「こぶとりじいさん」の話は矛盾してる!?教訓や病気、おすすめ絵本も紹介!

更新:2018.12.4

顔に大きなこぶをもつ2人のおじいさんを描いた「こぶとりじいさん」。誰もが1度は読んだことのある有名な昔話ですが、実は矛盾があることにお気づきでしょうか。この記事では、あらためてあらすじを説明したうえで、矛盾点や物語から得られる教訓、2人のおじいさんの病気説などを解説していきます。あわせておすすめの絵本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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「こぶとりじいさん」のあらすじを簡単に紹介

 

日本に伝わる昔話「こぶとりじいさん」。13世紀に成立した『宇治拾遺物語』にも収録されているほか、世界にも広く分布しています。ではまず、一般的に広まっている物語のあらすじをご紹介していきましょう。


あるところに、頬に大きなこぶをもつおじいさんが住んでいました。こぶはとても邪魔でしたが、おじいさんはあまり気にせず、いつも明るく陽気に振る舞っています。

一方、同じ村にもうひとり、頬に大きなこぶをもつおじいさんが住んでいました。こちらのおじいさんはこぶを気にしているあまり、陰気で意地悪な性格になり、いつも他人を妬んで暮らしていたのです。

ある日、陽気なおじいさんが森に芝刈りへ行ったところ、雨が降り出したので木の根元にある大きな穴で休むことにしました。しばらく眠ってしまい目が覚めると、木の周りでは鬼たちが宴会を開いています。

最初は驚いたものの、にぎやかなお囃子を聞いているうちに楽しい気分になってきました。陽気に踊りながら宴会の輪に加わると、鬼たちはおじいさんの踊りをとても気に入った様子です。そして、「明日もまた来い。明日来た時にこれを返してやろう」と、おじいさんの頬にあるこぶを取ってしまいました。

次の日、この話を聞いた意地悪なおじいさんは、自分のこぶも取ってもらおうと考えて鬼たちの宴会場所へと向かいます。同じように踊ろうとしますが、意地悪なおじいさんは踊りが好きではありません。暗い性格も相まって、鬼たちを楽しませることができませんでした。

それを見て気分を害した鬼たちは、「その下手な踊りはなんだ。こんなもの返してやる」と、意地悪なおじいさんの空いている頬にこぶをくっつけてしまうのです。

それからというもの、意地悪なおじいさんは2つのこぶを頬につけて暮らしていかなければならなくなってしまいました。

「こぶとりじいさん」は矛盾している?

 

あらすじをご紹介しましたが、あらためて読んでみるとこの話の矛盾点に気づいた方もいるのではないでしょうか。よく考えてみると、とても不思議な展開をしているのです。

まず鬼たちは、陽気なおじいさんのこぶを「よいもの」とし、翌日の宴会にも来てもらうための約束手形として預かっています。「来たら返してやる」ということは、鬼はこぶをおじいさんにとって大切なものだと見なしていることがわかります。

しかし、翌日にやってきた意地悪なおじいさんに対しては、「こんなもの返してやる」と、下手な踊りを見せた罰として頬にくっつけてしまうのです。「よいもの」とされていたこぶが、罰を与えるための道具になってしまっていて、矛盾していることがわかるでしょう。

その一方で、こぶはおじいさんを呼び寄せるためのいわゆる「質」として預かっていたと考えることもできます。ただ意地悪なおじいさんの踊りに裏切られたため、「二度とここに来させまい」とこぶを返したのかもしれません。

そう考えると、鬼は最初から最後まで一貫してこぶを「よいもの」と見なしています。おじいさんを宴会場に呼ぶ必要がなくなったので、約束どおり返しただけなのでしょう。意地悪なおじいさんにとっては、こぶは不幸の象徴のようなものだったので、罰を与えられているように感じてしまったのだけなのです。

鬼と人間の、こぶに対する見解の違いこそが「こぶとりじいさん」の大きなポイントだといえるでしょう。

「こぶとりじいさん」に込められた教訓とは

 

人を羨み心は不幸のもととなる
 

こぶとりじいさんの類話は、鎌倉時代の説話集『宇治拾遺物語』に「鬼に瘤取らるる事」というタイトルで収録されています。

このような説話集では、物語の最後に作者の目線から見た教訓のようなひと言が挿入されることが多いのですが、本作の場合は「ものうらやみはせまじきことなりとか」という言葉で結ばれています。現代語訳をすると、「人のことを羨んではいけないよ」ということ。

意地悪なおじいさんは、こぶがなくなった陽気なおじいさんを羨んで、自分も同じことをしてもらおうと鬼たちのところへ足を運びました。しかしそもそも踊りが得意ではないので、この行動をしたことが運の尽き。他人のことをむやみに羨んでもろくなことにならないとわかるでしょう。

ものの見方や価値は人それぞれである

「こぶとりじいさん」には2人のこぶをもつおじいさんが出てきます。こぶがあるという点では変わらないのに、陽気なおじいさんは気にせず明るく暮らしていたからこそこぶがなくなり、一方で意地悪なおじいさんは陰気に過ごしていたためにこぶが増えてしまいました。

また、そもそも鬼はこぶを「価値のあるもの」と見なしています。

ひとつの物事に対して、人によって見方や価値が変わるのは当然のことですが、「こぶとりじいさん」を通じてより強く実感できるのではないでしょうか。

医学的にみると「こぶとりじいさん」は病気だった!

 

「こぶとりじいさん」に登場する2人のおじいさん。そもそもなぜ頬に大きなこぶができてしまったのでしょうか。実は彼らは、医学的な観点から見ると病気なのではないかという説があります。「耳下腺腫瘍(じかせんしゅよう)」の症状によく似ているのです。

耳下腺腫瘍は、唾液を分泌する器官のひとつである耳下腺に腫瘍ができ、頬のあたりが腫れてしまうもの。ちなみに子どもがかかりやすい「おたふく風邪」も耳下腺が腫れたものです。

腫瘍が成長すると、ピンポン玉のように目に見える形になりますが、耳下腺の周りには表情筋につながる神経がとおっているため、むやみに手術をしないケースも多いのだとか。

耳下腺腫瘍の約20%は悪性で、他の部位に転移してしまうこともあるようですが、「こぶとりじいさん」に登場する2人のおじいさんは長年こぶと付き合っていたようですし、耳下腺腫瘍だったとしても良性なのでしょう。

鮮やかなイラストが楽しめる絵本

著者
市川 宣子
出版日
2010-04-01

 

表紙に描かれた大きなこぶが目をひく一冊。鮮やかな色合いと、表情豊かなイラストが魅力の絵本です。

本作でおじいさんたちは、鬼ではなく天狗の宴会に紛れこみます。賑やかな様子が伝わってきて、陽気なおじいさんが思わず踊りたくなってしまう気持ちもわかるでしょう。

文章は昔話らしい表現なもののわかりやすく、小さな子どもでも問題なく理解できるでしょう。

「2人目のおじいさん」が主役の「こぶとりじいさん」

著者
松居 直
出版日
1980-07-01

 

まるで日本画のようなイラストが特徴的な作品です。

この絵本の中心は、こぶを「とってもらえなかった」おじいさん。他の話だと意地悪な性格として描かれることが多いですが、本作ではちょっぴりあわてんぼうで、真似したがりの憎めない存在として描かれています。

2人目のおじいさんを中心に「こぶとりじいさん」を読むことで、物語の新たな深みが増していくのではないでしょうか。

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