2004年から「月刊アフタヌーン」にて連載が開始していた本作。作中に生きるさまざまな登場人物の姿は、多くの女性から共感を呼びました。そんな本作は、なんと2019年1月よりアニメ化が決定!今回は、そんな江古田ちゃんの魅力をご紹介します。
東京都練馬区にある、江古田駅。そこの近くに暮らす24歳の江古田ちゃんを中心に、彼女を取り巻くさまざまな人達を描いています。
臨死!! 江古田ちゃん(1)
江古田ちゃんはウエイトレスやホステス、オペレーターにヌードモデルと、いろいろな仕事を転々としている女性です。性に奔放で、悩みながらも独自のポリシーを持ったその生き方が、社会への風刺もこめられながら4コマ漫画で描かれていきます。
独特な印象を感じる絵も、時に笑え、時に切ないストーリーも、読めば止められなくなること間違いなしの作品です。
北海道出身の漫画家。本作でアフタヌーン四季賞冬大賞を受賞し、デビューしました。
本作に登場する江古田ちゃんを始め、独自の女性像を描くことが多い彼女。本作以外にもOL向け情報誌でコラムを連載したり、勝間和代や犬山紙子など、社会で活躍する女性達とコラボレーションした作品なども発表しています。
漫画の他にも、脚本家の本谷有希子の舞台でチラシのイラストを手掛けたり、ラジオのパーソナリティを務めたりと、幅広く活躍されています。
本作の主人公・江古田ちゃんは、実に奔放な生活を送っている24歳の女性です。家では全裸で過ごし、本命ではない男性ともすぐに一夜をともにしてしまうなど、独自の自由を貫いて生活しています。
そんな彼女は仕事も1つの職業に就いているわけではなく、派遣でテレフォンオペレーターをやったり、フィリピンパブでホステスをやったり、ヌードモデルをやったり、クラブで踊ったりと、実にいろいろな所で働いてきました。
その生活は、決して全ての人に褒められるものではありません。彼女自身も、もっと普通の生活や恋愛に憧れているような節もあるのですが、それでも周りに合わせて自分の生活を変えるようなことはしないのです。それが、彼女をより魅力的に見せてくれています。
たとえば彼女は作中で、天然を装ったり、ぶりっこになったりして男を落とすタイプの女性を「猛禽」と呼んでいるのですが(とてもよいネーミングセンスです)、わかりやすく男にモテる「猛禽」の女性達に比べ、江古田ちゃんはありのままの自分で生きているのです。
だからこそ、彼女は傷ついたり悩んだりすることも多いのですが、その自堕落なのにまっすぐな言動に、思わず共感してしまう人もいるのかもしれません。
本作発信の言葉「猛禽女子」。
男性に対してぶりっ子や天然など、いわゆる男性受けのよいタイプを演じ、合コンでもどこでもいい男をかっさらっていく女子のことを指した言葉。作品を飛び出して現実の世界でも使われるようになりましたが、これは本作の主人公・江古田ちゃんが生み出した言葉なのです。
狙った獲物を決して逃さない女子という意味での「猛禽」。なんとなく言葉にトゲを感じますが、それも当然で、江古田ちゃんはこの猛禽女子のことを、ことごとく嫌っています。そして、ただ嫌うだけではなく、遠くから冷静に分析もしているのです。
「猛禽女子」は肉食女子とは違い、ぐいぐい押すだけではなく、男性から押されるように仕向けることができます。だから気が利いて聞き上手で、どんな頼みも聞いてしまうし愛想もよいと、実はけっこうな努力をしています。
しかし、それが同性から見ると嫌われる原因にもなっており、嫌われるのが苦手な猛禽女子は、実は孤独なのです。
そうはいってもやっぱり、こういうタイプは江古田ちゃんに限らず、現実でも同性の女性から嫌われるタイプ。ですが、こんなふうに冷静に分析することができれば、江古田ちゃんのようにフッと小さく笑いながら彼女達を見守ることができるのかもしれません。
江古田ちゃんには1つ年上の姉がいます。20代中頃にはとても見えないケバケバなギャルで、元ヤンで、看護系の短大生という、ツッコミたくなるところが満載の濃いキャラです。
江古田ちゃんも十分に濃いキャラなのですが、そのうえをいく強いキャラクター性はインパクト抜群。語尾に「だぉ」とつけるなど、一見すると頭が悪そうですが(実際に悪いのですが)、看護学生として医療には強いなどギャップも面白いところです。
江古田ちゃんの姉らしく、異性関係も派手。口も悪いし、自己中心的な性格でもあるのですが、それでもどこか憎めなく感じられるのは、彼女が裏表のない、良くも悪くも自分の気持ちに素直なキャラクターだからかもしれません。
1度目撃したら忘れられないインパクト最大のおねえちゃんに、ぜひ注目してみてください。
江古田ちゃんの周りには、常に男性がいます。そういっても彼女の相手は、一癖も二癖もある相手ばかり。他に本命のある人がほとんどで、江古田ちゃんはいわゆる2番目なのです。そんななかで、彼女のことを1番に愛していると言ってくる男性がいます。それが「信者くん」です。
彼の言い分は、愛したら愛される、というもの。実は彼が愛しているのは、皮をかぶった江古田ちゃん。本当の彼女ではありません。江古田ちゃんも奔放なことをしている半面、信者くんの前では彼に合わせて本当の自分を隠し、演技をしています。
真実の愛を語りながら、偽りの江古田ちゃんを愛している信者くんに、偽りの自分であっても、自分を1番と言っている相手に合わせる江古田ちゃん。どちらもリアリティがあって、共感してしまう方もきっと多いのではないでしょうか。
性に奔放で、常に周りにさまざまな男性のいる江古田ちゃんですが、そんな彼女にも「マーくん」という本命の相手がいます。本命といっても、それは彼女だけの想いで、マーくんにとって江古田ちゃんは2番目の女。
江古田ちゃんがどんなに彼に尽くしても、振り向くことはありません。結局、最後まで2人が結ばれることはないのですが、この関係性からは、いろいろなことを考えさせられます。
たとえば、マーくんは江古田ちゃんに対して身だしなみがなっていないとか、彼女にしたくないとか、面と向かっていろいろと言ってきます。それだけ見ると彼は彼女を傷つけるヒドイやつにも思えるはず。
しかし江古田ちゃんのほうも、マーくんに傷つけられたら傷つけ返し、本命といいながら他の男と遊ぶことはやめられないなど、彼が「彼女にしたくない」と言うのも納得できるような部分もあるのです。
客観的に2人を見ることができる読者にとっては、このあたりにもどかしさを覚えることもあるでしょう。しかし、だからこそいろいろと考えさせられるのです。
これまでもラジオドラマ化や実写テレビドラマ化などで話題をさらっていた本作ですが、2019年にテレビアニメが放送されることになり、再び注目を集めています。
臨死!!江古田ちゃん(8)
しかも、今回のテレビアニメでは、1話ごとに監督も作画も声優も違うという、かなり奇抜な作り方をすることが発表されているのです。
参加する監督は全部で12人で、『タッチ』の杉井ギサブローや『おそ松くん』のしぎのあきら、『食戟のソーマ』の米たにヨシトモなど、そうそうたるメンバーがそろっています。
その奇抜さは「まごうことなきクソアニメ」(誉め言葉)と称される『ポプテピピック』にも通じるものがあるのではないかと予想されています。江古田ちゃんのファンだけではなくアニメファンにとっても楽しみな作品です。ぜひ期待してみてください。
いかがでしたか?一見すると突拍子もない内容にも思えるのに、その実とても共感できて考えさせられる本作。男性にも女性にもオススメできます。4コマ漫画という気軽さもあるので、ぜひこれを機会に読んでみてください。