『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』5巻まで全巻ネタバレ紹介!優しくて深い

更新:2021.11.15

人付き合いが苦手な青年・朏素晴(みかづき すばる)は、ひょんな出会いから鋭い目つきの野良猫・ハルと一緒に暮らすことに。不器用な青年と、姉御肌(?)猫のすれ違いが面白く、話が進むごとに強くなる絆と、心温まるストーリーが魅力です。 2019年にはアニメ化も決まっている本作について、ご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。

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『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』の見所を全巻ネタバレ紹介!【あらすじ】

人混み、喧騒、人付き合い……そういったものが苦手な小説家の青年・朏素晴。

想像と執筆の邪魔をするものを苦手としていた彼は、ある日偶然出会った猫・ハルを拾い、飼うことになります。この猫との出会いで、引きこもってばかりいた彼は、外の世界、そして人と接することの大切さを学んでいくのです。

また、ハルも素晴と暮らすことで、家族や、帰る場所がある温かさを知ることになりました。

想いがすれ違うこともありますが、確実に1人と1匹は絆を強めていきます。

著者
["みなつき", "二ツ家あす"]
出版日
2018-03-13

作品の魅力:人間サイドと猫サイド、別々に読むことができる

 

本作の魅力は、まず人間目線での話を描き、そのあとに同じ話の猫目線で、猫の気持ちを描いているところではないでしょうか。同じ話のなかで双方の気持ちを描くのではなく、人間は人間、猫は猫と分けて同じ話を描くことで、話を2度楽しむことができます。

猫を飼っている人なら「あるある」と共感してしまう人間サイド。それを読んだ後に紡がれる猫サイドの話は、「そうだったのか」という驚きと、「もしかしたら自分の家の猫も、こういうことを思っているかも」という想像をかきたてられ、猫飼いや猫好きにはたまらないものとなっています。

両サイドを別に書くことで、お互いの思い違いであったり、意思疎通が図れていないことがよくわかり、読んでいてより楽しい気持ちになるでしょう。また、先に人間サイドで主人公とすれ違いによる「悲しい」「辛い」気持ちを共有しておくと、後々語られる猫の本心が、より「嬉しい」ものに感じられて安心できるのです。

会話が噛み合うこと、思ってることが通じ合うことはなかなかないのですが、それでも確実に、素晴の気持ちが伝わっていることもわかり、読んでいてほっこりします。

また、人間サイドと猫サイドを別に描くよい点は、一緒にいる場面だけでなく、ハルが留守番をしている話などで、彼女がどんな風に過ごしているのか、しっかり読むことができる点です。

通常人間側がメインなので、猫側に空白の時間が生まれ、何をしていたのかわからないことも多いですが、本作は両サイドを同じ時間軸で描いているので、どちらもメインで楽しめます。また猫サイドの話を後にやることで、猫のインパクトをより強くしているのが面白く、魅力的です。

 

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』1巻の見所をネタバレ紹介!

 

偏屈で人嫌いな小説家の青年・朏素晴は、両親の墓参りへ行った際、目つきの鋭いハチワレの猫と出会いました。創作のインスピレーションを猫からもらった彼は、そのまま猫を連れ帰ることに。

しかし、たくさんのアイデアをもらう一方で、初めての猫との生活に戸惑うことも多いよう。

本巻での見所は、やはり素晴が名前をつける話ではないでしょうか。そもそも小説のネタが降りてきたというだけで猫を拾ってきたため、一緒に暮らす「家族」という想いがほぼなかったのです。 

 

著者
["みなつき", "二ツ家あす"]
出版日
2015-10-15

 

やむなく訪れたペットショップでの会話や、途中の公園で見かけたペットと家族の姿を見て、小説に出した猫に名前をつけるついでに、ということで名前をつけることにしました。とりあえず良さそうな単語をあいうえお順にぶつけていく姿は、なんとも不器用でおかしさがありますよ。 
 

いろいろと悩んだすえ、太陽の「陽」と書いて「ハル」と名付けます。チョイスした理由が素晴らしく、とても可愛いので、ぜひ注目してもらいたいポイントです。

また、この名前の話での猫サイドの話が、非常に面白くなっています。素晴が名前を呼んだときにそんなことを考えていたのかと、一生懸命名前を考えた彼の気持ちを考えると可哀想なような、それでいてどこか笑える1人と1匹のすれ違いが見所でもありますね。

 

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』2巻の見所をネタバレ紹介!

 

ハルの存在が、自分のなかでどんどん大きくなっているのを感じていた素晴。今まで自分のことばかりだった彼は、自分の行動ひとつひとつが、彼女の命綱になっていることを知ります。彼女が健康で暮らせるように、彼は今まで以上に、人に歩み寄るようになったのです。

本巻では、初めて動物病院に行く様子や、ペットショップの店員からダイエットの方法を訊くなど、素晴が自分から猫や人に歩み寄っていく姿も見所となります。

なかでもハルに首輪をあげる話は、お互いの様子が可愛く、ぜひ注目したいところ。

 

著者
["みなつき", "二ツ家あす"]
出版日
2018-03-13

 

不注意からハルが家を出てしまったことをきっかけに、彼女に首輪を買うことにした素晴。初めて猫のご飯を買いに行ったときもアドバイスをくれた、ペットショップ店員の女性・押守ななに首輪の選び方などを教わるのですが、その際のハルの回想には胸打たれるものがあります。

その後、首輪を受け入れてくれたハルを見たときの素晴の表情も見逃せないですね。そして、そのときの彼女の気持ちはというと……意外と通じ合うものがあるのかもしれない、と思わせてくれるようなお話となっています。

また、ハルは首輪自体にも反応するのですが、それ以上にあるものを気にかけます。そのシーンの彼女は、今までの姉御肌のようなかっこいい姿ではなく、女の子らしい可愛い表情を見せてくれるので必見です。そのあと素晴が起こす、彼女にとって無慈悲ともいえるおこないも、微笑ましく注目したいところですね。

 

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』3巻の見所をネタバレ紹介!

 

ペットショップのお姉さん、幼馴染、担当編集と、気づけば素晴の周りはたくさんの人で溢れていました。ハルが紡いでくれた人との縁。そのなかで、ハルも友人や自分の弟を見つけます。

本巻での見所はやはり、ハルが弟と再会するシーンではないでしょうか。彼女には今までも2匹ほど弟がいたようですが、1匹はすでに亡くなっているような描写もありました。残りの子がどうなったのか彼女は知らずじまいで来たのですが、ついに再び弟に出会うことができたのです。

 

著者
["みなつき", "二ツ家あす"]
出版日
2018-03-13

 

ハルの弟は、彼女に似たハチワレから「はち」と名付けられ、ななの家で飼われていました。野良の世界は弱肉強食とはいえ、責任感と保護欲が強い彼女。弟を守りきれなかったことにどれだけショックを受けたか考えると、この再会は胸が熱くなりますよね。

また、この弟との再会で、彼女はついに「ハル」という言葉の意味を知ることに。今までずっと別のことを意味する言葉だと思っていた彼女が、それを知ってからのシーンはとても可愛いですし、少々あまのじゃくな様子も微笑ましいですよ。

ハルの弟の飼い主である、このペットショップ店員・ななと、その弟の優伍は、素晴にとって欠かせない人物たちになります。ぜひ猫サイドはもちろん、素晴サイドの関係にも注目したいですね。

 

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』4巻の見所をネタバレ紹介!

 

以前よりはハルのこと、猫のことがわかってきた素晴ですが、それでもまだまだわからないことばかり。初めて彼女に長時間の留守番をさせた彼は、家の惨状に驚き、またひとつ猫の生態を知っていくことになるのです。

本巻では全体をとおして、食いしん坊なハルが目立ってきます。もともと野良ということもあり、出された分は全部食べるタイプではあったのですが、出されたものはもちろん、出されていないものまで食べるというがっつき具合なのです。

 

著者
みなつき
出版日
2018-01-24

 

もともとハルの話はごはんのことが多く、猫サイドは基本的にごはんについてばかり。本巻では、そのごはん好きにさらに拍車がかかったような描写も多くなります。

ただ、出されていないものまで食べる習性のせいで、素晴はショックを受けるような出来事が起こるのです。しかし、これがただの「さみしい話」にならないところが、本作のいいところでもありますね。

猫サイドで、そのときの気持ちが明かされるのも理由のひとつですが、素晴の周りにいる人たちがいい人ばかりなのです。彼のこと、彼のおこないを否定せず、きちんと受け入れてくれる周りの人間の優しさが、読者の心も暖かくしてくれますよ。

少々見当違いなところもありますが、一生懸命に素晴を想うハルの姿と、彼女のおかげでどんどん人間味が増していく彼の様子に、こちらまで嬉しくなってしまうこと間違いなしです。

 

『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』5巻の見所をネタバレ紹介!

どんどん仲を深めるハルと素晴ですが、収録前半はハルはほとんど不在。その代わり、彼女のおかげで人間味が出てきた素晴に恋の予感を感じさせる展開がなされます。

担当の河瀬と打ち合わせをしていた時に、敵と主人公の関係に恋愛展開はあるのかと聞かれたのですが、敵対関係以外に何も考えていなかった素晴。しかも苦手な分野ということで、青ざめてしまいます。

しかもそこに「彼女ができたのか」と幼馴染の大翔がいきなり駆けつけてきて……。

著者
みなつき
出版日
2018-12-13

もちろんそんな素晴の恋の伏線も見所ですが、5巻は、ハルが素晴に出会うまでの話が泣けるのです。

ちょうどいい紙袋を見つけて、好奇心のままにそこに飛び込んだハル。そのまま気持ち良い眠りにつきます。

彼女が見たのは、生まれた頃の記憶。ダンボールに兄弟とともに捨てられ、ここがどこかも、自分の母親がどんなだったかも定かでありません。

しかしそんな心細いなかでも自分がいちばん体が大きいからと兄弟を守ろうとするハル。そんな態度に好感を持ってくれた先輩ノラ猫・トラが生きるすべを教えてくれて……。

ハルは素晴と出会う前に数々の辛いことを乗り越えてきました。そのなかには別れの方が多く、その度に傷つきながらもどうにか生き延びてきたのです。

1人と1匹の出会いは、両者にとってとても幸せなことだと感じられるハルの生い立ちのエピソード。泣けてしまうこと必至です。

そしてハルの面倒見の良さがよく分かる生い立ちの後は、彼女のその長所が新たな物語を展開させていくので、お見逃しなく。

ハルのおかげでどんどん人との関わりを取り戻していく素晴と、素晴のおかげで温かさを手に入れたハルの、不器用な絆が魅力的な本作。猫好きはもちろん、そうでない方も、呼んでいてほっこりできるような優しいお話ばかりとなっていますよ。

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