小説投稿サイト「カクヨム」で連載、後に書籍化された本作。実力はあるのに、使う用の鎧、スペア用の鎧、スペアのスペア用の鎧まで用意しちゃうような慎重すぎる勇者が主人公です。アニメ化も決まり、今後ますます注目が高くなっていくことが予想される作品です。 今回は、既刊分5巻をご紹介します。
救済難度S級レベルの世界「ゲアブランデ」を救済することになった新米女神・リスタルテ(通称・リスタ)。
そんな彼女が世界を救うために召喚したのは、チート級のスキルを持った勇者・竜宮院聖哉でした。
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2017-02-10
しかし、この勇者……女神も驚く強さなのに、なぜか慎重過ぎるほど慎重な性格。リスタは、そんな彼に振り回されることになるのです。
それでも仲間を増やし、強敵を倒しながら、2人は少しずつ絆を深めていくことに。そうしているうちに、聖哉の過去や、リスタとの意外な関係も明らかになっていくのでした。
テンポのよい展開と軽妙な文章、魅力のあるキャラクターで描かれる異世界冒険譚です。
本作『この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる』は、いわゆる異世界召喚もので、「俺TUEE」系のライトノベルです。俺TUEEEというのは、もはや反則のような強さのスキル、チートスキルを持った主人公のこと。つまり、基本は無敵で敵なしのキャラクターのことを指します。
他の作品では、こういったキャラクターは、その強さを持って余裕しゃくしゃくに敵を一掃したりします。しかし、本作ではそうはいきません。
主人公は、アイテムを何千個も用意したり、防具の予備の予備を用意したり、また納得するまでトレーニングしまくったりと、とにかく度を越えた慎重派なのです。
一方で俺様なタイプでもあるので、周りは振り回されっぱなし。そこから生まれる笑いや騒動を中心に、物語は軽妙なテンポで進んでいきます。そんな他の作品にはないキャラクター設定が、本作の何よりの魅力といえるでしょう。
慎重過ぎる勇者、新米の駄女神、荷物持ちの竜族など、キャラクターの魅力が際立っているのも大きな魅力の作品です。
新米女神のリスタルテは困っていました。
神の世界である神界に暮らす神々の仕事は、さまざまな理由で困窮する世界へ救世主を召喚し、その世界を救うことでした。しかし、新米であるリスタは、先輩の神さえも尻込みするような難度Sの世界「ゲアブランデ」を担当することになってしまい……!?
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2017-02-10
チート級のスキルを持ちながら、あり得ないほど慎重な性格の勇者と、そんな彼に振り回される新米女神の冒険を描く本作。主人公は新米女神リスタルテ、通称リスタと、彼女が召喚した勇者・竜宮院聖哉(りゅうぐういん せいや)です。
この2人が主人公となるわけですが、視点人物となるのはリスタです。こういった作品の多くは召喚される側、つまり勇者の視点から描かれることが多いのですが、召喚する方の視点から描かれているのは新鮮な感じがします。
勇者の聖哉は、スキルは驚くほど高いにも関わらず、性格は極度の慎重派。そのうえ、かなり独善的でオレ様と、厄介なタイプです。どのくらい慎重かというと、鎧に関して、使う用、スペア用、スペアのスペア用を用意するほど。そのためリスタは、いろいろと振り回されてしまうことになります。
内容的には、拷問や虐殺など割とグロい場面もあり、ストーリーに迫力を出しているものの、苦手な方は注意が必要かもしれません。
また、聖哉が召喚されたこと自体にも、何か謎がある様子。それは、リスタの先輩ベテランの女神であるアリアが何かを知っている様子なのですが、本巻ではまだ何もわかりません。
聖哉の執拗なまでの慎重な性格と、アリアの意味深な言葉には何か関わりがあるのでしょうか。聖哉の過去も気になる、第1巻です。
難易度S級の世界「ゲアブランデ」を救うため、優秀なのに慎重過ぎる勇者・聖哉と戦いをくり広げる女神・リスタ。
竜王母との戦いを終え、疲労困憊になっていたリスタ達でしたが、そこに救済を求める兵士達がやってきて……。
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2017-06-09
竜王母との戦いを終えたと思いきや、次なる敵の出現に、休む間もなく戦いに身を投じるリスタ達。本巻ではまず、蠅の化け物ベル=ブブというものが登場します。
蠅というだけで気持ちの悪いイメージが沸くと思いますが、リスタの仲間の1人、エルルもその姿を見て震えがくるほど嫌がる、気持ち悪い化け物です。
リスタ達には、聖哉の他にも数人の仲間がいます。その1人が、竜族の血を引く魔法使い・エルル。ピンク色の髪をした可愛い女の子ですが、ポジションは荷物持ち。聖哉からの扱いは割とひどく、不憫な印象があります。また、同じく竜族の血を引く少年で荷物持ちをさせられているのが、マッシュです。
聖哉の慎重さは相変わらずで、本巻から登場するキャラクター達は、彼の度を越えた慎重さにすっかり呆れ顔。本作の定番の笑いどころです。彼の慎重さゆえに巻き起こされる漫才のような掛け合いは、意外とクセになるもの。
このほかにも強敵の出現や、それにともなうバトル、テンポが速くサクサクと進んでいくことなど、本作の魅力がしっかりと感じられる内容です。
女神の規律を破ってしまったリスタは、「ゲアブランデ」を上回る難易度SS級の世界「イクスフォリア」の救済を言いつけられました。
実はこの世界、以前リスタ達が救済し損ねてしまった世界で……。
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2017-11-10
1巻2巻の舞台であった「ゲアブランデ」も救済レベルがS級という難易度の高い世界でしたが、今回はそれをさらに上回る「イクスフォリア」が舞台になります。実はこの世界、リスタと聖哉が以前に救済できなかった場所なのです。
ここで終わったかと思えるくらい、うまいまとまり方で終わっていた前巻。本巻では、リスタと聖哉の絆がより深まっている様子が、読んでいて確認できます。
さらに今回の舞台は、もはや魔界レベルのヤバイところ。それは雑魚モンスターでさえ、他の世界だったら四天王級レベルという半端ない場所なのです。そんなところなので、聖哉の慎重さもいつも以上のことになります。
そのうえ、前半では呪いを受けた聖哉が、いつもとは正反対の向こう見ずなタイプになってしまうというちょっと面白い展開も読むことができます。
後半では、相変わらずの無双っぷりと、慎重に慎重を重ねる準備がさく裂しているので、安定した面白さを感じることができるでしょう。
SS級レベルの世界「イクスフォリア」。そこに来てからというもの、リスタと聖哉は強力な敵の襲撃に何度もさらされていました。
そんな2人の前には訪れたさらなる危機は、魔導兵器キリング・マシン数万体……!?
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2018-05-10
前巻に引き続き「イクスフォリア」の救済をかけて奮闘する、リスタと聖哉達を描く本巻。呪いのせいで聖哉が向こう見ずになったり、他の世界だったら魔王レベルの獣皇・グランドレオンに襲われたりと、この世界へ来てから彼らは、かなりピンチの連続です。
それも「イクスフォリア」の現状を考えれば当たり前のことなのですが、本巻でもそんなピンチが2人を襲うことになります。
今回の敵は、魔導兵器キリング・マシン数万体で構成された兵団。それらを統率するのは、機皇オクセリオです。女神であるリスタさえも恐れおののくレベルの敵ですが、聖哉は相変わらずで、決戦を前に神界へ戻ってトレーニングをすると言い出しました。
慎重に慎重を重ねる彼の性格も、読者にとってはもはやお馴染み。むしろ、そのおかげでさまざまな力も手に入れているので、安心材料ともいえるかもしれません。
リスタの精神世界に現れた「まだら髪の悪魔」。それが邪神であることがわかったリスタは驚きますが、聖哉にとってはそれも想定内の出来事でした。
2人は、警戒をしながらも「イクスフォリア」に戻ることにしますが……。
- 著者
- 土日月
- 出版日
- 2018-11-10
「イクスフォリア」を舞台にした物語も、いよいよクライマックスを迎えました。
今回の敵は、宿敵ともいえる死皇シルシュト。シルシュトは「イクスフォリア」における四天王最後の1人です。クライマックスらしく激闘をくり広げてくれるので、読者としては手に汗を握りながら読むことができるでしょう。
また、聖哉に霊的な修行を授ける、幽霊のような姿の幽神・ネフィテトや、一見やる気のまったくなさそうな少女の姿をしている軍神・アデネラなども、聖哉とリスタの物語に華を添えています。
本巻に限らずですが、本シリーズではキャラクターの個性が豊かで、さらにそれがうまく描かれているといえるでしょう。そのため読者は。それぞれのキャラクターに感情移入し、笑ったり泣いたりしながら楽しむことができるのです。
四天王最後の1人との戦いということで、聖哉達も少なからず危機に立たされますが、そんな個性豊かなキャラクターの活躍にも目を向けながら読んでみるのも面白いでしょう。
いかがでしたか?女神視点で進む本作は、まずそれだけでも新鮮な味わいを感じることができます。さらに、それだけではなく慎重過ぎる勇者という設定や、救済する世界が星の数ほどあるという作り方も、他の作品にはあまりない特徴です。
アニメ化も決まった今、少しでも気になる方はこの機会に、ぜひチェックしてみてください。