本作は「月刊コミックゼノン」で連載されている、まちたの作品です。1人が居心地いいオタクの女性と、面倒見のよいオネエの青年が意気投合し、ルームシェアして互いのお弁当を作り合うというハートウォーミングなグルメ漫画。一見相反する2人の、ほのぼのした日常が魅力的です。 今回はテレビドラマ化が決定した本作の魅力を、余すとこなくご紹介します!ちなみにスマホアプリでは無料で読めるので、そちらもぜひご利用ください。
- 著者
- まちた
- 出版日
- 2018-10-20
主人公のハルこと木野春葉は、人と一緒にいるより孤独を好む27歳の女性です。大学の図書館に勤務する彼女は、そんな自分に満足していました。
ところがある日、勤務中にふとした会話で気分を害し、間の悪いことにその後の昼休憩でも余計なお節介のせいで自分の生き方を否定されたようで落ち込む、ということがありました。
やり場のない気持ちになったハルは、馴染みの店でストレスをします。ちょうどそこに居合わせたのが、「蒼さん」と呼ばれるオネエ系の青年でした。彼の包容力を体感した彼女は、いろいろ話し込んで意気投合。
偶然新居を探していた蒼とハルは、酔った勢いでルームシェアをすることに……。
帰る場所と心配してくれる人、そして思いやりの籠もったお弁当生活が始まります。
主人公のハルは、重度のオタク女子。孤独を愛して自分の世界を好み、私生活の充実よりもオタク活動を重視していました。食べ物も住居も安ければいい、とこだわりがありません。
服装は毎日着る服を迷わないよう、似た系統で揃えて使い回し。化粧や身だしなみに時間をかけません。その分の時間でアニメを観賞したり、ゲームをプレイしたいという、まさに生粋のオタクなのです。
ブランドモノにも、もちろん縁はありません。そんなものにお金をかけるぐらいなら、DVDにCDアルバム、ゲームへ注ぎ込みます。2.5次元の舞台に行くのが、何よりの楽しみです。
そんな彼女は、出来るなら家賃も浮かせたい、という気持ちでルームシェアに踏み切りました。
一方の蒼は、現役看護師のオネエ。ハルとは違って身だしなみばっちり、女性らしさ溢れる青年です。喋らなければ男とわからないほど。
彼はハルに欠けている、いわゆる女子力の塊のような人物。包容力があって気立てがよく、聞き上手の話し上手。料理の腕前もあって、ハルの心(胃?)をがっちりキャッチしました。
オタクが暴走しがちな自分語りを正面から受け止め、いいところを探すところには心が温まります。まるで聖人のような蒼には、ハルならずとも惹かれてしまうでしょう。
作者のまちたは以前、『おはようとかおはやすみとか』という家族漫画を描いていました。兄1人、妹3人というかしましい家族愛、兄弟愛の見られる作品でした。
くしくも『ハルとアオのお弁当箱』も、ルームシェアという形はありますが、2人は疑似家族的な関係になっていきます。
1人暮らししていたハルが忘れていた、懐かしい実家の雰囲気がそこにはあります。家に帰って、親しい誰かの気配があること。それだけで安心感が生まれるのです。それは孤独を愛していた彼女にすら、とても心地いいものとして認識されます。
そして忘れてはならないのが、タイトルにもなっているお弁当です。彼女は最初に、蒼の手作り弁当に感動して以来、ルームシェア後から積極的に作ってもらうようかけ合いました。蒼は交換条件として、彼の分のお弁当を彼女にも作ることを約束させ、交換ノートか往復書簡のようなお弁当のやり取りが始まるのです。
ハルの感動した弁当は手作りながら凝っていて、形の整っただし巻き卵や、細工の入ったウィンナー、可愛い飾りの煮卵に、テクニックの光る鮭マヨアーモンド……などなど。彩りもよくて、見ているだけで食欲をそそられます。
一方のハルは、ほぼ料理素人。失敗しながらも試行錯誤して、思いの籠もったお弁当を作るようになっていきます。鮭と枝豆の混ぜご飯は、ぜひ試したくなる逸品でした。
ハルは当初、勢いで蒼とのルームシェアを決めました。オネエとはいえ、相手は身体的に男性。不安も多少はありました。
しかし、蒼はハルとのシェア生活を「女の子同士の」と言い切り、持ち前の明るさで彼女を引っ張っていきます。ハル27歳に対して、蒼は23歳なのですが、年の差だとか、経験だとか、性別だとか、そういったものを爽快に吹き飛ばしていきます。
2人の生活の根っこには、相手への思いやりがありました。どうすれば心地よく過ごせるか、どうすれば喜んでもらえるのか。最初は蒼のお弁当から始まったキャッチボールのような思いやりのやり取りが、少しずつ彼女達の心境を変えていくのです。
共同生活の新鮮さ、送り迎えの楽しさ。それらは当人達が考えている以上に、お互いに影響を及ぼしていきます。
その結晶として描かれるのが、お弁当です。蒼からハルへのお弁当でハルは幸せになり、ハルから蒼へのお弁当で蒼がニコニコしていきます。
偶然始まった奇妙な共同生活が、かけがえのない絆に変わっていく。それが果たして男女のものとなっていくのか、性別を抜きにした家族のものなのか。それはまだわかりません。
- 著者
- まちた
- 出版日
- 2018-10-20
ハルのストレス発散とは、行きつけの店で甘味たっぷりのケーキと、スカッと爽やかなハイボールを一緒に食べること。図書館で嫌な気分になったハルは、その日もお決まりのコースを辿って、寝て忘れるつもりでした。
そこで出会ったのが蒼です。不平不満、心情を吐露するハルに対して、彼は真っ正面から肯定して見せました。2人はオタクの生活、オネエの生き方にそれぞれ相通ずるところがあって、意気投合します。
最近猫を拾った蒼がペットOKの新居を探しているという話になって、酒の勢いに任せて2人はルームシェアすることに。
翌朝、冷静になったハルは思い直します。知り合ったばかりの赤の他人、それも身体的に異性同士となれば無理もありません。ルームシェアの話もなかったことになるか……と思いきや、蒼が作ってくれたお弁当の美味しさが、彼女の頑なな心を氷塊させるのです。
気持ちのこもった食べ物が、こうして人を変える、笑顔にするのだと思わせてくれる名場面です。優しい気持ちのやり取りが何よりの見所。
1巻は2018年10月20日から発売されているので、ぜひチェックしてみてください。
2020年7月20日に発売された『ハルとアオのお弁当箱』の4巻で、テレビドラマ化することが発表されました!
キャストや放送時期はまだ発表されておりませんので、予想しながら漫画を読んでみてください。
今後発表される情報からも目が離せませんね。続報はぜひ公式Webサイトの「ゼノン編集部」をご覧ください。
いかがでしたか?オタク女子とオネエ、まったく別カテゴリーにあると思われる2人の、意外なマッチング。各種お弁当とともに、彼女達の関係にも注目です。