本作はWebコミックサイト「裏サンデー」で連載されている、十三木考の作品です。高校に入学したばかりの主人公の少年が、見た目は美少女の自称・男のヒロインとルームメイトになってしまい、日常をかき回されるという、ちょっと変わった学園ラブコメとなっています。
主人公のチロダこと千路田耐志(ちろだたいし)は高校入学の朝、1人の可憐な美少女と出会いました。幸先のいいスタートに、バラ色の学園生活を思い描いたのも束の間。淡い願望は、彼女が同じクラスになったことによって、脆くも打ち砕かれます。
彼女――いや、彼の名前は小日向真(こひなたまこと)。自己紹介の場で性別が男であること、女装であることを告白したのです。
- 著者
- 十三木 考
- 出版日
- 2018-06-19
チロダの落ち込みは、尋常ではありませんでした。それもそのはず。彼は中学時代のあるトラウマから、いわゆる「男の娘」を苦手としていたのです。新生活の第1歩を躓いてしまった彼の前に、暗雲が立ち込め始めました。
そうと知らない小日向は、出会いの印象がよかったのか、気さくに話しかけてきます。出来るだけトラウマを刺激されたくなかったチロダは、彼女もとい彼を邪険にするのですが……。
高校の寮では、チロダを小日向が待ち構えていました。
なんの因果か、彼らは寮の同室になってしまったのです。男の娘と暮らす前途多難の日々の幕開けです。
小日向真は、かなりのヒロイン力の高さを誇るキャラクター。
まず見た目は可憐な美少女なのですが、ちょっとした態度まで女子そのもの。あるいは女子以上に女子らしさを感じさせるのです。
それがもっとも印象的なのは、第1話の出会いの場面でしょう。落とし物を拾ったチロダに対して、おもむろに彼の曲がっていたネクタイを整えてあげるシーンが出てきます。その清楚で自然な振る舞いは、ヒロイン以外の何物でもありません。事情を知らなければ、一発で恋に落ちるほどの破壊力です。
その他、表情や仕草も徹底的に女の子っぽさが溢れています。間合いの測り方、距離の詰め方、上目遣い、果ては「プンプン」という擬音が聞こえてきそうな怒り方まで、完璧にヒロインのそれ。
あらゆるムーブが、まさしくトラップのようにちりばめられているのです。
かつて「週刊少年ジャンプ」で『ストップ!!ひばりくん!』という古典的名作漫画が連載されていました。どこからどう見ても美少女の男子・ひばりが、主人公に猛烈にアタックしてくるというストーリーで、現在の「女装男子」や「男の娘」の走りともいえる先進的な作品でした。
『トラップヒロイン』は、いうなれば現代版『ストップ!!ひばりくん!』です。
小日向真は、誰がどう見ても美少女。ショートカット気味のサラサラヘアも、可憐な小顔も、儚い佇まいも、華奢な体付きも、ほのかに香るいい匂いも、何から何まで女の子。本人の自称・男を除けば完璧なヒロインなのです。
もはや、男でもいい。男だからいい、という人もなかにはいるかもしれませんが……。
そんな彼ですが、本当の性別は(今のところ)不明です。際どいシーンはあるものの、性別が確認出来る確実な描写は、微妙なラインでぼかされているのです。本人が嘘をついていない限りは男なのでしょうが、確定した事実が見られないことから、どちらともいえない状態。
果たして彼は、本当に男の娘なのでしょうか。それとも、実は女の子なのでしょうか……?
小日向の罪作りなところは、男を自称し、女装を公言しているにも関わらず、絶えずヒロインムーブをくり返すところ。その対象は、やはりというべきか当然というべきか、主にチロダですが。
同性同士だから相室も平気といいつつ着替えは妙に色めかしく、無言の圧力で退室を強いるのです。風呂上がりは熱いとラフな格好をしたかと思えば、身に付けているのはホットパンツとキャミソールだったりします。
男の娘をトラウマとしているため、チロダは当初、彼に苦手意識があり、それもあって衝突しがちでした。しかし、そうやって軽い口喧嘩した後でさえ、寒いという口実で布団に入り込んでくることも。そこだけ区切ってみれば、喧嘩が付き合いのスパイスになってる、ただのカップルにしか見えません。
黙っていればただの美少女。口を開いても、それはそれで魅力的な小悪魔。どの角度からどう切り取っても可愛いとしか感じられず、その一挙手一投足にはチロダだけでなく、読者も振り回されっぱなしです。
あるいは、これこそが『トラップヒロイン』というタイトルにあるトラップの所以なのでしょうか。
図らずも苦手な男の娘の小日向と、ルームメイトかつクラスメイトになってしまたチロダ。高校入学早々、彼は小日向にペースを狂わされ尽くします。
- 著者
- 十三木 考
- 出版日
- 2018-06-19
そんななか、彼女もとい彼の方から、唐突にデートの申し出がありました。男を自称しつつ男にデートを申し込んでくるとは……と、チロダは混乱。そして半ば強引に押し切られてしまいます。
少し打ち解けたころに描かれる序盤の山場となるエピソードです。チロダが初めて触れる小日向の心情が、ラブコメであることを忘れさせるほどしっとりと描写されます。チロダに男の娘のトラウマを意識させる劇中漫画の展開が、この2人が仲を深める描写と絡めて描かれる意味を考えると、やはり恋愛展開にいってしまうのでは……?と、どうも意味深に感じてしまいます。
ここでの交流が、果たしてどんな意味を持つのか。彼らの関係がどう続き、進展するのか見所です。ちなみに、こうして親密にしていた場面がクラスメイトに目撃されることとなります。
新キャラの穂月華(ほづきはな)から問いかけられた意味深な言葉に、1人思い悩むチロダ。そんな彼の気持ちとは裏腹に、季節は初夏を迎え、クラスが浮き足立つプール開きがやってきて……。
- 著者
- 十三木 考
- 出版日
- 2018-10-12
みんながソワソワする理由は、ただ1つ。女装を公言する男の娘・小日向真がどんな水着で現れるか、ということでした。
サービスシーンはともかくとして、物語上ターニングポイントになりそうなエピソードです。チロダの彼への認識、そして穂月の立場。
あちこちにトラップの仕掛けられたこの物語は、一体どこへ向かうのでしょうか?まさかの三角関係になるのか、チロダと小日向真の関係はどこへ向かうのか。セクシーなシーンとともにさらに気になる展開が続きます。
いかがでしたか?こんなに可愛いなら、男でもいいから罠にかかってもいい、と思わず思ってしまったのではないでしょうか?気になった方は、マンガアプリなどで、ぜひチェックしてみてください!