの繊細で微妙な気持ちを丁寧にくみ取って描いていく様子はとてもリアルで、だからこそ激しく気持ちが揺さぶられます。全てがじれったくてもどかしい本巻ですが、先が気になって次巻も早く読みたくなってしまうこと間違いなしです。
優柔不断で頼りなくて鈍い……そんな聖に対して苛立ちを募らせていく晶。やがて、そんな苛立ちの正体が彼女に対する恋愛感情だと気づき、とうとう告白をして……。
- 著者
- かわかみ じゅんこ
- 出版日
- 2016-08-08
聖には、遠距離恋愛中の婚約者がいました。その婚約者の来訪で物語が大きく動き始める本巻ですが、この婚約者の他にも、もう1人注目したいキャラクターがいます。それが、岩崎るなです。
るなは晶のクラスメイトで、彼に片想いをしている女の子。彼と花火大会に行く約束を取り付けるなど積極的で、本巻で彼に告白をしました。彼が聖に対して想いを寄せていることも知っているため、感情のままに聖を罵倒してしまったりもしますが、それも含めて思春期らしい真っ直ぐな雰囲気が出ている可愛いキャラクターになっています。
彼女は次巻以降からは、本格的にメインで登場するので、その動きから目が離せません。
一方、聖は、婚約者と結婚することを晶に伝えつつも、それでもまだどこかもどかしい態度を取ってしまいます。しかし、その態度が結局終わりを招いてしまう一因となってしまいました。どのような終わりを迎えたのか……それはぜひ手に取って確認してみてください。
そして月日は流れ、晶は高校生に。高校生編が本格的に動き出すのは次巻以降ですが、少し成長したことで彼がどうなっていくのか、ますます気になる一冊です。
2年の時を経て、16歳となった晶とるなは同窓会で再会しました。聖がいなくなって以来、毎日を意味もなく過ごしていた晶でしたが、るなの一途な想いを打ち明けられて……。
- 著者
- かわかみ じゅんこ
- 出版日
- 2017-10-07
中学生編が終わり、本巻からいよいよ高校生編が本格的に動き出します。聖がいなくなってから、晶も年上の彼女と交際するなどの経験をしていたようですが、それもどこか冷めたもののようでした。それは、同窓会で再会したるなと晶の前に現れた元カノに対する、彼の態度からも読み取れます。
彼に対し、るなが言葉が足りないと指摘するのですが、彼は言葉が足りないのではなく、言葉の意味するところが相手の求めているものではないだけだと言い放ちます。中学生の時もそうでしたが、年齢に見合わない落ち着きぶりと言葉に、読者も思わず心を揺さぶられてしまうのではないでしょうか。
一方、聖は田舎で小学校の教師をしているのですが、婚約者とは別れてしまっていました。ですが、彼女の婚約者は彼女に対してまだ気持ちが残っているようで、2人もまた2年を経て再会。本巻は、晶とるな、聖と婚約者が再会したところから始まり、それぞれの物語が並行して描かれています。
しかし、晶と聖は、本巻では再会しません。2人のジリジリと追い詰められている感じや、るなや婚約者の切ない感じなど、それぞれのキャラクターの感情がダイレクトに伝わってきて、これからの展開からますます目が離せません。
ひょんなことから聖の居場所を知った晶は、「会いたい」という気持ちのまま彼女に会いにいきます。しかし、その先で待っていたのは、彼女の婚約者で……。
- 著者
- かわかみじゅんこ
- 出版日
- 2018-07-19
聖と晶の再会が描かれる本巻。前巻で、再会したるなと付き合うことになった晶でしたが、心の中ではいまだに聖のことを忘れられないでいました。一方、聖も2年ぶりに婚約者と再会し心が揺らいでいるものの、心のどこかでは晶のことを意識しているようです。
そんな2人の再会は、読者としては嬉しい展開ではあるものの、再会したからといって全てがうまくいくわけではもちろんありません。晶は16歳という歳の割に落ち着いていて、彼女になったるなにさえ淡々とした言動をする少年。
そんな彼が、聖のこととなると冷静でいられず、思うがままに行動に出てしまいます。それだけ彼女に対する気持ちがまだ強いということが伝わってきて、どこか切ない気持ちになるのです。
こういったキャラクターの行動によって気持ちが描かれているのは、本作をより魅力的に見せている部分なのかもしれません。聖に対して真っ直ぐな晶と、晶に対してぐらぐらと揺れる聖。そしてそんな2人をそれぞれ想う婚約者やるななど、ますますキャラクターの気持ちが複雑に絡み合う展開から目が離せません。
17歳・高校2年生になった昌。
前巻で聖と再会し、忘れたはずの 聖への気持ちが蘇ってきた晶は、元同級生の彼女・るなと別れることを選びました。
その一方で勤務先の小学校で苦しい立場に追いやられていた聖は、晶との関係を終わらせるべきだと思い至ります。昌に電話をかけた聖でしたが……。
- 著者
- かわかみじゅんこ
- 出版日
- 2018-12-17
「別れよう 岩崎
僕 自分の気持ちわかったから こんな気持ちのまま岩崎とつきあえない」
(『中学聖日記』第5巻より)
聖と再会したことにより自分の本当の気持ちに気が付いた昌は、るなに別れを切り出しました。
「うそのつけないバカな黒岩が好き
ずっと ずっと 大好きだったの」
(『中学聖日記』第5巻より)
ずっと、何年も前から想いを寄せていた昌に別れを告げられたるなの最後の言葉に、胸が締め付けられてしまいます。お互いに新たな道を歩みだすこととなった二人のこれからにも、目が離せなくなってしまいました。
一方の聖は昌との再会を経て少し動揺を隠せないようでした。取り繕って明るく装って、小学校での勤務に励む聖でしたが……過去の噂が尾を引き、職場では苦しい立場に追いやられてしまいました。
聖は、昌との関係を断ち切ることを決意し、昌に電話を掛けるのですが……
それぞれが、それぞれの道を歩み始める『中学聖日記』第5巻!ちなみに、聖の元婚約者にも大きな動きが……⁉彼らの人生は、これからどう交錯していくのでしょうか……!
いかがでしたか?細やかな心理描写は、特別な出来事や派手な事件がなくても、十分に作品を盛り上げてくれます。同時に、読者によってキャラクターが善にも悪にもなるような奥行きの深さは、何度読んでも飽きることがありません。テレビドラマが始まる前に、ぜひ1度チェックしてみてはいかがでしょうか。