クラスの女子生徒達をオカズに学校でオナニーをくり返す主人公が、ある少女の復讐に加担する……? インパクトバツグンなタイトルと、そこからは想像もできないギャップに大きな反響を呼んだ伝説的作品、『オナニーマスター黒沢』。とんでもない設定ゆえの奇妙な緊張感と、タイトルのネタ感を吹き飛ばすほどの思春期特有の繊細な心理描写が光る王道な作品です。 今回は、そんな本作の魅力を全巻分ご紹介!
地味で目立たず、また存在感もない男子中学生、黒沢翔(かける)。
彼はなんと放課後に1人で女子トイレの個室にこもっては、クラスの女子生徒を思い浮かべてオナニーに励むという、とんでもない日課の持ち主でした。
そんな彼はイジメられっ子の北原綾と出会い、半ば脅迫される形で彼女の復讐に付き合う事に。
果たして彼女の目的とは、一体何なのでしょうか。そして2人の復讐の末に、どんな結末が待ち受けているのでしょうか。
オナニーマスター黒沢
本作が気になった方は、その他にもカオスな世界観が最後まで続くやばい漫画『謝男』、優秀な高校生たちが投資によってリアルな社会の裏側、仕組みを知っていく『インベスターZ』、王道の青春漫画かと思いきや、鬱漫画へと変貌していく『宮本から君へ』などもおすすめです!
主人公の黒沢は女子生徒に対する卑猥な妄想をくり返し、しかも女子トイレの個室内でオナニーにふけるという、おおよそ好感が持てるとはいい難い人物です。むしろ、一般的には「キモイ」と罵られてしかるべき性癖の持ち主であるといえるでしょう。
また、おこなっている事は一般的に痴漢やストーカーなどと思われても仕方のない行為であるため、賞賛される人物とはいえません。
そんな彼ですが、おこなっている所業の割には、なぜか立ち振る舞いがカッコよかったりするのです。たとえば、彼は日課を誰にもバレないようにおこなってきたがゆえなのか、とにかく慎重で思慮深い性格をしています。
そのため北原の復讐に付き合う事になってからも、とにかく計画の実行には細心の注意を払い、誰にも目撃される事のないまま完遂するのです。
その姿はまるで凄腕の諜報員のようで、なんともいえない魅力が感じられます。また基本的にはクールな性格をしているためか、変態的な行為をしていても、読んでいて不快ないやらしさがありません(たぶん)。
さらに悪事をおこなっているものの、根っからの悪人というわけではないため、心情的には共感出来てしまうところがいくつかあるのも印象的です。
そんな彼だからこそ、降りかかる逆境に対してどう立ち回るのか、といったところが楽しみに感じられるのではないでしょうか。
本作は黒沢と北原の復讐対象として、さまざまな女子生徒達が登場します。
彼女達は誰もが黒沢の性欲のはけ口になっている事もあり、魅力的な少女揃いとなっているのですが、一方で一筋縄ではいかない個性の持ち主達でもあります。
黒沢と協力して制裁を下す立場である北原は、彼と同じく、地味で眼鏡の女の子。ですが、見た目はそれほど悪いわけではありません。黒沢いわく、仔リスのような女の子と称されているとおり、まるで小動物のような愛らしい見た目をしています。
しかし、彼女は作中でも屈指の歪んだ思考の持ち主。黒沢の日課を知った事から、彼を利用して、自分を嘲笑った生徒達に復讐をしようと考えるのです。
ただ一方で、黒沢の日課の事を口にする際は頬を赤らめたり、色恋や性について奥手だったりといった、思春期の女の子特有の可愛らしさが共存しています。
この不安定な情緒のバランスがなんとも危うくて、読んでいてハラハラするような人物だといえるでしょう。どこか読者を引き込む力のある彼女が物語の最後にはどのような結末を迎えるのか、楽しみになってくるのです。
他にも、彼女をイジメていた主導者であるヤンキー少女の須川麻衣子や、黒沢を含めた誰にでも好意的に接してくれる滝川マギステルなど、多くの魅力的な女性キャラクターが登場します。
彼女達が黒沢とどう関わり、そして物語のなかでどういった活躍を見せるのかという点も、本作の重要な魅力であるといえるでしょう。
ここからは各単行本のあらすじと見所を、それぞれ紹介していきます。まずは黒沢による初の制裁がおこなわれる第1巻です。
本巻は彼の日課を偶然知ってしまった北原が、その弱みに付け込んで協力関係を持ちかけるまでが主な内容となっています。
黒沢という変態的な嗜好を持ちながらも、平穏無事な日常を望んでいた男子生徒が、北原のイジメ現場を目撃した事から不愉快さを感じ、イジメっ子の須川達に対して制裁を下します。彼にとっては気まぐれのような行動だったのですが、北原にその犯行がバレてしまった事もあり、後々まで彼女の思うように利用されてしまう事になるのでした。
彼女や須川達だけではなく、クラスのオタク集団の中心的人物である長岡圭史や、誰にでも平等に明るい滝川マギステルといった主要な人物の紹介もあります。
オナニーマスター黒沢
そんな本巻の見所は、黒沢が須川達への制裁を決意し、黒い感情に身を任せるシーンでしょう。彼は決して正義感からではなく、ただ北原がイジメられている場面を見て、不愉快に感じたことから犯行計画を実行に移しました。
普段物静かで他人には無関心な彼が、他者に対して強烈な悪意を向けるという印象深いシーンとなっています。
そして、その人間らしさがはっきりと顔を見せる重要なシーンであるともいえるでしょう。
黒沢と北原による制裁が続く第2巻です。
本巻では主に修学旅行編が収録されており、学外でも黒沢による犯行がおこなわれる事となります。彼本人は北原に脅されて仕方なく、といった様子ですが、彼女はそんなことはお構いなしに、復讐心をエスカレートさせていきます。しかも須川達とは違い、彼女は些細な事に対しても嫌悪感を露わにして、黒沢をけしかけようと考えるのです。
そんな黒沢と北原をよそに、修学旅行中に一緒に行動する事になった長岡と滝川といった善良な生徒達との交流エピソードも含まれていて、各キャラクターの背景を掘り下げる内容にもなっています。
特に、黒沢と滝川の交流エピソードについては、黒沢が初めて恋心を意識してしまうという重要な場面であり、彼自身の人間性に大きな影響を与える内容となっています。
オナニーマスター黒沢
そんな本巻の見所は、北原が黒沢にさらなる制裁を依頼するラストシーンです。これまで個人的な復讐心から彼に制裁を依頼していた彼女。次に指定したターゲットは、思わぬ人物でした。
そして、その人物は黒沢にとっては絶対に傷つけたくなかった相手。なんと、滝川マギステルだったのです。その衝撃を引きずったまま次巻に続いていく事になるこのシーンは、本作でも重要な運命の分かれ道となる内容となっています。必見です。
衝撃のラストから続く、第3巻です。本巻では、北原から滝川を汚すように依頼された黒沢ですが、何の罪もない人間を汚す事は出来ないと、1度は断ります。
しかし、北原からこのままでは後悔する事になる、という謎の警告を受け、黒沢は意識せずにはいられません。そしてその後、なんと彼が恋心を抱いていた相手、滝川と、長岡が恋人になったという事実が発表された事で、その言葉の意味がはっきりするのです。
自暴自棄になってしまった黒沢は精神的に追い詰められ、滝川を過去の人間だと振り切るために、北原の依頼を受ける事にします。そして、滝川に対してこれまで同様の制裁を加えるのでした。当然、滝川は精神的なショックから、学校を休むことになってしまいました。
そんな彼女が登校後に授業内で描いた絵は、みんなで楽しく笑っていた頃の修学旅行の思い出の1枚でした。それを見た黒沢は罪の意識に苛まれ、償いのためにある重大な決心をします。それは、これまでの犯行をクラス全員に公表するという、とんでもないものでした。
オナニーマスター黒沢
そんな本巻の見所は、やはり黒沢からクラスへの謝罪のシーンでしょう。起こした事件が事件だけに、彼の口から謝罪の言葉が出てくるまでの時間が、凄まじい程の緊張感に満ちています。
それでも謝罪をせずにはいられなかった彼の心理に、人間としての成長がうかがえるシーンだといえるでしょう。
いよいよ最終巻の第4巻。当然のことながら、犯した罪によってクラス全員からイジメの標的となった黒沢ですが、彼自身もそんな境遇を受け入れているようでした。
それは自身の罪を清算するために、そして滝川や長岡達とまた話す事が出来るようにするために選んだ、自分を変えるための道だったのです。
そして、そんな彼の姿を見て、徐々に長岡や滝川達も以前と同じように接してくれるようになります。そして、これまで彼が接する事のなかったクラスメイト達も、徐々に接してくれるようになるのでした。
そんななか変わろうとしている彼とは対照的に、孤独になり、これまで以上にふさぎこんでしまった北原。彼女はある日、学校で自傷行為におよび、不登校となってしまうのです。
結局そのまま誰とも関わる事無く卒業してしまった彼女は、1人自宅に引きこもり続ける事になってしまったのです。そんな黒沢と北原の2人は、卒業後にどのような人生を歩む事になるのでしょうか。
最終話は、ぜひご自身の目で確認して頂ければと思います。
オナニーマスター黒沢
そんな本巻の見所は、最終話における北原の決意のシーンです。具体的な内容は明かせませんが、ラストシーンは日陰者たちの人生について考えさせられる、ノスタルジックなものとなっています。
少年少女から、一歩大人になっていく人間の成長を感じさせられる、よい内容だといえるでしょう。
また、本作のテイストが気になった方は、先ほどもお伝えしたように『謝男』、『インベスターZ』、『宮本から君へ』などもおすすめ。