お色気に、エロシーンが目白押し。けれど、真剣な純愛路線を描いた『年上ノ彼女』。代表作『ナナとカオル』で知られる甘詰留太の初期作品です。 どこにでもいる普通の男子である主人公と、彼よりも実年齢が上でありながら、少女にしか見えない外見を気にしているというギャップが可愛いヒロインが主な登場人物です。この2人による、むず痒くなる程のまっすぐな純愛を描きながら、ままならない若者の青春に思わず切ない気持ちにもさせられる名作漫画となっています。 今回は、そんな本作の魅力を全巻ご紹介。ネタバレ注意です。また、スマホの漫画アプリから無料で読むこともできるので、そちらもご利用ください。
ここからは、各巻のあらすじと見所をご紹介していきます。まずは、主人公とヒロインの出会いから始まる第1巻です。
主人公である伊藤努(いとう つとむ)は、幼少期に女性から性的ないたずらをされた事がトラウマとなり、男性として不能になってしまった人物。そんな彼は、大学でトラウマの原因となった少女と瓜二つの女性・小山内揚羽(おさない あげは)と出会います。
揚羽は彼の所属する児童文学同好会に入会し、歓迎コンパの場で年齢が25歳という事実を明かします。お互いにいろいろと秘密を抱えていそうな2人は関心を示しあい、ひょんな話から同居生活を始める事となるのでした。
夏合宿や引っ越しを経て、徐々に恋人同士としての距離を縮めていく2人でしたが、そんな彼らの関係に、ある日暗雲が……?
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2004-07-29
本巻の見所は、引っ越し後の2人の初々しい同居生活でしょう。お互いに異性として明確に意識するようになりましたが、努の不能とお互いの気遣いもあって、実際に性交渉するまでには至りません。
ですが、そんな2人のゆっくりながらも着実に関係を進展させていくさまは、見ていて微笑ましく感じられるものとなっています。ヒロインの揚羽だけではなく、奥手な努に対しても、可愛らしさを感じてしまう場面であるといえるでしょう。
幸せだった同棲生活に穏やかではない空気が立ち込め始める、第2巻です。
本巻では幸せいっぱいだった努と揚羽の元に、一通の手紙が届いた事により、揚羽が行方不明になってしまいます。努は揚羽を追って彼女の故郷へと向かいますが、そこで彼女が清水という家に嫁いだ後に夫を亡くした未亡人であり、家出同然で大学まで逃げてきたのだという事実を知る事になるのです。
義母への申し訳なさから清水の家に奉公しようと決めていた揚羽でしたが、努の必死な説得と、清水家分家の当主である義母の後押しもあって、努とともに戻ることを決心します。
そして、努の一世一代の大告白によってお互いに止まれなくなり、2人は感情の赴くままに、初めての夜を過ごすのでした。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2005-01-28
そんな大盛り上がりの本巻の見所は、やはりなんといっても努の告白のシーンでしょう。
清水の家についてのしがらみを理由に、努の告白を受け入れがたく考えていた揚羽。しかし、そんな都合はお構いなしに自分の気持ちを真っ正直にぶつける努の大勝負に、思わず胸が高鳴ります。
作中でも屈指の名シーンといえるのではないでしょうか。
努の決死の告白もあり、ついに結ばれる事になった2人。いよいよ甘い2人だけの生活が始まる……と思いきや、なぜか次から次へと邪魔な来訪者が訪れる事になります。
努の実家からは母親と姉が、そして清水の家からはそこを訪れていた際に知り合った女の子・橘綾香(たちばな あやか)など、お邪魔虫たちが息つく間もなくやってきては、2人の住まいをかき回していくのです。
揚羽のカナヅチ克服や迷子騒動など、紆余曲折ある騒がしい日々ですが、そんななか大学生である2人に、将来の展望という課題が立ちはだかります。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2005-11-29
そんな本巻の見所は、努の母親と姉がやってくる際の場面でしょう。どんなカップルにおいてもお互いの家族との関わりというのは、1つの壁であるといえるかもしれません。
しかも、努は揚羽を追いかけた事で大学を留年してしまうという事態に陥ってしまったため、揚羽の存在は、それこそ問題の中心であるといえるでしょう。
そんな揚羽が、最終的に家族公認ともいえる女性として認められるまでの過程は、彼女の魅力を実感できるエピソード。要注目です。
まだまだ波乱の続く2人の生活です。
4巻では、少し本題から外れた話が多いかもしれません。努と揚羽については、ラブホテルで燃え上がる話に、ジェラシーに燃える揚羽といった話が描かれています。
また、本巻では揚羽だけではなく、皆で海に出かけた際に巻き起こる綾香の恋愛騒動なども描かれており、揚羽以外のキャラクターにフォーカスした話も多めの印象です。
さらに男女それぞれに分かれてのエッチ話宴会といったギャグ全開のエピソードもあり、読者を飽きさせる事がありません。
年上ノ彼女 4 (ジェッツコミックス)
そんな本巻の見所は、揚羽よりもさらに年上の男性カメラマンが登場するエピソードでしょう。
これまで男女関係として崩れる事のなかった努と揚羽の間に、初めて異性を感じさせる人物が現れます。努と揚羽にとっては最終話まで付き合う事になる人物であり、少なからず2人の関係に影響を与える人物なので、要注目です。
少しずつ、話がクライマックスに向かっていく予兆を見せ始めます。本巻では、前巻でも登場した中年カメラマンと揚羽の関係に、努が明らかに動揺を見せる事になるのです。
しかし、それでもお互いの愛情は尽きる事なく、体を重ね合っての求め合いはどんどん激しくなることに。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2007-01-29
そんななか、揚羽が昔の友人に会って少女時代との違いを感じて感傷に浸ったり、努は就活で苦戦し始めたりと、センチメンタルな展開も描かれています。
一方で綾香は、同じサークル内でちょっとした恋愛っぽい関係の進展があったりします。揚羽以外でラブストーリーとして明確にフォーカスされているのは彼女だけなので、この巻でも見所であるといえるでしょう。
いよいよ、最終巻である第6巻です。努は就活に苦戦。これまで持っていた自信をすべて打ち砕かれた事で、自暴自棄になってしまいます。
そして、就活のなかで出会った女性に溺れる形で、揚羽やサークルメンバーの前から姿を消し、ただ逃避し続けるだけの時間を過ごしてしまうのです。
年上ノ彼女 6 (ジェッツコミックス)
2007年10月29日
そんな努に対し、揚羽も心中穏やかではありません。しかし、そこは年上の女らしさを見せ、断固として彼の帰りを待ち、帰ってきたら叱ってあげる、と言う懐の広さを見せます。
そんな2人の関係がどのように落ち着き、結果としてどんな将来を送る事になるのでしょうか。クライマックスこそがまさに見所となっていますので、必見です。