心が豊かになる恋愛小説!作家別おすすめ小説7選!【男性作家編】

更新:2017.3.23

視点が違うと、こうも世界は変わるのかと驚かされるのが小説です。作家の方のそれぞれの持ち味が、様々な恋愛ドラマを生み出します。今回は、男性作家による恋愛小説をご紹介します。それぞれの魅力を知って、興味の幅を広げてみてくださいね!

ブックカルテ リンク
  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

味もそっけもない人生が、変わるとき。石田衣良『娼年』

女性にもセックスにも楽しみを見い出せない大学生のリョウが、女性向けの会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香に誘われて、「娼夫」の仕事を始める20歳のひと夏を描いた物語。

著者
石田 衣良
出版日
2004-05-20


大学には週に1度しか行かず、作るカクテルも「退屈の味」がすると思うほど、人生を無為に過ごしているリョウに「素質」を見出した静香は、彼を娼夫の世界に誘います。そんな静香に、リョウは段々と惹かれていきます。

様々な理由で男性を買う女性たちと出会い、触れ合う内に変化していく、リョウ。それはまるで、止まっていた時が動き出したかのような感覚だったのではないでしょうか。ともすれば、リョウは「男を磨いてもらった」というより、「人間らしくしてもらった」のかもしれません。

女が男を買う類の小説は、それほど多くはないと思います。一見ただれた題材に思えますが、中身は意外にもフラット。リョウの世界が広がり、解放されるという意味では、非常に前向きな作品です。

ベストな相手がいるという、信念。白石一文『ほかならぬ人へ』

財閥の家系に生まれた大学教授の父と、学究の道に進む二人の兄を持つ、主人公・宇津木明生。明生は「コンプレックスの塊」で、胸の内ではいつも「きっと生まれそこなったんだ」と呟いていました。

著者
白石 一文
出版日
2013-01-10


明生は、周りの反対を押し切り、就職、そして結婚。結婚に関しては、あえなく失敗に終わります。元妻・なずなには、忘れられない男性がいたからです。そんな中、決して美人とは言えないけれど、仕事上でも、人間としても尊敬できる女性・東海に惹かれます。彼女こそが「ほかならぬ人」だと気づき、ひと時の夫婦生活を幸せに思います。

明生の言う「ベストな人」は、「ほかならぬ人」のことでしょう。結婚しても、それが正解かどうかは後々になって見ないとわからないものです。明生は、ベストな相手は必ずいると昔から信じて生きてきました。コンプレックスを抱えながらも、そんなことをまっすぐに信じ切る彼の純粋さには好感が持てます。

読めばきっと、ベストな相手を探したくなることでしょう。どうぞ、お手に取ってご覧ください。

「爽やか」な不倫?中村航『僕の好きな人が、よく眠れますように 』

主人公の山田は大学院生で、東京の理系大学で研究をしています。そんな彼のもとに、北海道から1年間限定で来た研究員・恵は人妻でした。不倫と恋愛。こういった題材だと、重苦しさ感じてしまいそうなものですが、このお話は、爽やかで甘いのです。だからこそ、背徳感も感じるのだけれど。

著者
中村 航
出版日
2008-10-30


「浮気」なのか、「本気」のなのか。山田も恵も、最後まで、うやむやのまま、はっきりとした答えを出しません。ただ、二人で寄り添うだけです。この終わり方に、物足りなさを感じる人も多いと思いますが、お互いに、守りたいものが他にあると思っていたからこそ、はっきりとさせないまま終わらせたのかもしれません。だとしたら、なんとなくわかる気もします。「爽やかにいこう」と言った山田の言葉が、この物語の全てなのかもしれませんね。

山田のセリフで、強く印象に残ったのが、「僕の好きな人が、よく眠れますように。いつの日も、これからどんなことがあっても、健やかに眠れますように」という言葉です。おそらくは期間限定の恋なのでしょう。二人の人間という関係が成り立つ難しさ。そして、のめりこみすぎないからこその美しさを覗いてみませんか。

記憶と愛を美しく描く。大崎善生「恋愛三部作」

一作目の『パイロットフィッシュ』は、大崎善生の処女作でもあります。主人公の山崎隆二のもとに、かつての彼女「由美子」から、19年振りに電話がかかってきます。親友に、夫を取られそうになっている、という彼女の言葉から、山崎は様々なことに気付いていきます。現在と過去を交錯させながら、美しい言葉で紡がれる物語です。

著者
大崎 善生
出版日
2004-03-25


二作目の『アジアンタムブルー』は、恋人である続木葉子が亡くなってしまったことによる混乱から、物語が始まります。余命を知り、ニースで死にたいという葉子の気持ちを汲んで、山崎は葉子と二人、全てを捨ててニースへと旅立ちます。そんな山崎に葉子は「いつまでも優しい人でいてね」という言葉を残します。残された山崎は、苦しみながらも、立ち直っていきます。山崎の姿が「優しいとはどうあることか」を教えてくれます。

三作目の『エンプティスター』は、前二作と比べると、毛色が違うような感覚があります。『アジアンタムブルー』に登場した恩人の娘・可奈を、売春組織から助けに行くのですが、受け入れなければならない「死」がとても多いのです。全体的に、恋愛というよりサスペンスですが、文章は淡々と静謐で読みやすい作品となっています。前二作のキャラクター達が大集結する今作で山崎がどこへ辿り着くのか、ぜひ見届けてください。

全編を通して、出会いと別れの切なさが描かれています。一作目から約10年をかけて完結、ということだけあって、読み応えは十分です。透明感溢れる文体と、繊細な感情の揺れが魅力の大崎善生の世界を堪能されてください。

当たり前の幸せが、こんなにも愛おしい。市川拓司『いま、会いにゆきます』

もはや知らない人はいないのではないだろうか、というぐらい有名ですね。2003年に小学館より刊行され、翌年の2004年に竹内結子と中村獅童で映画化され、更に2005年にはミムラと成宮寛貴でテレビドラマ化されたメディアミックスによる、大ヒット作品です。

著者
市川 拓司
出版日
2007-11-06


秋穂巧は、1年前に最愛の妻である澪を亡くしてからというもの、1人息子の佑司と慎ましく過ごしていました。そんな2人に、澪は「1年たったら、雨の季節にまた戻ってくるから」という言葉残して去ります。1年後の雨の季節、2人の前に、生前の記憶をなくした澪が現れました。そこから3人の切なくも愛しい「共同生活」が始まります。

日常の些細な「ただいま」とか「おかえり」とか、「愛してる」だとか、そんな当たり前の幸せを共有できる幸せが丁寧に描かれていて、涙なくしては読めません。雨の描写がとても美しく、透き通った瑞々しさが思い浮かばされます。

人生を豊かにする本です。未読の方は、この機会にぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

亡くなった彼を含めた三角関係。橋本紡『流れ星が消えないうちに』

主人公は、一軒家で一人暮らしする女性。唯一眠れる場所は玄関だけ。

高校時代から付き合っていた女性の恋人は、旅先で自分の知らない女性と共に事故に遭い、亡くなってしまっています。なんとか彼の親友と新しい恋を始めますが、深い悲しみは癒えません。

著者
橋本 紡
出版日
2008-06-30

本来ならば、「彼女」と「彼」と「親友」の三人で三角関係を繰り広げていたことでしょう。しかしそのうちの一角は、事故により失われてしまったのです。一年半という月日を経ても、亡くなった「彼」のことを忘れられずにいる。二人にとって大切な人を失った悲しみを乗り越えていくことができるのか。静寂に包まれた愛の物語です。

衝撃のラストが光る恋愛小説。越谷オサム『陽だまりの彼女』

営業マンである主人公・奥田浩介は、仕事の打ち合わせの席で中学時代の同級生・渡来真緒と出会います。中学時代にキスまでした仲でしたが、浩介が引っ越してしまったことにより、連絡が途絶えていた二人。仕事での再会をきっかけに、二人は少しずつ寄り添い始めます。

真緒の父親は、付き合うのは少し考えてから、と交際に反対します。どうしても真緒のことをあきらめきれない浩介は、とうとう二人で駆け落ちをします。幸せな結婚生活が待っていたはずでしたが、浩介は、真緒の体調がどこかおかしいことに気づき……。

著者
越谷 オサム
出版日
2011-05-28

全体的には、ほのぼのとした恋愛ストーリーです。二人の関係はほほえましく、甘くもあります。さらに本作では、真緒の謎というミステリー要素や、少し現実離れしたファンタジー要素など、ジャンルを超えた要素を含むことが最大の魅力でしょう。何気なく読んでいた行動の一つひとつに、大きな意味が隠されています。衝撃の結末には、驚きの声をあげる快感と同時に、切なさが待っているはず。かわいらしい二人の恋愛の行く先を、自分の目で確かめてほしいと思います。

もっと見る もっと見る