本作は倉科遼・原作、まつやま誠十・作画の作品です。倉科といえばテレビドラマ化もされた『女帝』シリーズ、『嬢王』、『夜王』などの原作者で、愛憎渦巻く水商売を書かせれば右に出る者はいません。 そんな作者が描いたストーリーは、からっと元気な元ヤンキーのキャバ嬢が、生き生きと活躍する爽やかなもの。この記事ではその魅力をご紹介しましょう。
主人公の白鳥美羽は、美貌と腕っ節が自慢の渋谷の不良娘でした。友人の大人っぽいひかり、ぽっちゃり体型の恵美と常に3人でつるんでおり、彼女達の向かうところに敵はいません。
とはいえ彼女達ももう18歳。高校卒業を間近に控え、人生の岐路に立たされていましたが、将来の目標など何もない状況でした。
ヤンキャバウォーズ 〜六本木元ヤンキャバ嬢大戦争〜(1)
そんな時、3人組は運命の出会いを果たします。渋谷ナンバー1キャバ嬢の白鳥麗奈。源氏名に美羽と同じ苗字を持つ彼女は、かつて渋谷界隈最強と謳われたヤンキーだったのです。
対抗心を剥き出しにした美羽は、麗奈に啖呵を切って挑戦を宣言。かくして元ヤンキー娘達による「ヤンキャバ戦争」が始まったのです。
本巻の注目は、白鳥麗奈。なんと彼女、タイマンで120戦不敗という恐ろしい記録を持っているのです。あまりにも男前すぎるその腕っ節に、ぜひ注目です。
若者のやり場のない青臭い衝動が、そっくりそのまま新世界を切り拓く原動力になっているのが面白いです。喧嘩っ早いヤンキー上がりの少女に、水商売が勤まるのかどうかが見物となっていきます。
無事に高校を卒業した美羽達は、千葉から上京して本格的に新生活をスタートさせます。
勤め先となるキャバクラ「ラビリンス」にもなんとか就職出来たのですが、そこは白鳥麗奈が所属する店「レジェンド」から見れば遥かに格下でした。しかし、その逆境がかえってやる気を駆り立てるのです。
ヤンキャバウォーズ ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~(2)
当たり前ですが、彼女達は水商売の初心者。「ラビリンス」での初日は何から何まで初めてづくしです。店から貸し出される衣装も大胆な作りで、硬派で売っていた元ヤン娘には気恥ずかしい代物でした。マネージャーにおだてられてその気になるところには、まだまだ初々しさがあって可愛らしく思えます。
麗奈に対抗して始まった「ヤンキャバ戦争」ですが、なんと店舗内でも勃発。ヤンキー時代に渋谷を二分した(と自称する)対抗グループのライバルも「ラビリンス」に入っていたのです。ライバルを得たことで負けじと切磋琢磨する様子は、スポーツ漫画の熱血感に通じるものがあります。
水商売初心者の彼女たちは、満足にお酒を作ることもできず、手を出してきた客を足環うこともできません。結果、客から怒鳴られて店長を呼ばれることに。その時クビにされることを覚悟しますが……。
波乱の起きた初日。早速美羽は問題を起こしたものの……それが逆に功を奏する結果となりました。
彼女の行動がSNSを通じて注目を浴び、一躍渋谷界隈の時の人となったのです。これは嬉しい大誤算でした。キャバ嬢人生2日目にして、先を争うように彼女へと指名が舞い込みます。
ヤンキャバウォーズ ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~(3)
口コミ効果は抜群で、連日のように大入りが続きました。彼女は早くも、人気キャバ嬢の仲間入りと鼻高々になって、それは良かったのですが……。この世界、そこまで甘くはありません。
4日目にして、指名がぱったり止んだのです。店自体の入りは上々、ひかりや恵美にも客が入っているのになぜでしょうか?ここで初めて、壁が立ち塞がるのでした。
キャバ嬢という仕事がいかに浮き沈みの激しい仕事が、一筋縄ではいかないのがよくわかります。
美羽、ひかり、恵美の3人それぞれに、キャバ嬢としての自覚が出始めてきた矢先、とんでもないトラブルが降りかかってきました。
なんと恵美にストーカーが現れたのです。彼女は匿名メールに怯えます。彼女達は犯人捜しに乗り出しました。幸いメールアドレスを教えたのは常連の3人だけで、絞り込むのは容易いはずでしたが……。
ヤンキャバウォーズ ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~(4)
ぽっちゃり体型の恵美にストーカーという意外性のあるエピソード、その顛末が描かれます。下心丸出しのエロ親父か、オタク気質な根暗くんか、風変わりなセレブイケメンか。3人の常連のうち、一体誰がストーカー犯なのでしょうか?
普段はライバルの対抗グループも、今回ばかりは一致協力してくれるというバトル漫画のような熱い場面も見所です。
さらにこの後に続くエピソードでも、水商売に付きまとう問題が浮き彫りとなります。さらりと読めるなかにも、実情が盛り込まれてくるギャップが本作の魅力です。
「ラビリンス」始まって以来の快挙が起ころうとしていました。
超有名IT企業の代表取締役、鳥江。トリエモンのあだ名でも知られる彼は、渋谷のキャバクラを渡り歩く超ド級のVIPでもありました。1度お気に入りのキャバ嬢を見つければ、底知れない財力を唸らせて通い詰め、店が大繁盛する超の付く上客です。
そんな彼が「ラビリンス」に訪れて、美羽と、ライバルの楓を値踏みし始めたのです。
ヤンキャバウォーズ ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~(5)
鳥江の出現は、渋谷ナンバー1を目標とする美羽にとって、またとないチャンス。それはライバルの楓にとっても同様でした。鳥江が黒い噂の付きまとう下卑た客だとしても、懸命に取り入ろうとします。
ここで問題になるのはキャバ嬢の信条です。つまりは、どれほど「女」を売れるのか、ということ。
鳥江の指名、その先にあるのは同伴出勤とアフターです。彼の場合、それは肉体関係を結ぶことに直結します。果たしてヤンキャバ達の選択は?
美羽が「ラビリンス」で働き始めて1年半以上が経過した、ある日のこと。彼女は偶然、あの白鳥麗奈と街中で再会しました。
美羽の活躍は、麗奈の耳にも入っていたよう。まだまだ渋谷ナンバー1との差は歴然ですが、麗奈に認知されていたことで、美羽はようやく同じ土俵に立てた心持ちになります。
ヤンキャバウォーズ ~六本木元ヤンキャバ嬢大戦争~(6)
一層奮起する3人組でしたが、その矢先に悪質なスカウトに絡まれてしまいました。酔っぱらいの客ともまた少し違った面倒なトラブル。そこへスーツ姿の謎のイケメンが現れて……。
これまで美羽は、キャバ嬢をするうえで、公私をきっちり分けてきました。そんな彼女のもとに、ほぼ同時期に気になる2人の男が現れてしまいます。1人はスカウトから助けてくれた謎のイケメンで、もう1人は質実剛健ながら、気の合う客の手塚です。
彼女はヤンキー時代から硬派を貫き、キャバ嬢となってからもギリギリ一線を越えず、渡り歩いてきました。そこへ不意に現れた2人の男。特に謎のイケメンが、彼女の心を揺さぶっていきます。
ちょうど同じころ彼女達は先輩キャバ嬢から、とある忠告をされました。タイミング的に非情に意味深です。美羽は一体どうなってしまうのでしょうか。
いかがでしたか?波乱を含みつつも、それを押し隠してしたたかに生きるヤンキャバの姿からは、なんだか元気をもらえるようです。そのあたりは実際のキャバクラと、そう変わらないのかもしれません。